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それは懐かしさを感じる名車…『至高のSTiバージョン』こと22BとS20、初代スバル インプレッサ WRX STI【推し車】

興味を抱くというより、懐かしさを感じる名車

1990年代のWRC日本車黄金時代を支えた1台だった ©STI

実験的にAIを運用しているMOBY編集部が、「2020年時点で35~50歳のクルマ好き男性が強く興味を抱くクルマは?」とAIに聞いてみたところ、出てきた回答のひとつが初代スバル インプレッサ WRX STI(GC8型)です。

実際にその全盛期と、ランエボに追い抜かれての凋落期を見てきた筆者からすると「興味があるというより、昔を懐かしむクルマかな?」という印象ですが、実際その全盛期たる1990年代後半の盛り上がりぶりがどんなものだったか、思い出してみます。

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本日の在庫数 47台
平均価格 237万円
支払総額 55~580万円

小型軽量ハイパワー4WDの隆盛をリードした傑作

1994年、STI(スバルテクニカインターナショナル)のコンプリートカー扱いで登場した最初のWRXバージョンSTi

あれはまだ筆者が大学生だった、25年以上前の話でしょうか。

東北地方とはいえ、太平洋岸で大した雪も降らない宮城県仙台市では珍しく、除雪も追いつかないほど大雪の中、行き交う車もほとんどない郊外の主要道をトボトボと歩いていると、遠くからシュワーン!という音とともに、カラーリングの派手な2台のマシンが迫ります。

普段はラリーかダートトライアルで走る競技車が、「犬も喜び庭駆け回り」といった勢いでしょうか、舞い上がる雪煙を引きずりながらすれ違ったマシンを目で追いながら、筆者は思わず「インプレッサWRXか…」とつぶやきました。

4WDターボってスゲーな!と思った筆者はその後ダイハツ ストーリアX4を買ってジムカーナを楽しみますが、モータースポーツから普通の街乗りまでよく見かけたのが初代インプレッサWRXのGC8型で、競技ベースのRAやSTIバージョンも当たり前のようにいました。

素性がいいベース車、初代インプレッサ

最初期の初代インプレッサセダンは、カローラやサニーより気高く、コロナやブルーバードよりスポーティなクルマだった

初代スバル インプレッサが登場したのは1992年、先代にあたる小型セダンのレオーネ(3代目)のうち、1.8リッターの上級グレードは1989年に初代レガシィが後継となり、残る1.6リッター車の廉価グレード後継が、インプレッサ。

セダンRSはWRC(世界ラリー選手権)で活躍、ツーリングワゴンはそれまで日本で「貧乏臭いライトバンの乗用登録仕様」として冷遇される事が多かったステーションワゴンブームを起こした初代レガシィの高級&高性能路線に対し、インプレッサはベーシック路線です。

ただし、レガシィ同様にエンジンを含め全てが新開発となったインプレッサは平凡な大衆向け小型セダンとして非常にポテンシャルが高く、レオーネの名残が残る初代レガシィより新しいデザインからも、より「新世代スバル」を感じさせる名車でした。

惜しいことにバブル後の経済急落期のデビュー、それもRVブームで4ドアセダンが売れなくなる時期でしたから、せっかくの高品質も正当に評価されたとはいえなかったものの、5ドアハッチバックを時流に合わせて「スポーツワゴン」と名付けると、これが大ヒット!

さらにライバルの三菱 ギャランVR-4同様、WRCのグループAマシンとしては大きく重すぎたレガシィRSの名機EJ20ターボをはじめとするパワートレーン一式を4ドアセダンに詰め込んだ高性能版「インプレッサWRX」は、小型4WDターボの傑作と歓迎されました。

ランエボに対抗した「STiバージョン」

セダンだけではなく、スポーツワゴンにもWRX STiバージョンを設定していたのは、当時のランエボにはない美点だった

「小型車へ格上マシンのパワートレーンを詰め込む」という手法は欧米では昔から定番、国産車でもカローラクーペへセリカ/カリーナの1.6リッターDOHCエンジンを詰め込んだ、初代トヨタ カローラレビン / スプリンタートレノ(TE27・1972年)という例が代表的。

「小型軽量ボディへ不釣り合いにパワフルなジャジャ馬」とされる事が多かったものの、ハイパワーをうまく受け止める4WDならその種のリスクはだいぶ軽減されます。

中にはブルーバードSSS-Rのパワートレーンを詰め込んだものの、小さすぎて冷却性能やタイヤサイズの問題を抱えて結果を出せなかった(というより、出す前に日産本体の経営悪化で撤退した)パルサーGTi-Rの例はありましたが、インプレッサWRXは成功例でした。

ただし同期のライバル、三菱 ランサーエボリューションに対しては「普通にスゴイけど特別感という意味でイマイチ」という印象を受けたのも事実で、いわば「スバル版インプレッサWRXエボリューション」として1994年に登場したのがWRX STiバージョンです(※)。

(※STi─スバルテクニカインターナショナル─の製品名は現在「STI」ですが、2005年4月までは最後が小文字の「STi」)

当初は持ち込み登録のSTiコンプリートカーとしてセダン/ワゴンともに登場(競技ベース車のRAはセダンのみ)、バージョンIII(1996年)以降は正式にカタログモデル化され、インプレッサリトナをベースとした2ドアクーペ版、TypeR STiバージョン(1997年)も追加。

