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整備難民なぜ急増?車が故障してもどこに持って行けばいいか分からない人たち
最近急増中「整備難民」とは?
「整備難民」とは車が故障したにもかかわらず、どこへ修理に出せばいいのか分からない人たちを指します。
簡単な修理であればカーショップやガソリンスタンドなどで済んでしまううえ、格安車検が一般的に定着した昨今。定期的に点検をする整備工場やディーラーを決めなくても、車を維持することはできます。
そのため、車が故障した際にどこを頼ればいいか分からないという人が、近年急増しているのです。
「新車購入時から格安車検を受けている」「ちょっとしたトラブルならディーラーなどではなくカーショップなどで対応してもらっている」という人は、整備難民予備軍かもしれません。
整備難民予備軍が整備難民になるとき
整備難民、つまりどの整備工場へ持って行けばいいのか分からない状態になる場面は、大きく2つが考えられます。
- 急に重大な故障が判明した場合
- 年数経過により、ノーメンテナンスでは車検時に通らないと言われた場合
いずれも大掛かりな診断や整備が必要になるケースで、ガソリンスタンドやカーショップなどでは即日対応が難しい場合、どこで車を修理してもらえばよいか分からなくなってしまうでしょう。
格安車検やユーザー車検では対応してもらえない?
格安車検やユーザー車検は価格の安さとスピードをウリにしています。言い方を変えると、必要最低限の整備しか行わないことで、費用と時間を抑えているのです。
そのため、一般的な整備工場で行われている分解整備をしていない場合がほとんどです。
例えば、普通の車検整備ではブレーキフルードの交換作業を行います。しかし、この整備は車検で必ず行わなければならない整備ではないため、格安車検において省略しても何の問題もないのです。
トラックのベアリングへのグリスアップやミッションオイルの交換なども同様です。
現在の車は壊れにくいため、これらの部品の目安の交換時期を大幅に過ぎていた場合でも、車は問題なく走ることができます。それゆえに、そのまま何年も走り続け、本格的に故障や不具合の症状が現れた時にはすでに手遅れということも少なくありません。
格安車検をショップへ持ち込んでも、「重整備だから作業できない」と断られてしまい、整備難民になってしまうという背景があります。
整備難民を増やしている原因は?
整備難民や整備難民予備軍を増やしている原因として考えられるのは、カーライフや車との付き合い方の変化、日本人の経済状況の変化が挙げられるでしょう。
- 車の性能が上がり、故障しにくくなった
- 12ヶ月点検を定期的に実施しないといけないことを知らない、もしくは受けない習慣ができてしまった
- 新車購入時からずっと格安車検もしくはユーザー車検を受けている
- 日本国民の所得が減少傾向にあり、車に使うお金がない
車に興味がない人が増えているのも原因かも知れませんが、特に、国民の平均年収が下がり、車に使うお金がないという理由が最も重大な原因の一つではないかと思います。
「できるだけお金をかけず維持したい」という方や「12ヶ月点検ってなに?」「点検するだけなのにこんなに高いの?」など、点検が義務付けられていること自体知らない、もしくは整備料金が高いから受けないという方も多いのではないでしょうか。
格安車検がここまで普及したことを考えれば、いかに車の維持費を安くできるかという点に所有者の意識が向いていることが分かるでしょう。
7年目が運命の分かれ道!?工場に泣きつく整備難民も
点検をほとんどせず、格安車検を通し続けてきた車のユーザーが、さまざまな箇所の整備・修理が必要になるのは、新車から7年目(3回目)の車検のタイミングとも言われています。
この場合、格安車検ショップでは整備できず、ディーラーや民間の整備工場へ入庫せざるを得ないことも。しかし、例年受けている格安車検とは比べものにならないほど高い見積もりを出され、「できるだけ安くしてほしい」と泣きつくユーザーも多いといいます。
そう考えると、格安車検は費用をケチるためのものではなく、いつか来る重整備へ向けて貯金を作るためのものと考えたほうがよいかもしれませんね。
整備難民にならないための3つのポイント
行きつけのディーラーや整備工場を持つ
行きつけの場所はディーラーや整備工場でなくてもOKです。町の車屋さんと呼ばれる民間整備工場でも全く問題ありません。
カーショップやガソリンスタンドは工賃などを安くし、大量の車をさばいて初めて利益が出るビジネスモデルを取っているため、1台の車にかける時間は限られてしています。重整備や修理ができないケースがあるのは、そういったことが原因です。
また、毎回決まった場所と担当者に車を点検・整備してもらうことで、整備履歴が残せるというメリットもあります。整備工場では入庫した車の履歴を残しているため、過去のトラブルに起因する故障の場合でも、正確な診断をしてもらうことができます。
たかが診断、されど診断。「異常がなければヨシ!」と思おう
車のメンテナンスには、故障箇所の整備・修理だけでなく、「どこに異常があるのか」「どんな異常なのか」を調べる「診断」も含まれます。異音やチェックランプの原因は1箇所の不具合だけにとどまらないこともあるため、診断は整備する側にとってほぼ赤字となる作業です。
しかし、定期的に点検を受けることによってこうした異常にも気づきやすく、整備履歴が残っていると対策も練りやすくなります。なるべくお金をかけたくない気持ちはあれど、「異常がなければヨシ!」と考えることが大切です。
行きつけの整備工場であれば、こうした診断や困りごとの相談もしやすく、親身になってくれるでしょう。
定期的なメンテナンスをしっかり行う
定期的にしっかりとメンテナンスを行うことも、車をよい状態で維持するためには大切なことです。12ヶ月点検やディーラーで行っている半年点検を受けることで、突然のトラブルを大幅に回避できます。
以下のような項目において、自分で日常点検をしない、方法がわからないという人であればなおさら、プロの手による点検を受けるようにしましょう。
- 水やオイル周りの確認
- タイヤの確認
- 灯火類の確認
- ベルトの確認
自分の知らない部分に関してプロのアドバイスを聞き、定期的なメンテナンスを行うことで、車の年式が古くなった場合の故障を抑えることができます。
定期点検はカーショップやガソリンスタンドじゃダメなの?
