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ステーションワゴンとは?特徴や代表車種&ミニバンとの違い
ステーションワゴンはセダンの運動性能と快適性に、高い積載性を有した車です。ステーションワゴンの特徴や代表車種、同じく積載性に優れるミニバンとの違いを解説します。
目次
ステーションワゴンとは?
ステーションワゴンの特徴は、キャビンと一体になった大きな荷台。セダンの屋根を延長した2ボックス形状のステーションワゴンは、セダンの運動性能と快適性に加え、長い荷物も積み込める積載性能を追加した万能車です。
同じステーションワゴンボディでも、メーカーによって呼び名は異なります。「ステーションワゴン(SW)」を筆頭に、「ツーリング(ツアラー)」「エステート」「ブレーク」「アバント」「バリアント」などの各メーカー独自の哲学を込めた呼び名が用いられます。
ステーションワゴンの起源は、駅から駅へと人や荷物を運んで移動するための駅馬車。長い歴史のなかでさまざまな人や荷物を運びながら進化し、現在のようなステーションワゴンの形になりました。
運動性と積載性のバランスに優れるステーションワゴン
ステーションワゴンのメリットは、運動性と積載性、快適性のバランスに優れる点です。キャビンと一体になった大容量のラゲッジスペースを備えるため、大きな荷物はもちろん、リアシートを倒せば長い荷物も積むこともできます。車種によっては、人が横になるに十分なスペースを確保しているため、長距離移動をしながらの車中泊も可能です。
また、ミニバンに比べてはるかにルーフが低いため、低重心による安定したコーナリング性能が持ち味。高い運動性能を発揮しながら、たくさんの荷物を積んで快適な走りが可能なステーションワゴンは、長距離を快適に旅するツーリングカーとして最適です。
国産ステーションワゴンの特徴と代表車
国産ステーションワゴンの特徴は、コンパクトセダンをベースとした扱いやすいボディサイズが特徴です。マツダ アテンザやスバル レガシィのように大型ステーションワゴンは存在するものの、ターゲットはおもに海外市場。短距離走行が中心になる日本ではステーションワゴンのメリットが活かしづらく、SUVやミニバンへと需要が移っているのが実情です。
トヨタ カローラツーリング
カローラツーリングは、カローラフィールダーの実質的な後継車。通算12代目のカローラをベースとするステーションワゴンです。シルエットを一新し、スポーティで低重心な印象に。
スバル レヴォーグ
かつてステーションワゴンブームを巻き起こしたスバル2代目レガシィ ツーリングワゴンの実質的な後継にあたるコンパクト・ステーションワゴンがスバル レヴォーグ。1.6Lと2.0Lの水平対向4気筒直噴DOHCターボエンジンを搭載し、2.0Lエンジン搭載グレードの方は300PSを発揮する快速ステーションワゴンです。
マツダ6 ワゴン
マツダのフラッグシップモデル「マツダ6」のステーションワゴンです。エレガントな内外装を備え、エンジンは滑らかに回る2.0Lと2.5Lのガソリンエンジンと、厚いトルクで長距離移動を楽々こなす2.2Lディーゼルエンジンをラインナップします。
スバル レガシィ アウトバック
スバル レガシィは、海外市場を意識して大型化を続けるとともにツーリングワゴングレードが消滅しました。現在はセダンのB4と、ワゴンとSUVのクロスオーバーであるアウトバックがラインナップ。高められた車高と、シンメトリカルAWDが相まって高い走破性を発揮します。
ドイツ御三家ステーションワゴン特徴と代表車
たくさんの荷物を積んで長距離移動をすることが多いヨーロッパでは、運動性能と積載性のバランスに優れるステーションワゴンが根強い人気です。
世界的なSUVブームにもかわらず、ヨーロッパ圏ではステーションワゴンのシェアは一定数を守り続けています。
とくに国間の長大な山岳道路をハイスピードで渡るには優れた運動性能が必要であり、ドイツ御三家のメルセデス・ベンツ、BMW、アウディはコンパクトクラスとミドルクラスのセダンをベースとしたステーションワゴンを広くラインナップしています。
メルセデス・ベンツ Cクラス ステーションワゴン
セダンとともに、ステーションワゴンにおいても、世界中の車からベンチマークとして設定されるメルセデス・ベンツ。メルセデス・ベンツ C200 ステーションワゴンはダウンサイジングターボとマイルドハイブリッドシステムにより、排気量が1.5Lまで縮小されています。
