更新
フォード・マスタングのGT500エレノアやコブラなど歴代モデルや新車と中古車価格&燃費も
目次
フォード・マスタングとは
64 1/2年型フォード・マスタング・コンバーチブル
マスタング(かつて日本ではムスタングと呼称されていたこともあります)はフォード・モーター社(以下、フォード社)が製造するスペシャルティカーです。
初代モデルは1964年に登場し、現在までに6世代のモデルが存在します。
スペシャルティカーをひと言でいうなら「スポーツカーのカタチをした乗用車」で、マスタングはこのジャンルの先駆者であり、発売後1年間で41万7,000台を販売するという記録的なヒットにより、その名を自動車史に刻んでいます。
マスタングは半世紀以上の歴史を持ちますが、そのボディスタイルは一貫して4〜5人乗りの2ドアクーペを採用しており、駆動レイアウトはコンベンショナルなFRレイアウトを踏襲しています。
車名の由来
エンブレムに使用される野生馬・マスタング
車名になったマスタングとは、アメリカ原産の野生馬のことで、スペイン人が北米大陸に持ち込んだ小型馬が野生化したものです。
有名な「シートン動物記」の中の一作、「だく足のマスタング」に詳細な生態に描写されています。
ノースアメリカンP-51Dマスタング
また、第2次世界大戦を連合軍勝利に導いた傑作戦闘機・P-51マスタングにそのイメージを重ねたとも言われています。
70年型フォード・トリノ・コブラ・スポーツルーフ
68年型マーキュリー・クーガーXR7
当初は「トリノ」という車名が有力候補とされましたが、フォード社の会長を務めていたヘンリー・フォード2世が当時イタリア人のクリスティーナ・ベットーレ・オースチンと不倫関係にあったこともあり、スキャンダルを避けるためにイタリア風の名前を避け、最終的に「クーガー」(ピューマ)とマスタングのふたつの目が残り、最終的にマスタングが選ばれました。
なお、フォード社はのちにトリノをフォード・ディビジョンの中型乗用車に、クーガーをマーキュリー・デビジョンのラグジュアリーカーに命名しています。
マスタングのエンブレム
米国ではマスタングのようなコンパクトでスポーティーな2ドアクーペの総称として「ポニーカー」という言葉が使われることがあります。
これはマスタングが馬のエンブレムを用いていたことに由来しており、米国の自動車雑誌が誌面で使ったことがきっかけとなり広まって行きました。
- 最新「マスタング」中古車情報
-
本日の在庫数 201台 平均価格 475万円 支払総額 69~2,900万円
フォード・マスタングの生みの親
リー・アイアコッカ
フォード・マスタングは才気溢れるひとりのイタリア系米国人のアイデアによって誕生しました。
その男の名はリー・アイアコッカ。
24年10月にイタリア系移民の息子としてペンシルバニア州アレンタウンに生まれたアイアコッカは、東部の名門・リーハイ大学で機械工学と管理工学を学んだあと、同じく名門大学であるプリンストン大学大学院で修士号を取得し、46年にフォード社に入社します。
理系の学歴を持つアイアコッカは、当初は開発部門への配属(トランスミッションの開発グループ)を打診されたものの、それを辞して販売部門への配属を希望し、それが受け入れられると東海岸地区の地区販売マネージャーや商用車販売部門長などを歴任します。
フォード社長でアイアコッカの上司だったロバート・ストレンジ・マクナマラ
その後、当時としては珍しかったローン販売の企画が当たったことで頭角を現し、60年にフォード部門の総支配人兼副社長に就任。
当時のフォード社の社長で、のちにジョン・F・ケネディ政権の国防長官となるロバート・マクナマラの片腕として辣腕を振るうことになりました。
若者向きの安価な小型車を作れ!
