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SKYACTIV-X は何がすごくて何がダメなのか?マツダ Mazda3“537km”スカイアクティブX試乗レポ

#SKYACTIV-X とは?の基礎解説は3分で読める
#エンジンの基礎がわからない方は+3分で読める
#537kmを試乗した筆者が感じたこととは?

まずはエンジンの基本から。

まずは、SKYACTIV-X とはどんなエンジンなのか?の前に、エンジンの基礎知識「ガソリンとディーゼルエンジンの違い」から解説します。ご存知の方は読み飛ばしくださいませ。

ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの違い

SKYACTIV-X エンジンの特徴を解説する前に、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの違いの内、最も代表的なものを1点のみご説明します。

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの違い。火花点火と圧縮着火
マツダ公式YouTubeを拝借

燃料を爆発させるキッカケは何か?

エンジンは燃料を爆発させて力を得る「内燃機関」です。燃料と高圧の空気の混合気を火花で爆発させるのがガソリンエンジン、火花ではなく混合気を圧縮して自然発火させるのがディーゼルエンジンです。

なぜ燃料が違うのか?

ガソリン混合気は圧縮による自然爆発がし難く、圧縮比を高めると安定しにくくエンジンへの負荷も高くなどの理由があります。

なぜディーゼルエンジンが必要なのか?

エンジンのシリンダー内で爆発させる混合気は圧縮されていればされているほど(高い圧縮比)、勢い良く爆発し高い出力を得ることができます。たくさん空気が入ってパンパンになった風船、そうでない風船に針を刺したらどちらが勢い良く割れるでしょうか……の答えと原理的には同じで、ガソリンよりディーゼルの方が圧縮比が高いからです。

圧縮比が高いと何が良いのか?

圧縮比が高いと混合気を爆発させる(燃焼させる)速度が速くなります。前述した、高い出力を得られる他、燃費が良い(少ない燃料で多くの出力が得られるため)、排気ガスがきれい(爆発力がすごいので全部燃え尽きる。ガソリンは燃え残りが発生しやすい)といったメリットがあります。ディーゼルエンジンの排気ガスが汚いというのはウソです。(某元都知事のせいという説あり)欧州ではガソリンよりディーゼルエンジンの方が排気ガスがきれいというのが一般市民にも浸透しており、実際にディーゼルエンジンのシェアは相当に高いという実情があります。

ディーゼルエンジンのデメリットは?

ここまで書くと、ディーゼルエンジンの完全勝利のようになってしまいますが、ディーゼルエンジンにはガソリンエンジンより劣る点がいくつかあります。それは、エンジンが重たい(爆発力が強いから頑丈にしないといけない)、エンジンを速く回すのが苦手(自然発火だから。ガソリンは火花で強制的に爆発させられる)、うるさい、振動が大きい(爆発力が強いから)といったデメリットです。

最高出力はガソリンエンジンの勝ち、最大トルクはディーゼルエンジンの勝ち

エンジンスペックを示す馬力(今はkW、PSといった単位でカタログに書かれる)は、エンジン爆発して得られる力に回転数を掛けて求められた数値です。エンジンを爆発して得られる力そのものが「トルク」です。どんだけトルクがあっても、回転数が少ないと速く走れません…これを「仕事量」といいます。義務教育期間中の理科の授業で習ったアレです。力持ちのお相撲さん、100kgの重さのモノを持って走ることができますが、100m走るのに2分かかります。一方、せいぜい10kgの重さしか持って走ることができないけれど、100m走るのに10秒を切るアスリートがいます。厳密な計算は置いておいてイメージでお話すると、アスリートの方が「仕事量」が多い=最高出力が高い、となります。アスリートはガソリン、相撲取りは軽油に比喩しています。

「ガソリンの圧縮比をめっちゃ上げて自然発火させたらスゴくね?」

その通りです。ガソリンをとことん圧縮を高めて自然発火させれば良いのです。ガソリンエンジンのメリットとディーゼルエンジンのメリットをハイブリッドさせれば、史上最強の内燃エンジンが完成するのです!しかし、ガソリンの高圧縮、自然発火は理論的にはできても実用化には無理難題が多すぎ。物理的な難関がありまくりだったのです。マツダがスカイアクティブXをマツダ3に乗せて生産販売するまで、誰も実用化を成功させていないのです。

杉林の中のマツダ3ファストバック スカイアクティブX

SKYACTIV-X(スカイアクティブX)とはどんなエンジンなのか?

