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クラッチの意味と仕組み|なぜAT車にはないの?寿命や交換費用と種類まとめ

車のクラッチとは?仕組みと役割

クラッチ
©somchai20162516/stock.adobe.com

言葉の意味から解説すると、クラッチ(英語:Clutch)とは「回転を伝達・遮断する装置」のこととなります。クラッチは、自動車だけでなく、さまざまな産業機械に使用されています。つまりはエンジンやモーターから出力されたパワーとタイヤまでの間の中継基地的な役割を担っています。

クラッチの仕組み

自動車で、エンジンからタイヤまでの回転力(駆動力)の伝達の仕組みを簡易的に説明すると、エンジンで発生したパワーをクラッチを通してミッションに伝え、タイヤが回るという形です。車は走ったり止まったりしますので、止まるときにはエンジンの回転力(駆動力)をタイヤに伝わらないようにする必要があります。

クラッチが無くともトランスミッション(変速機)を無理やりニュートラルに入れるなどすれば、駆動力の伝達の有無は調整できますが、エンジンが回りっぱなしの状態でギアを変えるのは困難を極めます。そこで、トランスミッションとエンジンの間にクラッチを介する仕組みにすることで、駆動力を伝えたり切ったりすることで、スムーズにギアを変えることができるようになるわけです。

クラッチの役割

「クラッチ」といえば、MT車(マニュアル車)特有のものと思われる方が多いと思いますが、AT車(オートマ車)にも機構的にはクラッチに相当するものが存在します。

クラッチの意味を車に限定して説明するなら、「エンジンの回転を伝達したり遮断したりする装置」となります。

「クラッチを切る」とは?わかりやすく言うと?

運転する女性
©Yuzuru Gima/stock.adobe.com

MT車の場合、ブレーキペダルの左側にクラッチペダルがあるため、ペダルは3つ存在します。

停車する時や変速時にクラッチペダルを操作して、エンジンの動力をタイヤに伝わらないよう遮断しますが、この遮断することを「クラッチを切る」と言います。クラッチを切るためには、クラッチペダルを踏み込みます。

また、走行する時はエンジンの動力をタイヤまで伝達しますが、伝達することを「クラッチをつなげる」と言います。クラッチペダルから足を離して、クラッチをつなげます。

マニュアル車(MT車)のクラッチの役割と意味

クラッチ
©phantom1311/stock.adobe.com

MT車のクラッチを踏むと、エンジンの回転力がトランスミッション、タイヤから切り離された状態になります。アクセルを踏んでも車は当然走らず、エンジンは空ぶかしにしなります。

踏んでるクラッチペダルを少し緩めて「半クラッチ」の状態にすると、クラッチの機構部分にある「クラッチ板」が擦れるようにして回り、徐々にエンジンの回転力がトランスミッションへ伝わるようになります。

この半クラッチは、主に発進時に使う技術です。マニュアル車(MT車)の免許を取るとき、自動車学校の技能教習で最初の難関とよく言われます。

クラッチを徐々につなげることができれば、急な動力伝達によるショックやエンストも起こらず、スムーズな運転が可能になります。

【豆知識】クラッチの種類

ドッグクラッチ

噛み合いクラッチ(確動クラッチとも呼ばれる)のうちの1つで、クラッチの形が犬の歯に似ていることからドッグという名前の由来になっています。

向かい合わせの歯形が噛み合って回転する仕組みなので、滑りが起こることがなくトルク伝達率が高いことがメリット言えます。爪の断面形状は矩形や三角形など複数あります。

一方、伝達トルクを調整できなかったり双方の回転速度に差が生じてしまうとうまく噛み合わなくなってしまうという弱点もあります。

摩擦クラッチ

現在、一般的な車に使われているのが、摩擦クラッチです。摩擦クラッチとは、円盤状、あるいは円筒形の部品を装着させ、接触したときの摩擦によって回転数を同調させる仕組みです。

ディスクの形状の呼び方は、円盤形状のものをディスククラッチ、円筒形のものをドラムクラッチ、円錐形状のものを円錐クラッチと言います。

遠心クラッチ

摩擦クラッチの1つで、その名の通り遠心力によって圧着されることで動力を伝達します。バイクのスクーターのほかにチェーンソーにも使われています。

クラッチシュー側の回転数が上がると遠心力で自動的にクラッチハウジングに圧着され、遠心力が一定以下に弱まると圧着されたクラッチは、クラッチスプリングの力によって閉じられてクラッチを切った状態に戻ります。

