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AWDとは?4WDと何が違う?2つの表現があるのはなぜ?仕組みとメリット・デメリット
AWDとは?

装着されている車輪全てが駆動する車両のこと
AWD(All Wheel Drive)は装着されている車輪全てが駆動する車両を表す表現です。全輪駆動とも呼ばれています。
一般的な四輪自動車で四輪全てが駆動する車両(いわゆる4WD)はAWDに該当しますが、前輪だけが駆動する前輪駆動車(FWD)や、後輪だけが駆動する後輪駆動車(RWD)はAWDに該当しません。
AWDと4WDの違いは?
AWDと4WDの違いは、AWDは車輪が全て駆動することを表すのに対して、4WDは四輪が駆動する車両を言い表していることです。
仮に、車輪が6本ある自動車で駆動輪は4本であれば、車輪全てが駆動していないのでそれはAWDではなく4WDとなります。
とはいえ、街中で見かける自動車のほとんどは四輪であることを考えると、AWD=4WDと理解している人が大多数を占めるのではないでしょうか。
AWDのメリット
前輪駆動や後輪駆動とは異なり車輪全てが駆動するAWDは、当然ながら独自のメリットを備えています。ここでは一般的な四輪自動車を例に、メリットを紹介します。
メリットその1:構造的にトラクションに優れる
1つ目のメリットは構造的にトラクションに優れていることです。AWDの自動車では四輪全てが駆動するので、前輪駆動や後輪駆動に比べてより多くのトラクションを路面へ伝えられます。
メリットその2:駆動力を分散できる
2つ目のメリットは駆動力を四輪に分散できることです。前輪駆動車と後輪駆動車は構造的にエンジンパワーを前輪あるいは後輪のどちらか一方で受け止めるため、タイヤのグリップ限界を超えやすくなります(ホイールスピンする)。
その点、AWDの自動車であればエンジンパワーを駆動輪全てに分散できるので、四輪駆動車ならエンジンパワーをタイヤ4本で路面へ伝えられます。こうすることでホイールスピンによるトラクションロスを減らし、余すことなくトラクションを路面へ伝え、より気持ちよく車を走らせられるというわけです。
実際、スーパーカーをはじめとする高出力なパワートレインが搭載された車両で、駆動方式が四輪駆動(AWD)のものは多くあります。
メリットその3:低摩擦路面での安定感が高い

