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「320馬力級のFRスポーツカーが誰にでも買えた時代」庶民的ジャパニーズマッスルカー・トヨタA80スープラ【推し車】
ちゃんと買える、頑張れば手が届く価格のジャパニーズマッスルカー
当時の自主規制値280馬力、実際には300馬力級の3リッター直6DOHCツインターボのFRスポーツクーペが500万円以下で買える…今では考えられませんが、1990年代から、排ガス規制で多くのスポーツカーが葬られる2002年まで、ホントによい時代でしたね。
今じゃBMWの直6ターボ積んだ現行スープラなんて700万以上しますし、RZ34フェアレディZなんて値段以前に日産は売る気があるのやら…ホントに一般人が普通に買えるのか疑問に感じる代物になってしまいました。
特にA80スープラの新車発売当時はバブル崩壊後とはいえまだ名残があり、親に買ってもらったか親ローンか、免許取り立て学生が大学への通学で普通に乗ってきたものですが。
MOBY編集部がAIに聞いた、「30〜50歳くらいのクルマ好きが気になる名車」、今回は最後の庶民的ジャパニーズマッスルカー、トヨタのA80スープラです。
- 最新「スープラ」中古車情報
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本日の在庫数 195台 平均価格 642万円 支払総額 110~1,457万円
セリカXXのモデルチェンジ版から、本格スポーツへの転身
そもそもトヨタの「スープラ」という車名にはややこしい経緯があり、初代(1978年)と2代目(1981年)は日本だと「セリカXX」という車名で販売し、3代目から日本国内でも「スープラ」を名乗りました。
そのため、知識の差によって「◯代目のスープラ」が異なる場合もあり、まずそこが注意点のひとつ。
さらに、2代目まではまだFR時代だったカリーナの姉妹車、「セリカ」のフロントセクションを延長、本来直4が載るところへ直6エンジンを載せるという、1960年代の2代目スカイラインGT(S54)と同じ強引さで成立したモデルでしたが、3代目からは一変。
カリーナやコロナともどもFF化されたセリカから独立、むしろ当時のソアラに近いFRラグジュアリースポーツとなり、「トヨタ3000GT」を名乗って古の2000GT後継車っぽい雰囲気を出そうとしますが、本質はあくまでセリカXX同様の北米向けラグジュアリーGT。
グループA公認を取ってツーリングカーレース(JTC)や、セリカGT-FOUR実用化までのつなぎにWRC(世界ラリー選手権)にも出場しますが、多少パワフルでもデカくて重いクルマが、マトモなスポーツカーと戦えるわけもありません。
しかもラグジュアリーGTとしてならソアラとかぶりますし、トヨタは国内2代目、海外も含めれば通算4代目となるA80系スープラを、思い切った本格FRスポーツへと転身させたのでした。
まあ、例によってトヨタのことですから、エンジンなどを共用する「アリスト」(初代1991年)という4ドアスポーツセダン版を先に発売していましたが。
GT-Rとも戦える戦闘力と、運転しやすさを両立したFRスポーツ
搭載エンジンの主力となる3リッターDOHC直列6気筒ツインターボエンジン「2JZ-GTE」は、当時の国内向け自主規制値である280馬力へ余裕で達し、輸出仕様では約320馬力。
スカイラインGT-RのRB26DETTと違い、グループAレースのため排気量を抑えるようなことはなかったため、より太い40kgf・m超のトルクを3,600rpmという低回転から発し、それでいて同様に大排気量、大トルクの三菱 GTOとは異なりFR車!
その当時、ある自動車評論家の解説では「免許取り立ての女性でもハンドル切ったままアクセルを開ければ、キャーキャー言いながらスピンターンができてしまうほどイージードライブなクルマ」と言われ、化け物じみた性能と運転しやすさを両立したのも特徴です。
運転の容易さといえば思い出深いエピソードとして、筆者が通っていた大学の駐車場を思い出します。
試験ともなれば、普段はバイトに明け暮れ大学になど来ない学生が大挙押し寄せるため、キャンパス近くの駐車場は常に満員御礼。
しかしそこは駐車場側も考えたもので、カギを預かって停めたクルマをパズルのように入れ替え、敷地いっぱいにギッシリ詰め込みましたが、もちろん発売間もないA80スープラも、駐車場係のオバサンやお姉さんによって、楽々動かされます。
ただしある時、係のお姉さんが「何このクルマ、バックギアなのに前に進むんだけど!」と叫んでおり…よく見たら自慢のゲトラグ製6速MTを積む、ターボ車のスープラRZでした。
1993年当時は6速MTなんて珍しかったので、5速MTでいうバックギア(Hパターンの右上)に入れてもスープラRZでは6速ですから、前に進むのも当たり前…え?6速でも半クラならエンストもせず前に進むの?と、驚いたものです。
レースでも、直4スポーツエンジン3S-GE由来のレーシングエンジンを積んで、スカイラインGT-RやNSX、他に輸入車勢とも熱く戦ったA80スープラですが、頑張れば買える手頃な価格のハイパワーFRスポーツでしたから、親しみ深いマシンでしたね。
30~50歳代のクルマ好きからすると、NSXやGT-Rより馴染み深く、街でもよく見かける当たり前の、でもスゴイクルマとして記憶されていることでしょう。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...