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VTECとは?ホンダの最高峰ターボエンジンのサウンド音やコントローラーについても

ホンダが世界に誇るVTECとは?

ホンダ 2.2L DOHC VTEC

VTECとはVariable Valve Timing and Lift Electronic Control Systemの略で、日本語訳すると“可変式バルブタイミング・リフト電子制御機構”(以下:可変バルタイ)となります。

可変バルタイは、現在BMWや、トヨタスバル日産など、国内外問わず市販化されていますが、”VTECは世界で初めて市販化に至った可変バルタイ”になります。

市販車の多くが採用するレシプロエンジンの基本は、エンジン上部のカムシャフトという部品を使い、吸排気を行うためのバルブを開け閉め動作をさせることで空気や燃料を取り入れ、爆発と圧縮によるピストンの上下運動をクランクシャフトで回転運動にするエンジンです。

前述の通り、エンジンは空気を吸い込んでクルマを走行させます。高回転で大量の空気を吸い込み、調子よく走るエンジンというのは、別の回転域ではセッティングが合わず非常に具合が悪くなります。それは、空気が多すぎるがゆえに、ガソリンエンジンにおける理想空燃比14.7(燃料1:空気14.7)を大きく上回り、ノッキングやエンストなどの原因になるためです。

かつてチューニングエンジンは乗り手を選ぶとか、スポーツカーは乗りにくいといわれた所以は、高回転型にセッティングされたエンジンを、のんびり一般道で使おうとするため、セッティングが合っておらず、その特性を理解できていなければ乗りこなせなかったからでしょう。

基本的にカムシャフトの大きさ(リフト量)によって、バルブの開閉は一定に管理されています。このカムの大きさを変更することで、スポーツ走行向きの高回転型のエンジン、一般走行向きの低回転型のエンジンへと変更することができます。

しかし、その交換手順にはネジの締め付け順序、締め付けトルク管理、0.03mm前後の微調整、消耗部品の交換といった、厳格なルールがエンジンを壊さないために存在します。

そして、カムを交換しただけでは十分でなく、ポンカムと呼ばれるノーマルコンピュータでも動作するカムを除けば、コンピュータの空気と燃料の割合(空燃比)を再調整したりといった再セッティングが必要になります。これはキャブレターを用いた車でも同様で、エアスクリューや、メインジェット、スロージェットなどの開度を調整し、再セッティングすることになります。

それだけの手間がかかり、他の回転域を犠牲にしてまでチューニングしたエンジンを、1つのエンジンで実現したエンジンがVTECエンジンです。

VTEC用カムチャフとには、1本に低回転用カム(便宜上:ローカム)と高回転用カム(ハイカム)という2種類リフト量が組み込まれています。そのリフト量とタイミングを切り替えるために、バルブとカムの間で、リフト量を伝達するロッカーアーム内に組み込まれたロックピンを油圧で制御します。そのスライドでハイカム、ローカムの切り替えを行います。

異なる2つのプロフィールをもつカムが切り替えられるということは、それぞれのリフト量で理想空燃比14.7を目指すため、異なる燃料の量を噴射しなければなりません。それだけ極端なセッティング変更を行う場合は、それぞれに合った燃料制御を行わなければならなくなります。

そのため、キャブレターのような機械式制御ではなしえない、複雑な制御が可能なコンピュータを使う必要があると考えられます。実際に、VTECエンジンには燃料をコンピュータで制御するPGM-FIが用いられています。

現在、燃料をコンピュータ制御する機構は、排気ガス規制やドライビングアシストの介入において必須であり前提で、PGM-FIがとりたててVTECと同列に語られることは少ないですが、VTECを語るのに無視できない存在であることは確かです。そのおかげでVTECは、”誰でも扱える速いエンジン”として販売できたものといっても過言ではありません。

VTECの利点とは

前述の通りVTECは、カムの切り替えにより、高回転型のパワー特性をもつチューニングエンジンと、日常使いでも扱いやすいパワー特性と切り替えます。これが利点となり、”普段は日常使いのファミリーカー、その気になればチューニングカーとして楽しめる2面性”を持ち合わせています。

しかし、FK型シビックに搭載されるVTECターボは、従来のVTECと異なり、排気バルブ側にVTECが搭載されます。それまでのVTECエンジンはターボ無しのエンジンばかりだったので、大量の空気を高回転で吸うため、吸気側に搭載されていました。