独フォード・タウナス12MP4(3代目)
1960年、マクナマラはアイアコッカに対し、独フォード社が開発した小型車「カーディナル」(62年に3代目タウナスとして欧州でデビュー)の北米市場導入へ向けて市場調査を命じます。
カーディナルはV4エンジンを搭載し、駆動方式にFFを採用したフォードの世界戦略車でしたが、ユーザーの好みに合わないと判断したアイアコッカは北米での販売計画をキャンセル。
その代わりに第2次世界大戦後に生まれた若者(ベビーブーマー世代)向けの小型車を企画します。
その際にアイアコッカがプロジェクトリーダーのハロルド・スパーリックに開発条件として示したのは以下の3つでした。
①スポーティで若々しいスタイリング
②本格的なスポーツカーに匹敵するパフォーマンス
③若者でも買いやすい安価な価格
フォード・ファルコンをベースに開発
62年型フォード・ファルコン(初代)
しかし、ゼロからスポーツカーを開発していたのでは販売価格が上昇し、若者が手に入れやすい価格で販売することはできません。
そこでプラットフォームやパワートレインなどの主要部品を小型車のファルコンを流用。
ファルコンは後にモンテカルロラリーのGTクラスで優勝するなど、廉価なコンパクトセダンでありながら素晴らしいハンドリングと高いポテンシャルを持った車でした。
このファルコンの車台にフォード社デザインスタジオのジョー・オロス&デーブ・アッシュが手掛けた美しいボディを架装したのがマスタングでした。
マスタング以降のアイアコッカ
69年型リンカーンMK.3
「フォードT型以来」と言われるほどの記録的なヒット作になったマスタングにより、アイアコッカの名声は全米中に轟きます。
そして、65年にアイアコッカはフォード社の高級車部門であるリンカーン&マーキューリーデビジョンの副社長に就任し、高級ラグジュアリーカーのマーキュリー・クーガー、高級パーソナルクーペのリンカーン・マーク3を相次いでヒットさせます。
これらの功績により、70年にアイアコッカはついにフォード社長の地位に登り詰めます。
しかし、アイアコッカの強引とも言える経営手法はフォード社会長のヘンリー・フォード2世との間に溝を深めて行き、78年10月にアイアコッカはついにフォード社を解雇されます。
クライスラーKカーの代表作となった89年型プリマス・アリエス&プリマス・リライアント
ですが、アイアコッカはその1年後にフォード社のライバル関係にあったクライスラー社の社長に就任。
深刻な経営難に喘いでいた同社を「Kカー」と呼ばれる小型FF車の成功によって救い、数十万人の米国労働者の雇用を守ったことから「アメリカ産業界の英雄」と称されるようになります。
その後、アイアコッカはクライスラー社の会長を経て94年に同社を退職。
現在では自動車ビジネスから引退し、糖尿病研究・患者支援を目的としたアイアコッカ財団の代表を務めています。
アイアコッカが在籍していたブランド・メーカーの情報はこちら
フォード・マスタングの歴史
フォード・マスタングは生産時期ごとに6世代が存在します。
ただし、資料によっては69〜73年までのモデルを2代目と区分するケースや、71〜73年までのモデルを3代目と区分するケースもあります。
今回は米本国でもっとも一般的な区分法にしたがって紹介します。
マスタングを含むマッスルカーの情報はこちら
フォード・マスタング 1stジェネレーション
ニューヨーク万博・フォードパビリオン前に展示されるマスタング。写真の人物はフォード社会長だったヘンリー・フォード2世
1964年4月17日、初代フォード・マスタングはニューヨーク万国博覧会の開催初日にフォードパビリオンで発表されました。
64 1/2年型フォード・マスタング・コンバーチブル
米国では9月に翌年のニューモデルが発表されるのが通例でしたが、ライバル車に先駆けてデビューを飾るため、アイアコッカの意向でシーズン半ばに発表されたのです。
そのため、デビューイヤーのマスタングは64 1/2年型(ロクヨン・ハーフと読みます)と呼ばれています。
パワーユニット
マスタングに搭載される289cuin V8OHV
前述の通り、メカニズムはプラットフォームやパワートレインを含めてファルコンから流用。
