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名車ワンダーシビックを「ホンダコレクションホール展示車」画像を交えつつ紹介!【推し車】

近代的な意味での「シビック」が始まった3代目

2代目までの「いかにも1970年代デザイン」から脱却、一気に近代化を果たした3代目シビック3ドアハッチバック「25i」

初代は四輪車メーカーとしての存続を賭けたホンダを救う大ヒット、しかし2代目はワンメイクレースも始めたものの、初代からのキープコンセプトでホンダらしいキープコンセプトはイマイチ…という事で、かなりの気合を入れて開発された3代目「ワンダーシビック」。

途中でS800以来のDOHCエンジン、それもホンダ4輪初の4バルブDOHCだった「ZC」エンジンを搭載し、グループAレース(JTC全日本ツーリングカー選手権)でも活躍するなど、シビックのスポーツイメージを確固たるものにしました。

今回はホンダコレクションホールに展示されている3ドア「25i」の画像を交えつつ、3ドアハッチバック版を中心に紹介します。

原型はCR-Xの初期デザイン国内案

2020年代のそれとはまた異なるが、ひと昔前までよく見たようなインパネになったのも、「1980年代のクルマ」な特徴

なんとなく初代から代わり映えせず、むしろ大きくなったおかげでイマイチ魅力に欠けるし、他社もFF2BOXハッチバック車で追随してくると新鮮味も薄い…というわけで、2代目「スーパーシビック」が今ひとつパッとしなかったホンダ。

これではいけないという事で、シビックのスポーツイメージを復活させ、さらに確固たるものにしていくデザインが求められますが、既に初代シティや2代目プレリュードで成功していたメカニズム部分の極限化と、フラッシュサーフェス&ウェッジシェイプは当然です。

しかしそこから「シビックらしさ」を出すのにはどうすれば…という壁にぶち当たった時、デザイン陣が目をつけたのが、並行開発していた「50M(ゴーマルエム)」と呼ばれる北米向け超低燃費車。

HRA(ホンダ米国研究所)と日本のADR(アドバンスド・デザインルーム)がそれぞれデザイン案を提出していましたが、比較の結果HRA案が採用され、後に「バラードスポーツCR-X」となります(CR-Xはそもそもスポーツモデルではなく、超低燃費車でした)。

不採用で宙に浮いたADR案「50M」は後部がなだらかに下がるクーペルックのロングルーフ車(※)で、ルーフを下げずに伸ばせば後席も居住性が確保できますし、HRA案のデザインテイストと組み合わせ、3代目シビックハッチバックの基礎となりました。

(※1987年に発売した3代目ダイハツ シャレードのようなスタイル)

より低く、短く…車内は広く、M・M思想の追求

全くウケなかったアコードエアロデッキと似たようなデザインだが、3代目シビックが成功したのは車格の違いとバランスだろうか

デザインの大筋が決まったとはいえ、その頃には5代目マツダ ファミリアが、表面を平滑にしたフラッシュサーフェス化、フロント前端に向かって低く下がるウェッジシェイプといったスマートなデザインで社会現象化するほど大ヒットしていました。

3代目シビックが似たようなデザインを採用しても後追いに過ぎませんし、いち早く近代化したFF2BOXハッチバックのライバルに差をつけるのはどこか?

答えはN360以来こだわり続けていたMAN(マン)-MAXIMUM(マキシマム)・MECHA(メカ)-MINIMUM(ミニマム)の「M・M思想」で、初代シティの経験からボンネットはかなり短くできそうですし、2代目プレリュードの経験から低くするのも可能なはずです。

エンジンなど機械設計のエンジニアは悲鳴を上げ、さらにライバルとデザインの違いを明確にするためグリルレス化も決定すると、ギチギチに詰め込んだ中で発熱するエンジンをどう冷やすんだ?と悪戦苦闘します。

しかし最終的には2代目シビックに対し60mm短く、30mm低いエンジンルームが実現し、ハッチバックのみならず4ドアセダンや5ドアの「シビックシャトル」、さらに姉妹車バラードと、その派生車バラードスポーツCR-Xに共通する、「売り」となりました。

ライトバンに見えない工夫

「ライトバンに見えない工夫」として採用された大型ガラスのテールゲートは”ワンダー”シビック最大の外見的特徴

エンジンルームの最小化で広く取れるキャビンは、リアシートスライド&リクライニングを採用して後席足元も広々、前席のヘッドレストを外してフルリクライニングさせれば、車中泊にもデートスペースにも最適なフルフラットシートが出現します。

