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「昔の駄作は現在の傑作」BCNR33スカイラインGT-Rの評価がコロっと変わったのはナゼ?【推し車】
目次
昔は駄作で今や傑作?評価がコロっと変わった「33R」
一時は「もっとも醜いGT-R」として忌み嫌われ、スカイライン人気の凋落で最大のA級戦犯のように言われていた、BCNR33「スカイラインGT-R」。
しかしいつしか「ロングホイールベースで高速安定性に優れる」と再評価され、「25年ルール」の絡みで対米輸出が本格化してからはあれだけ安かった中古車価格もウナギ昇り!
しかも考えてみれば4ドアGT-Rやル・マン参戦、衝撃的なニスモ400Rなど重要な派生モデルが盛んだったのも「33時代」だったわけで、案外傑作なのでは?と言われています。
今回は、「あの不人気はなんだったのか」と言いたくなるBCNR33の新車販売当時を振り返ってみましょう。
- 最新「GT-R」中古車情報
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本日の在庫数 264台 平均価格 1,727万円 支払総額 610~6,353万円
「901運動」の失敗で窮地に陥った日産が生んだBCNR33
「1990年代までに技術の世界一を目指す」─たとえ販売でトヨタに負けて国内シェア2位に甘んじてはいても、”技術の日産”の誇りは失うまいと意気込んだ「901運動」の成果が1980年代末頃から市場に現れると、それらのほとんどは後世において「名車」と呼ばれました。
しかし!クルマ好きによる玄人好みは必ずしも販売とリンクしません。
保守的だからこそ安定した人気を誇るトヨタ、RVブームや3ナンバーブームに乗ってシェアを伸ばす三菱やスバルなど、新興勢力はバブル景気の勢いに乗った一方、日産の901運動車は伸び悩み、販売面からすれば明らかに失敗でした。
その煽りを喰らったのが901運動で生まれた「名車」たちの次世代組で、スカイラインなどR32型で不評だった4ドアセダンはローレルとプラットフォームを共用し、2ドアクーペはショートホイールベース版を別に作るはずが、コストダウンで4ドアベースに統一。
さらにデザインも煮詰め不足で1993年8月に発売された結果、R31型初期を思わせる「デップリしてドンくらいスカイライン復活」と言われて酷評されます。
グループAレース(全日本ツーリングカー選手権・JTC)が1993年に終了して役目を終えたはずのBNR32スカイラインGT-R後継車も、BCNR33型「第2世代2代目スカイラインGT-R」として1995年1月に発売されますが、ベース車のドン臭い印象は拭えませんでした。
屈辱を味わったル・マン参戦など、レースでも不遇
レースでも勝てないわけではないもののBNR32時代のようにライバル不在ではなく、ポルシェ911GT2やマクラーレンF1、トヨタの80スープラを相手に連戦連勝!とはいかないBCNR33は、「とことん間が悪かった不遇のGT-R」だったと言えるでしょう。
ル・マン24時間レースにも1995-1996年に「日産 ニスモGT-R LM」の名で参戦(※)しますが、「ピットウォール越しにルーフが見えるのはGT-Rだけ」(それだけ全高が高くて空気抵抗も大きい)と言われてさしたる成績も残せず、ドン臭さの上塗りをしただけでした。
(※同一車種に4ドア車があると参戦できない規則だったため、名目上は「スカイライン」の派生車ではなく「GT-R」という独立車種扱いだった)
モノ自体は決して性能が低い、カッコ悪いというわけではなく、BNR32時代と比べてロングホイールベース化とワイドボディ化、各種電子制御の最適化によって、高速安定性を含む走行性能全般は大幅に底上げされています。
レース車のルックスも無理なく仕立て上げる余地があり、ル・マンのLM仕様や、そのイメージに近づけた「LMリミテッド」という特別仕様車など今でも高値がつくほどです。
2ドアベースで4ドアGT-R復活!
派生モデルの豊富さはBCNR33型の特徴で、スカイライン生誕40周年を記念してオーテックが作った特別仕様車、「スカイラインGT-R オーテックバージョン 40thアニバーサリー」(1998年1月発売)は、初代ハコスカGT-R初期型(PGC10)以来の「4ドアGT-R」。
それも4ドアセダンがベースではなく、2ドアクーペを改造して後席用ドアを追加、4ドア仕様のテールを与えるという凝った作りで、久々の4ドアGT-R復活と話題にはなりましたが、実際にはあまり売れなかったようであまり見かけません。
これは警察の高速交通機動隊用に最適だな…と思っていると案の定、神奈川県警や埼玉県警をはじめ、各地の警察で覆面パトカーや白黒パトカーで多用されており、クラウンやセドリックのセダンや30ソアラと同様、高速道路で見かけると緊張感を誘う1台でした。
初代ステージアへRB26DETTを積んだ「ステージア260RS」(1997年10月発売)も、厳密にはBCNR33派生車ではないものの、広義にはそう呼んでも差し支えないでしょう。
衝撃の400馬力!ニスモ400R
さらに究極のBCNR33派生車が、ニスモから発売されたコンプリートカーのニスモ400R。
日本自動車工業会の加入メーカーではないニスモ名義ですから280馬力自主規制値を気にすることなく、2.8リッター化したRB-X GT2エンジンは車名通り400馬力を発揮しました。
1995年2月に1,200万円、限定99台で発売されて、実際の販売台数は55台と言われていますが、筆者も1度だけ400Rを見た事があり、そのオーラは普通のBCNR33とは別物です。
確かに1,200万円という価格は高額でしたが、2023年現在の物価に換算すると1,314万円ほどとなり、現在のR35GT-Rが1,375万円からと考えれば、ニスモのコンプリートカーとしてそう高額とは思えません。
こんな感じで、1995年1月の発売から1998年12月に販売を終える約4年足らずの間、かなり話題を振りまいたBCNR33でしたが、終始「大きく重くデブになったスカイライン」というR33型への酷評に引きずられ、中古車相場も安い「穴場」でした。
ただ、アメリカの25年ルール(新車販売していなかったクルマでも、発売から25年経てば登録して公道を走れるようになる)によって2020年頃から中古車価格が高騰し、かつては高くて数百万円台だったのが、今や安くとも500万円台、高額車は2,000万円を超えます。
あれだけカッコ悪い、ダサいと言われていたのに、今や「実は美しいデザイン」と言われてみたり、時代が変われば評価も変わる好例になりました。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...