メリット3つ目は低摩擦路面での安定感の高さです。低摩擦路面というのは濡れた路面や雪の積もった路面などのようにタイヤがグリップしにくい路面のことで、このような路面でのAWDの安定感は前輪駆動車や後輪駆動車と比べて基本的に高くなっています。
実際、雪国に訪れると4WDの車両を見かけやすいですし、一部車種(四輪駆動車)が何故か北海道で多数販売されているということも。
低摩擦路面での高い安定感の要因の1つは、先ほど紹介したように駆動力を分散することでタイヤのグリップを余すことなく使って、より多くのトラクションを伝えられることです。
また、低路面では敢えてアクセルを踏んでトラクションをかけた状態にすることで安定して走れるということもあります。
AWDのデメリット
前輪駆動車や後輪駆動車と比べると、AWDのデメリットとして次の要素が挙げられます。主要なデメリットを見てみましょう。
デメリットその1:車両重量が重くなる
1つのエンジンで前後の車輪を全て駆動させる構造が求められるので部品点数が多くなり、車両重量が重くなります。実際に同車種のFWD仕様とAWD(四輪駆動車)仕様を比較すると、AWDがより重たい傾向にある通りです。
また、車両重量が重くなれば当然燃費も悪化します。これも上記と同様にカタログ燃費を比較すると明らかです。
デメリットその2:部品点数が多い(整備箇所が多い&メンテナンス費用が嵩む)
デメリットその1で述べたように部品点数が増加するだけでなく、その部品のメンテナンスにかかる費用と手間も増えます。壊れた時の修理代や油脂類のメンテナンスなどです。特に駆動系の部品の価格は高いので、メンテナンスを怠ると高額出費となりかねません。
デメリットその3:アンダーステア傾向
AWDはアンダーステア傾向になることも知られています。アンダーステアはステアリングを切っているにも関わらず車が外に膨らむ(フロントタイヤが滑る)現象で、前輪駆動車でも起きやすいと言われています。
しかし、AWDは後輪も駆動しているので、前輪駆動車ほどアンダーステアの影響は大きくありません。これは、リアが流れてオーバーステアになりやすい後輪駆動車の特性も備えているからです。
デメリットその4:タイヤの減りが早い
4本のタイヤ全てが駆動することもあり、タイヤの減りは他の駆動方式よりも早いです。前後左右のタイヤの外径に差がありすぎると駆動系に必要以上に負担がかかることがあり、それを考慮するとタイヤメンテナンスがシビアになります。
前輪駆動車や後輪駆動車はその反面、少なくとも駆動輪のタイヤ外径を合わせておけば外径さによる大きなトラブルが怒るリスクは低いので安心です(なお何か特別な理由がない限り、基本的には前後タイヤサイズを揃えるようにしましょう)。
四輪駆動車と他の駆動方式の構造的な違い
四輪駆動車とそれ以外の駆動方式の間には、具体的にどのような構造的違いがあるのでしょうか。
トランスファーの有無
トランスファーは四輪駆動車に装着されている主要部品の1つです。トランスミッションの駆動を別の軸へ伝える役割を果たしています。
四輪駆動車はFF車(前輪駆動車)ベースとFR車(後輪駆動車)ベースに分けられるのですが、FF車ベースのトランスファーはミッションの横方向の回転を縦方向に変換してプロペラシャフトを回転させます。そのプロペラシャフトがリア・でファレンシャルを動かし、リアアクスルが連動して後輪を駆動させるという仕組みです。
これに対してFR車ベースの場合、トランスファーとフロントプロペラシャフトがトランスミッションを利用して前輪に動力を伝える構造となっています。
エンジン出力軸を基準に見ると、FR車ベースは縦置きエンジン、FF車ベースは横置きエンジンになっていることにも気がつきます。
つまり、FF車ベースの4WDにおけるトランスファーは横方向のエンジン出力軸の回転を縦軸にも使えるようにすること、そしてFR車ベースのトランスファーは縦方向のエンジン出力軸の回転を横方向にも使えるようにする役割を担っているのです。
日本国内だけでなく海外にも熱烈なファンを持つスズキ・ジムニーは、FR車ベースの4WDです。車体下部を除くとFR車特有の縦に長いトランスミッションケースを確認できます。
トランスファーとリアデフのオイル交換が必要になる
トランスファーとリア・デファレンシャルのギアオイルを定期的に交換する必要があります。交換頻度は車種や車両の程度によりけりですので、DIYで交換される方は一度サービスマニュアル等で確認しましょう。
これらに使用されるギアオイルの規格ですが、メーカー純正品はAPI規格のGL-5がほとんどです。エンジンオイルとは異なり、ケースから溢れるくらいまで入れるのが一般的となっています。
6輪以上の自動車の駆動方式はどうなっている?

6輪以上ある車両の多くは特殊な仕様
自家用乗用車の多くは四輪ですが、視野を広げると6輪以上の車輪が装着されている自動車が存在することに気がつきます。
メルセデスAMG G63 6×6はその代表例です。車種名称に6×6とあるように、6つの車輪全てが駆動する仕様となっています。全て車輪が駆動するのでこれもAWDです(敢えて数字で表現すると6WD)。軍用車をベースに製造されたこの六輪駆動車の価格は8,000万円で、かなり高価であることがわかります。
さらに、AVTOROSシャーマン8×8という八輪駆動車も存在します。この車両は必要に応じて四輪駆動と八輪駆動の切り替えが可能です。
6輪以上の車両の車輪数と駆動輪の見方
トラックメーカーのホームページなどを見ると、「6×4」や「8×4」などの表記を見ることがあります。これは前の数字が車輪数を、後ろの数字が駆動輪の数を示しています。例えば6×4と表記されている車両は6本の車輪を持ち4つの車輪を駆動させる仕様です。別の3軸で4つのタイヤを駆動する仕様とも言えます。
大型トラックには車輪が多く装着されている

日本国内で見かける車輪数6輪以上の自動車と聞いて真っ先に思い浮かぶのは大型トラックです。街中でざっくり見るだけでも、車輪が6つあるものや8つあるものを確認できます。
メーカーのホームページを参考にすると、6×4、6×2、8×4などが多く、大型トラックのAWDというのはほとんどないようです。
AWDと4WDの2つの表現があるのは何故?
四輪駆動車は日本において4WDと表現するされることに馴染みがありますが、国外を見てみると4WDよりもAWDのほうが浸透しているようです。これは先にも紹介したように6輪自動車や8輪自動車の存在があると考えられます。
日本国内ではじめて四輪駆動車を生み出したのはスバルで、そのスバルが自社の四輪自動車をシンメトリカルAWDと呼んでいるように、日本国内でもAWDの表現が以前より普及していることは明らかです。
ホイール・インセットや馬力表示の国際化なども合わせて考えると、以前よりも世界基準が意識されていると言えるのではないでしょうか。
スバルのシンメトリカルAWDの仕組みやメリットについて詳しくはコチラ!
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