スプリングを硬くすればクラッチミートは遅くなり、スプリングを柔らかくすればクラッチミートは早くなるという仕組みです。

強化クラッチ

走行タイムやスピードを競うモータースポーツ向けの車への改造では、純正品から強化クラッチへ変えることがあります。一般的な走行では、発進時に半クラッチを使ってスムーズに加速することがほとんどですが、スポーツ走行となると、半クラッチは、エンジンの回転力、駆動力をロスさせ、加速の効率を下げる大きな要因となります。

このため、できるだけエンジンの力をロスさせないよう、クラッチディスクの摩擦力を高めるため、素材を変えたり、形状を変えたりする「強化クラッチ」に換装します。

また、エンジンを改造してパワーを増加させると、クラッチそのものが、そのパワーに負けて、クラッチ滑りの状態を引き起こしやすくさせてしまいます。これを解消するためにも、強化クラッチが採用されます。

クラッチとトランスミッションの仕組みと役割をわかりやすく解説した動画

この動画では、マニュアル車において、シフトチェンジの前にクラッチを踏む必要性について詳しく説明されています。

AT車(オートマ車)にクラッチはない?

ペダル
©NorGal/stock.adobe.com

AT車にはクラッチが無いと思っている方も多いですが、クラッチペダルが存在しないだけで、クラッチと同じ役割を果たす「トルクコンバーター」という部品が装備されています。

正確に言うとトルクコンバーターは「流体トルクコンバーター」と言い、オイルの流れを利用する仕組みです。

トルクコンバーターとは?構造や仕組みについて解説!

トルクコンバーターの仕組みをわかりやすく解説した動画

トルクコンバーターはエンジン側にある羽根がオイルを回し、トランスミッション側の羽根を回します。エンジンが回り出すと、徐々にトルクコンバーター内のオイルが回り始め、MT車の半クラッチと同じ効果となります。

クラッチの寿命と交換時期・費用

クラッチの寿命

クラッチディスク
©ljiljaz/stock.adobe.com

クラッチの寿命は、車種の違いと運転の仕方、走る道路の状況で大きく異なってきます。大衆車よりスポーツ車の方がクラッチの寿命は短い傾向はありますが、これも乗り方で大きく変わってきます。

マニュアル車を運転するとき、半クラッチをどう使うのかが大きなポイントとなります。上手に半クラッチを使って運転すれば、スムーズに加速できますし、車への衝撃も軽くなり、寿命が延びます。停止が多い都市部ばかり走るのと、高速ばかり走るのとでは、同じ運転技術でもってしても、高速ばかり走る方がクラッチの寿命は長くなります。

あくまで目安とはなりますが、国産車でのクラッチ交換までの走行距離は、5万km~8万kmとなるでしょう。中には、4万kmに満たないのにクラッチが滑り出すケース、10万km超えても未交換というケースがあります。

クラッチの交換費用

費用
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クラッチの交換費用は、車種によって違いが出る他、どこで交換修理してもらうのかの違いで金額に差が出てきます。国産車の場合、部品代はどこで修理しても大差は出ない傾向にありますが、工賃はディーラーより民間整備工場の方が安い傾向で、都市より地方の方が安いといった傾向があります。

あくまで目安とはなりますが、クラッチ交換の費用の目安を一覧表にまとめてみましたので、参考になさってください。

クラッチ交換費用の目安

車種交換費用の目安
軽自動車50,000~80,000円
国産1,500cc以下の小型自動車50,000~85,000円
国産1,500cc~2,000ccの小型自動車75,000~135,000 円
国産2,000cc以上の普通自動車100,000~200,000円
輸入車1,500cc~2,000ccの小型自動車150,000~250,000円
輸入車2,000cc~3,000ccの普通自動車170,000~400,000円

クラッチ交換費用の傾向として以下の点が挙げられます。

  • FF車はFR車より1~2割高くなる
  • 4WDは1~2割高くなる
  • FFベースの4WD車はさらに1~2割高くなる
  • 輸入車は国産車の倍以上高くなることがある

あくまで目安として参考にしてみてください。

クラッチが滑る?「クラッチ滑り」とは

クラッチペダル
©noon@photo/stock.adobe.com

クラッチディスクが磨耗し寿命となると、クラッチペダルを奥まで踏み込んでも、半クラッチの状態のままとなってしまいます。この状態では、アクセルを踏んでエンジンの回転を上げても、クラッチが文字通り滑るだけで、タイヤに回転が伝わらず、スピードが出なくなります。

クラッチ滑りは、徐々に症状が進んでいきます。いつもよりクラッチの踏み込みが深くなるなどが、クラッチ滑りの前兆の1つです。

完全にクラッチが滑ると、クラッチが切れた状態と同じになりますので、車は進むことができなくなります。

クラッチから「キュー」と異音がするときは?

