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「あのホットハッチの名前を受け継いだのに全く売れない」寂しい結末を迎えた三菱 6代目ミラージュ【推し車】
名車の名を受け継いだけれども
今やミニバンのデリカD:5から軽EVのeKクロスEVに至るまで、ほとんど「SUVメーカー」としてのみ、かろうじて存続を許されている状態の三菱ですが、かつて1990年代EVブームには大躍進した時期がありました。
バブル崩壊で火の車な日産を追い上げ、初代オデッセイの大ヒットまで死に体に近かったホンダを買収するのではと言われた勢いも今は昔、相次ぐスキャンダルで現在は日産の傘下にあり、国内向け独自生産車種のラインナップもかなり寂しいことになっています。
2012年に発売された6代目「ミラージュ」も、かつてスポーツコンパクトの人気モデルだった5代目までの名を受け継いだものの販売は期待外れに終わり…それでもMOBY編集部がAIに聞いた「30~50代のクルマ好きが気になるクルマ」にはしっかりノミネート。
そんな6代目ミラージュとはどんなクルマだったのか、振り返ってみます。
復活した「ミラージュ」はタイ製コンパクト
もともと「ミラージュ」というクルマは、三菱初のFF車として1978年に初代がデビューしたコンパクトカーで、新たな販売チャンネル「カープラザ店」を立ち上げて大々的に売出し、「ギャラン店」で販売するギャランやランサーなど並ぶ、三菱自動車の柱でした。
それから2000年に5代目が販売終了するまで22年、その名を残るトールワゴン「ミラージュディンゴ」が2002年に販売終了するまでを含めるなら24年に渡り日本でその名を轟かせたものの、時代の流れでミニバンやSUVが主力となる中、ひっそり消えていきました。
ランサーの姉妹車だった4ドアセダンや、少々マニアックだった2ドアクーペ(ミラージュアスティ)はマイナーな存在で、今でもミラージュといえば、スポーティな3ドアハッチバック車を思い出す人は多いでしょう。
2012年に三菱が新たに発売したコンパクトカーへ「ミラージュ」と名付けた時は、1リッター3気筒エンジンを積むリッターカーとはいえ、かつての名車の栄光を受け継ぐ存在になるかと、それなりに期待されたものです…タイ製だとわかるまでは。
そもそもタイ製のコンパクトカーといえば、ホンダのフィットアリア(2002年)、日産のマーチ(4代目K13・2010年)という前例があったものの、「安普請な新興国向けコンパクトカーを日本市場に低価格車として押し付けた」と、どれも不評。
そこへ新たに6代目ミラージュが加わったとて、「またタイ製か!」と発売前から結果は見えていますし、実際に発売初年度でさえ、三菱が期待した目標販売台数の半分も売れませんでした。
新興国で生産したクルマは日本じゃウケない!
日本でコンパクトカーや軽自動車の売れ筋は、その頃には既に発売されていた初代ホンダ N-BOXを代表とする背の高いハイト系でしたし、リッターカーならトヨタのヴィッツ、もっと小さくて安いクルマでもトヨタ パッソ / ダイハツ ブーンがあり、しかも国産。
イメージリーダーとなるハイパフォーマンスモデルがあるでもなし、デザインも内外装も質素というより貧弱、ただ安いだけが取り柄のタイ製リッターカーなど売れるわけもない…と誰もが思い、そして実際そうなった、というだけのクルマです。
2013年まで販売されていた、1.3~1.5リッター級コンパクトカーの「コルト」はソコソコ好評でしたし、1.5リッターターボ車だけでなく、NAの1.5リッター車にもゲトラグの5MTを設定してラリーで活躍しましたから、素直にその後継車を作ればよかったのですが。
SUV以外はミニバン含め車種整理で急激に縮小していた時期の三菱には、ヴィッツやフィットに対抗できるクルマを開発し、国内で製造・販売する体力が既になく、タイ製の新興国向け低価格車を売るしかなかったのでしょう。
2015年には途中で加わった1.2リッターエンジンのみへグレードを整理し、2020年には「ダイナミックシールド」を採用して精悍なフロントマスクになったものの、販売が上向くはずもなく、2023年3月で日本向けの販売を終了。
これで1.2リッターのMIVECターボ版でも積み、100馬力も出せば通好みの面白いホットモデルになったかもしれませんが、かつてシビックタイプRとすら張り合ったホットハッチの名を受け継ぐクルマとして、あまりにもパッとしない寂しい結末を迎えたのが残念です。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...