カーショップやガソリンスタンドでも定期点検や車検を行っている場合がありますが、近くに全くないといった状況でなければ、なるべくディーラーや整備工場への入庫を推奨します。
また、近くにカーショップかガソリンスタンドしかない場合は、カーショップへの入庫を推奨します。理由としては、ガソリンスタンドの従業員は車に関して詳しくない人が多いからです。
ガソリンスタンドには整備士でないアルバイトスタッフも多く、整備の設備も充実していない店舗がほとんどです。対してカーショップは、カー用品の販売が主な目的ではあるものの、きちんとピットが設けられていますし、整備士資格を持ったプロも在籍しています。
車の維持にはお金がかかることを理解しておく
車は購入後も税金やガソリン代、任意保険料、整備費用など、思った以上に維持費がかかります。それを理解せずに車を購入すると、思った以上にお金がかかりメンテナンスをする費用が算出できないということになりかねません。
特に車検時は、税金や自賠責保険などの費用も強制的に払わなければならないため、費用も高額になりがち。その分、整備代を安くおさえるというユーザーや、そういった提案をしてくれるショップも珍しくありません。
最低限度の安全基準(保安基準)を満たしているとはいっても、万全の状態とはいえない車に乗り続けていれば事故のリスクも高まります。
事故を起こしてしまうとメンテナンス代以上の修理費用がかかりますし、人身事故を起こしてしまった場合の精神的・金銭的負担は計り知れません。
車を購入する際は維持費も算出して、金銭的に余裕を持ったカーライフを送ることが大切といえます。
整備難民を産んでしまう格安車検は悪なのか?
ここまで書くと、「格安車検が原因で整備難民が増えている」と言ってしまっているように聞こえてしまうかもしれません。格安車検はユーザーをだましている悪い車検方法なのでしょうか。
格安車検が普及したのは、「なるべく安い費用で車検を通したい」というユーザーニーズが高まったため。そういった意味では、もし格安車検がショップがなくなったら、今まで格安車検を利用していた方はユーザー車検(自分自身で車検を通すこと。業者に依頼する際の代行費用が発生したいので車検費用を抑えることができる)へ流れるのかもしれません。
格安車検ショップでも、放置しても車検は通るけど安全に車を乗るためには整備したほうがいい箇所があれば、整備の提案をしてくれる店舗は多くあります。
自店舗で修理できなくても「これはディーラーさんで見てもらったほうがいいですよ」とアドバイスをくれることもあります。
最も悪質なのは、ほとんど車検整備をしていないのにも関わらず「安心」の謳い文句を出して集客している格安車検です。ユーザーも、格安車検はなぜ安いのかということを理解する必要があるでしょう。格安車検を利用する際は、店舗のみきわめや口コミを参考にしてみましょう。
また、「お金は払いたくないけどしっかりとした整備をしてほしい」というユーザーの意識も問題です。整備費用には部品代の他に工賃が含まれますが、それを安くしてほしいと求めることは、ほとんど車に触らずに点検をしてほしいといっているようなものです。
もし自分で車の管理ができないのであれば、カーリースやサブスク、カーシェアなどの方法も検討してみてはどうでしょうか。こうした新たなサービスは、最初から点検・整備費用も料金に含むことで、月々にかかるお金を均一化し、予算の管理をしやすくしています。
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- 執筆者プロフィール
- 山北吏(つかさ)
- 1989年生まれ。現役整備士(整備士3級)webライター。webライター歴は1年半。愛車はインプレッサ(GH8)。車に乗るなら絶対MT!実家が田舎だったこともあり山道は得意!整備士として働き始め3年目。前職は輸入業...