MTの車を運転していると「キュー」もしくは「キュキュッ」という異音が聞こえてきたことがありませんか?一概には言えませんが、もしかしたらレリーズベアリングのグリース切れ負が原因かもしれません。

普段街で車を走行しているときに聞こえる分にはそんなに神経質になる必要はありません。

しかし、高速道路などを使って長距離走行している際にクラッチペダルを踏むたびに聞こえる場合は早めに部品交換しましょう。

作業後はまだ音がしているようでしたが、翌日無音になりました。

どんな音がするかは、実際にこちらの動画で確認しもらったほうが良いかもしれません。レリーズシリンダーが原因だったのではないか?と言及されています。

また、車内のクラッチの根元あたりをグリスアップすると、音が鳴らなくなる場合もあるようですが、この動画では車外から手を加えているようです。

その他クラッチにまつわる用語も合わせて確認しよう

半クラッチとは

クラッチのつながった状態とクラッチが完全遮断された状態の中間に位置するのが半クラッチです。クラッチが完全にはつながっていない状態になります。

MT車を運転するには左足を使ったクラッチペダル操作が必要なのは周知の通りですが、特に半クラッチは停止状態にあるMT車を発進させるために不可欠です。

この時、ギアを入れた状態で半クラッチを使うことなくギアを繋ぐと、フライホイールの回転がクラッチディスクとの摩擦力によって止められてエンストしてしまいます。

動いているものを動かすよりも、止まっているものを動かす時のほうが大きい力を要することや、。

ダブルクラッチとは 

ダブルクラッチはMT車のシフトダウン時に使用する操作技術の1つです。シフトダウンを1回するためにクラッチペダルを2回踏むことがその名称に由来します。

ダブルクラッチのやり方を3速ギアから2速ギアへのシフトダウンで説明すると次の通りです。

  1. クラッチを切って3速からニュートラルに入れてらクラッチをつなぐ。
  2. アクセルを踏んで回転数を上げる(その速度での2速の回転数をイメージしながら)。
  3. もう一度クラッチを切って2速ギアへ変速する。

ダブルクラッチはシンクロメッシュへの負担の軽減や変速後の急激なエンジンブレーキ(シフトショック)を防ぐことができます。

基本的にほとんどのMT車のトランスミッションには、シンクロメッシュ機構が採用されているので、ダブルクラッチをせずともシフトダウンできるはず。シンクロメッシュが傷んでいてギアの入りが悪い時にゼブラゾーンを使うとギアが入りやすいことがあります。

断続クラッチとは 

断続クラッチはクラッチを切った状態と半クラッチの状態を交互に繰り返す操作です。

渋滞していない一般道路や高速道路の走行時のような速度域で断続クラッチを使うことはまずありません。駐車時や渋滞時、坂道発進時など停止〜発進・後退を繰り返す場面で活躍します。

低速域における速度の微調整には断続クラッチのテクニックがピッタリです。断続クラッチを特別意識せずとも、MT車の運転に慣れている人なら必要な場面でクラッチペダルを断続的に踏んでいることでしょう。

例えば後退駐車時に、半クラッチで車を動かしてからクラッチを切って惰性で動かす時などです。

強化クラッチとは

強化クラッチは動力伝達性能が強化されたクラッチ関連部品です。

圧着能力を高めるクラッチディスクやクラッチカバーの構成部品が装着されています。例えば、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングが高圧着力のものになっていたり、クラッチディスクの摺動面の材質がメタル材になっているなどです。

なお、純正や社外品に関係なく、クラッチ交換時にはクラッチディスク / クラッチカバー / レリーズベアリングをまとめて交換することが推奨されています。

クラッチオイル(クラッチフルード)とは?

【運転前に】マニュアル車の基礎知識をおさらい

執筆者プロフィール
MOBY編集部
MOBY編集部
新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...

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