これはさまざまなボディタイプがある3代目シビックでも、ハッチバックだけの大きな「売り」でしたが、問題は後席をシートスライドさせても十分な頭上スペースを約束するため、「50M」ADR案と違って後端までピンと伸びた、ロングルーフです。

単純にそのままリアハッチをつけたのでは、何となく後席ドアがない3ドアライトバンのように見えてしまうため、「コーダトロンカ」と呼ばれる後端がスパッと切り落とされたデザインと、テールゲートも大型ガラスハッチにして商用車臭の払拭に成功。

後に3代目アコードエアロデッキでも同様の問題に直面、その時はルーフ後半部のスロープ(なだらかに下げる)など苦心したものの不評で、3代目シビックハッチバックぐらいのサイズだからこそ、受け入れられたデザインだったのかもしれません。

似て異なる3ドア、4ドア、5ドア並行開発

前席はもちろん、後席もシートスライド&リクライニング可能で、前席を完全に倒せばフルフラットシートにもできた

ここまで主に3ドアハッチバック版の話ですが、3代目シビックには他にもトランクリッドの高さを上げ、フロントとのバランスを取りつつトランク容量も確保した4ドアセダンと、ステーションワゴンというよりトールワゴン的な5ドアのシビックシャトルがありました。

通常なら2BOX3ドアハッチバックをベースに独立トランクつき3BOX4ドアノッチバックセダン化、さらにトランクの代わりに荷室とした5ドアワゴン化するところですが、あえてこの3種(CR-Xも加えれば4種)は別々に開発されています。

「要求されるものが違うなら、歩み寄って妥協するより、あえてバラバラに作ろう」というわけで、ホイールベースからして4ドアセダンと5ドアシャトルは同じですが、3ドアハッチバックは短く、CR-Xはさらに短くなりました。

特にシビック系はフロントイメージが同じなので、3ドアか4ドアがベースで他は派生車と考えがちですが、車名が同じでエンジンや足回りに共通点があるほかは、プラットフォームが異なる別物です。

さすがにコスト面で難があったのか、ここまで極端なのは3代目シビックのみでしたが、シビックが変わろうとする過渡期だからこそ許される、大胆なチャレンジでした。

DOHC16バルブの「ZC」を得て、グループAレースでも活躍

1987年のJTC(全日本ツーリングカー選手権)1クラスで6戦全勝、ドライバーズ&マニュアファクチャラーズのシリーズWタイトルを獲った、「無限MOTULシビック」

当初は1気筒3バルブの1.3/1.5リッター4気筒SOHCエンジンで「4バルブ並の吸・排気効率がもたらすハイパワーと、2バルブ並のコンパクト化を両立」(ホンダFACT BOOK CIVIC&バラード「12バルブ・クロスフロー新エンジン」)を謳った3代目シビック。

ホットモデルはシティターボやCR-Xに続いて採用された電子制御インジェクションPGM-FI仕様・100馬力のEWエンジンを積む「25i」でしたが、本命は発売翌年、1984年11月に登場した「Si」グレードでした(当初ハッチバックのみ、後にセダンにも追加)。

それまでのスポーツエンジンの常識を覆すような、ロングストロークで低回転から分厚いトルクを発揮しつつ、高回転まで気持ちよく吹け上がるDOHC4バルブエンジン「ZC」。

ZCを得たシビックSiはストリートでも部類の強さを発揮したのはもちろん、1985年にはホンダ自身としては初の市販車改造レーシングガーを開発、ヒーローズレーシングに託されたシビックSiはグループAレースのJTC(全日本ツーリングカー選手権)へ参戦します。

第3戦、西日本サーキットではリタイアに終わるものの、続く第4戦鈴鹿サーキットでは最小排気量のクラス1ながら中嶋 悟/中子 修組が総合優勝!

翌年からの無限を通じた参戦ではAE86、AE82(カローラFX)に苦戦するものの、1987年には6戦全勝優勝で文句なしのドライバーズ&マニュファクチャラーズのWタイトルを獲得、1988年途中までの参戦で12勝を上げます。

こうして、スポーティな実用車としての優れたデザインのみならず、待望の「魂」も手に入れた3代目シビックは、目論見どおりホンダのスポーツイメージ回復に大きな役割を果たすともに、「シビック」という車へモータースポーツでの勝利という宿命を授けたのです。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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