この項もご存知の方は読み飛ばしくださいませ。。

スカイアクティブXはガソリンとディーゼルのいいとこ取り

ひとことで言えば見出しに書いた通り、ガソリンエンジンの良いところとディーゼルエンジンの良いところをいいとこ取りしたエンジンとなります。前述した、前人未到の「ガソリンの圧縮比をめっちゃ上げて自然発火させたらスゴくね?」を実用化したというエンジンであります。

マツダ独自の燃焼方式「SPCCI」

スカイアクティブXエンジンの燃焼方式「SPCCI」
こちらもマツダ公式YouTubeを拝借

「ガソリンの圧縮比をめっちゃ上げて自然発火させたらスゴくね?」をどう実現したかのハイライトが上の画像(マツダの公式YouTubeの動画のスクショです。後で動画をきちんとご紹介します。) です。ガソリンの圧縮比を高めて安定的にエンジンの回転、出力を得るようにするためには「火」が必要……(「あ、それ、ガソリンエンジンと同じやんけ!」というツッコミは覚悟で書いております)であったのです。火花を散らす強制的に爆発させるガソリンエンジンとは、燃焼させるプロセスが異なり、いわばガソリンエンジンとディーゼルエンジンの中間に一するマツダ独自の燃焼方式となっています。

マツダはこれを「SPCCI( Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」と名付けています。

SKYACTIV-X の特長

マツダはスカイアクティブXについて、「ガソリンエンジンならではの伸びのよさに、ディーゼルエンジンの優れた燃費・トルク・レスポンスといった特長を融合」と伝えています。100kgの重量物を持ったお相撲さんが100mを9秒台で走れるようになったのです(かなり大げさ)。

マツダ公式YouTube:SKYACTIV-X の解説動画

SKYACTIV-X は実際どうよ?

スカイアクティブXの実力を体感すべく、マツダさんから広報車をお借りした都合537kmを試乗してきました。

箱根ターンパイクの路肩に停まるマツダ3ファストバック スカイアクティブX
走りのチェックの定番コース、箱根ターンパイクにて。

アイドリング時の音と振動

アイドリングの音と振動は、クルマにあまり詳しくない方なら、ガソリンエンジンだと感じられるレベルでしょう。エンジン音を意識して聞けば、あぁ、なるほど、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの中間かな、といえる音が聴こえてきます。振動もガソリンエンジンに比べるとちょっとあるかな、という程度です。ディーゼルエンジンのような明らかな細かくノックするような音、振動ではありません。

マツダ3ファストバック スカイアクティブXのエンジンフード
エンジンはフードで覆われている。遮音性を向上。
最高出力:132kW[180ps]/6000rpm
最大トルク:224N・m[22.8kgf・m]/3000rpm
モーター最高出力:4.8kW[6.5ps]/1000rpm
モーター最大トルク:61N・m[6.2kgf・m]/100rpm
マツダ3ファストバック スカイアクティブXのエンジンフードを開けたところ
フードを開けるとぎっしり詰まった心臓部が見える。
マツダ3ファストバック スカイアクティブXのエンジンマウント部
エンジンを支えるところには防振ゴムが見える。

エンジンの回転・加速

マツダ3ファストバック スカイアクティブXのタコメーター
タコメーターはガソリンエンジンのそれと同じ、8,000回転まで刻まれる。

加速時のエンジン回転の上がり方は、ガソリンエンジンとほぼ同等。低回転からシューイーンといった感じで軽やか、なめらかに上がっていきます。マイルドハイブリッドの電動パワーと、スーパーチャージャーが付いているため、停止状態から高速域までの加速はなめらかです。特に高速道路走行中の追い越し、登り坂での中速域から高速域までの加速はとても気持ちの良いものでした。

燃費

マツダ3ファストバック スカイアクティブXの燃費メーター9枚

カタログスペックでは、
WLTCモード燃費:17.2km/L
 市街地モード:13.7km/L
 郊外モード:17.6km/L
 高速道路モード:19.0km/L
となっています。実際の燃費はその1割から2割減といったところ。このカタログ燃費と実燃費の剥離は他のクルマでも同じようなものです。試乗時、渋滞と信号の多い都心部を走ったときでも10km/Lを下ることはなく、交通量の少ない高速道路での巡航では、ほぼカタログスペックの18km/L台も記録しました。

マツダ3ファストバック スカイアクティブXの試乗走行距離と平均燃費
マツダさんへ車の返却時の撮影。総走行距離537.4km、総実燃費は13.3km/L。走行の内訳は高速道路30%、山岳路20%、郊外路25%、都市部25%。ちょっと条件悪い中での燃費。

試乗を終えての全体的な所感

長距離の運転はとても楽。スムースに回るエンジンは、6気筒エンジンのような感触もありました。マツダはスカイアクティブXを「上質な走り」と言っていましたが、長距離乗ってそれがなるほどと合点。長く乗るとその良さがわかります。

何がすごくて何がダメなのか?

