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メルセデスAMGとは?メルセデス・ベンツとの関係や違いを解説
目次
メルセデスAMGの歴史
【1955年】哀しみのシルバーアロー
メルセデス・ベンツといえば自動車草創期からの古参メーカーで、自動車レースなどモータースポーツでも初期から参戦し、不況や戦争による中断期間を経つつも各地のレースで活躍する強豪であり、第2次世界大戦後も「シルバーアロー」と呼ばれた銀色のマシンは健在でした。
しかし、1950年代になるとレースによる宣伝効果に疑問がもたれて1955年での撤退を決定、同年のル・マン24時間レースでは観客まで巻き込む爆発炎上事故を起こすという、哀しみに暮れた最悪の幕引きでサーキットを去ったのです。
【1965年】モータースポーツへの情熱を燃やす2人のエンジニア
しかし、会社の経営方針としてはともかく、サーキットで高性能を証明したいエンジニア魂までは消えていませんでした。
ハンス・ヴェルナー・アウフレヒトとエアハルト・メルヒャー、1960年代のメルセデス・ベンツに在籍していた2人のエンジニアは、アウフレヒトの自宅で同社がモータースポーツ撤退後もエンジン開発を継続していたのです。
2人の成果が実ったのは1965年、開発したエンジンを載せ、同僚のマンフレッドが駆るマシンはドイツのツーリングカーレースで10回以上の勝利を収め、素晴らしいエンジンを作ったエンジニアの名声が高まったのです。
【1967年】製粉所から始まったAMG
しかし、レースでの名声より、公道を走る高性能車を作るのを夢にしていたマンフレヒトは満足せず、1966年末にメルセデス・ベンツを退職すると、メルヒャーも説得して1967年にAMG(アウフレヒト・メルヒャー・グローザスバッハ)を設立します。
最初の拠点はさすがにアウフレヒトの自宅とはしませんでしたが、近隣の粗末な製粉所でAMGは立ち上がり、まずはレーシングエンジンのチューンを始めたのです。
【1971年】激走!スパ24時間レース
AMGの名声を爆発的に高めたのは、1971年のスパ24時間レースでした。
軽量で空力に優れたレーシングカーが数多く参戦する中、メルセデス・ベンツの重量級大型高級セダンへ428馬力にチューンした6.8リッターV8 DOHCエンジンをぶち込んだ「AMG Mercedes 300 SEL 6.8」がクラス優勝はもちろん、総合2位という快挙を成し遂げたのです。
重量や空力の差を考えれば、どれだけ素晴らしいエンジンを積んでいたのかは明らかで、AMGの名は一気に世界へ轟くこととなります。
【1976年】聖地アファルターバッハへの移転
世界中にユーザーを増やして発展を続けるAMGは、1976年に現在までの「聖地」アファルターバッハへ移転し、さらにメルセデス・ベンツ車のチューニングを続けます。
DOHC4バルブヘッドの開発など、エンジンメーカーとしての活躍が目立ったAMGですが、そもそもの夢である市販車での名声は、もう目の前に迫っていました。
【1986年】伝説の「AMGハンマー」誕生と市販セダンでの300km/h突破
この年、メルセデス・ベンツ230EへSクラス用の5リッターV8エンジンを6リッターDOHC4バルブヘッド化して搭載、385馬力を発揮するAMG 300E 6.0、通称「AMGハンマー」を発売。
ハンマーは一見してただの実用セダンながら、「羊の皮を被った狼」どころではない猛烈にパワフルな伝説のモンスターとして、今なお語り草になっています。
さらに同年にはAMG 300E 5.6が当時の市販セダンとしては超ド級の速さとなる最高時速303km/hを達成、市販車でも高性能メーカーとして名声を得たのです。
【1988年】メルセデス・ベンツと手を取り合い、ツーリングカーレースを席巻
AMGの活躍はかつて飛び出した本家メルセデス・ベンツの目にも止まり、やがてAMGによるモータースポーツ活動もメーカー公認チューナーとして公然とサポートされるようになります。
DTM(ドイツツーリングカー選手権)ではメーカーのサポートを受けたAMGのマシンが大活躍し、1988年から1993年までの間に50回も優勝その後も活躍を続けたのです。
【1990年】AMG車をメルセデス・ベンツ販売店で直販開始
