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トヨタ「SUVとは呼ばないで」新時代のショーファードリブンは“非常事態”にも強いクルマ・センチュリー【推し車】
もはやサルーン(セダン)とは限らない、それでも最高級車!
トヨタのみならず、今では日本車全てのフラッグシップモデルと言って良い高級車のトヨタ センチュリー…3代目の途中、2023年9月には5ドアSUVタイプ(SUVではない)が発表されたので、もはや「最高級サルーン」とは呼べなくなりましたが、その地位は不動です。
セダンタイプ、SUVタイプともに、2代目までの専用設計とは異なり既存車の部品も可能な限り使って信頼性を上げつつ、仕上げや乗り味…もちろん後席…の面で最高級車としてのセンチュリーらしさを維持しています。
MOBY編集部がAIに聞いた、「30〜50代のクルマ好きが気になる名車」でも現行モデルに関わらずノミネートされていますが、改めてセンチュリーとはどんなクルマか、その存在意義も含めて紹介しましょう。
究極の保守層向けショーファードリブン、3代目セダンタイプ
2018年6月にモデルチェンジした3代目センチュリー、現在はSUVタイプの登場で「センチュリー(セダンタイプ)」とされている現行センチュリーセダンですが、日本の量産乗用車では唯一のV12エンジンを積む、各部が専用設計の2代目からは大きく変わりました。
何しろ2代目がデビューした1997年当時とは異なり、トヨタでは高級車ブランドのレクサスからLSという立派な最高級サルーンが販売されており、値段や車格でもセンチュリーにヒケは取りません。
ただし、ショーファードリブンとして必要な風格、特に超保守層ユーザー向けにはセンチュリーならではの満足感を求められるあたり、「レクサスの最高級車」と、「トヨタのそして日本の最高級車」の違いでしょうか。
プラットフォームやメカニズムは、先代(4代目)レクサスLS600hLをベースにして信頼性重視、5リッターV8エンジン+THS-IIハイブリッドシステムによる動力性能と静粛性、環境性能を両立し、予防安全システムなども最新のものを搭載。
塗装や組み立て精度、内装の質感(特に後席)により、センチュリーの後席を利用する保守的な富裕層が、最大限の満足度を得られるクルマとして開発されています。
ただし、その開発コンセプトやキャラクターが従来どおりの評価を得られない、「ただそれだけのために、高額なクルマを購入するのか!」という批判にもさらされ、自治体を中心に新たなフラッグシップ・ショーファードリブンが求められるようにもなりました。
今はまだ世界にたった2台、特別な「センチュリーGRMN」
センチュリーが3代目へモデルチェンジした年の9月、おそらく持ち込み登録のために、とある運輸支局へ仮ナンバーで現れた写真がSNSで拡散され、その存在が周知のものとなったセンチュリーGRMN。
16代目クラウンの発表会(2022年7月)で開発時のエピソードとして、「高級車がいつまでもセダンという固定概念はいかがなものか?」と疑念を呈していた豊田章男社長(当時)にとって、センチュリーはフルチューンして乗り回したい高性能セダンだったようです。
それでトヨタのスポーツブランド「GR」の中でもとびきり高性能車を表す「GRMN」として2台(白および黒)を製作、ブランドイメージ的なものか「ドリフトは禁止されてます」と言ったものの、豊田 章男氏らしい1台として注目を集めました。
動力性能は絶対的なスペックは変わらず、「必要かつ十分」ということでチューニングの有無も含めて謎なものの、強化エンジンマウントを使用するなど本格派。
足回りはあくまでショーファードリブンとしての快適性は基準としつつ(同じ理由で内装もGRのプッシュスタートスイッチ以外、特にGRMN仕様ではない)、エアサスのセッティング変更やホイールハブの精度向上で、運転しても楽しいクルマになっている…ようです。
実際に全開アタックを公の場で披露する機会は今までないものの、ハニカム形状のフロントグリル、GRMN仕様のロアスカート、カーボン製トランクリップスポイラーで迫力満点!
245/45R19へインチアップしたタイヤ(アドバンスポーツV105)や19インチホイール(BBS RZ001)、GR仕様の白く塗装したブレーキキャリパーで足元を引き締めています。
昔からセンチュリーへフルエアロを組むVIPカーやドリ車はあったものの、さすがにセンチュリーGRMNの市販情報はなく、いずれセンチュリー(SUVタイプ)が主流になれば、あるいは…と可能性があるくらい?
もっとも、宮内庁で皇室向けにも納入されている最高級サルーンですから、現時点では「豊田 章男氏のちょっとしたお遊び」で終わる可能性が高そうですが。
現代の最高級車に求められる姿はこれだ!3代目SUVタイプ
クラウンのみならず、センチュリーすらも4ドアセダンであり続けることに疑問を持ち、あくまで先人の偉業として自身の求める、自身が使いたい最高級車ではない、としていた豊田 章男氏の思想を最大限反映した形で、2023年9月に発表されたのがSUVタイプ。
事前の報道では「センチュリーSUV」と仮称されており、最新SUVと多くのコンポーネントを流用、2BOXスタイルで重厚感なフロントマスク、大径タイヤとサスペンションで確保された最低地上高などから、欧米の超高級スーパーSUVに対抗したモデルに見えます。
しかしトヨタは「SUVとは呼ばないで」と公言しており、ラインナップでの名称もSUVタイプの新型が「センチュリー」、従来からの3代目センチュリーが「センチュリー(セダンタイプ)」と変更。。
実際、「SUVっぽいデザイン」ですし、「紅蓮(ぐれん)」というグローリーレッドとシルバーのツートンも準備されたボディカラーを見ると、セレブ層の超高級レジャーに使われても不思議ではありません。
しかし、実際に車内を見ると巨大な2BOXボディのキャビンは後席のスペースと快適性を最大限に追求しており、後席広報のラゲッジはゴルフバッグ3個分のささやかなもので、後席を前に倒して広大な荷室を生む機能もなし。
そうなると「なるほど、これは確かにSUVではなく、従来以上に快適性を持たせつつ、セダンタイプでは無理な、非常事態での機動性や安全性を追求した新時代のショーファードリブンだ!」とわかります。
セダンタイプ(2,008万~)以上に高額なSUVタイプ(2,500万~)ですが、外部給電モードも備えたPHEVであり、非常時には「動く司令塔としてだけでなく、電力供給を可能な拠点」としても期待できるのが頼もしいところ。
センチュリー(セダンタイプ)に浴びせられる「こんな快適に動くだけの乗り物に高いお金をかけて!」という批判も、SUVタイプなら一蹴できそうです。
このようなクルマが役に立つ状況が訪れなければ一番ですが、「それでも備えねばならない時代のフラッグシップ」として、現在望み得る最高のクルマ、それがSUVタイプの新型センチュリーなのでしょう。
今はまだ奇妙なクルマ扱いですが、後々「あってよかった名車」になるかもしれません。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...