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クロカンからの大転換!初代レクサス RX(ハリアー)が切り拓いた“クロスオーバーSUV”という新時代 【推し車】
目次
「クロカンみたいなカタチのクルマ」からの本質的変化
最近はトヨタ RAV4(5代目・2019年)のようにオフロードルックへの回帰が始まっているものの、ランドクルーザーやジムニーのように本格的なオフロード走破能力を持つクロカンSUVとは異なる、洗練されたデザインが多いSUV。
未だにSUVの事をジープ以来のクロカン車だと思い込み、それ以外のSUVは「なんちゃってSUV」と差別する性格の悪い人もいますが、もはや一般乗用車と同じフルモノコック構造のクロスオーバーSUVは世界的なブームです。
ミニバンやSUVが嫌いな人にとってはイヤな話かもしれませんが、軽自動車から超高級車、スーパーカーまでSUVやそれに類する車種が販売の主力となっているのは事実で、むしろ世界的には「SUVの方が普通のクルマ」となっています。
そして、その流れを決定づけたのが初代レクサスRX、日本名トヨタ ハリアーでした。
90年代RVブーム初期までのSUVはクロカンだった
まだ「SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)」というコトバが一般的ではなかった頃、三菱 パジェロやいすゞ ビッグホーン、トヨタ ランドクルーザーやスズキ エスクード、同ジムニーなどのクロカン4WD車がRVブームの主力でした。
そのため、本来はミニバンやステーションワゴン、トールワゴンといった当時の新ジャンル多目的車全般を指す「RV(レクリエーショナル・ビークル)」はクロカンの同義語、SUVはRVの呼び方が変わっただけだから、SUVとはクロカンだという誤解は今でもあります。
実際は、SUVという言葉を初めて使ったのはアメリカのジープ チェロキー(2代目XJ系・1984年)と言われており、その頃からラダーフレームを持たないフルモノコックボディ車。
さらにさかのぼれば、2代目チェロキーに4WDシステムを受け継いだAMC イーグル(1980年)というクルマがあり、これはセダン/クーペ/ワゴン/コンバーチブルと複数の乗用車ボディバリエーションを持つ、「クロスオーバーSUVの始祖」です。
一方、1970年代末から「商用車やクロカンをカッコよく乗る」というカタチで少しずつ始まったRVブームが1990年代にピークを迎えた日本では、クロカン4WDの三菱 パジェロ(2代目・1991年)が大ヒットしてRVの代表格になったのが、誤解の始まり。
ただ、同種のクルマは全て強固なラダーフレーム上へ別体のボディを載せる本格的なクロカン車ばかりだったので、その後もRVから転じて「SUV=クロカン」という思い込みは今でもあります。
カタチだけでいいとクロカンから代わったクロスオーバーSUV
本格的なクロカン4WDが大ヒットする一方、その悪路走破能力はオフロードを走らない限り無意味だとユーザーの多くはすぐ気づいており、そのために劣悪な燃費や操縦性、快適性を受け入れるより、「こういうカタチの乗用車がベスト」と思うようになります。
この時点で既に、三菱 ギャランスポーツGTやダイハツ ミラRV4など、乗用車へのパーツ追加でお手軽に仕上げたクロスオーバー仕様が登場していたものの、「なんちゃってRV」とバカにされ、受け入れられません。
2010年代後半には昔のことなど忘れたかのようにヒットしますが、1990年代半ばの時点では乗用車へクロカン風パーツをつけただけでは、ユーザーに認められなかったのです。
そこでいち早く「要するに、クロカンのカタチをして中身は乗用車だね?」と気づいたメーカーがトヨタとホンダで、トヨタ RAV4(1994年)、ホンダ CR-V(1995年)はいずれも大ヒット!
ただしその下地には初代スズキ エスクード(1988年)があり、同車は中身も外観も本格オフローダーでしたが、重い大型グリルガードなど「クロカンらしさを過度に強調する、都市型乗用車としては無意味な装飾」を廃し、内装も一般乗用車並。
RAV4やCR-Vもそれに倣ったうえで4WDシステムは乗用車向け、FF車も設定して、「カタチだけクロカン」のクロスオーバーSUVにしたのが大正解で、ユーザーも「そうそう、これでいいんだよ」と受け入れた結果、RVブームの牽引役からクロカンは脱落しました。
もっとも、1990年代後半までは「RVにグリルガードをつければさらにソレっぽくなる」という風潮が残っており、トヨタ カルディナやホンダ オデッセイなどには、グリルガードやバンパーガードのオプションも残っていましたが。
大径タイヤと最低地上高だけが残ったRX/ハリアー
RAV4やCR-Vの路線をさらに推し進めたのが、1997年に発売され、まだレクサス展開前の日本ではトヨタブランドから「ハリアー」の名で売り出された世界初の高級ラグジュアリーSUV、初代レクサスRXです。
カムリをベースに大径タイヤとサスペンションで最低地上高を稼いで視界を広く取り、エレガントなデザインを豪華内外装で固めた5ドアハッチバック(あるいはショートワゴン)ボディの新型RVで、もはや泥臭いデザイン要素すら皆無。
オフロードを走るより、街を優雅に走って高級ホテルに乗り付け、タキシード姿で降り立っても全く違和感のないクルマとして日本はもとより、海外でも北米を中心に大ヒット!
かつてユーノス ロードスターのヒットをキッカケに、競ってライトウェイト・オープンスポーツを作った海外メーカーもRX/ハリアーへ追従します。
メルセデス・ベンツやBMWといった高級車メーカー、ポルシェのようなスポーツカーメーカーもそれぞれ「そのブランドらしいカタチでのクロスオーバーSUV」を発売するようになり、これがまたヒットして日本車でも対抗馬が生まれ…という流れが生まれました。
RX/ハリアー以降は小型化・大衆車化と高級高性能化が進む
高級ラグジュアリーモデルでヒット作が出れば、それより安い大衆車や小型車でも同種のモデルが出るのは必然です。
さらに、小型クーペが主体だった女性向け通勤車「セクレタリーカー」に、暴徒に襲われても鈍器を振り下ろされにくく、バリケードも突破しやすいクロスオーバーSUVが増え、治安の悪い国・地域では安全性が高いクルマとされました。
日本だとそこまで切羽詰まった必要性が考えにくかったものの、相次ぐ災害で「せめて最低地上高の高さと大径タイヤによる走破性アップだけでも安心できる」と、2010年代以降のクロスオーバーSUV需要へつながっていきます。
そうした全世界的なSUV人気は、ついに超高級車、超高性能車のメーカーも無視することはできず、今やロールスロイスやフェラーリですら(SUVと呼ぶかはともかく)、同種のラインナップを欠かせなくなったほどです。
その源流であるレクサスRX/トヨタ ハリアーも人気ブランドとして今日も代を重ねて継続しているのは承知の通り。
日本ではレクサスブランド展開後に3代目からレクサスRXを正規販売するようになり、2代目で廃止されるかと思われたトヨタ ハリアーもRAV4ベースで3代目にモデルチェンジ、逆にレクサス版のNXが追加されています。
ブームの源流となった後は埋もれたり消えゆくクルマも多い中、ハリアーがRXから独立してまで現在も人気モデルとして残っているあたり、初代ハリアーがどれだけインパクトの強いクルマだったかがわかります。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...