単にWRXへSTiの外装パーツを組み込んだドレスアップバージョンではなく、エンジンやデフなど動力系、駆動系、ブレーキなど広範に渡り強化を受けました。

ランエボに対するランサーGSR/RS(1.8リッターターボ)ほど差がないとはいえ、STiバージョン登場以降はこれが実質初代インプレッサの代表作、イメージリーダーとしてブランドを牽引し、廉価グレードのSTi風ドレスアップ特別仕様車(C’zスポルト)も存在します。

至高のSTiバージョン、22BとS201

インプレッサ22B STiバージョン

今や3000万円オーバーでも手に入るかわからない、インプレッサ22B STiバージョン

2000年までと比較的長く作られた初代インプレッサWRX STiバージョンですが、その頂点に立つモデルがスバルのWRCマニュファクチャラーズタイトル3連覇&スバル誕生(スバル360発売)40周年を記念した特別仕様車、「22B」です。

インプレッサリトナをベースにしたところまではTypeRバージョンSTiと同じですが、WRカーばりにワイドなブリスターフェンダーで武装し、エンジンもEJ20ターボを2.2リッター化したEJ22ターボを搭載。

400台限定、500万円で発売したものの瞬く間に完売する人気で、今なら中古車で3,000万円以上のプライスがつく「資産化」してしまい、もはや幻の逸品です。

S201

インプレッサ S201 ©STI

もうひとつ特別なのが1998年に発売されたS201で、スバルの正式カタログモデルではないSTiコンプリートカー、つまり自動車工業会による280馬力自主規制に縛られない(R33スカイラインのニスモ400Rと同じ)立場を活かし、EJ20ターボを300馬力までチューン。

各部の強化や内外装を含む専用パーツの採用によって、22Bを除けば「最後にして最強のインプレッサWRX STiバージョン」となっています。

グラベル / スノーも強力だが、ターマックで本領発揮

ジムカーナでも多用されたクーペWRX TypeRバージョンSTi

4WDターボとしては同時期のランサーエボリューション同様、WRCや国内ラリー、ダートトライアルで活躍したインプレッサWRX STiバージョンですが、初期のランエボにはない強力な武器がインプレッサにはありました。

それがモデル途中から採用されたDCCD(ドライバーズコントロールデフ)で、ドライバーの手元でセンターデフのロック率を変更できるほか、サイドブレーキ(パーキングブレーキ)を引けばセンターデフがフリーになります。

オール・ターマック(舗装路)のジムカーナ競技に付き物のサイドターン(※)が容易になるほか、ダートトライアルやラリーでもドリフトのきっかけからジムカーナ同様のスピンターンまで、使いようによってはランエボよりかなり有利でした。

(※サイドブレーキで後輪のみ意図的にロックしてスピンターンさせる事により、極端に旋回半径の小さいコーナリングを可能にする大技)

ランエボもエボVのワイドトレッド化や、エボVIIのDCCD採用など改良を続け、低中回転からの図太いトルクによる加速性能で巻き返したのに対し、インプレッサは軽快な旋回性能で対抗する一方、ガラスのミッション(※)と呼ばれたMTの耐久性がネックです。

(※基本設計が古いため、途中でアレコレ強化されたとはいえ2代目GDBで根本的に変わるまでミッショントラブルが多発)

「シンメトリカルAWD」がもっともわかりやすかった傑作

乗ってブン回して振り回して最高に楽しかった、WRX TypeRA STiバージョンIII

筆者も歴代スバル車は何台か試乗していますが、その中で最高の思い出は初代GC8(セダン)のインプレッサWRX typeRA STiバージョンIIIでした。

クローズドコースのフリー走行で存分に攻めさせてもらいましたが、本来1.5リッター級の小型軽量ボディは、ショートストローク高回転型のEJ20ターボが気持ちよく吹け上がると抵抗なくスーッと加速し、ランエボのような重たいボディの強引な加速感とは異なります。

さらにコーナリングでノーズを向けるにも左右変わらず自由自在、後にスバルが売り文句とした低重心で左右対称の「シンメトリカルAWD」そのまんまの運動性能や加速性能は、GC8でもっとも明確に体感できました。

2代目…といってもWRX STiバージョンのGDBではなく、素のWRXで250馬力のGDAに試乗した時は「頑丈で剛性感も増したけど重くて、なんかランエボみたいになっちゃったな?」と思いましたが、GC8のSTiバージョンは爽快感でランエボと明確に差別化されています。

ただし、WRCで早々にWRカーになったせいか市販車は限定車22Bを除けばランエボV以降のようにワイドボディ化はされず、改造制限の厳しいモータースポーツカテゴリーでは太いタイヤを履けなかったため、2000年代以降は急速に数を減らしました。

次のGDBになるとランエボの急激な進化についていけなくなってデザインも不評、3代目GRBでは何を思ったか5ドアハッチバック化(4ドアのGVBも後に追加)と、2代目以降のインプレッサWRX STIバージョンは「国産4WDターボの主力」から滑り落ちます。

時代の変化といえば仕方ない話ですが、できれば初代GC8の「軽快にしてパワフルで爽快」という感覚を、今一度味わってみたいものです。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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