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「そしてスバルだけが残った」結局、1990年代のワゴンブームとはなんだったのか?今後再燃はあるのか【推し車】

短く熱いワゴンブームの、アッサリとした終焉

ワゴンブームが終わった頃の2002年にデビュー、「遅れてきた新型車」だったトヨタ マークIIブリット

1990年代、ミニバンSUV、トールワゴンといった現在主流になっているカテゴリーが揃って「新世代のクルマ、RV(レクリエーショナル・ビークル)」としてもてはやされたRVブーム。

ワゴン専用ボディからライトバン兼用ボディまで、基本的にはセダン派生車であるステーションワゴンもそれに乗じ、「セダン並の走行性能と快適性を持つRV」として大ブームになりましたが、当時のステーションワゴンのほとんどは、2023年現在残っていません。

いったいワゴンに何が起きて、現在に至っているのでしょうか?

2000年代、主流はミニバンやSUVへ移る

ワゴンブームの過熱も冷めてきた2000年に発売、実質「3列シートミニバンにも使える器用なワゴン」とも言えたロールーフミニバン、初代ホンダ ストリーム

そもそもステーションワゴンとは、SUVやミニバンをまだ受け入れられず、しかしセダンはもう古臭い、クーペなんて使い道がないというユーザーが、ブームを支えていたと思います。

しかし1990年代後半から2000年代に入る頃になって、ブームに乗っかり安易に発売され続けていた新型ステーションワゴンを無意味にする出来事が起きました。

まず、乗用車としては無駄でしかない悪路走破性のため無意味な装備がテンコモリ、車重増加に価格アップ、それでいて快適性や操縦性も劣るクロカン4WD車が、FF乗用車ベースで「クロカンのカタチをした」クロスオーバーSUVへとブームが転換。

これらは安くて燃費もよく快適、車体形状はちょっとリアオーバーハング長めのハッチバックという体でしたから、ステーションワゴンの役割もできちゃいます。

そして初代ホンダ オデッセイ(1994年)以降に台頭したロールーフミニバンは、よく考えれば大して使い道がない3列目シートを畳めば、大して荷物を載せない人ならステーションワゴンと変わりません(※)。

(※筆者の義兄が初代ウィッシュに乗っていましたが、3列目シートを使っているところなんて見たことなく、実質ステーションワゴンとして使ってました。)

そしてステーションワゴンには、最低地上高で確保した悪路走破性も、3列目シートによる「いざとなればたくさん乗れる」といった芸当が、真似できないのです。

よく考えたら、なんでステーションワゴンなんて買ってたんだっけ…と、ユーザーが気づくのに、そう時間はかからなかったでしょう。

そのへんメーカーも心得たもので、ホンダが手頃な2リッター級5ナンバーロールーフワゴンの初代ストリーム(2000年)でワゴン市場を奪うと、トヨタも追従して初代ウィッシュ(2003年)を発売、その流れを決定的にしました。

ワゴンブーム崩壊と、遅れてきた新型車

三菱最後にして最強のスポーツワゴン、2006年発売のランサーエボリューションワゴンMR

ブームが終わるとメーカーもユーザーも冷たいもので、「ワゴンとつければ売れる」と無理やりS-ワゴンだなんだと便乗していた5ドアハッチバックも、2000年代後半にもなると、むしろ「ワゴン」を名乗らなくなり、多くのワゴンが廃止されました。

トヨタなどFFで実質カムリグラシアワゴンの前後違いでしかなかったマークIIクオリスを見限り、2002年になってから「今度こそホントにマークIIのワゴン!」と、新型のマークIIブリットを発売しますが、もう時代遅れもいいところです(2007年販売終了)。

残ったのは「ブームの元祖」として力を入れ続けたスバルか、「安定」のトヨタ、スバル同様に根強いファンのため供給を続けるマツダくらいで、スバル以外で熱い新型ワゴンを発売したのは、エボIXでワゴンを追加したランエボワゴン(2005年)くらいでしょう。

