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実燃費1km/L!国産市販車初3ローター!ユーノス コスモが超バブリーな車でも許された、その理由【推し車】

ある意味、国産車がひとつの頂点に立った瞬間

ソアラやF31レパードでは出せない味を持つマツダの最高峰ラグジュアリークーペ、ユーノス コスモはマツダミュージアムで展示中

日本経済の狂い咲きに酔った「バブル時代」を象徴するクルマは数あれど、こんなクルマはバブルの頃じゃなきゃ無理、無理、絶対無理!と言えるほどなのがユーノス コスモです。

何しろ国産量産車では唯一の3ローターエンジン20Bや、現在でいうGPSカーナビを積んだ「20BタイプE CCS」グレードでは530万円とBNR32スカイラインGT-Rより高価で、さすがにスーパーカーのNSXほどではないにせよ、ラグジュアリークーペとしては別格。

このコスモ、筆者が26年前に新卒で入った会社の社長が所有しており、新人研修の際に開かれたパーティへ初代NSXとともにスルスルと現れ…「もしかして頼んだら乗せてもらえるんじゃ?」なんて期待しましたが、結局触らせてもくれませんでした(ガッカリ)。

当時は今ほどクルマ好きじゃなかったのにその調子ですから、もし今20Bのコスモへ助手席でも乗れるかもしれないチャンスがあったら、土下座してお願いするかもしれません。

最新「ユーノスコスモ」中古車情報
本日の在庫数 9台
平均価格 312万円
支払総額 188~465万円

国産市販車初3ローター、世界初の量産車用シーケンシャルツインターボ

フロントグリルのユーノスマークを囲むのはオムスビ型のロータリーハウジング!しかしヌメっとしてますね

ユーノス コスモと言っても当時のRX-7(FC3S)と同じ2ローターの13B搭載車と、3ローターの20B搭載車があり、前者はマフラーのテールパイプが左右出し2本、後者は左右各2本出し4本と識別は容易です。

筆者の知り合いが兄貴のコスモに乗ってきたことがあり、「おぉユーノス コスモじゃん!まさか20B?!」と喜ばせておいて、「残念13B…」「なんだよ期待させて!帰っていいよ!」と言われるくらい落差が激しいのですが、美しいフォルムは13Bでも変わりません。

それでも注目したいのが20Bで、チューニング漫画「よろしくメカドック」でロータリー使いの那智さんがSA22Cへ改造3ローターを積んだり、実車でもレーシングカーのマツダ757(1986年)が3ローターの13Gを積んでいましたが、国産市販車では前例なし(※)。

(※「国産市販車で」というのは、旧ソ連でもヴァンケルロータリー車を作っており、マツダより早く3ローター乗用車も作っていたから。ただしマツダと違って無断コピーだったためか、今に至るも詳細な実態は不明)

しかも市販車ではグループBマシンとして少数生産されたポルシェ959に続き、市販量産車としては世界初のシーケンシャル・ツインターボを組むなど、パワーユニットはまさに当時の最先端、ラグジュアリークーペ用としては最強クラスでした。

何しろ3ローターは振動が少なく静粛性もV12気筒エンジン並という上品で滑らかなエンジン、280馬力自主規制のため、333馬力とも言われた本来発揮可能な最高出力はデチューンされたとはいえ、当時の国産乗用車用エンジンとしては最強の大トルクも誇っています。

あの時代なら許された?!1~3km/Lの実燃費

長いボンネットの下には3ローター・シーケンシャルツインターボの20Bが収まっています

しかし20B搭載車のカタログ燃費は6.1km/L、しかも現在のWLTC燃費の前(JC08)のさらに前の大甘な10・15モード燃費ですから、仮にWLTC燃費で計測したら良くても3~4km/Lではないでしょうか。

