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初の水冷FF軽、初の軽ハードトップ、最強の40馬力…ダイハツ軽乗用車近代化の祖、フェローMAX&MAXクオーレ【推し車】
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ダイハツ軽を一気に近代化させた2代目フェロー
最近何かと話題になっているダイハツですが、トヨタから新社長を迎え入れて今後は心機一転、誰にも文句を言わせない名車をまた作ってほしいものです…というわけで今回は名車とまではいかないものの「忘れざる銘車」として、1970年代の「フェローMAX」をご紹介!
1966年にダイハツ初の軽乗用車として発売された初代「フェロー」後継となるサブネームつき2代目フェローで、オーソドックスなFR車から近代的なFF車へ転換、軽初のハードトップ車や360cc最強の40馬力エンジン車を設定するなど、話題豊富なクルマでした。
ターボ付きの軽自動車が人気
極限!最高!フェローMAX誕生
戦前からマツダと並ぶオート三輪の名門だったとはいえ4輪では後発、1958年に2tトラックの「ベスタ」、1960年に軽商用車の「ハイゼット」(初代)で本業の堅実に参入すると、1963年には優雅なイタリアンデザインの小型乗用車「コンパーノ」も発売したダイハツ。
しかし、後に軽自動車No.1メーカーとなる割にラインナップの拡大はノンビリしており、初の軽乗用車である初代「フェロー」を1966年に発売した頃には、もうスバル360とマツダ キャロルが熾烈なシェア争いをしている最中。
翌年にはホンダ N360が(当時としては)猛烈なハイパワーで市場を席巻、第1次軽自動車パワーウォーズが勃発しようとしており、1968年5月には23馬力から32馬力へパワーアップした「フェローSS」を発売するも、すぐ36馬力のフロンテSSやN360Tが出てしまいます。
そのため初代フェローはあまり後世に名を残す存在ではありませんでしたが、1970年4月にモデルチェンジした2代目、サブネームつきの「フェローMAX」は一味違いました。
「極限」「極大量」「最高」を意味するMAXをつけて…他社で言えばフェアレディがフェアレディZになったような大変身をアピールしたフェローMAXですが、その内容を見れば当然です。
軽自動車初の水冷エンジン搭載FF車、かつ四輪独立懸架サスで同じFFで車でも空冷でリアサスがリーフリジッドのN360に差をつけ、リアウィンドウの傾斜をスパッと切り落とし、リアデザインをシャープなものとしてモダンな「カムテール」を採用。
ハッチバックではなく独立トランクなことを除けば、近代軽自動車の特徴をほとんど揃えており、その意味においてホンダ ライフ(1971年6月発売)に先んじる最先端の軽自動車でした。
動力性能も、最高出力33馬力はライバル車のベーシックモデルより高出力で、さらにハイパフォーマンスな「SS」の登場まで予告していたのです。
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360cc最強の40馬力!「フェローMAX SS」あらわる
発売3ヶ月後の1970年7月には「フェローMAX SS」を追加、後に「SSエンジン」とも言われる水冷直列2気筒2サイクル・ツインキャブのZM-5エンジンは最高出力40馬力/7,200rpm、最大トルク4.1kgf・m/6,500rpmで、せいぜい36~38馬力なライバルを圧倒!
もっとも、現在のネット値ではなくグロス値(車載状態ではないエンジン単体での性能)ですから15~20%ほど割引いて考える必要はありますが、360ccでも高回転で最大トルク4kgf・m超えですから、ブン回して稼ぐ典型的な高回転高出力型エンジンでした。
他社でも2サイクルエンジンなら似たようなものとはいえ、ZM-5の低回転トルクスカスカぶりはなかなか強烈で、ある自動車評論家は「ダイハツから試乗車を借りて走り出した途端、ちょっと油断するとすぐにカブったプラグを交換するハメに」と述懐しています。
このSSエンジンことZM-5は翌年発売されるハードトップにも「GXL」と「SL」グレードへ搭載してラリーでも活躍、翌1972年10月に昭和48年排出ガス規制で37馬力(標準エンジンのZM-4は31馬力)へ抑えられるまで短期間の販売でしたが、歴史に名を残しました。
- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...