BMW 3シリーズ ツーリング
BMW 3シリーズの特徴は、スポーツセダンとして世界屈指の優れたハンドリング。ステーションワゴンであるBMW 3シリーズ ツーリングにも、ワゴンボディとは思えないほどシャープなハンドリングが与えられます。トップグレードのエンジンにはBMWの伝統であるストレート6が設定されています。
アウディ A4アバント
アウディ A4と、アウディ A6のステーションワゴンには「アバント」のネーミングがつけられます。アウディのプレミアム感を備えながら軽快に走るスポーティなモデルです。
ミニバンとステーションワゴン
現在、自動車販売台数の多くを占めるミニバンとステーションワゴン。どちらも大人数の乗車定員と大積載量を誇る人気の高いカテゴリーですが、ミニバン風のステーションワゴンがあったり、ステーションワゴン風のミニバンがあったりと、その違いは曖昧です。
バンは商用車(貨物車)、ワゴンは乗用車
「バン」とは、「屋根付きの車」という意味の「キャラバン(Caravan)」を短縮したもので、その始まりはトラックの荷台に積んだ荷物を風雨から守るために屋根をつけた車両。貨物車を指すため、一般的には人が乗るようには設計されません。
一方の「ワゴン」は「車輪の付いた馬車の荷台」がその語源です。荷物を運ぶ商用バンの荷室の一部を座席化して定員数を増やした車がワゴンとされ、乗用性能と積載性能を確保してあればその形状は問いません。
しかし、今や「ミニバン」は乗用が主な使用用途となっています。対して、「ステーションワゴン」と同形状の「商用ライトバン」が存在したりと、それぞれの定義は非常に曖昧です。
バンについて詳しくはこちら
家庭用のバンがミニバン
商用目的に造られた「バン」に座席を取り付け、一般家庭用の乗用車として改装したのがミニバンの原型です。現在では乗用性重視のミニバンを前提に開発され、商用バンと共通ボディとして使われるケースも珍しくなくなりました。
多くのミニバンは、3列シートを備えた6名以上の乗車定員を備え、頭上空間を広く確保するため全高の大きいボディが採用されます。
そのなかでも、完全箱型の1BOX形状のミニバンは荷室容量を重視した商用車ベース。安全基準の改正により生まれた、前席前にクラッシャブルゾーンを設けた1.5BOX形状のミニバンは乗用車ベースと判断することができます。
ちなみに、ミニという割に全幅1.8mを超える大柄なものまである「ミニバン」という名前は、アメリカにおけるフルサイズバンと比較して付けられた名前です。日本ではサイズにより「S(スモール)クラスミニバン」「M(ミディアム)クラスミニバン」「L(ラージ)クラスミニバン」と細分化されます。
【もっと詳しく】1BOXカーと1.5BOXカーとは
1BOXカーは、商用車をベースとして開発された初期のミニバンで多くみられた形状です。ボンネットがない完全箱型ボディが特徴です。運転席とエンジンを車の前端に追いやることで、スペース確保を最優先として造られています。
人よりも荷室を優先に設計されるため、運転者は窮屈な運転姿勢をとらされる場合があります。また、座席下にあるエンジンからは常に音と振動が伝わってくるため、乗員に対して快適とは言えない設計といえます。
メリット
- 全長に対して、室内空間を広く取ることができる
デメリット
- 前席の足元スベースにゆとりがない
- エンジンの音と振動が室内に入り込みやすくなる
1.5BOXカーとは、見かけは1BOXカーながら車体前部にエンジンを収める短いボンネットがある車のことです。エンジンルームと乗車スペースが隔離された2BOX形状のステーションワゴンと比べ、ボンネット長が半分ほどであることから1.5BOXカーと呼ばれます。
エンジンルームがあることで前面衝突時のクラッシャブルゾーンとして機能。またフロント側のボディ剛性を確保しやすい点から走行安定性にも貢献します。乗員の安全性と室内空間の確保をバランスさせた近年主流のボディ形状です。
既存のFF車のパワートレインを流用することも容易でコストダウンにもつながるため、1.5BOX形状のミニバンはFFレイアウトが主流になっています。
メリット
- エンジンと室内空間を隔離することで快適性を確保
- 前面衝突時の乗員の安全性を確保
- 運転席のドライビングボジション確保が容易
- パワートレイン流用によりコストダウンに貢献