搭載されるエンジンは170cuin(2,786cc)直6OHV(102hp)を標準に、オプションとして260cuin(4,250cc)V8OHV(166hp)と289cuin(4,736cc)V8OHV(213hp)がオプションとして用意されました。
翌65年から直6エンジンは200cuin(3,277cc/122hp)にスープアップするとともに需要の少なかった260cuinV8がカタログから落とされました。
スタイリングとバリエーション
65年型フォード・マスタング・クーペ
65年型フォード・マスタング・ファストバック
初代マスタングのスタイリングは、ロングノーズ&ショートデッキのアメ車らしい力強い基本フォルムを持ちつつ、ヨーロピアンテイストのディティールが与えられており、テールフィンに代表されるデコラティブな大型車を見慣れた米国のユーザーには、シンプル&クリーンなマスタングのスタイリングは新鮮に映りました。
デビュー初年、マスタングはハードトップとコンバーチブルのみのラインナップでしたが、翌65年にはスポーティさを増したファストバックが追加されています。
フルチョイスシステムを導入
時計とタコメーターのセットオプション「ラリー・パック」
初代マスタングはベーシックモデルが2,368ドルと極めて安価な価格に設定されました。
その代わりにノンオプションの状態では最低限の装備しか持たされておらず、ATやビニールレザーシート、フロントベンチシート、LSD、ラリー・パック(回転計と時計のセット)、ホワイトリボンタイヤなどの豊富なオプションをユーザーが好みに応じて選択する「フルチョイスシステム」が導入されています。
66年型フォード・マスタングの内装
ボディカラーやインテリアトリムも豊富に用意され、これらの組み合わせにより、エレガントな街乗り仕様からトラック走行を前提にしたレーシングスペシャルまで、ユーザーのニーズに応じてさまざまな仕様を選ぶことができました。
1回目のビッグマイナーチェンジ
67年型フォード・マスタング・クーペ
67年、マスタングはボディ外板を一新する大掛かりなマイナーチェンジを受けます。
プラットフォームは従来と同じくファルコン由来のものを使用しており、2,740mmのホイールベースに変更はありません。
ただし、ボディサイズは全長で50mm、全幅で69mm拡大されています。
ハードトップ、コンバーチブル、ファストバックというボディバリエーションに変更はありませんが、ファストバックのスタイリングは車体後部のルーフラインがトランクリッドまで続くデザインに改められています。
より肉感的になったボディは、マッスルカーという言葉に相応しいマッチョなものとなりました。
パワーユニットは新たにレース用エンジン427サイドオイラーと基本設計を同じくするFEシリーズ・ブロックの390cuin(6,380cc)V8OHV(340hp)が追加されました。
428コブラジェットを搭載した68年型フォード・マスタング・ファストバック
続く68年型では排ガス規制により既存ユニットの多くがパワーダウンを余儀なくされる一方で、主力エンジンとして289cuin V8OHVに代わって新たに302cuin(4,949cc)V8OHVが追加されます。
そして、レーシングユニットとして名声を得ていた427cuin V8OHVサイドオイラー(430hp)が設定されましたが、あまりにも高価だったことから3カ月で廃盤となり、その代わりに428ポリスインターセプターをベースにチューニングを施した428cuin(7,013cc)V8OHVコブラ・ジェット(370hp)が追加されました。
2回目のビッグマイナーチェンジ
69年型フォード・マスタング・ファストバック
マスタングのデビューから5年あまりが経過した69年、販売台数は31万7,000台あまりとピーク時の半分程度の台数しか売れなくなり、人気に陰りが見え始めます。
そこでフォード社ではカンフル剤として再びボディ外板を一新するビッグマイナーチェンジを施します。
スタイリングはあくまでもキープコンセプトでしたが、ボディの凹凸を協調してより派手なルックスとなり、ホイールベースに変更はなかったもののボディサイズは全長で93mm、全幅で10mmサイズアップされ、初代マスタングに比べてひと回り大きな車となりました。
70年型フォード・マスタング・グランデ
また、フルチョイス・システムによる仕様の違いはあるものの、グレードによる等級分けを行っていなかったマスタングですが、この年からその方針を転換。