ターボの搭載により、大量の空気はタービンによって吸い込むことが可能になったこのエンジンですが、大量に息を吸い込めば、同じ量を吐かなければ次の同じ量の空気を吸い込むことができません。つまり、排気側バルブのオーバーラップやリフト量をVTEC制御することで、高ブースト時には大量に、低ブースト時は相応の、排気をすると、より効率化を図れる利点があります。

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進化するVTEC

ホンダ K20 DOHC i-VTEC

可変バルブタイミング・リフト機構はトヨタのVVTL-i、三菱のMIVECなど、各メーカーが独自の技術で採用しています。その考え方は異なるものの、1本のカムシャフトに2つの仕事をさせようという考え方は一緒です。ですが、VTECだけが特別視される風潮はなぜでしょうか。

こだわりの切り替え型!VTECは特別じゃない、シンプル・イズ・ベスト

VVT-i系やMIVEC系の可変バルタイを主流とする位相型(切り替え型が無い訳ではない)と、切り替え型のVTEC(位相型の無段階制御をしているモデルもある)を単純に比較することは困難です。

それは位相型がバルブに対し1つのプロフィールのカムのオーバーラップタイミング制御(位相を変える)するのに対し、切り替え型がバルブにハイカムとローカムの2種類のプロフィールのカムがエンジンの性格をガラッと変えてしまう部分があるからです。

VTECに代表される、切り替え型の可変バルタイの考え方は比較的単純で、単純であるがゆえに強度を保ちやすいというメリットがあるという意味です。

そもそも、1本のカムシャフトに2つの仕事をさせること自体が複雑といえますが、高回転だけ使うチューニングカーではないし、日常の足にしているだけではないという”相反する目的を1本のカムシャフトに収めたうえで、その仕組みをスペシャライズしないようにするため、シンプル・イズ・ベスト”にしたのではないでしょうか。

純正チューニング!?高回転まで綺麗に回るエンジン

高回転まで回すために、カムの特性を変更するのは冒頭の通りですが、ただ回るだけのエンジンではここまでの地位は確立できなかったでしょう。

エンジンをチューニングすること自体がマニアックな行為ですが、NAエンジンのチューニングは、ターボエンジンよりも職人肌で地味な作業の繰り返しで、外観もタービンが大きくなるような変化もありません。0.01mmや0.1gにこだわってエンジンを分解して、部品を加工して、組み上げるそういった職人の世界にドップリ身を漬ける行為といえます。特に製造ラインを外して、認定技術者によるエンジンの組み立てなど、地道に積み重ねたその結果が実り、通好みの要素が包含されています。

こういった大径タイヤの採用や、エアロパーツの取り付けといったディーラーオプションで取り付けできるようなカスタムパーツと異なり、外観を見ただけではわからないマニアックさが、エンジン屋と呼ばれたホンダのイメージをより濃くし、VTECが純正チューニングエンジンと呼ばれる所以なのではないでしょうか。

速く走るだけじゃない!?さらに進化を続けるVTEC

ホンダが初めてVTECを搭載したのは1989年に登場したDA型インテグラから始まり、1991年には、高出力のためでなく、省燃費走行を目的としたVTEC-Eが登場しました。

さらに1995年には2種類のカムの組み合わせをより細かく制御し、高出力と燃費を両立させた3ステージVTECが開発されました。

2000年に登場したi-VTECは、それまでカムの切り替えのみだった機構に無段階連続バルブタイミングコントロール機構を追加し、ほぼすべての回転域で理想的な吸排気効率を得ることを実現しました。現在では、ホンダの可変式バルブ機構の全てがVTECと呼ばれています。

そして、2013年。小排気量ターボエンジンが主流になりつつある情勢を見越してか、それまでターボを避けてきたかのようなホンダがとうとうVTECターボを開発しました。
VTECで得られるハイパワーを求めるのではなく、もとよりVTECの理想とする「パワー・レスポンス・出力密度」のコンセプトを目指し、VTECターボが計画されます。また、VCMというホンダのバルブ開閉技術もVTECの一種であり環境にも優しいVTECへと舵を切りホンダの新たな試みが始まっているともいえます。

パワーを求めた元祖から始まり、その技術の応用や、時代の変化にあわせた利用方法など、VTECも多岐に渡り利用されています。エンジン始動時や冷えているときなど、不安定なときに、バルブのコントロールを行い適宜変化させるこは重要であり、エンジンがある限り、ただ動いていればいいわけでは無いと語ります。

