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タイミングベルトの交換は必要?しないとどうなる?交換時期や交換費用を解説
目次
タイミングベルトとは?
エンジンを動かす装置の一部
タイミングベルトとは、エンジンを正常に動かすためのベルトです。主に古い車に採用されており、このベルトがなければ、エンジンは正常に動きません。
設置場所は、エンジンの側面です。タイミングベルトを取り付けている場所には、タイミングベルトケースが設置されています。そのため、エンジンルームから確認しようと思っても確認できないパーツなので覚えておきましょう。
タイミングベルトの役割
タイミングベルトの役割は、クランクシャフトとカムシャフトのタイミング調整です。クランクシャフトから発生した動力を、タイミングベルトを介してカムシャフトに伝えます。
エンジンの側面には、ファンベルトに引っ掛けるのと同じような丸い円盤状の滑車が設置されています。それぞれの滑車に引っ掛けることにより、クランクシャフトとカムシャフトの回転を連動させているのです。
クランクシャフトとカムシャフトのタイミングは、エンジンの基本動作である「吸入→圧縮→燃焼→排気」の工程でとても重要になってきます。
タイミングがずれるとエンジンの故障につながるので、ファンベルトとは異なる形状のベルトを使い、タイミングが絶対にずれないようにしています。
使用されているのはキャタピラのような「コグベルト」
タイミングベルトには、「コグベルト」と呼ばれるベルトが使われています。車に使われているベルトといえば、ファンベルトを思い浮かべる人が多のではないでしょうか。
しかし、同じベルトでもタイミングベルトは少し違った形状をしています。
そもそも車に用いられるベルトには、「Vベルト」「Vリブドベルト」「コグベルト」の3種類があります。現在の車に最も多く使われているのは、Vリブドベルトであり、ベルト内で縦方向に何本かの溝が切ってあります。それに対し、Vベルトには溝がありません。ベルトを切断すると文字通りVの字に見えます。
さらに、タイミングベルトで使われているベルトは、横にたくさんの溝があります。ユンボなどの足に使われているキャタピラを想像してみてください。側面から見たとき、キャタピラのようにデコボコしているとイメージしてもらうと分かりやすいかと思います。
ファンベルトと違う種類を使う理由は、絶対に滑らないことが求められているからです。ファンベルトのように滑ってしまうと、一発でエンジンは壊れます。そのため、タイミングベルトは特殊な形状をしているのです。
現在の主流はタイミングチェーン
現在の車には、タイミングベルトの代わりにタイミングチェーンが使われています。ベルトに比べ強度も高く、金属でできているので定期的な交換は必要ありません。
そのため、タイミングベルトが主流だった時代に比べ、タイミングベルトの交換作業は極端に減ってきています。近年、整備士になった方では、タイミングベルトの交換作業をしたことがない人もたくさんいます。
このように、車は技術の進歩により、メンテナンスが不要になった部品も数多くあるのです。
タイミングベルトの交換は必要?しないとどうなる?
