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サポカー限定免許とは何?高齢ドライバーの隠れた問題を解決する免許となるか

高齢ドライバーによる事故への対策が社会的に求められるなか、新たな「限定免許」の制度創設に向け、国家公安委員会は11月4日、「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」をとりまとめました。

これにより、2022年の5月13日から、運転可能な車両を衝突被害軽減ブレーキ搭載車などの「安全運転サポート車(通称:サポカー)」に制限する免許が新設される見込みです。限定条件などの具体化に向け、警察庁では11月5日から12月4日にかけて、パブリックコメントの募集を行っています。

「サポカー限定免許」の新設により、安全機能の充実した車両を普及させる効果が期待されていますが、具体的にどのような内容の制度となるのでしょうか。創設の背景や経緯をふまえ、制度の概要について解説します。

「サポカー限定免許」制度創設の背景と目的

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今回とりまとめられた内閣府令案は、2020年6月に改正された道路交通法の内容をふまえたものです。改正時に大きな話題を呼んだのは「あおり運転」に対する罰則の創設でしたが、同時に改正の焦点とされていたのが、高齢ドライバーによる事故の予防に資する制度の策定でした。

平成11年(1999年)の事故件数を100とした場合の、年齢層ごとの指数の推移。全体の指数は低下傾向にあるなか、75歳以上では上昇したのち横ばいに、80歳以上では継続的な上昇傾向が見られます。

改正道交法における対策の要点は2つあり、1つは今回取り上げる「サポカー限定免許」に関連する条文の新設です。もう1つは、一定の違反歴のある75歳以上のドライバーに対する運転技能検査であり、こちらも2022年5月からの実施が予定されています。

これまで、高齢ドライバーによる事故防止策としては、1998年に始まった運転免許の自主返納制度がありました。社会的な問題意識の高まりにも後押しされる形で返納件数は上昇し、2019年には60万件以上、2020年には55万件以上の返納が行われました。

運転免許返納件数の推移。

一方で、交通利便性の問題などにより、生活に車が欠かせない方にとっては、免許の返納という選択肢が現実性を欠いているのではないか、との指摘も少なくありませんでした。

サポカー限定免許は、このような「生活車は必要だが、運転に不安を覚えることもある」という方を想定した免許制度です。そのため限定免許への切り替えは、あくまで自主的な申請にもとづいて行われ、交通違反や運転技能検査などを契機とする強制的な切り替え処分は行われません。

もともと、制度の検討段階においては、サポカー限定免許は免許返納までの「中間段階」として位置づけられていました。一方で、対象者は高齢ドライバーに限定されておらず、運転頻度が低く操作に自信がない方など、年齢にかかわらず申請が可能となる見込みです。

サポカー限定免許の対象車種は?

©takasu/stock.adobe.com

現状のところ、「サポカー限定免許」の対象車種は明示されておらず、来年5月までに要件が具体化されていくと考えられます。

もともと、「サポカー」すなわち「安全運転サポート車」は、政府の交通対策本部が主導となって要件などを定めた車両区分です。大きな区分として、衝突被害軽減ブレーキを搭載する通常の「サポカー」と、これに加えて「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」などを備えた「サポカーS」に分類されます。

さらに「サポカーS」は、 衝突被害軽減ブレーキの作動速度や検知対象などにより「ベーシック」「ベーシック+」「ワイド」の3つに分かれます。 

サポカー衝突被害軽減ブレーキ
サポカーS(ベーシック)低速衝突被害軽減ブレーキ(対車両)、ペダル踏み間違い急発進抑制装置
サポカーS(ベーシック+)衝突被害軽減ブレーキ(対車両)、ペダル踏み間違い急発進抑制装置
サポカーS(ワイド)衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者)、ペダル踏み間違い急発進抑制装置、車線逸脱警報、先進ライト

※経済産業省「サポカー(安全運転サポート車)のWEBサイト」をもとに作成

これらの区分のうち、限定免許の対象となるのはどこからなのか、あるいはこれとは別に新たな区分が設定されるのかが、施行までの検討事項の1つになりそうです。

「踏み間違い防止」や「速度抑制」の機能も検討されている

サポカー限定免許の新設などに向け、警察庁により開催された「高齢運転者交通事故防止対策に関する調査研究分科会」の最終報告書(2020年3月)には、限定免許の対象車種に求められる要件や、現実的な実現可能性について、各方面からの意見がとりまとめられています。

対象車種に求められる要件としては、通常の「サポカー」に設定される衝突被害軽減ブレーキのほか、「サポカーS」に設定される「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」を含めるか、というポイントが検討事項の1つに挙げられています。

死亡事故原因の割合を、75歳前後で区分した図。75歳以上になると「操作不適(操作のミス)」の割合が高くなり、そのなかでも「アクセルとブレーキの踏み間違い」の割合が大きく上がります。

アクセルとブレーキの踏み間違いを原因とする事故が、高齢者において増加する傾向にあるために、これを予防できる機能が優先順位の高い条件とされているのだと考えられます。

その他、衝突被害軽減ブレーキが搭載されていても、作動速度はメーカーや車種によってさまざまであり、高速域には対応していないものも多いため、「アクセルを踏み続けて暴走してしまう」といったケースへの対応が懸念事項として挙げられています。

このような観点から、現状の「サポカー」の要件には存在しない「速度抑制装置」を限定免許の要件に加えることも分科会において議論されています。

しかし、分科会が自動車メーカーに対して速度抑制装置の実現可能性について行ったヒアリング調査の結果を見ると、技術的には可能との声が多かったものの、商業的な面での見通しはついていない状況であり、制度新設の段階で「サポカー」の要件に加えられるとは考えにくいかもしれません。

制度新設でサポカーの普及は促進されるか

©ohayou!/stock.adobe.com

制度の新設に向け、検討事項も残されている「サポカー限定免許」ですが、「車は手放さないけれども運転に不安がある」という方にとっては、有効な選択肢になると考えられます。

75歳以上の免許保持者数の推移と予測値。

高齢ドライバーが年々増加するなかで、先進安全装備の揃った車両の選択をドライバーに促す免許制度は、交通安全の向上に資すると期待できるでしょう。

先の分科会においては、「サポカーS(ワイド)」における事故抑止効果が検証されており、当該車両が人身事故において第1当事者(事故の過失割合が重い者)となる割合は、全車両の場合に比べて約40%低減されるという結果が示されています。

2017年5月から2018年12月までの期間において、人身事故の第1当事者となった全ての普通乗用車・軽乗用車の台数と、そのうちサポカーS(ワイド)に該当する車両の台数とを比較した図。

一方で、現在サポカーに該当する車種に乗っていないドライバーに対して、どのように制度を訴求していくか、という点もポイントになるでしょう。

サポカー購入に対する補助金制度は現状でも用意されていますが、買い換えが難しいドライバーも少なくないと考えられます。

予防安全装備の普及を促すうえでは、衝突被害軽減ブレーキの「後付け」なども制度の対象に含めることを検討するなど、裾野を広げていく観点も必要になりそうです。

(資料出典:警察庁Webサイト内PDF資料「高齢運転者交通事故防止対策に関する調査研究 調査研究報告書」および「運転免許の申請取消(自主返納)件数と運転経歴証明書交付件数の推移」)

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執筆者プロフィール
鹿間羊市
鹿間羊市
1986年生まれ。「車好き以外にもわかりやすい記事」をモットーにするWebライター。90年代国産スポーツをこよなく愛し、R33型スカイラインやAE111型レビンを乗り継ぐが、結婚と子どもの誕生を機にCX-8に乗り換える...
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