燃費をよくしようとか、限られた排気量でパワーを多く得ようとすれば、機械である以上その高効率を高めるしかありません。今後厳しくそれが求められるエンジンで、少ない燃料で最大限の性能を生むということの性能が、パワーなのか、燃費なのか、はたまたハイブリッドにつながるような技術なのか、これからのVTECにも注目です。

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現在販売中のVTEC搭載車種とその変化

オデッセイ

2003年から2005年頃の京都議定書をはじめ、地球温暖化のニュースや環境問題への配慮が強く行われるようになり、自動車・バイクの排気ガス規制は年々厳しくなりました。

その後は残念なニュースが続き、NSXが2005年に生産を終了し、トルネオEURO-Rなどスポーツセダン、インテグラTYPE-Rなどの車種もラインナップから名前を消していきました。

いわゆるスポーツエンジンが排気ガス規制や、車両フロント部の衝突安全確保などの法改正で、理由は様々ですがいずれかの基準をクリアできず、RB26やSR20、1JZ・2JZや3S、B型のVTEC、13Bなどのスポーツエンジンがことごとく消えていった時期でもあります。

排ガス規制強化後、各メーカー売り上げを伸ばしたのはハイブリッドカーやコンパクトカーなどのエコカーで、かつてはスポーツ走行を意識した車種に搭載されることが多かったVTECですが、N-BOXのような一般的な軽自動車にもVTECが搭載されるようになりました。

その中でホンダは、スポーツカーをたくさん作っていたイメージが消える程に、軽自動車部門に参入し、軽自動車を中心に生産していたダイハツスズキに肉薄する売り上げを出したこともあり、現在ではNシリーズやS660など意欲的に販売を続けています。それ故に、現在のホンダは、軽を無くして語ることはできません。

そんなホンダですが、軽自動車にVTECエンジンを搭載したのは最近の出来事で、スポーツカーに搭載しがちだったVTECは、S660ではなくN-BOXに搭載されるS07Bという直列3気筒660ccのエンジンでした。その最高出力は58ps/7300rpmで、一般的な過給気なしの軽自動車より若干パワーがあるか同じくらいの数値です。

このエンジンを例にとって説明すると、特徴として圧縮比が12.0と高いことが挙げられます。近代の低燃費を意識したエンジンは、希薄(リーン)燃焼を行うように制御しており、ノッキングを制御するため圧縮比を高く設定する傾向にあります。そういう点では、より近代的なセッティングをしているエンジンといえるでしょう。従来のB型エンジンが10.0前後で、C型やK型も11.0前後の高圧縮設定になっていることを考えれば、かつてはパワー競争があり、そのために必要だった希薄燃焼が、現在では燃費競争にも用いられているともいいかえられるでしょう。

そういった意味では、ハイパワーを求めターボ化されているシビックTYPE-Rや、NSXを除けば、ラインナップの多くが環境重視VTECエンジンを搭載したモデルで、インテグラTYPE-Rや、シビックTYPE-Rなどがラインアップにあった走りのVTECという時期とは、異なるラインナップであるともいえます。

エンジン型式最大出力最大トルク
JNC373[507]/6,500-7,500550[56.1]/2,000-6,000
JNB231[314]/6,500371[37.8]/4,700
LFA107[145]/6,200175[17.8]/4,000
LEB81[110]/6,000134[13.7]/5,000
K24W129[175]/6,200225[23.0]/4,000
K24W(直噴)140[190]/6,400237[24.2]/4,000
K15B97[132]/6,600155[15.8]/4,600
K13B73[100]/6,000119[12.1]/5,000
[単位]最高出力:kW[PS]/rpm 最大トルク:N・m[kgf・m]/rpm
車名搭載エンジン
(ハイブリッド)
搭載エンジン1搭載エンジン2
NSXJNC
レジェンドJNB
アコードLFAL15B
オデッセイLFAK24WK24W(直噴)
シャトルLEBL15B
ジェイドLEBL15B
グレイスLEBL15B
ヴェゼルLFAL15B
フリードLEBL15B
フィットLEBL15BL13B
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歴代の主なVTEC搭載車

歴代のVTEC搭載車種は、シビックインテグラを始めとして、S2000インサイトCR-Zインスパイアエリシオン・エディックス・CR-V・HR-Vなどのさまざまな車種に搭載されてきました。

