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エンジンバルブはどんな役割?構造や材質など解説
バルブはエンジン内の調整役
非常に複雑な構造をしている自動車のエンジンですが、大きく分けると3つの部品で構成されています。
エンジンで生み出される往復運動を回転運動に変換するクランクシャフトを支えるクランクケース、次にピストンが往復運動するシリンダーを固定するシリンダーブロック、最後にバルブと動弁機構を組み込むシリンダーヘッドです。
バルブは、エンジン内部の燃焼室内に、燃料と空気の混ざった混合気をタイミングよく適量を送り込む役割と、燃焼し終えた排気を燃焼室の外に出す役割を持っています。
吸気バルブと排気バルブの役割は?
バルブには吸気バルブと排気バルブの2種類があります。
吸気バルブはシリンダーヘッドにある吸気ポートに配置され、混合気をシリンダーに送る役割を担うものです。一方、排気バルブは排気ポートに設置され、シリンダー内の燃焼ガスを排出する時に開きます。
バルブの動きはカムシャフトと連動しています。通常時はスプリングの力によって閉まっているバルブがカムシャフトの回転でバルブが押し出され口が開き混合気をシリンダー内に送り込みます。さらにカムが回転するとバルブが元の閉じた位置に戻るというのが一連の動きです。
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エンジンバルブの大きさや形状で何が変わるの?
現在は1つのシリンダーに対して2つの吸気バルブと2つの排気バルブを設ける「4バルブ式」が主流です。この方式ではバルブサイズを小さく設計でき、軽量化ができるため、エンジンを高回転でも使用できるようになります。
また、燃焼室の真ん中に点火プラグを配置でき、点火プラグを囲うようにバルブを配置できることから、火花が燃焼室全体にスムーズにいきわたります。
バルブの形状や大きさには、各メーカーやエンジニアによってさまざまな考え方があります。
例えば、バルブヘッドの外径は吸気や排気の効率を高めるためには大きい方が良いといわれ、実際にはより多くの混合気を燃焼室内に吸気できるよう吸気バルブの方を排気バルブよりも大きくするケースが多いです。
しかし、その分だけ燃焼室のサイズが拡大し、放熱量が高くなるため、そもそもの燃焼温度が上がらずに高出力化が難しくなるというデメリットも存在するのです。
こうしたポイントの良いところと悪いところを調整するのも、自動車エンジンの難しいところです。
また、バルブには燃焼室内で発生する高温高圧ガスや吸気排気工程で発生するおおきな衝撃に耐えられるよう、耐衝撃性と耐摩耗性、そして軽いことが求められます。
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現在主流のバルブシステムはDOHC
バルブやカムシャフト全体の可動機構を「バルブシステム」と呼びます。バルブやカムシャフトをどこにいくつ配置するかで、エンジン性能は大きく異なるのです。
バルブシステムにはいくつかの種類がありますが、現在主に使用されているのは、カムシャフトを1本配置するSOHC(シングルオーバヘッドカムシャフト)と、カムシャフトを2本配置するDOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)の2種類です。
SOHCは低コストでシンプルだが高回転が苦手、DOHCではコストは高いが高性能なエンジンを作れるという特徴を持っています。
現在はミニバンから軽自動車まで、ほぼすべての車種にDOHCが採用されていますが、かつてはDOHCが高性能の証であった時代もありました。車のリアガラスや車体側面に、高性能エンジンを搭載していることを示す「DOHC16バルブ」というロゴが描かれていたほどです。
コスト高で技術的にも難しいと言われていたDOHCが、今では低コストで使いやすい技術にまで昇華させられ、高出力と低燃費が当たり前の時代となったのです。
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OHVの歴史
- 執筆者プロフィール
- Red29
- 1980年代生まれ。国産ディーラーでの営業職として働き、自動車関連の執筆者として独立。ユーザー目線に立った執筆を心掛けています。愛車はトヨタプリウス。ホットハッチに代表される、小規模小パワーのクルマが...