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ポルシェ911の効率と性能を紹介!歴代シリーズなども

効率や性能だけ見たら、空冷911なんかに魅力はない

1973年型ポルシェ911カレラRS2.7 通称「ナナサンカレラ」(901型)

ジッポーライター、手巻きの腕時計、デジカメではない銀塩カメラ、ジーコロロとダイヤルを回す黒電話…何もかもデジタル化されつつある現代において、「趣味」でもなければ使ったり集めたりしない数々の実用品。

便利じゃないけど味があり、今の世の中では使い物にならない、実用品としては価値がないからこそ、あえて所有するに値する…993型以前の「空冷ポルシェ911」も、そんな「価値ある骨董品」のひとつかもしれません。

「強制空冷エンジンならではのエンジン音やフィーリングが魅力的」と言われても、興味がない人にとってはただウルサイだけの古い機械ですし、水冷エンジンと異なり緻密な燃焼制御ができないため、最新の911に比べて動力性能も環境性能も劣ります。

いくら最近の911は大きすぎて、ついに後輪操舵機構がないと取り回しに苦慮するようになったといっても、狭くて居住性が厳しい空冷ポルシェに比べれば快適で運転もしやすく…ならばなぜ、「空冷ポルシェには魅力がある」などと言えるのでしょう?

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古の伝説となりつつある、空冷ポルシェ911

現在のポルシェ911は、リアエンジン後輪駆動というレイアウトや、モダナイズはされていても一目見て911とわかるデザインを除けば、ある時期から全く異なるクルマになったと言えます。

その大きな転換点が1997年に発売された5代目911の「996型」であり、長年搭載されてきた強制空冷エンジンから水冷エンジンへの転換は、多くのファンを「911も軟弱になったもんだ」と嘆かせたほか、デザイン面もはじめさまざまな酷評にさらされました。

しかし環境対策と高性能化の両立には、緻密な燃焼制御や冷却処理が可能な水冷エンジン化は絶対的要求であり、おかげで911は現在まで現役のスポーツカーとして延命することができたのです。

しかし、だからといってそれまでの空冷911の魅力が色褪せたわけではなく、以下に996型以前の空冷911を簡単に説明しましょう。

901型(初代911・1964年):「ナロー」や「ナナサンカレラ」で有名

ホイールアーチの膨らみがない元祖「ナロー」、1964年型ポルシェ911(901型)

第2次世界大戦後、スポーツカーやレーシングカーを開発してきたポルシェが2+2シータースポーツカーの356後継として開発したのが、901型。

当初は開発コードそのままの「ポルシェ901」としてデビューしますが、ほどなく3桁数字の真ん中に「0(ゼロ)」が入る車名は全てフランスのプジョーが商標登録していると判明、「ポルシェ911」へと改名しました。

初期の901型は全長4,163mm、全幅1,610mmと現在のトヨタ GR86 / スバル BRZ(全長4,265mm、全幅1,775mm)より一回り以上小さく、強制空冷水平対向6気筒エンジンもわずか1,991cc、最高出力130馬力と、現在の911からは想像もできないささやかな性能です。

しかし、強靭なボディや吹け上がりの鋭いエンジンによる素性の良さは初期型でも既にその片鱗を見せており、最終的には標準モデルでも2.7リッターまで拡大、3リッター345馬力まで発展した「カレラRSR」が最強バージョン。

特に有名なのは1968年7月まで生産された、ワイドタイヤを履くためのホイールアーチがない通称「ナロー」(901型そのものをナローと呼ぶ場合もある)や、巨大なダックテールスポイラーが特徴的な1973年型カレラRS2.7、通称「ナナサンカレラ」です。

途中からアメリカの安全基準に沿った「ビッグバンパー」とも呼ばれる5マイルバンパーの装着で外観が後述する930型(2代目911)と似た形となり、当初ターボだけだった930型登場後も、自然吸気版911として1978年まで生産されました。

なお、水平対向4気筒エンジンの356に対し、同6気筒の911では車格に大きな隔たりがあるため、356ユーザーへの対応として4気筒エンジンを積む「ポルシェ912」も販売されており、912後継として914登場後も、914の廃止で北米では再び912を短期間販売しています。

930型(2代目911・1974年):930ターボを名乗った深い事情

ブームの頃にこのアングルからのショットでヤラれたスーパーカー少年は多かったのでは?ポルシェ911ターボ3.3(930型)

930型と901型が並行販売されていた時期のポルシェ911には、その後の911にはない複雑な事情がありました。

実はポルシェ911とは901型1代限りのクルマだったはずで、後継として近代的な水冷直4またはV8エンジンを積む実用性の高いファストバッククーペ、924ターボや944、あるいはさらに上級モデルとして928といった一連のFRポルシェを開発していたのです。

低公害型で低燃費、経済的で実用性も高い3ドアファストバッククーペは主要市場の北米で絶対必要であり、911のようにビートル(VW タイプ1)の流れを引きずる旧態依然としたRRスポーツクーペなど、1970年代以降はお呼びでないと思われていました。

そのため930型は当初911ではなく「ポルシェ930ターボ」としてデビュー、924ターボや944が出揃えば、自然吸気エンジンの911(初代901型)ともどもフェードアウトする予定でしたが、ここで思わぬ横槍が入ります。

930ターボ登場時点で911の固定客として貼り付いていた熱烈なスポーツカーファンは911の廃止を受け入れず、猛反発したのです。

驚いたポルシェは911の存続を決定、1978年に901型後継として930型の自然吸気エンジン版が開発されるとともに930ターボも「911ターボ」と改名し、911シリーズの2代目である、つまり911は存続すると改めて宣言した形になります。

その後も1988年にリトラクタブルヘッドライトを採用した「911ターボ フラットノーズ」という異色のモデルを限定販売しましたが定着せず、「911はこのカタチでリアエンジンでなきゃ!」という流れを決定づけました。

964型(3代目911・1989年):ブラックバード、撃墜!