ベーシックモデルとして全車に「スタンダード」を設定した上で、HTをベースに装備を充実させた「グランデ」、スポーツ性を強調した「Mach1」、レース用のホモロゲーションマシンの「BOSS」などが用意されました。
BOSSマスタング
69年型フォード・マスタング BOSS429
シリーズ最強のBOSSには搭載するエンジンの違いでBOSS 302とBOSS 429があり、前者はトランザムシリーズのホモロゲーションモデル、後者はストリート用のスペシャルモデルという位置付けでした。
70年型フォード・マスタング BOSS302
BOSS開発の陣頭指揮を執ったのは、68年にアイアコッカに代わってフォード・ディビジョンのマネージャーの座に就いたのは「バンキー」こととシーモン・E・クヌッセンです。
彼の前職はフォード社の最大のライバルであるGM副社長で、アイアコッカの肝煎りでフォード社にヘッドハンティングされました。
バンキーの販売戦略は、強力なレースカーを開発してトラックを席巻し、そのイメージに直結するハイパフォーマンスモデルを市場に投入。
これをイメージリーダーとすることでモデル全体の販売成績を向上させるというものです。
このバンキーが企図した販売戦略に基づきBOSSシリーズは開発されたのでした。
そして、BOSSの高性能を予感させる迫力あるスタイリングは、GM時代にバンキーの下でコルベットC2/C3を手掛けた日系人のラリー・シノダが担当しました。
3回目のビッグマイナーチェンジ
71年型フォード・マスタングBOSS351
71年、マスタングは3回目のビッグマイナーチェンジ(通称・ビッグマスタング)を実施し、車体はより大きく、重く、スタイリングはますます派手になります。
また、それまで不変だったホイールベースはこのモデルになって26mm延長され、2,769mmとなりました。
スタイリングは68年型に続いてラリー・シノダが担当。
バンキーの好みを反映してフラット感を強調した力強いフォルムとなっています。
しかしながら、ヘンリー・フォードとの関係の悪化から71年型の登場を待つことなく、バンキーは69年9月にフォード社を解雇され、その直後にシノダもフォード社を退職しています。
72年型フォード・マスタング・グランデ
ボディバリエーションはHT、スポーツルーフ(ファストバック)、コンバーチブルの3種類。
パワーユニットは、250cuinz(4,097cc)直6OHV(145hp)を標準に、302cuin(5,000cc)V8OHV(210hp)、351cuin(5,752cc)V8OHV(285hp)、同BOSS351(330hp)、429cuin(7,030cc)V8OHVコブラジェット(370hp)、同スーパーコブラジェット(375hp)、同スーパーコブラジェット・ラムエア(375hp)が用意されました。
さらにカタログには載っていないスペシャル・エンジンとして、レーシングユニットのBOSS351をベースにレギュラーガソリン仕様とした351cuinV8OHVコブラジェット(280HP) も存在しました。
牙を奪われたマスタング
73年型フォード・マスタングMach1
しかし、70年代に入って厳しくなった排気ガス規制の影響により72年型では、429cuin V8OHVコブラジェットなどのハイパフォーマンスユニットがカタログから落とされ、主力となる351cuin V8OHVも266hpにパワーダウンを余儀なくされました。
71〜72年型フォード・マスタング・グランデのリアビュー
排ガス規制によって牙を失い、大きく重くなった車体はスポーティカーとしてのマスタングのイメージに致命的なダメージを与えました。
その結果、15万台/年と販売台数はビッグマイナー前とほとんど変わりがなく、フォードが期待したようなV字回復を果たすことができませんでした。
64 1/2年型マスタングのスペック
全長 | 全幅 | 全高 |
---|---|---|
4,612 | 1,732 | 1,298 |
ホイールベース | 車両重量 | 乗車定員 |
2,743 | 1,200 | 5 |
[単位]全長・全幅・全高・ホイールベース:mm 車両重量:kg 乗車定員:人 |
エンジン種類 | V8OHV |
---|---|
