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不敗神話を作ったRの心臓「RB26DETT」とは?搭載車種や新品エンジンの入手方法を紹介
目次
日産が誇る伝説の名機「RB26DETT」はどんなエンジン?
RB26DETTは、1984年から2004年にかけて日産が生産していた直列6気筒エンジン「RBエンジン」のバリエーションのひとつです。
2.6L水平直列6気筒ツインターボエンジンとなっていて、「RB26DETT」とはRBエンジン(RB)の2.6L(26)、DOHC(D)、電子制御式燃料噴射(E)、ツインターボ(TT)であることを表しています。
RB26DETT以外のRBエンジンは日産の中型セダンに多く採用されていましたが、RB26DETTは日産の名スポーツカー、スカイライン GT-R専用エンジンとして開発されました。
2002年にスカイライン GT-Rが生産を終了し、RB26DETTを搭載する新車が登場することはなくなりましたが、現在でもスポーツカーファンからは名機と称される、伝説的なエンジンのひとつです。
レースで勝つために設計されたエンジン
RB26DETTの排気量は2,568ccです。2.5L以下にはならず3.0Lには遠い…という、自動車税のことを考えると中途半端な排気量となっています。
しかし、RB26DETTがこの排気量になったのには理由があります。
スカイライン GT-Rは、市販車でおこなわれる全日本ツーリングカー選手権(JTC)への参戦が前提となっていました。
そのJTCで指定されているルールの中で有利になるよう、開発が進められたことが理由となっています。
「スカイラインGT-R」の「R」が「レース(Race)」を表しているとおり、スカイライン GT-Rはレースのために生まれた車で、それに搭載されるRB26DETTもまた、レースのために生まれたエンジンなのです。
RB26DETTのレースにおける華々しい戦績
レースで勝つために設計されたRB26DETTを搭載したスカイラインGT-Rは、その期待に応えてレースで華々しい結果を残しています。
RB26DETTを搭載したスカイラインGT-Rは、1990年の全日本ツーリングカー選手権(JTC)でレースにデビュー。
カルソニックスカイラインとリーボックスカイラインの2台は、3位以下を周回遅れにする衝撃的なデビュー戦勝利となりました。
この年のJTCでは6か所のサーキットでレースがおこなわれましたが、すべてのレースでスカイラインGT-Rが予選1位・決勝1位を飾る、完全優勝を果たします。
1993年にSUPER GTの前進である全日本GT選手権(JGTC)へと戦いの場を移すまで、スカイライン GT-Rは29戦全勝という破竹の進撃を続けました。
さらに、スカイライン GT-Rは国内だけでなく、世界を相手にしてもその強さを発揮します。
世界的に有名な市街地レースであるマカオグランプリ・ギアレースでの優勝をはじめ、スパ・フランコルシャン24時間レースでの総合優勝、オーストラリアツーリングカーレースでのチャンピオンシップタイトル獲得など、輝かしい戦績を残しました。
こうして、世界にスカイライン GT-Rの名が轟くこととなったのです。
RB26DETTを搭載する車種は?
スカイライン GT-R専用に開発されたRB26DETTは、1989年から2002年に生産されたスカイライン GT-Rに搭載されています。
それから、日産の特装車などを手がけるオーテックが発売した「ステージア」の特別仕様車にも搭載されました。
スカイライン GT-R
R32
レースで勝つために作られたRB26DETTですが、そのエンジンを初めて搭載したのが1989年発売のスカイライン GT-R(R32)です。
1990年にJTCへ初参戦し、なんと全6戦でポールポジション&優勝という他を寄せ付けない圧倒的な強さを発揮。さらに翌年、翌々年、そしてJTC最終年となった1993年に至るまで全戦全勝という、「不敗神話」を築き上げました。
R32には、RB26DETTだけでなく、「ATTESA E-TS」や「Super HICAS」といった当時のハイテク装備が多数採用されています。
R32は登場から30年以上が経過していますが、その魅力はいまなお色褪せることなく、中古車市場でも非常に高値で取引される人気モデルです。
R33
1995年にスカイライン GT-RはR32からR33へモデルチェンジをします。
全長約20kmにも及ぶドイツのサーキット「ニュルブルクリンク 北コース」での走行テストがさかんに実施され、R32を21秒も上回るラップタイムを記録したことから、「マイナス21秒ロマン」がキャッチコピーとなっていました。
R33は、R32よりもボディサイズが大型化され、さらにボディ剛性も強化されています。それにより後部座席の居住性が向上し、よりGTカーらしい車となりました。
しかし、これには賛否両論あり、「ボディサイズ大型化によりキビキビとした走りが失われた」という声も出ました。
R34
1999年に登場したR34は、スカイラインGT-Rの中でもっとも近代的なGT-Rです。
R34への搭載で最後となるRB26DETTは、最高出力こそ280HPのままなものの、最大トルクは40.0kgf・mへパワーアップ。車内には「マルチファンクションディスプレイ」と呼ばれるモニターが設置され、水温や過給圧などエンジンの状態を確認できるようになりました。
R33のボディサイズ拡大が不評だったことを受け、R34はホイールベース、全長が縮小。さらに前後重量配分を約55:45とし、ハンドリングが大幅に向上しています。
カーボン製のディフューザーに大型リアウイングや、6速トランスミッション、軽量化されたサスペンション、大型化されたブレーキなど、スカイライン GT-Rの最終形態として豪華な装備が与えられました。
生産終了を記念して1000台限定で登場したグレードの「VスペックII ニュル/Mスペック ニュル」は、発表と同時に即完売。GT-Rファン垂涎の憧れの1台となっています。