1990年にはダイムラー・ベンツ(当時)と協力協定を結び、世界中のメルセデス・ベンツ販売店でAMG車を販売できるようになったのです。
レースだけでなく市販車でも本家に認められたAMGは「メルセデス・ベンツの高性能バージョンを作るメーカー」として、一般にも知名度を高めていきました。
【1993年】メルセデス・ベンツと初の共同開発車「C36AMG」発売
本家メルセデス・ベンツに認められたAMGは公認チューナーとしてだけでなく、パートナーとして新型車の開発段階から関わるようになっていき、1993年にデビューした初代Cクラスには初めて両社で共同開発した高性能バージョン、「メルセデス・ベンツ C36AMG」がラインナップされます。
メルセデス・ベンツ車に高性能なAMGバージョンがラインナップされていくと、 AMG創設者のアウフレヒトはダイムラー・クライスラー(当時)への譲渡を進め、2000年には完全子会社化されました。
【2010年】初のAMGオリジナル車「SLS AMG」発売
時は流れて2010年、それまではあくまで、「メルセデス・ベンツ車の高性能バージョン」の開発にとどまっていたAMGが、メルセデス・ベンツ車をベースとしない初のオリジナル市販車、「メルセデス・ベンツ SLS AMG」を発売しました。
571馬力を発揮する6.2リッターV8エンジンを搭載、ガルウイングドアのロングノーズ・ショートデッキスタイルは、往年の名車「メルセデス・ベンツ 300SL」を彷彿とさせるもので、AMGがそのリメイクに関与する名誉を得たとも言えます。
【2012年】F1チームが「メルセデスAMG」を襲名
2010年から「メルセデスGP」として参戦していたF1グランプリにも、2012年から「メルセデスAMG」として参戦。
ダイムラーAGの高性能車部門として、スポーツイメージを高める戦略が始まります。
【2014年】ダイムラーの高性能車ブランド「メルセデスAMG」誕生
この年、市販車のブランドでも正式に「メルセデスAMG」が誕生、それまで高性能なAMGバージョンとはいえ、あくまで「メルセデス・ベンツ」ブランドで売られていた車が、メルセデス・ベンツ車の性能を究極まで高めたメルセデスAMG車となりました。
日本でも2015年5月より、一斉にメルセデスAMG車の販売が始まっています。
【2015年】メルセデスAMGとして初のオリジナル車「メルセデスAMG GT」発売
メルセデスAMGとともに華々しくデビューしたのが、同ブランドとして初のオリジナルマシンであり、AMGとしてはSLS AMGに続く第2弾、「メルセデスAMG GT」でした。
同車は現在に至るまで数多くのレースで活躍しており、メルセデスAMGのスポーツイメージを市販車でも大いに高めています。
【2017年】世界初のメルセデスAMG専売店舗「AMG TOKYO SETAGAYA」オープン
それまでメルセデス・ベンツの店舗で販売されていたメルセデスAMG車でしたが、この年初めてメルセデスAMG専売店舗が誕生。
それも世界初は東京の世田谷にオープンし、以降世界中に拡大していきます。
【2017年】初のハイパーカー「メルセデスAMG プロジェクトワン」発売
スーパーカーのSLS AMG、GTカーのAMG GTに続き、この年には初のハイパーカー、「メルセデスAMG プロジェクトワン」を発表しました。
F1由来の1.6リッターV6エンジンをモーター駆動の電動スーパーチャージャー(電動ターボ)で過給し、フロント左右輪とエンジンアシスト用の合計4つのモーターを積んでシステム出力1,000馬力超、最高速350km/h以上というハイテクハイブリッドマシン。
価格は3億円以上ながら、275台生産されたマシンは発表以前にAMGの上客によって完売していたと言われています。
【2019年」初の4ドアクーペ「メルセデスAMG GTクーペ」発売
この年にはメルセデスAMGのオリジナル車としては初の4ドア市販車、「GTクーペ」を発売。
AMG GTの4ドアクーペ版と言える車で、ついに高級高性能4ドアクーペ市場へ参入しました。
- 最新「AMG GT」中古車情報
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本日の在庫数 84台 平均価格 1,772万円 支払総額 791~6,030万円