ポルシェ911カレラ(964型)

漫画「湾岸ミッドナイト」シリーズで「ブラックバード」という異名とともに登場したポルシェ911ターボは、ごく初期を除けばこの964型で、読んでいた世代からするともっとも魔性の魅力を持つモデルと言えるでしょう。

存続の決まった911を発展させるうえで、リアエンジンのレイアウトはもちろん、どうもカタチすら根本的に変える事が許されないとわかったため、901型と一件ほとんど変わらないように見えて、空気抵抗を格段に減らすためほとんどの設計が改められています。

4WDやATといった近代911の要素はここで大部分が取り入れられましたが、その一方でエンジンの排気量は最大で3.8リッターへ拡大、3.6リッターターボの出力も360馬力に達するなど、この時点で空冷エンジンでは熱問題への対処がかなり深刻になっていたはずです。

グループBマシンの959からフィードバックした4WDシステムを搭載(カレラ4)した際、シリンダーヘッドだけでも959同様の水冷とする半水冷化を検討したのかは不明ですが、ともかくこの代では空冷エンジンが続きました。

後述する993型がデザイン面でだいぶ変化したため、901型以来の「いかにも昔ながらの911のカタチ」はこの964型が最後となり、そのデザインと最新装備の両立、かつ旧車までいかない高年式車ということで、中古車市場では人気が高いモデルです。

993型(4代目911・1993年):最後にして最良の空冷911

ポルシェ911ターボ(993型)

1990年代に入ると、さしもの911も「前時代的な遺物」、しかしだからこそ味があってイイ…だけで済ませるのは難しくなり、デザインスタディとして1989年に発表された「パナメリカーナー」に始まる、近代ポルシェデザインを部分的に取り入れました。

キャビンとその後ろは901型からの面影を残しつつフロントマスクは一新、ただしその後の996型ほど徹底的な変化ではありませんが、964型以前と比べれば格段に近代的。

さらにリアアスペンションも従来のセミトレーリングアーム式からマルチリンク式へ変更し、路面追従性と高速安定性の向上へ大きく寄与した一方、エンジンはあくまで伝統的な強制空冷でした。

初めて登場した4WDターボ版「911ターボ」では3.6リッターターボがついに408馬力に達しますが、ポルシェ911を第一線のスポーツカーとして存続させるには水冷化による緻密な制御、騒音抑制による快適性向上といった近代化が必須となり、これが最後の空冷911です。

「カタチがちょっと新しすぎる」とはいえ、エアコンも効いて運転も楽で安定志向の高年式911最後の空冷モデルとして「ASKではなく値札がつく範囲の中古車」としてはタマ数もそれなりに豊富で盛んに取引されていますが、価格高騰で敷居の高さは否めません。

新しいと言っても1998年までのクルマ、つまり新しくとも25年オチのクルマですから、964同様に電子制御や当時の最新装備が故障しやすいという一面もあり、維持に気を使うという意味では1990年代国産スポーツと似たような悩みがあります。

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効率や扱いやすさの対極にあるものほど、趣味は楽しい

ポルシェ911Sタルガ(左・901型)・ポルシェ911ターボ3.0(右・930型)

長い歴史を誇るクルマ特有のドラマはさておき、新しくなるほど大排気量でパワフル、熱問題は厳しいですし、ドライサンプ方式で空冷というより油冷といった方がいいほど大量に使い、しかも消耗していくエンジンオイルはやたら漏れます。

930以前ならパワステもオートマもなく、車内は狭いですし、ドアの開け閉めひとつとっても重厚感はあるものの愛想はない…こんなクルマの何がいいの?と思う人は少なくないでしょうし、それは間違いでもありません。

しかし、同じ目線に立つのは失礼かもしれませんが、機械式キャブレターにポイント式点火のSOHC2バルブエンジンを搭載した、550cc旧々規格の軽自動車に乗る筆者には、空冷ポルシェの心地よさ、魅力が少しわかるような気もします。

「人間に運転させる」のではなく、「人間が運転しなければならない」自動車は本質的に異なるという意味で、空冷ポルシェ911も、古い軽自動車も何ら変わりはないと思うからです。

要するにクルマとの対話を、あるいはクルマを通した路面や空気との対話を楽しむクルマであり、未だ存在が許されることに感謝しつつ乗るという、実用車というより芸術品、工芸品に接するような気持ちが、このテのクルマにはあります。

そういう意味で、「強制空冷エンジンだから」という点にはそう深い意味はなく、仮に911が初代901型から水冷だったとしても、きっと同じような気持ちを抱いたことでしょう。

だから、「空冷の何がいいんだ」という先入観を先に抱いてしまうと、その先で見えてくるはずの大事な事を見落とすかもしれません。

要するに「趣味とは無駄が多いほど楽しい」ものであり、空冷911はその楽しさを存分に味あわせてくれるクルマなのだ、ということなのです。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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