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マツダ3 連続試乗レポート|ファストバック スカイアクティブX MT AWD編 – Xのおいしさを味わうならこれ。
2019年5月に国内発売開始したMazda3(マツダ3)はセダン、ファストバック(5ドアハッチバック)の2つのボディタイプに、エンジンはガソリン、ディーゼル、次世代「SKYACTIV-X(スカイアクティブX)」、駆動方式は2WD(FF)、AWDと多彩なラインナップ。MOBYではこれら各タイプ主要モデルに順次試乗、それぞれの特徴をお伝えしていきます。
今回の試乗車は、Mazda3(マツダ3)ファストバック、マツダの“夢の”新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブ-エックス)」に6速マニュアルトランスミッション、電子制御四輪駆動システムの組み合わせのモデルです。
以前に、同じファストバックでスカイアクティブXのAT/2WDに試乗しています。(その試乗レポートはこちら)MT/AWDとの違いもお伝えします。
目次
スカイアクティブXとは?
以前のマツダ3 スカイアクティブXの試乗レポートで機構的な詳細をわかりやすく解説しています(したつもり)ので、ここでは要点のみをおさらい的に簡単にお伝えします。
SKYACTIV-X(スカイアクティブX)のエンジンの最大の特徴は、ガソリンエンジンの良いところと、ディーゼルエンジンの良いのところのおいしいところだけを組み合わせたエンジン。燃料はプレミアムガソリン(ハイオク)。
ガソリンエンジンの良いところは、振動、騒音が少なく静かで、高回転まで軽く吹き上がるところ。ディーゼルエンジンの良いところは、低回転からトルクが出てパワフル、低燃費なところ。
逆にガソリンエンジンの悪いところは、ディーゼルエンジンに比較すると燃費が悪い、低回転域のトルクが細いこと。ディーゼルエンジンの悪いところは、振動、騒音が大きく、高回転まで回せないところ。
つまり、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンはお互いの長所と短所が入れ替わったような特性を持っています。
ガソリンエンジンの良いところと、ディーゼルエンジンの良いところを合わせた“夢のエンジン”スカイアクティブX。市販車では世界初の「圧縮着火」式エンジンを搭載したのがマツダ3になりますが、語弊が生じるので重要なポイントを補足します。
「良いところ」だけを合わせたエンジンではありますが全部が全部、良いところのみをスカイアクティブXに詰め込んだわけではありません。
燃費についてはガソリンエンジンに比較してちょっと良いといった感覚。走行状況、環境によっては同等レベルになります。また出力特性、トルク特性についても良いところ同士を完全に足したものとはなりません。
最高出力、最大トルクもガソリン、ディーゼルを大幅に上回ることもありません。感覚的にはスムーズになめらかに回るガソリンに、ディーゼルのトルクの太さを少し足した印象。静粛性、振動については、ガソリンエンジンと同じレベル。
良いところを合わせた結果、まったくの新しいエンジンができた、と筆者は解釈しています。
マニュアル車固有のクセが消えている
マツダのスカイアクティブXは、スーパーチャージャー(略して「スーチャ」と呼ぶこと多し)にマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインとなっています。
マイルドハイブリッドのマニュアル車は、マツダ3しか買えません。(国内において。海外の他メーカーについては未調査)
このパワートレイン、マニュアル車固有のクセ「エンストしやすい」が消えています。(エンストしない、という意味ではありませんが)
マニュアル車は、発進時のクラッチミートに失敗するとエンストします。運転技術を持った人なら話は別ですが、普通はアクセルを踏まずにクラッチミートさせて発進するのが難しいものです。
しかし、マツダ3 スカイアクティブは、少し慎重にクラッチペダルを上げていくと、スルスルっと発進します。そのままアクセルを踏まずに徐行程度の速度へ上げて落ち着いたらクラッチを切って2速へ入れると、またそのままスルスルと繋いで加速していきます。3速も割と余裕。4速でちょっと苦しいかなといった具合でした。
自動車学校のMT教習車が、マツダ3 スカイアクティブXだったら、みんな楽なのになぁと思った次第(あまり意味がないか…)
マイルドハイブリッドの電気モーターの最高出力は6.5psとわずかではありますが、運転のしやすさ、フィーリングの良さに大きく貢献していると言えるでしょう。
スルスルとよく回るスカイアクティブXはMT車で特に愉しめる
スカイアクティブXでのドライブは、エンジンをきっちり上まで回してあげるととても愉しめます!