- 1BOXに対してフロントまわりの剛性が高く、安定性を確保しやすい
デメリット
- 1BOXに比べ室内長が短くなる
- FFの場合、積載時のトラクション性能が低下
1BOXカー、1.5BOXについて詳しくはこちら
全高が低いワゴンがステーションワゴン
「ステーションワゴン」とは全高が小さいワゴン車を指します。
多くの場合、セダンのルーフを車体後端まで延長しハッチバックとすることで「ステーションワゴン」として販売されますが、「ワゴン」はもともと商用バンをベースにつくられたため、1BOXカーが主流といえます。「ワゴン」とはいいつつも、「バン」から派生した「ワゴン」とは別の成り立ちです。
また、ステーションワゴンは、イギリスをはじめとする欧州で「区画・屋敷」を意味する「エステート」と呼ばれることもあります。
ワゴンについて詳しくはこちら
ミニバンとステーションワゴンの違いは乗員数とドアタイプ
ミニバンとステーションワゴンの違いは、全高だけとは言い切れません。全高の小さいミニバンもあれば、背高なステーションワゴンも登場しているからです。
現行のラインナップでは、おおむね乗員数(シート数)とドア形状でその違いを分けることができます。
スライドドアで6人乗り以上ならミニバン
スライドドアとハイルーフを採用する6人乗り以上の車はミニバンと定義できます。
多人数が広く快適に過ごせる室内空間と、後部座席の乗降性を確保するために、ミニバンには主にスライドドアが採用されるのが一般的です。背高なミニバンのリアドアがヒンジドアでは、重く取り回しが悪くなるうえ、開口面積も確保できない点からスライドドアの方がはるかに使い勝手がよいといえるでしょう。
ただし、ミニバンの快適性能や積載性能に特化させるために特別仕様のミニバンが例外として存在します。
例えばホンダ フリードは、スライドレールを採用する3列シートの7人乗りですが、フリードをベース車とする「ホンダ フリード+」は、ラゲッジスペースを確保するために5人乗りとなっています。
また「トヨタ アルファード ロイヤルラウンジ」は、大柄なボディを4人乗りとすることで、上質な室内空間を提供するグレードです。
これらの車もベースがミニバンである以上、やはりミニバンとして定義されるべきでしょう。
スライドドアなしの5人乗りならステーションワゴン
5人乗りでヒンジタイプドアを採用するロールーフの車はステーションワゴンと定義できます。快適性能と積載性能に加え低重心による運動性能も重要な要素であるステーションワゴンに、大きく重いスライドドアを採用しては、そのよさをスポイルしてしまうでしょう。
ホンダ ジェイドのようにヒンジドアでも3列シート6人乗りの車がありますが、あくまでロールーフでヒンジタイプのドアを採用するため、これらはステーションワゴンとして扱われます。
【まとめ】ステーションワゴンもニーズを反映させて進化した
2000年前後から注目されはじめたミニバンと、その陰に隠れるようになったステーションワゴンは、それぞれの利点と欠点を補いつつ、競いあうように進化を続けてきました。
その結果、一時はミニバンとステーションワゴン両方の要素をもつモデルが販売されていましたが、現在ではユーザーニーズの絞り込みとラインナップ縮小を進める各メーカーによって、以前よりも「ミニバン」と「ステーションワゴン」のすみ分けが明確になってきています。
ステーションワゴンは、大ヒットを記録したスバル レガシィ ツーリングワゴンの後釜を、一回りコンパクトなスバル レヴォーグが引き継ぎました。同じく、トヨタ カローラフィールダーやホンダ シャトルもコンパクトカーをベースとしたサイズダウンを敢行しています。
かつての高性能ステーションワゴンの存在はクロスオーバーSUVに求められるようになり、メーカーの車両開発競争の主戦場はクロスオーバーSUVへと移行しました。
これまでユーザーニーズを追い求め、進化し続けてきたミニバンとステーションワゴンのパッケージングは円熟期に入ったといえるでしょう。つまり、現在のミニバンとステーションワゴンがもっともバランスの優れた形であるということです。
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【トヨタのステーションワゴン】新車で買えるのは1車種のみ!
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...