堅実に実用ワゴンを提供し続けたトヨタ

販売台数だけならレヴォーグすら上回る現行カローラツーリングワゴンを抱えるトヨタは、販売力と堅実さでワゴンを続けている

2023年現在も日本国内でステーションワゴンの販売を続けているメーカーのうち、トヨタはカロゴン(カローラワゴン)改め「カローラフィールダー」のモデルチェンジを続け、プロボックス/サクシードワゴン販売終了後もビジネスワゴン需要に応えています。

また、新型カローラのワゴンモデルも「カローラツーリング」の名で販売しており、スバル車より燃費性能や信頼性という観点を重視するユーザーに支持される、定番モデルです。

2列ワゴン版もあったプリウスα(2011年)は2021年で廃止されましたが、インバウンド需要で意外とタクシーに使われており、そのうちスポーツワゴン的に復活する可能性も捨てきれません。

日産はADバン(NV150AD)のワゴン版「ウイングロード」の販売を2018年に、ホンダは3代目フィットベースの「シャトル」を2022年に打ち切っており、あとは地道にMAZDA6ワゴン(旧アテンザワゴン)の販売を続けるマツダくらいでしょうか。

高級輸入車のステーションワゴンが今でも販売されていますから、トヨタ系のレクサスなどISやLSのワゴンを作っても売れそうな気もしますが、そこまでする気はないようです。

そしてスバルが残った

「メーカーの主力車種」としては日本唯一となったステーションワゴン、スバル レヴォーグ(2代目スマートエディション)

こうしてワゴンブーム終了、国産ステーションワゴンが壊滅していく中で、ブームの元祖であるスバルはむしろ意気軒昂。

もともと5ドアハッチバックを無理やり名乗らせたインプレッサ スポーツワゴンこそ、3代目から「インプレッサスポーツ」と本来あるべき車名になりますが(※)、レガシィ ツーリングワゴンはその後も健在でした。

(※2023年発売の6代目からはセダンのインプレッサG4が廃止され、5ドア車がサブネームなしの「インプレッサ」を襲名)

レガシィの主要市場である北米からの要請で大型化が進み、日本では大きすぎるようになると、クロスオーバーワゴンの「アウトバック」以外は国内販売を終了しますが、後継としてWRXのワゴン版「レヴォーグ」を2014年に発売、2023年現在も同社の主力車種です。

新型コロナウイルス禍と半導体不足で、自動車の世界生産がグチャグチャになる以前の2021年上半期に調べた統計だと、実はカローラツーリングがステーションワゴン販売No.1、レヴォーグは2位でしたが、販売規模が少なく、プレミアム路線を進むスバルにしてみれば大健闘であり、今でもワゴンを主力に据える、日本唯一の自動車メーカーとなりました。

そのスバルも一時期は「エクシーガ」(2008年)というロールーフミニバンを販売しましたがパッとせず、「やはりスバルはワゴンだな!」という印象を強めています。

ワゴンブームとはなんだったのか?

ワゴンブームが急速に下火となる中、スバルはレガシィ ツーリングワゴンにもセダン版レガシィB4同様に「ブリッツェン」など特別なモデルを展開し、付加価値を維持することでワゴンの灯を守り続け、自他ともに認める国産ワゴンNo.1メーカーとなった

こうして1990年代の到来とともに爆発的ブームとなり、2000年代に入るやアッサリ忘れられ、カテゴリーとしてはすっかりニッチ(スキマ)になったステーションワゴンですが、なぜあんなに熱いブームとなったのでしょうか?

筆者が思うに、「セダンみたいなクルマにまだ乗っていたいけれども、ブームには逆らえない」というユーザーの”未練”だったのでは…と思います。

だからこそ2000年代に入ると、セダンとハイルーフミニバンのちょうど中間にあたるロールーフミニバンへとブームが移行し、そうしたユーザーもいい加減あきらめると、よほど熱心なユーザー以外はミニバンとSUV、トールワゴンばかりになったのかもしれません。

「SUVやミニバンはもうブームが長すぎて飽きた!そろそろワゴンの時代がまた来るだろう」というユーザーもいますが、トヨタが2024年発売予定としている新型クラウンエステートのように、実現するとしてもSUV的なクロスオーバー車になるのでしょう。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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