技術者魂がすごい。環境性能がすごい。

実用化が無理といわれた技術を実用化したのが、マツダの最もすごいところ。マツダは新型車、新技術を発表するたびに、事細かにメディアに開発の詳細を説明してくれるのですが、都度都度その技術者魂、こだわりに驚かされます。スカイアクティブXも然り。環境性能の高さも特筆すべき。

欧州では売れている。日本では…

スカイアクティブXは日本国内ではあまり売れていない現状ですが、欧州では相当に売れているとのこと。販売構成比は40%超えているとのことです。これは、欧州はクルマの電動化を真っ先に打ち出した環境への規制が厳しいところです。欧州の消費者も環境への意識が高い傾向があり、スカイアクティブXが受け入れやすいのでしょう。対して日本でのスカイアクティブX構成比は10%。日本での車両本体価格の差額は最上級グレード同士で比較すると、ディーゼルエンジンで約40万円、ガソリンエンジンで約70万円。これに対して欧州仕様ではそこまで差が開いていないという状況も原因でしょう。

箱根ターンパイクで撮影したマツダ3ファストバック スカイアクティブX
試乗車のマツダ3ファストバック(2WD・6AT)のグレードは「L Package」Lはレザーの意味の革内装。
新車車両価格は3,380,463円(税込)
参考:ディーゼルエンジンの同等グレード 2,973,055円、ガソリンエンジンでは、2,698,055円。
マツダ3ファストバック スカイアクティブXのバッジ

漏れ聞こえるのは、スカイアクティブXと他のグレードとの外見上の差別化があまりないという声。日本人の多くは、差別化された仕様なら差別化された外見上の違いを求めてしまうでしょう。スカイアクティブXと他のグレードとの外見上の違いは、口径の大きいマフラーカッターと、黒のアルミホイール、スカイアクティブXのバッジといったところでしかありません。

マツダ3ファストバック スカイアクティブXの給油口。ハイオク仕様の表示
スカイアクティブXはハイオク仕様。発売直前にレギュラー仕様からハイオク仕様に変更して発売が遅れた経緯がある。欧州では日本のハイオクがレギュラーと同じ品質。
マツダ3 TCR仕様
アメリカのツーリングカーレース、IMSAでデビュー予定のマツダ3 TCR仕様車。
ここまでしなくても良いが、がっつりスポーティーなエアロで武装したスカイアクティブXの特別仕様車があったらなと思う筆者。

どこがダメでどこが良いのか、人それぞれの価値観で変わるところがありますが、筆者としては価格差に見合う差別化があったら、もっとスカイアクティブXが売れたのにな、と思った次第。すごく出来がいいのにもったいない気がしました。

乗り心地は改善されたスカイアクティブX

マツダ3ファストバック スカイアクティブXのリアサスペンション

アクセラからマツダ3にフルモデルチェンジして、リアサスペンションが安価で格下となってしまうトーションビーム式に変更、乗り心地が悪くなったという評価を多く見聞きします。筆者も致命的な乗り心地の悪さとは思いませんでしたが、正直リアがゴツゴツするなとは感じたものです。スカイアクティブXは、リアサスペンションを改良し、乗り心地が向上。筆者もその違いを体感することができました。スカイアクティブXではないグレードの試乗では、山道などカーブの多いところでは足回りの良さを体感、このスカイアクティブXでもそれは変わらずでした。

世界初の技術を買う、という選択

マツダが苦心して夜に送り出した世界初の技術を買う、というなら悪い買い物にはならないでしょう。スカイアクティブXのエンジンはとても良く、マツダのこだわりの上質なデザインで満足できるカーライフを楽しめるはずです。

富士山を背景にマツダ3ファストバック スカイアクティブX

撮影・文:MOBY編集部 宇野 智

編集後記

今回の試乗レポートは、スカイアクティブXのエンジン主体でした。昨年はディーゼルエンジンモデルで試乗レポ、内外装の良さにフィーチャーしたので、今回はデザインについては割愛しようかと思いましたが……黒で統一された内装もなかなかよかったので、編集後記として画像を共有します。

マツダ3ファストバック スカイアクティブXのインテリア。各部全12ヶ所ひとまとめ。

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この記事の執筆者
MOBY編集部 宇野 智