排気量 | 4,728 |
最高出力 | 271/6,000 |
最大トルク | 58.2/3,400 |
トランスミッション | 4MT/3AT |
駆動方式 | FR |
使用燃料 | レギュラー |
[単位]最高出力:hp/rpm 最大トルク:kgf・m/rpm |
71年型マスタングMach1のスペック
全長 | 全幅 | 全高 |
---|---|---|
4,810 | 1,880 | 1,270 |
ホイールベース | 車両重量 | 乗車定員 |
2,770 | 1,709 | 5 |
[単位]全長・全幅・全高・ホイールベース:mm 車両重量:kg 乗車定員:人 |
エンジン種類 | V8OHV |
---|---|
排気量 | 7,030 |
最高出力 | 380/5,600 |
最大トルク | 62.2/3,400 |
トランスミッション | 4MT/3AT |
駆動方式 | FR |
使用燃料 | ハイオク |
[単位]最高出力:hp/rpm 最大トルク:kgf・m/rpm |
フォード・マスタング 2ndジェネレーション
74年型フォード・マスタングII・クーペ
「サンダーバードも、発売時には美しい車だったのに、みなさん(経営陣)はそれをだんだん大きくし、とうとう似ても似つかない車になりました。
マスタングでも、同じことをしています。
小さい車をなぜ小さいままにしておくことができないんですか。
大きくしては新車を作り、大きくしては新車を作る。
ムダだと思いませんか?」
(リー・アイアコッカ著/徳岡孝夫訳「アイカコッカ わが闘魂の経営」ダイヤモンド社刊より)
これは68年のフォード社株主総会でひとりの女性株主によるフォード経営陣への批判の言葉です。
記録的な大ヒットを飛ばしたマスタングが、その後エンジンパワーが増し、車体が大きく・立派になるのと反比例して販売台数が減少した理由を端的に表しています。
すなわち、ユーザーはコンパクトで魅力的なマスタングを求めていたのに、フォード社は利益率を高めるために大型化・高級化して凡百のアメリカ車と変わりがない車にしまったわけです。
完全な経営判断の誤りでした。
原点回帰を図ったマスタングII
74年型フォード・マスタングII・ファストバック
こうしたユーザーの声に応えるように、69年秋から開発がスタートした 2ndジェネレーション・マスタングでは「原点回帰」を合い言葉にボディサイズを大幅にシュリンクすることを検討します。
しかし、当時の米国の自動車産業には「車のサイズは拡大されるべきものであって、絶対に前モデルより小さくしてはならない」との不文律がありました。
しかし、アイアコッカは豪腕により社内に溢れる不満の声を抑え込み、サブコンパクトカーのピントのプラットフォームを流用して開発を断行。
全長は475mm、ホイールベースは320mmも一気に短くしたのです。
車名もあらたに「マスタングII」に改名して74年型として発表しました。
開発を担当したのは初代モデルと同じくハロルド・スパーリック。
アイアコッカと個人的に親しい関係にあったアレッサンドロ・デ・トマソもマスタングIIの開発に際して助言を与えたと言われています。
※アレッサンドロの妻・イザベルはGM創設メンバーの孫娘で、米国の自動車産業と太いパイプを持つ富豪の令嬢でした
スタイリングはギア社が担当
75年型フォード・マスタング2・ギア
マスタングIIのスタイリングはイタリアのカロッツェリア(デザインスタジオ)のギア社が担当し、ロングノーズ・ショートデッキ、3分割リアコンビネーションランプなどの伝統的なフォルムを残しつつ、当時流行していたコークボトルラインを取り入れています。
ボディバリエーションは、安全規制の強化からコンバーチブルがカタログから落とされ、ノッチバッククーペとハッチバッククーペのみとなり、グレードはノッチバックがベースグレードの「クーペ」と上級グレードの「ギア」、ハッチバックがベースグレードの「ハッチバック」とスポーツグレード「Mach1」となります。
エンジンは大幅にパワーダウン
主力エンジンとなった169cuin V6OHV
搭載されるエンジンは排気ガス規制によりV8エンジンの存続が危機的な状況にあったため、デビュー当初は140cuin(2,294cc)直4SOHC(85hp) と169cuin(2,769cc)V6OHVを標準とし、Mach1のみ専用の171cuin(2,802cc)V6OHVが用意されました。
