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スライドドアと超ロングスライドリヤシートのSUVが今こそ欲しい!RVブームの申し子、三菱 RVR(初代/2代目)【推し車】
今考えれば最高!当時としては早すぎるコンセプトが惜しい
その時代の文化、あるいはメーカーにとっては重要な役割を果たし、名車と呼ぶほどではないかもしれないけど、「忘れがたき銘車」を紹介したい…今回は三菱が1990年代から2000年代はじめ、2代にわたって販売した初代/2代目「RVR」です。
現行モデルのRVR(3代目・2010年に車名復活&発売)とは異なり、SUVというよりは大きめなトールワゴンへ、モデルによって高い最低地上高や装飾を与えたクロスオーバー的なモデルで、ある意味では万能な、しかし当時としてはコンセプトが早すぎた面もありました。
RVブームの終焉で急速に廃れたという意味ではステーションワゴンに近いともいえた、初代/2代目RVRとはどんなクルマだったのかを振り返ります。
時代に乗って豊富なバリエーションを誇った初代(1991年)
RVブームの申し子
初代RVRが発売されたのは1991年2月、専用プラットフォームと評されることがあるものの、やや遅れた同年5月デビューのミニバン、シャリオ(2代目)をベースにホイールベースを短縮したショートボディ版というのが実情に近いと思われます。
当時は1980年代を通してジワジワと盛り上がってきた「RVブーム」が一挙に爆発、初代末期に続いて2代目が爆発的ヒットとなったクロカン4WD、「パジェロ」の人気で三菱がブームの火付け役になったものの、パジェロ以外の手駒不足という悩みもありました。
RV(レクリエーショナル・ビークル)とは現在でいうSUVのみを指す用語ではなく、ミニバン、トールワゴン、ステーションワゴンといった、「セダンやクーペ、ハッチバック以外の新たなスタイル」を総合した新ジャンルでしたが、クロカン以外はまだ発展途上。
そこで三菱としてもシャリオの2列シート・ショートボディ版で様子を見たのが初代RVRでしたが、「レクリエーショナル・ビークル・ランナー」の頭文字による車名が示す通り、まさに「RVブームの申し子」です。
超ロングスライドシートで快適性はすさまじかった!
3列目シートがないのに後席左側にはミニバンのような大型スライトドア(しかも世界初のスライドレールが露出しないインナーレール式)が付き、4人乗り仕様の2人掛けリヤシートは、フラットで広いラゲッジへ向け300mmという脅威の超ロングスライドを実現。
もちろん3人掛けリヤシートで便利な5人乗りワゴン的にも使えましたが、4人乗り仕様で最大限後ろへスライドしたリヤシートの広さたるや、身長172cmの筆者が「ふんぞりかえって両足を乱暴に投げ出し、なお余裕たっぷり」というほどでした。
スーパースポーツギア/ハイパースポーツギアはSUV版ランエボ
それだけでもスゴイのですが、発売翌年の1992年にはそれまでの1.8/2.0リッターエンジンに加え2リッターディーゼルターボも設定、最低地上高を50mm上げた210mmへ、大型フロントグリルガードなどで装飾したSUV仕様の「スポーツギア」を追加。
これが1994年9月にはランエボ用4G63ターボの230馬力デチューン版を積み、ワイドフェンダーで3ナンバー化した「スーパースポーツギア」、モデル末期の1997年1月には前置きインタークーラーで250馬力のエアロスポーツ版「ハイパースポーツギア」が決定版です。
他に前席頭上がタルガトップのように開く電動オープン版「オープンギア」「スーパーオーオープンギア」もラインナップし、実用的なトールワゴン、スポーティなSUV、オープンと多彩なバリエーション展開でしたが、それでもスライドドアを持つのが独特でした。
増え続けるライバルに優位を示しにくかった2代目(1997年)
ソフト路線なデザインも過激なSUV版仕様スポーツギアは健在
1997年にモデルチェンジした2代目も基本はシャリオグランディス(3代目シャリオ)のショートボディ版、オープンギアは廃止されて標準仕様とSUV仕様の2本立てへ。
スライドドアや超ロングスライドのリアシートは踏襲されたものの、インパネシフト化でMTがほとんど消滅したのは残念でしたが、初期型に限っては「スポーツギアX3」に250馬力の4G63ターボ&5速MT仕様が残されていました。
モータースポーツで何らかの実績を残していれば…
ただ、その頃になるとRVブームが落ち着いてきてライバルと厳しく比較されるようになり、3列シートミニバンや乗用車ベースのクロスオーバーSUV、2列シートだと背の低いステーションワゴンか、背が高い場合はコンパクトなトールワゴンが売れ筋となります。
そのいずれにも当てはまらない…強いて言えばSUV仕様なら活路はあったかもしれませんが、トヨタ RAV4やホンダ CR-Vのように大径タイヤのシティオフローダーでもなく、同時期デビューの初代フォレスターほど走りに徹してもいないと見られたようです。
現在のように、「スーパーハイトワゴンではない2列シート車でもスライドドアが求められる時代」であったり、あるいはダカールラリーの市販車無改造部門や、せめてデリカD:5のようにサービスカーで完走した実績でもあれば、違ったかもしれませんが。
「何でもできる」の難しさ、しかしそのコンセプトは今こそ有用
1999年のマイナーチェンジではシャリオグランディスと似たフロントマスクへフェイスリフト、両側スライドドアの追加といった改良で、「シャリオグランディスの2列シート版」的なポジションを目指すも、初代の最盛期は取り戻せず、2003年1月に販売終了。
ライバルがまだ少なかった頃は「何にでも使えるMPV(マルチパーパスビークル:多用途車)」として優れていたものの、ライバル車がそれぞれの持ち味、個性を伸ばしてくると、かえって何に使っても中途半端と思われたのかもしれません。
少なくとも当時は、「超ロングスライドシートとスライドドアというRVRの個性」が、3列シートミニバンやSUVほど評価されなかったのは確かで、今こそ認められそうなコンセプトですから、EV時代に復活すると面白そうではありますが…。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...