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「バジェットカーの鬱憤を晴らせ!」スズキの直談判で名車となった2代目カルタス【推し車】
目次
見た目だけの安グルマと思いきや、意外によく走った思い出
自他ともに認めるダイハツ車ファンである筆者にとって、最大のライバルであるスズキ車はアイデンティティーに関わることもあってハンドルを握る機会は少なかったものの、唯一の例外として30年近く前、頻繁に運転したのが2代目のカルタスでした。
確か1988年式のアヴェールL初期型で、1リッター3ATのFF車、新車価格が79.1万円のところ、6年オチを10〜20万くらいで引っ張ってきた中古車です。
外観は初代に比べて断然カッコ良かったものの、内装は簡素で安普請、それだけに見た目より広くて快適で、四輪ストラット独立懸架の足回りで結構ハイペースな走りができましたし、車重720kgに58馬力ですから動力性能も十分で、スズキの実用エンジンとしちゃ上等。
「見掛け倒しの安グルマだと思ったら、案外マトモに走るな」と、なかなか楽しいクルマでした。
スズキの第2世代リッターカーは、1980年代の隠れた傑作?
スズキではフロンテ800以来の小型車、リッターカーとしては初となった初代カルタスですが、1983年発売当時は世界的な販売、特に北米で大きな力を持つGMにバジェットカー(低価格車)として位置づけられ、とにかく安くて低燃費だけが取り柄になっていました。
あまりGMの言い分だけを聞いていても、日本国内やヨーロッパでの販売が見込めないと感じたスズキはGMに直談判してビッグマイナーチェンジ級の改良を行い、品質向上や性能アップで次第に「安いだけのクルマじゃない」と印象づけます。
GMとしても、安価と低燃費を維持しつつ品質や性能が向上すれば文句はなく、1988年にモデルチェンジした2代目カルタスは、スズキの鬱憤を晴らすかのような力作となりました。
2004年の2代目スイフトでプレミアム・コンパクト路線への転向に成功するまでのスズキ小型車は、「軽自動車メーカーが片手間で作ったような」印象がどうしても強く、2代目カルタスも高性能版GT-iを除けば地味な存在です。
しかし、内装の質感はともかく使い勝手や走行性能の品質ではコストパフォーマンスが非常に高く、1980年代の隠れた名車として、もっと評価されてしかるべきクルマだと思います。
塊感のあるデザインに、ルーミーな車内空間
率直に言って、「でかいアルト」的でバタ臭さが抜けないデザインだった初代に対し、初代は車体表面を平滑化するフラッシュサーフェス化を徹底し、クサビ型のウェッジ・シェイプデザインや、精悍な印象を与えるヘッドランプによるフロントマスクは秀逸です。
長いルーフの後端から、リアウィンドウを寝かせたテールゲートはデザイン優先で、後席の頭上スペースや居住性に若干の影響があったものの、クーペまたはシューティングブレーク風のスポーティなイメージを与えています。
3ドア車のリアクォーターウィンドウはそれ自体の面積が広く採光性が良好なだけでなく、ブラックアウトされたB/Cピラーでさらに広く見せる効果があり、広くて快適そうな車内空間を予想させるのには十分でした。
さすがに内装は低価格コンパクトカーなりのプラスチッキーなもので、上級グレードを除けば装備は簡素でスカスカ、シートの座り心地も短距離なら何の支障もないという程度でしたが、余計な装飾がなくて、むしろ下位グレードの方が広々に感じたものです。
GT-iはジムカーナでGA2と主力の座を争った最後のマシン
1分程度の超スプリント・タイムアタック競技、「ジムカーナ」のA1クラス(1,300cc以下)では、1986年に初代カルタスGT-i(AA33S)登場後、トヨタのEP71スターレット(NA版)と主力の座を争っていました。
その均衡を破ったのが1988年に登場したホンダGA2、2代目「シティ」に110馬力の1.3リッターSOHC16バルブエンジンD13Cを搭載したハイパフォーマンス版で、EP71はもはや勝負にならず、唯一食いつけたのは同年デビューの2代目カルタスGT-i(AA34S)。
1.3リッターDOHC16バルブエンジンは歴代最強の115馬力までパワーアップ、4輪ディスクブレーキをおごるなど、性能・装備面で十分な実力を誇った、カルタスのハイパフォーマンスモデルでは決定版です。
結果的には、実用車として失敗する原因になった超低重心クラウチング・スタイルで、ジムカーナでは他を寄せ付けない抜群の旋回性能を発揮したGA2が勝ち残り、2000年代はじめまでほぼワンメイクの主力車種となります。
しかし、初期には初代からの流れで2代目カルタスGT-iを選んだユーザーも少なからず参戦、上位で優勝を激しく争うなど、「ジムカーナA1クラスでGA2シティと主力の座を争った最後のマシン」でした。
ジムカーナ以外のモータースポーツでも2代目カルタスGT-iは長らく活躍し、その代表格はスズキスポーツ(現・モンスタースポーツ)が全日本ダートトライアルやパイクスピークヒルクライムへ投入した、「ツインエンジンカルタス」です。
4ドアセダンなどを追加、末期は廉価版として2000年まで販売
ボディバリエーションも拡大され、モデルチェンジ翌年の1989年には4ドアセダンの「カルタスエスティーム」を、さらに1992年にはロールバーを持たないフルオープンモデル「カルタスコンバーチブル」を追加し、コンバーチブルは北米でヒットしました。
1995年には3代目の「カルタス・クレセント」が登場しますが、1.3~1.5リッター級でステーションワゴン版には1.8リッター車もあるなど車格が上がって純粋な後継車とは言えなかったため、2代目も素の「カルタス」として継続生産。
1998年5月に3代目が「クレセント」のサブネームを外して「カルタス」の名を受け継いで以降も、2代目のハッチバック車は「カルタスMシリーズ」として1999年まで生産し2000年まで販売、デビューから10年を超えるロングセラー車となります。
特に末期のMシリーズは、エアコン、ステレオ、パワステを標準装備しながら、1リッターの「1000F」が69.8万円から買えるという激安車で、いい加減古く需要は少なかったとはいえ、「軽より安いリッターカー」は最後まで健在でした。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...