しかし、初代モデル後期のハイパワー路線からの大きな方向転換に戸惑うファンも少なくはなく、デビュー直後からV8モデルを求める声が挙がりました。
こうした市場の声に応えるかたちで、75年に302cuin(4,949cc)V8OHVがオプションとして追加されます。
このエンジンは乗用車用のウィンザーブロックを使用しており、排ガス規制に適合するため最高出力は122hpに抑えられていましたが、カムやシリンダーヘッド、キャブなどを交換すれば簡単にパワーアップできました。
そうしたことからコンパクトな車体を活かし、ドラッグレースでは高度にチューニングされたマスタングIIが活躍しました。
コブラIIとキングコブラ
76年型フォード・コブラII(マスタングII)
78年型フォード・キングコブラ(マスタングII)
原点回帰をコンセプトとしたマスタングIIは、デビュー初年こそ38万5,993台を販売しましたが、やはりイメージリーダーとなるハイパフォーマンスモデルの設定がなかったことが販売に響き、2年目となる75年型モデルの生産台数は18万8,575台に半減。
事態を憂慮したフォード経営陣は、カンフル剤としてマスタングのイメージリーダーとするべくスポーツグレードを発表します。
それが75年に追加されたマスタング・コブラIIです。
コブラIIはMach1をベースに、エアロパーツと専用のボディデカールで武装したモデルで、パフォーマンスは302cuin V8OHV搭載車と変わりはありません。
すなわち「カタチだけのコブラ」だったのですが、スポーツモデル冬の時代ということもあり、市場は概ね好意的に受取ったようです。
これに気を良くしたフォード社は、マスタングIIファイナルイヤーとなる78年にキングコブラを発表します。
ボディはより派手さを増したエアロパーツを纏い、カウルフード(ボンネット)に巨大なコブラのイラストが描かれ、専用のメッシュホイールを吐いたキングコブラは一定の人気を得て、マスタングIIの最後を飾りました。
77年型マスタングII Mach1のスペック
全長 | 全幅 | 全高 |
---|---|---|
4,445 | 1,785 | 1,270 |
ホイールベース | 車両重量 | 乗車定員 |
2,445 | 1,439 | 4 |
[単位]全長・全幅・全高・ホイールベース:mm 車両重量:kg 乗車定員:人 |
エンジン種類 | V8OHV |
---|---|
排気量 | 4,949 |
最高出力 | 131 |
最大トルク | 33.5 |
トランスミッション | 4MT/3AT |
駆動方式 | FR |
使用燃料 | レギュラー |
[単位]最高出力:hp/rpm 最大トルク:kgf・m/rpm |
フォード・マスタング 3rdジェネレーション
79年型フォード・マスタング
商業的にはけっして成功とは言えなかったマスタングIIの跡を継ぐモデルとして79年に誕生したのが3rdジェネレーション・マスタングです。
オイルショック以降続いていたユーザーの小型化・低燃費指向を受けて、マスタングIIに引き続きコンパクトラグジュアリー・コンパクトとしてまとめられましたが、ボディサイズとホイールベースはわずかに拡大しています。
プラットフォームは同時代のフォード製乗用車に多用され、軽量シンプルに設計されたFOXプラットフォームを使用したことから「FOXマスタング」の愛称で呼ばれています。
スタイリングとバリエーション
79年型フォード・マスタング・コブラ
79年型フォード・マスタング・ギア
FOXマスタングのスタイリングは、アメ車らしい抑揚のあるマスタングIIのものから一転し、ヨーロピアンルックのエアロダイナミズムを追求したシャープなラインが特徴としており、歴代モデルの中で唯一となるスラントグリルを採用しています。
デビュー当初はマスタング伝統のアイコンがことごとく姿を消したことから、ファンの間で賛否を巻き起こしましたが、結果的には斬新なフォルムが受けて発売初年度だけで37万台を販売するヒット作となりました。
ボディバリエーションは発表当初はハッチバックとノッチバックだけでしたが、ほどなくマスタングIIで話題を呼んだTバールーフも追加されています。