中でも、S800以来29年ぶりのFR車であるS2000はホンダにとっても、クルマ好きにとっても印象的な1台といえ、搭載されたF20Cエンジンは、2.0リッターNAエンジンで250psに達するパワーを叩き出し、市販車では稀に見る9,000rpmまで回る超高回転エンジンです。

また、それまでFF車を中心に販売していたホンダでは(NSXはMR)、横置きレイアウトのエンジンがほとんどで(バイクのエンジンもいうなれば横置き)、縦置きレイアウトのF20Cは、少し特別な存在なのではないでしょうか。

S2000が現役当時、2000ccクラスのスポーツカーは、群雄割拠の個性豊かな時代でした。例えばS20搭載のS15などのシルビア系、EJ20搭載のインプレッサSTIシリーズ、4G63搭載のランサーエボリューションシリーズがありました。

2000cc超も、RB26搭載のR34GT-R系、2JZ搭載のスープラ系、13B搭載のRX-7系、C32B搭載のNSXなどもありました。
その中にありながら存在感を放ったS2000は、歴代のなかでも異彩を放つ1台でしょう。

そして、何といっても和製スーパーカーと呼ばれたNSXは外せません。
故アイルトン・セナ氏はプロトタイプのNSXをドライブして、ボディの強度不足を指摘したなどの逸話があり、セナ足で名実ともトップドライバーだったF1パイロットも所有していたという1台です。

そのエンジンや、パッケージングが、どれほどプロをうならせたのか想像してしまいます。ここまで行くと、スペックを語るのも野暮でしょう。そこにプロを魅了する個性があり、憧れのVTECであることは間違いありません。新しいNSXが先代NSXのようになっていくかに期待がかかります。

やはりVTECの名車となると。こういったスポーツカーになりがちです。昔はよかった、あの頃のクルマをもう一度、それは果たして本当に一般目線なのでしょうか。

当然ですが、過去と現在と時代背景も異なれば、自動車を取り巻く環境は大きく変化しています。NA型NSXは中古しかないうえ、状態が良ければ応談価格であったり、S2000も三桁万円は当たり前で、安い車体も無い訳ではないですが、カッコイイオブジェという場合も考えられ、とても気軽に変えるクルマとは言えないでしょう。

そんな昔のアイドルの話をしたところで、一般的にはロマン(重要ですが)しかなく、そこに現実的なラインで2019年上半期の売り上げを調べたところ、やはりフィットとフリードでした。求めやすい価格、運転しやすいコンパクトボディー、燃費の良いエンジンという一般ユーザーの「これなら自分も扱えるかも」というニーズと、カーシェアやレンタカーでも「導入しやすい価格、貸し出しやすい車体」として人気を博したのではないかと考えられます。

この存在はメーカーを支えるために重要で、個性むき出しの前者と異なりますが、後者を無視をできる存在ではありません。

そういったクルマの中で、趣味の○○とか、子供心を忘れずアウトドアな家族層に向けたキャッチコピーで宣伝するSUV系が次点で売れているようです。否定的な意図はありませんが、フィットフリードを選ぶTHE普通という保守的なリスクの少ない選択を、せっかく買うなら少しでも個性を求め、SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)という選択に行きつき、ホンダではヴェゼルに行きつくのも、自然なことかもしれません。

ヴェゼルは2019年1月に前年比133%を記録した人気車種で、2019年上半期のSUV部門ではNO.1の3万3445台を販売したという自販連の調査結果があります。SUVとは、スポーティーで、何でも使える多目的なクルマで、C-HRやCX-3などの車種が該当します。

このことから、近代VTECにおいて、一般的でやや特徴があり、市場認知度が高く売れているクルマという条件であれば、ヴェゼルでしょう。

したがって、近代VTECのイメージアイコンとして現行NSXや現行シビックTYPE-R存在するものの、その実とするメーカー代表はフィットやフリード、ヴェゼルといった身近なクルマともいえます。

ホンダ S2000 typeV 4代目 AP2型 2005年
ハイパーレブ Vol.233 ホンダ・シビック&インテグラ No.2

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伝家の宝刀TYPE R

シビックタイプR

ホンダのスポーツモデルの最高峰であり、ホンダといえばVTECという方も多いのではないでしょうか。イメージカラーにもなっている、専用ボディカラーのチャンピオンシップホワイトに、”赤バッチ”と呼ばれた赤いホンダエンブレムがトレードマークです。