【2021年】メルセデス・ベンツから開発主導を移管された新型「SL」発売予定
ここまでメルセデス・ベンツ車の開発段階から関わり、高性能バージョンをリリースしてきたましたが、EQシリーズのEV(電気自動車)へ力を入れるメルセデス・ベンツに代わり、大型高級スポーツカブリオレの「SL」次期型では、メルセデスAMGが開発を主導しました。
今後はこの流れが加速していくとみられ、その第1弾である「メルセデスAMG SL」は2021年末のデビューと言われており、既にテスト走行の画像などは公開されています。
- 最新「SL」中古車情報
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本日の在庫数 88台 平均価格 1,520万円 支払総額 818~2,757万円
メルセデスAMGの名車たち
メルセデスAMGの歴史的転換点となった車のほかにも、いくつかの注目すベき名車を紹介します。
メルセデス・ベンツ CLK-GTR
ル・マン24時間レースなど、現在の「ハイパーカー」の元祖と言える市販車の生産が義務付けられた、「GT1マシン」によるレース(FIA GT選手権)のために作られた車で、1997年のレースでは参戦11戦中6勝と活躍しました。
6リッターV12エンジンを搭載、エアコンやオーディオもついて快適ながら窓は開かず、ドアも斜め前上方へ開くバタフライドアでもちろん車高はペタペタ、価格は日本円で2億5,000万円以上とも言われましたが、25台のロードバージョンが日本を含め実際に市販されています。
メルセデス・ベンツ G63AMG 6×6
2014年、「メルセデスAMG」ブランド登場直前に市販されたGクラスAMGバージョンの超豪華6輪駆動仕様で、通常のキャビンの後ろへ荷室と後4輪を追加したようなダブルキャブ・ピックアップスタイル。
日本でも世界限定100台のうち5台が8,000万円で販売された、超レア車です。
- 最新「メルセデスAMG Gクラス」中古車情報
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本日の在庫数 328台 平均価格 2,407万円 支払総額 560~3,885万円
メルセデスAMG A45 4MATIC(先代W176型)
ベースのメルセデス・ベンツ車がFRばかりだったので、当然AMG時代からFRか4WDばかり作っており、メルセデス・ベンツ初のFF車としてAクラスが登場しても、しばらくはAMGバージョンの設定はありませんでした。
しかし、3代目Aクラスが思い切って全高を下げたスタイルで登場すると、機は熟したとばかりに2013年、「A45 AMG 4MATIC」として発売し、メルセデスAMGブランド登場とともにメルセデスAMG A45 4MATICへと改名。
381馬力のハイパワーを誇る超ド級ホットハッチということで、それまで2リッター4WDターボが得意だと思っていた日本人も度肝を抜かれました。
- 最新「メルセデスAMG Aクラス」中古車情報
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本日の在庫数 119台 平均価格 565万円 支払総額 190~1,125万円
今後の電動化時代でどうなるメルセデスAMG?
エンジンチューナーとして立身出世の道を歩んできたメルセデスAMGですが、世界の自動車業界を覆う電動化の波を逃れることはできません。
既にメルセデス・ベンツのEVブランド「メルセデスEQ」のEVにはオプションの「AMGライン」が設定されているほか、9月にミュンヘンで開かれるIAAモビリティ21で、メルセデスAMG初のEVを初公開すると発表されています。
生粋のエンジンチューナーだったAMGが、今後も高性能ブランドとして君臨できるのか?その答えはそう遠からず、証明されるでしょう。
【メルセデス・ベンツ】新型車、モデルチェンジ、スクープ最新情報!
メルセデス・ベンツ&メルセデスAMGの現行オープンカー
「世界で愛される名車」ってどんなクルマ?
新車で買えるメルセデス・ベンツのクーペ
- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...