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本日の在庫数 1469台 平均価格 425万円 支払総額 30~8,252万円
ステージア 260RS
スカイライン GT-R専用エンジンとして開発されたRB26DETTですが、例外的に搭載された車種がステーションワゴンの「ステージア」です。
1997年に登場した、ステージアの特別仕様車「260RS」は、日産の特装車を手掛けるオーテックによる改造を受けたモデルになっています。
外観こそステージアながら、中身にはスカイライン GT-R(R33)が使われていて、エンジンのRB26DETTだけでなく、ドライブトレーンやリアサスペンションも流用されています。
トランスミッションは5速マニュアルのみと硬派で、まさに「羊の皮をかぶった狼」なモデルです。一部では、「GT-Rワゴン」とも呼ばれていました。
また、スカイラインの兄弟車種であったことから、フロントバンパーやライトなどをスカイライン GT-R(R34)のものに替えてしまう「顔面スワップ」と呼ばれる改造がおこなわれることもあり、その改造を受けたステージアはスカイラインの車名を混ぜて「スカージア」と呼ばれていました。
- 最新「ステージア」中古車情報
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本日の在庫数 79台 平均価格 185万円 支払総額 30~625万円
RB26DETTを他の車種へ載せ替える人も多数
RBエンジンはRB26DETTだけでなく、さまざまな形式のものが存在しています。
1984年にローレルが初めて搭載した2.0LのOHC直列6気筒エンジンであるRB20EがRBエンジンのベースとなり、その後も様々な改良を受けながら、スカイラインやセドリックといった中型セダンなどにRBエンジンが搭載されていきました。前述のステージアにもRB25DEなどのREエンジンが搭載されています。
ベースが同じエンジンの場合、排気量などが異なっていても載せ替えは比較的容易であることがほとんどです。
そうした理由から、RBエンジンを搭載したモデルに、ハイパワーなRB26DETTを搭載する「エンジンスワップ」と呼ばれる改造を施すユーザーも少なくありません。
パワーだけでなく、RB26DETT特有の音や、RB26DETTが持つロマンに憧れてエンジンスワップをおこなうユーザーもいるようです。
RB26DETTの音はこちらの動画から
RB26DETTの新品を手に入れたい場合は?
スカイライン GT-R(R32)の誕生からすでに30年、最も新しいR34でも20年近く経つことから、エンジンのリフレッシュを考えている方もいることでしょう。
スカイライン GT-Rの生産終了にあわせて、RB26DETTも生産は終了となっているため、日産から新品のRB26DETTを手に入れるのは残念ながら非常に難しいです。
しかし、チューニングショップなどが販売している、高性能化されたコンプリートエンジンやオーバーホール(各部の洗浄や調整・修理など)をおこなったリビルドエンジンを購入することで、新品に近いコンディションとなったRB26DETTを入手することはできます。
チューニングメーカーがコンプリートエンジンを販売中
日産のモータースポーツ向け部品などを手掛けているニスモや、チューニングパーツメーカー大手のHKSなどでRB26DETTのエンジン販売がおこなわれています。
2.7Lや2.8Lなどに排気量をアップさせた、いわゆる「RB26改」が販売されていることも多いです。
値段が数百万円と非常に高価なことや納品されるまでに年単位で時間がかかることもあるため、なかなかハードルが高いことは確かなものの、ハードルが高い分、愛車にこれらのエンジンが搭載されたときの喜びや感動はひとしおでしょう。
オーバーホールで今のエンジンをリフレッシュ
エンジンを購入するのが難しい場合、今使っているRB26DETTをオーバーホールするのもひとつの手です。
消耗品の交換や歪みの修正、各部の調整などをおこなうことで、新品に近いコンディションを取り戻すのがオーバーホールです。
修理にあたるため、オーバーホールをしている間は愛車に乗れなくなってしまいますが、エンジン購入をするよりは費用を安く抑えることができます。
とは言え価格は100万円以上かかることがほとんどなため、愛が試される選択であることには変わりません。
RB26DETT搭載車を手に入れたいなら早いうちに
RB26DETTを搭載したスカイライン GT-Rは生産終了からまもなく20年が経過します。
スカイライン GT-Rをはじめ、マツダ RX-7などの日本のスポーツカーは海外でも人気が高く、高値で取引されるケースがほとんどです。
25年ルールの影響で中古スポーツカーの輸出が進む
特に、製造から25年が経過したモデルは、アメリカでは輸入の規制が緩和されることもあり、続々と輸出がされています。この規制緩和は「25年ルール」と呼ばれています。
スカイライン GT-RではR32が30年、R33も2020年で25年を経過したため、この25年ルールにより日本国内での在庫は大きく減少。
R34もあと数年で25年が経過してしまうため、スカイライン GT-Rを手に入れたいならまさに今が最後のチャンスかもしれません。
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- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部 高山 志郎
- 平成元年生まれ、東京都出身。学生時代にモータースポーツ活動を開始し、大小さまざまな耐久レースへ参戦。優勝の経験も持つ。エンジニアとして複数の業界を渡りながら趣味で車やバイクに触れ続け、縁あって自動...
- 監修者プロフィール
- 鈴木 ケンイチ
- 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレー...