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「えっ、これがロードスター?」“らしくない”と日本では不評…でも世界的にはヒット!マツダ 3代目NCロードスター【推し車】

ロードスター存続の危機を乗り切った功労車、3代目「NC」

このアングルでもわかるが、真上から見ると見事な楕円形を描く「オーバルシェイプ」デザインがNCの特徴

1989年から2023年現在まで30年以上も小型のFRライトウェイト・オープンスポーツを販売し続けているマツダ。

まさに「継続は力なり」の好例で、高価でスゴイけど誰も買えないパワーによる速さやタイムより、手が届く安さと扱いやすさ、楽しさを追求する「人馬一体」の姿勢がブレずによくもやってきたものだと感心しますが、そんなロードスターにも存続の危機はありました。

それが2005年から2015年まで、諸事情により10年ものロングセラーとなった3代目NCロードスターで、時代の要請によって2代目までと大きく姿を変えつつ「人馬一体」の継続に腐心したものの、日本では歴代でもっとも異質な存在と思われています。

それでも何とかロードスターとしての形になるまでには、大変な苦労がありました。

最新「ロードスター」中古車情報
本日の在庫数 993台
平均価格 193万円
支払総額 30~542万円

危うくRX-8の派生モデルになりかけたロードスター

2003年に発表されたコンセプトカー「息吹」、お世辞にもカッコイイとは言い難いが、後方に収めたエアコンやギリギリ後退させてフロントミッドシップを極めたエンジン配置、切り詰めた前後オーバーハングなどが特徴

バブル景気に急拡大した販売網と車種ラインナップがバブル崩壊とともにそのまんま負債として重くのしかかり、明日をも知れぬ経営危機に苦しんだ1990年代のマツダ。

しかし「マツダ死すとも魂は死なず」とばかりに続けるどころか、絶え間ない改良でマツダのアイデンティティを次世代に繋ぐ大きな役割を果たしたのがロータリー(RX-7)とロードスターで、フォードもアレコレと口は出すものの、これらの存続は認めました。

しかし2000年代に向けたRX-7やロードスター後継となると話は別で、何事も効率重視のフォードとしては「マツダの規模でFRスポーツは2台もいらないだろう」と考えますし、それは確かに的を得た話。

しかしマツダとしてはロータリースポーツとロードスターのようなライトウェイトウェイト・オープンスポーツは全く別物、1台にまとめるなんてとんでもない!と食いつき、ついにはRX-8と次期ロードスターにGOサインが出るわけです。

しかし困ったことにフォードからは「RX-8とロードスターは共用部分を増やしてコスト削減するように」と釘を刺され、開発初期の3代目NCロードスターは「RX-8のショートホイールベース&2シーターオープン版」になりかけていました。

RX-8からいかに距離を取り、「人馬一体」でまとめるか

息吹ほどではないがフロントミッドシップ配置をさらに後退させたエンジン、傾斜させたラジエーターなど、オーバーハングの重量物を軽く収める工夫がNCでは追求された

もちろん観音開き4ドア・4シータークーペのRX-8と2シーター・オープンスポーツのロードスターでは全く別種のクルマですから、そのままで開発が続いていれば、ロードスターの歴史はそこで終わっていても不思議ではありません。

一応、2003年に発表された次期ロードスターのデザインスタディ的なコンセプトカー「息吹」で3ナンバーボディにならざるを得ない事は予告されていたものの、それ自体は厳しくなった衝突安全基準への対応もあり、仕方のないところです。

だからといって何もかもRX-8のお下がり、共用部品を使っていては安く楽しい「人馬一体」で仕上げるのは困難です。

同じフロント・ダブルウィッシュボーン / リア・マルチリンクのサスペンションでも軽いものを作ったり、2代目NBの1.8リッター車では外部から仕入れたものの不評だった6速MTも内製した結果、より低コスト化でフィーリングのいいものになりました。

さらにコストとバランスを取りつつ素材を厳選し、ホワイトボディでは2代目NBより軽いほど軽量化、ボディ四隅の角を徹底的に削った楕円状のオーバルシェイプ・デザインや、バッテリーをリアに移設するなど重量配分も最適化。

多少重量が増えるのは致し方ないとして、2リッターエンジンにしてもRX-8やS2000のようなパワフル志向は「人馬一体」に背くからと採用せず、あくまで必要な時に必要なだけのパワーを得るのに有利な170馬力程度、ドライバビリティ重視で進めました。

その結果、2代目NBより若干大きく重くなったとはいえ、剛性アップしたボディで足もよく動き、コントローラブルで楽しく走れるクルマに仕上がり、2005年8月に発売。

2006年8月には収納時フルオープンとなる電動ハードトップのRHT(リトラクタブル・ハードトップ)も追加し、厳しい社内事情や、時代の要請にも見事に応えてみせたのです。

NBまでと見た目が大きく変わって困惑するも…

4代目NDのRF(リトラクタブルファストバック)と異なり、3代目NCでは完全フルオープンのRHT(リトラクタブルハードトップ)仕様も販売された

しかし、ただ大きく重くなっただけでなく、直線と四隅のカーブで構成されたオーバルシェイプ・デザインやフロントマスクも含め、初代NAや2代目NBとかなり見た目が異なる「ロードスター」に、従来のユーザーはちょっとどころでなくギョッとしたのは事実。

優雅なブリティッシュ・スポーツ風から、アメリカン・スポコン(スポーツコンパクト)風にも見えて、その先入観も手伝って新車発表時のメディアやユーザーからのインプレッションも、どうも思わしくありません。

実は筆者も「これがロードスター?」と発売当時に眉を潜めたクチなのですが、販売終了から数年経って、自身が主催するジムカーナイベントに出走したNCロードスターを見て、「あれ?こんなカッコいいクルマだっけか?」と首を傾げました。

どうもオーバル・シェイプというのは見る角度によってかなり印象が異なるようで、宣伝写真でよくある「正面」や「斜め前」からだとヌルっとして締まらない印象ですが、サイドや後ろから見ると、一本筋の通った清々しさすら感じさせます。

要するに姿カタチが違うものを無理やり重ねようとするのがイケナイのであって、NCはNCなりにカッコいいアングルやカスタマイズがあり、それに沿っていけば十分イケてるのですが、新車当時に感じた違和感をずっと引きずってしまったようです。

「らしくない」と言われて日本では不評も、世界的にはヒット

小気味よく走る姿を見ると、NCもやはり「人馬一体」を追求したロードスター一族だと実感する ©DCTMダイチャレ東北ミーティング

実際、アレコレ言われつつもNCロードスターの販売はそれなりに好調だったのですが、2008年のリーマンショックに始まる世界同時不況で、「安いスポーツカーを求める世代」が新車購入どころではなくなったらしく、急速に販売を落としてしまいました。

その影響は特にその不況で中流家庭の崩壊、貧富の拡大が顕著になった日本で激しく、RX-8どころかS2000より売れなかったとすら言われますが、世界的にはそれらより売れたので、どうにかロードスターを存続させるだけの販売実績は残します。

さらに、次期型(4代目ND)へのモデルチェンジが先送りになったため、結果的には歴代最長となる10年近く販売される、ロングセラーとなりました。

最近だと、マットカラーやデカールなど、デザインに似合ったドレスアップでカッコよく仕上げたNCを見ると、歴代モデルの中で異質なカタチでも、楽しく走るためのクルマという意味では立派なロードスター一族だと、今後は再評価が進みそうです。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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