タイミングベルトの交換は必要です。いくら強度の高いベルトといっても、ゴムでできているので当然劣化します。劣化すればベルトが切れてしまう可能性も高く、目視できない場所に設置されているため、点検もできません。
そのため、タイミングベルトを使用している車に乗っているのであれば、必ず交換時期を確認しておきましょう。
タイミングベルトが切れた瞬間にエンジンは止まってしまう
タイミングベルトが切れた場合、エンジンが止まります。ただ止まってしまうだけならいいですが、止まると同時に壊れます。なぜなら、カムシャフトとクランクシャフトのタイミングがずれるからです。
車には燃料と空気の混合気を爆発させる燃焼室があります。この燃焼室は、より燃焼効率をよくするため、車の発展と共にだんだん小さくなっています。
そのため少しでもタイミングがずれると、ピストンとバルブがぶつかってしまうのです。
バルブが曲がるのは当然ですが、折れたバルブがピストンを突き刺してしまったり、シリンダーブロックを突き破ってしまう可能性も十分にあります。タイミングベルト切れは、切れた瞬間にエンジンへ致命傷を与えてしまうほどの重大トラブルに発展してしまうのです。
こうなってしまったエンジンは修理では直りません。交換しなければならず、高額な費用が発生します。
タイミングベルトの交換を怠っただけで、このようなトラブルが発生してしまうので、交換時期が近いのであればすぐに交換をしておきましょう。
タイミングベルトの交換時期
タイミングベルトの交換時期は10万km前後です。しかし、心配なのであれば8万kmや9万kmなど少し早めに交換しても問題ありません。
ファンベルトと違い、定期的なメンテナンスでは確認できないので、交換時期は必ず守ってください。交換後は、交換したことを証明するためのシールを、エンジンルームの目につく場所に貼っておいてもらいましょう。
タイミングベルトが切れる前兆はほぼない
タイミングベルトが切れる前兆はほぼありません。仮に少しの異音が発生していても、タイミングベルトケースの中に入っているので聞こえない場合がほとんどでしょう。エンジン音にかき消されてしまう可能性も高いです。
タイミングベルトが切れると、高額な修理費用が発生します。最悪の場合、車の乗り換えも検討しなければなりません。
10万kmになる前に切れることもある
タイミングベルトの交換時期は10万km前後ですが、まれに10万kmになる前に切れてしまうこともあります。しかし、当然逆のパターンもあります。
10万kmを過ぎているのに、切れずに走り続けている車もあるのです。自分の車が、10万kmまでに切れるかどうかは誰にも分かりません。
事故などをしてしまったなどのトラブルでもない限り、予測はできませんし、ベルトの負荷は運転方法や車の状態によっても差がうまれます。もし心配なのであれば早めに交換しておくことをおすすめします。
タイミングベルトの交換はディーラーがおすすめ
民間整備工場やカー用品店など、 車の分解整備をできる店であればタイミングベルトを交換してくれる場所はたくさんあります。しかし、私はタイミングベルトの交換はディーラーでお願いすることを強くすすめます。
ディーラーの整備士は対応したメーカー車のプロなので安心
ディーラーでタイミングベルトの交換をおすすめする理由は、ディーラーの整備士はその車種のプロだからです。現在ではタイミングベルトの交換作業が極端に減りました。つまり、タイミングベルトを交換したことがない整備士も数多くいるということです。
加えて、車種によって作業での注意事項が違ったりします。タイミングベルトの交換作業は基本的に同じです。しかし、タイミングベルトまでアクセスするために取り外す部品が違ったり、狭くてアクセスしづらい場所などもあります。
そのようなとき、その車種の専門であるディーラーの強みが発揮されます。専門であるということは、その車のタイミングベルトを交換した経験のある人がいるということです。
仮にほかの店でお願いした場合、タイミングベルトの交換をしたことはあるけど、その車種に関しては初めての人がいるかもしれません。また、タイミングベルトの交換自体も初めてという可能性も少なからずあるでしょう。
整備の技術を持っているならできない作業ではないですが、できれば経験者のいる店の方が安心できますよね。ディーラーであれば、分からない作業が発生しても、整備解説書なども豊富に取り揃えているのでその点も安心です。
「経験者がいる」「手探りでなく正規の作業手順で行ってくれる」という点が、ディーラーをおすすめする大きな理由です。
タイミングベルトの交換はDIYできる?
タイミングベルトの交換はDIYでは難しいです。この記事では、自分で行うのはおすすめしません。
できないわけではないですが、それなりの整備経験と整備知識、設備が必要になってきます。おそらく整備初心者が作業する場合、クランクプーリーについているボルトすら外せないのではないかと思います。
整備経験のあまりない方で、もしどうしても自分で行いたいのであれば、ネットだけの情報を頼りに作業はしないでください。車には、その車種専用の整備マニュアルや整備解説書と呼ばれる詳しい車の説明書があります。
その情報を元に作業を行わないと締め付けトルクが間違っていたり、外す場所が違っているなどのトラブルに発展します。もしくは経験者に付き添ってもらいながら作業を行う、くらいのことをしないとできないでしょう。
もし自分1人で作業を行い、作業方法が間違っていたとしても誰も指摘してくれません。また、タイミングベルトを外した状態では車を動かすこともできません。
失敗して車を壊すリスクを減らすためにも、難しい整備はプロにお願いすることをおすすめします。
他の劣化部品も一緒に交換するのが普通
タイミングベルトの交換は通常、車が現役で動いているときに1度しか行わないような珍しい作業です。そのためタイミングベルトを外すために、エンジン周辺を分解した際、同時に他の劣化部品も交換します。
タイミングベルトと同時に交換する部品は、オイルシール、ウォーターポンプ、ベルトのテンショナーなどです。
もちろん、これらの部品も車種によって変わります。しかし自分で行う場合、そこまでフォローできない可能性が高いです。
絶対に交換しなければならない部品ではないものの、せっかく周辺を外しているのであれば同時に交換する方が効率的です。加えて、トラブルに発展するリスクも減らせます。
一般的な整備工場では、このようなことも考えながら作業を行います。もし自分で行う場合、一度ディーラーへ出向き、作業方法のアドバイスをうけたり、同時に交換する部品の注文をしておくことをおすすめします。
タイミングベルトの交換に失敗するとエンジンが壊れてしまう
タイミングベルトの交換に失敗するとエンジンが壊れます。失敗する内容にもよりますが、起こりやすいのは、クランクシャフトとカムシャフトがずれているのにもかかわらずベルトを取り付けてしまうといった失敗です。
この2つは、キッチリとタイミングを合わせてベルトをかけないとピストンとバルブが干渉します。ずれているのに気づかずエンジンをかけてしまうと、タイミングベルトが切れたときと同様にエンジンが壊れます。
1コマぐらいのズレであれば壊れないこともありますが、少しでもずれているとアイドリングが不安定になったりするのです。
もし失敗しているのであれば、壊れるのは一瞬です。エンジンをかけた瞬間に壊れます。そうならないためにも、事前に作業手順やリスクなどを徹底的に調べておきましょう。
タイミングベルトの交換費用
タイミングベルトの交換費用は、軽自動車であれば3万円から、乗用車であれば5万円からです。しかし交換費用に相場はないので、店によって違いがあることは覚えておいてください。
車種によって費用は変わる
タイミングベルトの交換費用は、車種によって大きく変わります。加えて、どこまで交換するかによっても1万円以上の差が発生すると覚えておきましょう。
例えば、軽自動車のタイミングベルト一つとっても、作業点数(=作業時間)が1.8時間から2.3時間と違いがあります。
普通車であればその差は大きく、3.2時間で終わる車種もあるなか、4.9時間かかる作業もあったりと作業内容に大きな差が発生するのです。
加えて、タイミングベルトのみ交換するのか、同時にオイルシールやウォーターポンプも交換するのかで違います。当然、交換部品の多い方が部品代が高額になることがわかるでしょう。
また、さらに詳しく話すと、工賃設定もディーラーなのか民間整備工場なのかでも違います。ディーラーでも工賃を全ての店舗で統一しているわけではありません。
このように、あまり発生しない作業の場合、交換費用をあらかじめ予測することは難しいです。もしどの店にお願いするのか決まっているなら、お願いする予定の店舗で、事前に見積もりを出してもらいましょう。
タイミングベルトの交換はプロに任せよう!
タイミングベルトとは、エンジンの動きを管理しているベルトです。カムシャフトとクランクシャフトの回転タイミングを調整しています。
オルタネーターやコンプレッサーなどに使われているベルトに比べ、交換時期は長いものの、劣化するため10万km前後で交換が必要です。
タイミングベルトを交換するのであれば、整備工場でお願いしましょう。この記事では、あえてディーラーでの交換をおすすめしており、理由としては、その車種のプロがいるからです。
車の知識や整備の技術があれば自分で交換できますが、かなり難易度の高い作業であることを理解しておかなければなりません。
失敗すればエンジンの故障に直結する作業です。もしどうしても自分で行いたいのであれば、事前にしっかりと調べ、経験者に見てもらいながら作業することをおすすめします。
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- 執筆者プロフィール
- 山北吏(つかさ)
- 1989年生まれ。現役整備士(整備士3級)webライター。webライター歴は1年半。愛車はインプレッサ(GH8)。車に乗るなら絶対MT!実家が田舎だったこともあり山道は得意!整備士として働き始め3年目。前職は輸入業...