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「日本人の意見を無視したら大成功?」3代目からコンセプトを大転換させたスバル フォレスター【推し車】
コンセプトを転換、本格的に「SUV」となった3代目

4WDを得意としつつも、他の日本車メーカーのようにラダーフレームを使った本格的なクロカン車を持たない、少なくとも独自生産した事はないスバルにとって、SUVの主力車種といえば「フォレスター」。
1997年に登場した初代から2代目までは、インプレッサをベースにちょっと背の高いワゴンボディを載せ、最低地上高200mmを確保することで、「他社のものとは一味違う、オンオフ問わない走りの良さが特徴のクロスオーバーSUV」でした。
それが主要市場の北米から要請されてコンセプトが一転、単にサイズアップするだけでなく、オフローダー的なSUVとしての実用性も求められたのが2007年登場の3代目です。
MOBY編集部がAIに聞いた、「30~50代のクルマ好きが興味を持つ名車」にもノミネートされており、デビュー当初の日本では賛否両論あったものの、フォレスターが「もっともSUVらしいスバル車」として人気を得ていく第一歩となりました。
日本と北米で異なった「アウトバックスポーツ」の有無

1997年に発売されるや、「本格的なフルタイム4WDと水平対向エンジンによる走りの良さと、5ナンバーサイズ+α級ステーションワゴンとしての高い実用性を併せ持つRV」として日本で人気となり、そのコンセプトで2代続いたスバル フォレスター。
初代発売当時はワゴンもSUVもミニバンも全部「RV」でしたから、フォレスターのように複数の属性を併せ持ち、しかも本質は5ドアハッチバックでしかないインプレッサワゴンより実用的なクルマとして大歓迎されます。
しかし昔も今もスバルの主要市場といえば北米で、そちらでは日本で大歓迎だった2代目までのフォレスターは、若干物足りなく感じたようです。
それはなぜかと考えると…本質的には、日本だと「なんちゃってRV扱い」で大不人気車に終わった「インプレッサ グラベルワゴンEX」が、北米では「アウトバックスポーツ」として好評な一方、フォレスターの車内空間、特に後席の居住性に不満が持たれました。
要するにアメリカンサイズで考えればアウトバックスポーツもフォレスターも大差なく、ならばアウトバックスポーツやその後継車(「XV」…現在の「クロストレック」)より車内が広く、レガシィベースのアウトバックより本格的なSUVが求められたわけです。
おかげで日本だと「フォレスターは3代目からなんでこんなに変わっちゃったの?」と不思議がられますが、2010年に日本でも発売された「XV」が、実質的に初代〜2代目フォレスターの後継になった、とも考えられます(さすがにラゲッジ容量は全く異なりますが)。
一回り大きくたくましく、スバルSUVの主力へと成長

こうして見た目が2代目までよりかなりズングリして、実際に一回り大きくなったフォレスターですが、各部の寸法やスペックを見ていくと、その狙いがわかります。
全長×全幅×全高の3サイズ全てが拡大されていますが、肝心なのはそれで何が変わったか。
全長以上に大幅延長となったホイールベースによって、後席のレッグスペースが広くなり、リアサスのダブルウィッシュボーン化に伴う後席リクライニングシートの採用で、主に後席の居住性が大幅アップ!
全高アップは最低地上高を引き上げ、リアオーバーハング縮小で拡大したリアのディパーチャアングルと合わせ悪路走破性の向上、そしてもちろん室内高も広げて乗員の座面を上げて見晴らしを良くし、SUVとしての性能と、ここでも居住性や快適性を大幅にアップ!
全幅とともに拡大したトレッドでフロントタイヤの切れ角は増し、ボディが大きくなっても最小回転半径はむしろ小さくなるなど、取り回しは良くなっています。
つまり「日本ウケしたオンオフ問わぬ走りがいいワゴン」から、「北米ウケする広くて快適で悪路走破性の高いSUV」へと、開発目標が一変していました。
その結果、日本では「フォレスターってこういうクルマでいいんだっけ?」と首を傾げられますが、サイズアップのわりに車重は大して増えませんでしたし、EJ20エンジンはNA/ターボともに最高出力向上のほか、低回転からトルクを増やすセッティング(※)。
(※後にNA仕様EJ20は新世代で燃費のいいFB20に置き換わり、よりパワフルなEJ25ターボ搭載車も追加)
しかもまだ5速MT車を選べる時代でしたから、スバリストも気がつけば案外スンナリ「SUVとしてのフォレスター」を受け入れたのでした。
おかげでスバルは、スポーツセダンやスポーツワゴンメーカーとしてだけでなく、SUVメーカーとしても未だに存在感を発揮できているのですから、3代目フォレスターでの「コンセプト大転換」は正しかった、と言えるでしょう。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...