実際、当時から実燃費はせいぜい2〜3km/L、ちょっと頑張って踏んだら1km/L台と言われており、「どこの重戦車だオイ!」と言いたくなる数値です(※)。

(※戦車の燃費はだいぶ燃費が良くなったと言われる陸上自衛隊最新の10式戦車でも340m/L程度と言われ、コスモどころではないのですが)

ユーノス コスモの燃料タンク容量は85Lなので、カタログ燃費通りなら518.5kmは走れるはずですが、実燃費では満タンでも170〜255km、頑張ってしまうと100km走るか怪しいという、もう笑うしかないスペックでした。

ただ、2000年頃に筆者の後輩が中古で買ったジープ・チェロキー(4リッター直6OHV)も実燃費は似たようなものでしたし、世の中がやたらエコだ低燃費だと騒ぐ前の実燃費なんて、「エコランして10km/Lなら優秀」という時代です。

だから現在の基準とはだいぶ異なるのですが、それでもユーノス コスモは2+2とは名ばかりで、「実質2人しか乗れないラグジュアリークーペなのにそれしか走らない贅沢なクルマ」ではありました。

世界初のGPSカーナビや、子牛十数頭分の本革などもバブリー!

展示車は1992年式の20BタイプSで、20BタイプE CCSに比べると普通のラグジュアリークーペ程度の内装なのが残念

もちろん、マツダがバブル期に「トヨタへ追いつく最後のチャンスだ!」と立ち上げた5チャンネル体制の一角、「ユーノス」ブランドのフラッグシップですから、単にパワフルな代わり燃費極悪のクルマなだけではありません。

13B/20BどちらのエンジンにもポテンザRE71を履くスポーティな「タイプS」と、同じBSでもレグノを履くラグジュアリーな「タイプE」がラインナップされ、後者の内装は豪華絢爛。

シートやドアトリムなど、手を触れる部分にはオーストリアのシュミットフェルドバッハ社が手掛けた、子牛十数頭分と言われる最高級の牛革や、フランスはリヨン産の楡(にれ)材を使って、イタリアのミラノで工房の職人が仕上げた本木目パネルを採用。

「合皮」でも「木目調」でもない、本物の高級車用素材がふんだんに使われており、「マツダ」ではなく「ユーノス」ブランドだから許された本物の贅沢ですが、これがW12エンジンを積む幻のマツダ最高級車「アマティ1000」なら、さらに上を行ったのでしょう。

そして贅沢装備がもうひとつ、CCS(Car Communication System)と呼ばれる世界初のGPSカーナビを「20BタイプE CCS」へ標準装備していましたが、通常のタイプEとは65万円もの価格差がある超高価なシステムでした。

現在のカーナビに比べれば解像度も低くて機能も限られましたが、当時は衛星からの電波で自分の位置がわかるというだけで凄まじく便利な装備で、1990年代後半の後付カーナビでもまだ20~30万円はしましたから、1990年の世界初装備としてはむしろ安かったかも?

もちろん今ならスマホのカーナビ機能の方がよほど高度にいろいろな事ができますが、30年以上前ではインターネットも普及していませんから、SFじみた装備だったのです。

RX-7より、コスモこそがマツダ完全復活の証明?

この太いCピラーや、余計な装飾などなくとも重厚感あるリア周りが高級感を演出している

最近はMX-30用の発電機、シングルローターの「8C」がロータリーエンジン復活の鍵と思われていますが、半ば実験車のMX-30に積んでいるようではまだまだで、いずれ8Cなり、その発展型を積むレンジエクステンダーEVやハイブリッドのフラッグシップが出るはず。

1996年の販売終了とともに絶えて久しい「コスモ」の名が復活するとした時は、RX-7(8でも9でもいいですが)よりよほどマツダの勢いを象徴する出来事になりそうです。

ただ、「頂点に立ったけど、その後落ちる(でもまた復活する)」はマツダの持ち芸になっていますから、コスモを名乗らせる時は、くれぐれも慎重に…最近はCX-60やMX-30、MAZDA3など英文字と数字の車名ばかりですから、もうコスモはないかもしれませんが。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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