グレード構成はベースグレードの「ハッチバック」と「クーペ」を基本に、上級グレードの「ギア」、スポーツグレードの「コブラ」というラインナップとなります。
マスタング初のターボユニットを設定
82年型フォード・マスタングGTターボ
搭載されるエンジンは140cuin(2,294cc)直4SOHC(88hp) と170cuin(2,786cc)V6OHV(109hp)、302cuin(4,949cc)V8OHV(140hp)などマスタングIIからキャリーオーバーされたものが中心でしたが、それに加えて140cuin直4SOHCターボエンジン(コブラに設定)も新登場。
このターボエンジンは4気筒ながらV8に匹敵する140hpの最高出力と燃費性能を両立させており、新時代のマスタングに相応しいパワーユニットとして人気を集めました。
80年型では6気筒エンジンがV6から新開発の200cuin(3,277cc)直6エンジンに置き換えられました。
牙を取り戻したマスタング
82年、FOXマスタングはターボエンジンを搭載したコブラを廃止。
コブラに代わるスポーツモデルとして「GT」が新たに登場しました。
GTの心臓は4バレルキャブレター&エグゾーストシステムを搭載したハイ・アウトプット(H.O)仕様で、最高出力は157hpを発揮。
久しぶりの高性能V8を搭載したマスタングということで登場当時は大いに話題を呼びました。
さらに83年には約10年ぶりにコンバーチブルが復活。
オープンカーならではの爽快感は往時を知る中高年だけでなく、若者の支持も集めることに成功します。
ハイパフォーマンスモデルの復活
84年型フォード・マスタングSVO
84年、マスタングのスポーツ路線復活を決定づけるハイパフォーマンスモデルが登場します。
マスタングSVO(スペシャル・ヴィークル・オペレーション)と名付けられたこの車は、SCCAやIMSAなどのレースカーを製作するフォード社のモータースポーツ部門が手掛けたスペシャルモデルで、パワーユニットは175hpを発揮する140cuin(2,294cc)直4SOHCインタークーラーターボを搭載。
組み合わされるギアボックスは5MTが標準装備となり、LSDや4輪ディスクブレーキ(マスタング初の装備)、コニー社製ダンパーが標準装備とされるなど、本格的なスポーツモデルとして開発されました。
また、外装はフロントマスクがグリルレスとなり、大型2灯式ヘッドランプを備えるなど、コブラやGTとは異なるヨーロピアンテイスト溢れるルックスにまとめられています。
マスタングFF化計画の撤回
初代フォード・プローブ
フォード社は80年代後半にFOXマスタングのフルモデルチェンジを計画します。
モデルチェンジに当たってフォード社は、マツダとの共同開発によりカペラをベースにしたFFクーペを次世代マスタングとしてデビューさせることを企図します。
しかし、「マスタング」という車名に強いこだわりを持つ北米フォードの社員から「日米合作車、それもFF車に偉大なマスタングの名前を与えるわけにはいかない!」との激烈な反対運動が社内で巻き起こったため、フォード社上層部はマスタング後継車としての開発を見合わせ、開発中のモデルは「プローブ」として発売することとしました。
延命策としてのビッグマイナーチェンジ
93年型フォード・マスタングSVTコブラ(後期型)
そのため陳腐化が進んでいたFOXマスタングの延命策が急遽必要となり、外装を一新するビッグマイナーチェンジを施すこととなりました。
87年に登場したFOXマスタングの後期型では、当時のフォード車に共通するエアロダイナミズムが採り入れられ、SVOに似た2灯式のヘッドランプが与えられています。
さらにはエンジンラインナップも140cuin(2,294cc)直4SOHC(90HP)と302cuin(4,949cc)V8OHV(225HP)の2本に整理。
それに合わせて全車インジェクション化を果たしました。
ハイパワーなV8エンジンを搭載したマスタングの復活に米国のマッスルカーファンは歓喜し、モデル末期でありながらFOXマスタングは売り上げを伸ばすことに成功しました。
79年型マスタング・コブラ・ターボのスペック
全長 | 全幅 | 全高 |
---|---|---|
4,550 | 1,755 | 1,310 |
ホイールベース | 車両重量 | 乗車定員 |