スカイアクティブXの特徴として、どの回転域からアクセルを踏み込んでも同じようにエンジンの回転がスルスルと上がります。特に3,000回転以上では、ぐぃーーーーっといってくれます。さらに、5,500回転からリミットのかかる6,500回転までの最後の1,000回転もグイっと一捻りしてくれます。
ATのスカイアクティブXより、エンジンの回転が気持ちよく上がっていく感覚は、MTの方が断然愉しめます。
山道ドライブを愉しむなら「i-ACTIV AWD」。安全だし。燃費もそう変わらないし。
「i-ACTIV AWD」は2019年にデビューしたマツダ3から進化版が採用されています。
「四駆は雪道以外、特に必要ないのでは?」と思われている方は少なくないようですが、そんなことはありません。マツダの四輪駆動システム「i-ACTIV AWD」は、完全な前輪駆動(FF)から前後輪50:50の駆動力配分の四輪駆動までフレキシブルに可変、必要のないときはFFで走って、必要なときだけ瞬時に4WDになるスグレモノです。
これは乾いた路面でも必要なときはきちんと効きます。例えば路地から流れの速い幹線道路へ90°右左折して流入する、という走行シーンに遭遇することがあるでしょう。このときでは、アクセルを深めに踏みながら強い加速が必要となります。FF車では、そんなときフロントタイヤが鳴って不安を感じやすいものです。今のクルマなら、横滑り防止装置やトラクションコントロール機能が働いて制御はしてくれるものですが、タイヤが全く鳴らないまでの制御は普通難しいものです。
これが四輪駆動だったら、タイヤは鳴かずにスッと幹線道路へ安心して流入できます。加速力を比較すると四輪駆動の方が優位です。
「i-ACTIV AWD」ではそのような走行シーンになると、後輪がすぐに駆動し、お尻を押してくれるような感覚でスッと加速してくれます。雨などで路面が濡れていた時にはさらに効果的。
山岳路で勾配もカーブもきついところで加速を必要とするシーンでは、圧倒的に四輪駆動が有利。そんなハイスピードでなくても、i-ACTIV AWDは必要な分だけ後輪にトルクを配分するので、スームズで安全な走行が可能となります。
以前に試乗したマツダ3 スカイアクティブX AT/2WDと比較すると、四輪駆動の方が走行フィーリングを愉しめまました。特に、山道などで元気に走りたいときMT/AWDは良かったですね。
AT/2WDとMT/AWDの実燃費の違いは、トータルするとほとんど変わりませんでした。カタログ数値でもAT/2WD:17.2km/L、MT/AWD:16.8km/L(WLTCモード)で大差なし。実燃費は13〜14km/L(高速道路3割、市街地3割、郊外路3割、山岳路1割程度で)でした。
スカイアクティブXを骨の髄までしゃぶりたいなら、MT&AWDがおすすめ
マツダ3 ファストバック スカイアクティブX MT/AWDを試乗した感想をまとめてみますと、
レブリミットまでしっかり回し切れるMT、様々な路面状況でも安定した走りをもたらす「i-ACTIV AWD」の組み合わせは、スカイアクティブXのエンジンの良さを、骨の髄までしゃぶることができる組み合わせ。
といったところでした。
ここまで書いたこと以外に、他のマツダ3と比べてブレーキのフィーリングの違い、足回りの違いからくる乗り味の違いがありましたが、これらのことは別の記事でまとめてお伝えすることにします。近日中に公開予定ですのでお楽しみに。
次のマツダ3試乗レポートは、ファストバックで1.5Lのガソリン、FF・AT車です。この1.5Lガソリンエンジンは、ロードスターにも搭載されているものと同じです。果たして、どんな走りを見せてくれるのでしょうか。
スペック・価格
モデル名・グレード | ファストバック X バーガンディセレクション |
エンジン | SKYACTIV-X (直列4気筒2.0L直噴ガソリン/スーパーチャージャー) |
最高出力 | 132kW(180ps)/6000rpm |
最大N・m | 224N・m(22.8kgf·m)/3000rpm |
モーター最高出力 | 4.8kW(6.5ps)/0000rpm |
モーター最大トルク | 61N・m(6.2kgf·m)/100rpm |
トランスミッション | 6速MT |
駆動方式 | i-ACTIV AWD(四輪駆動) |
ボディサイズ | 全長:4,460mm 全幅:1,795mm 全高:1,440mm ホイールベース:2,725mm |
車両重量 | 1,480kg |
燃費 | WLTCモード:16.8km/L 市街地モード:13.6km/L 郊外モード:16.9km/L 高速道路モード:18.6km/L |
新車車両価格 | 3,754,463円(税込) |
※試乗車は、BOSEサウンドシステム/12スピーカー(77,000円/税込)、360°ビューモニター/ドライバーモニタリング/フロントパーキングセンサー(86,880円/税込)のオプションを装備。
マツダ3公式サイトはこちら。
前回の試乗車、マツダ3 セダン ガソリン AT/2WDのレポート記事はこちら。
- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...