特別にチューニングされた高回転型VTECエンジンは、甲高く乾いた排気音を発しながら、天井知らずに吹き上がります。それと同時に徹底した軽量化やピンポイントのボディ補強などを施し、サーキット走行まで視野に入れたシャシーセッティングがなされた特別な車です。

TYPE-Rは1992年に登場したNSX TYPE Rを皮切りに、インテグラシビックアコード(日本名アコード ユーロR)と車種を拡大していきます。特に1995年に発売されたDC2インテグラ TYPE Rの初期型は、コストを度外視した職人による吸気ポートの手磨きで話題になりました。

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巷では、DC2は96スペックと98スペックという分け方をされますが、ギア比ではショートの96、少しロングな98、96より多くな98のブレーキ、4-2-1エキマニの96、4-1エキマニの98、114.3の4穴の96、114.3の5穴の98と、かなり違う箇所があります。基本が同じため流用されることが多く、謎の年式が多いのもDC2の特徴です。

ホンダのTYPE Rは、日本を代表するスポーツカーとして、世界中のモータースポーツファンに愛され続けています。

2017年夏に発売された10代目シビック TYPE Rは、さらなる改良が加えられた2.0リッターVTECターボで武装し、ニュルブルクリンク北コースにて、当時の前輪駆動車での最速タイムを更新した実績をもちます。まさに、伝家の宝刀になりうる名刀といえるでしょう。

VTECを後からセッティングする、VTECコントローラー

純正のチューニングカーともいえるVTECエンジンですが、問題はギア比があっているかどうかという、サーキットにおいてラップタイムに直結する問題があります。

例えば、5000rpmからVTECゾーンに入る車でアタックをして、コーナーに差し掛かったとします。そのコーナーは2速ではレブの叩きロスがあり、3速では5000rpmを割り込みVTECが効かずロスがあります。そういった場合、荷重移動が上手にできる人は3速でターンした方が速く走れるといわれています。

しかしVTECから外れているので、最高のコーナリングかと言われれば、まだロスが大きい状態です。そういった時はVTECに限らず、半クラッチや、クラッチを蹴ったりして、トルクのあつい回転数を維持するようにします(俗にいうクラッチを揉むとか。クラッチ蹴りなど)。ですが、そんなことをしてクルマに優しいかといわれれば、間違いなく否でしょう。

そこで登場するのが、VTECの切り替えタイミングを任意の回転数にすることができる、VTECコントローラーです。

他に燃調をコントロールできる製品はより細かなセッティングが可能となり、理想空燃比14.7といった数値をより細かく追い込むことができます。燃調をセッティングするのであれば、A/F(AIR/FUEL)計(空燃比計)を後付けしたいところです。

それというのも、燃料が濃すぎる状態や、薄すぎる状態は思うように吹けないどころか、エンジンブロー直結のセッティング項目だからです。また、製品によりますがメーカーディーラーによる整備が受けられない場合があり、自己責任となるので、仮に取り付けてもサポートが必要であれば、ディーラーやメーカーに問い合わせをした方がいいでしょう。

あくまでセッティング部品ですので、説明した通り取り付ければ速くなるというわけでは無く、取り付けたうえでその個体に合わせセッティングすることで、より効率よくVTECを使用する部品です。

自分でセッティングしない場合は、メカニックにクルマの状況をしっかり把握して伝えること、自分でやる場合は、エンジンの状態を把握することは当然で、それなりの知識が必要になるとはいえ、かなりマニアックな部品といえるでしょう。

夢のコラボVTEC+ターボエンジン

ホンダ エンジン VTEC ターボ

排気ガスを利用して圧縮空気をエンジンに送り込み、圧倒的な加速力を生み出すターボチャージャーと、高い排気効率を実現するVTEC
この2つを組み合わせれば、より優れたエンジンが完成するのではないかと単純に考えてしまいます。

しかし、ホンダのエンジンは絶対的なパワーよりも、レスポンスこそが最重要であり、低回転域ではレスポンスが悪いイメージのターボエンジンを長年避けてきたのではないでしょうか。
また、ターボの搭載によって増加する車重によるハンドリング悪化も懸念されたのだと思います。
それを裏付けるのが、ホンダが売り出す高性能軽量NAスポーツカーであるTYPE Rの存在そのものです。

しかし、ここにきてホンダはターボを採用しました。
それは、ターボを使ってもホンダが理想とするレスポンシブルなエンジンとハンドリングを実現できると確信あってのことでしょう。
制御技術・工業技術がともに向上し、少ない排気量でも過給可能な小型ターボチャージャーを採用し、燃料制御の電子化と、高い圧縮比設定、重量が比較的軽く作れるセミカウンタークランクなどを採用し、エンジンの内部部品まで素材の軽いものに変更したりと、高回転型のレスポンスを重視した造りになっています。

そして、最も特徴的な仕組みはVTECが排気側バルブに採用されている点です。
従来の吸気側にVTECを取り付けていた理由は、吸気側バルブのリフト量を増やすことで、空気の吸入量を増すことだったことに対し、VTECターボエンジンでは、過給機が付いていることで、空気の吸入量が増すため、より効率よく(リフト量を高め)排気するために排気側でVTECを使用しています。

例えば、深呼吸と同様で、吸った空気は全て吐き出さないと、新しい空気を多く吸うことができないというエンジニアの発言の通り、それを実現したものになっています。
自慢のVTECでターボチャージャーの性能を最大限まで引き出したホンダのターボエンジンは、従来型では「VTECターボは邪道」といわれることが多かったことに対する、ホンダの回答でしょう。

これまで高性能NAエンジンとしてホンダの代名詞であったVTECは、ターボエンジンのバルブオーバーラップ時の効率化を図る機能として、VTECに新たな付加価値を生んだといえます。

相変わらず、VTECターボのサウンド音にも注目

吸気側にVTECを搭載するNAエンジンでは、VTECに入るとエンジンの空気を吸い込む音が明らかに大きくなり、それに合わせるように甲高いエキゾーストサウンドを奏で走り去るクルマを想像する方も多いでしょう。

新型シビック TYPE Rのニュルブルクリンクでのタイムアタックの動画では、NAとは少し違うVTECターボのフルスロットルサウンドを聞くことができます。

ターボ化によって少し野太くなったエキゾーストサウンドは、いかにもターボらしい音というわけでもありません。実は、純正マフラーも凝った構造をしています。リア中央に顔を出す3本のエキゾーストは左右のメインパイプを基本とし、中央のセンターパイプにて、より澄んだ甲高い音をさせるため、高回転域のこもり音を軽減しています。

また、車体の左右重量を意識しレイアウトされたストレート形状のマフラーは、排気効率を高めるだけでなく、ヨーの軽減といった効果も生んでいます。

その結果、緩く曲がりながらのブレーキングや、S字コーナーの連続する切り返しで、絶妙に反応するアクセルレスポンスと旋回性能はさすがVTEC、TYPE-Rといえ、NAからターボになっても、そのシャープさは健在です。動画を見ていると、エンジン、ミッション、タイヤ、サスペンション、ボディーのバランスは、いかにもTYPE-Rといった挙動です。

TYPE-Rエンジンとそれを収めるTYPE-Rのパッケージングは、まるで名刀とそれを収める鞘のようでもあります。エンジンとパッケージングのどちらが欠けても、TYPE-Rとはいえず、動画のFKシビックTYPE-Rは、まるで名刀のような仕上がりになっているのではないでしょうか。

ホンダの象徴 VTEC

ジェイド

高出力と燃費性能の両立を実現するために開発されたVTEC
改良を重ねるたびに、より優れたエンジンレスポンスとドライブフィールを現実してきました。
そして、気持ち高ぶるようなVTECサウンドはドライバーに至福のひとときを演出してくれます。

近年、時代は排気量規制、エンジンのダウンサイジングが主流になりつつあります。
キーワードとされているのは、高効率かつ低燃費。それに環境性能が何よりの最優先事項となりました。

それを実現するために、希薄燃焼(リーン・バーン)を行うように制御されており、ノッキング対策のひとつとして高圧縮比に設定する傾向にあります。そういう点では近代的なセッティングも取り入れられており、当時にしてはやや高圧縮よりの速さを求めたVTECエンジンがあったことを考えれば、過去のパワー競争が培った燃料制御技術が、現在の燃費競争に応用されているともいえます。

VTECとターボエンジンという新たな組み合わせとともに、ホンダ新時代の幕開けとなるか注目です。

執筆者プロフィール
MOBY編集部
MOBY編集部
新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...

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