2,550 | 1,230 | 4 |
[単位]全長・全幅・全高・ホイールベース:mm 車両重量:kg 乗車定員:人 |
エンジン種類 | 直4OHCターボ |
---|---|
排気量 | 2,294 |
最高出力 | 118/5,200 |
最大トルク | 18.7/3,200 |
トランスミッション | 4MT |
駆動方式 | FR |
使用燃料 | ハイオク |
[単位]最高出力:hp/rpm 最大トルク:kgf・m/rpm |
フォード・マスタング 4thジェネレーション
94年型フォード・マスタングGT
マスタング生誕から30周年を迎えた94年、マスタングは4thジェネレーションへと14年ぶりにフルモデルチェンジされました。
スタイリングは先代までのエアロダイナミズムを昇華させ、さらにテールランプやサイドに奔るプレスラインなど初代のイメージを反映させたスタイリングとなりました。
メカニズム
98年型フォード・マスタング・コンバーチブル
プラットフォームは先代モデルのものを改良したFOX4を使用しており、ホイールベースは20mmほど延長され、それに合わせて全幅もわずかに拡大しています。
改良型のプラッフォームの採用と各部のブラッシュアップにより、運転性能はブレーキ性能、衝突や横転などの安全面は時代に合せて大幅に強化されています。
ボディバリエーションは、ノッチバッククーペとコンバーチブルの2本に整理され、グレード構成もV6モデルのベースグレードと、V8モデルのGTグレードの2種類というシンプルな構成になりました。
エンジンはキャリーオーバーされた302cuin(4,949cc)V8OHV(225HP)とトーラスなどに搭載された232cuin(3,802cc)V6OHV(145hp)。
V8モデルは96年に新開発の281cuin(4,606cc)V8SOHCに換装されました。
オートラマ店を通じて日本市場で拡販
千葉県内に存在したフォード販売店(旧オートラマ店)
日本市場では3thジェネレーション・マスタングまでは近鉄モータースなどのフォード自動車系のディーラー網で販売されていましたが、4thジェネレーション・マスタングからマツダとフォードの合弁販売チャンネルであるオートラマ系で販売されました。
日本市場でのマスタングの販売価格はもっとも安いモデルで229万円と、シルビアやセリカなどの国産クーペとほとんど変わりがない新車価格に設定。
TVCMが積極的に流されたこともあって4thジェネレーション・マスタングは歴代シリーズでもっとも日本で売れたモデルとなりました。
ビッグマイナーチェンジにより後期型へ
01年型フォード・マスタングGTコンバーチブル
99年、マスタングはマイナーチェンジを実施。
メカニズムに大きな変更はありませんが、外装は一新され、前期型のイメージを踏襲しつつボディフォルムを曲線基調から直線基調へと一新します。
また、このスタイリングの変更に伴いフロントフードに大型のダミースクープを追加。
マッスルカーらしい力強いフォルムとなりました。
01年型フォード・マスタング・ブリット
01年には68年に公開されたスティーブ・マックイーン主演の映画「ブリット」のトリビュートモデルとして、映画で使用された68年型マスタングと同じダークグリーンでペイントされたマスタング・ブリットGTが限定販売されています。
ハイパフォーマンスモデル・SVTコブラ
95年型フォード・マスタング・コブラR(前期型)
00年型フォード・マスタングSVTコブラ(後期型)
4thジェネレーション・マスタングには、フォードSVT(スペシャル・ヴィークル・チーム)が手掛けたホットバージョンのSVTコブラが存在します。
GTをベースに302cuin(4,949cc)V8OHVをベースにチューニングを施し、最高出力は240hpに向上。
専用セッティングの足回り、エアロパーツなどが装備され、性能的にも外観的にも標準仕様とは大きく異なるモデルとなりました。
96年型マスタング・コブラに搭載された281cuin V8DOHC
96年、SVTコブラはベースモデルのエンジン変更にともない281cuin V8DOHCとなります。
このエンジンはアルミ製の可変バルブを採用した新世代のV8エンジンで、ブロックはイタリア製、カムシャフトはドイツ製のハイパフォーマンスパーツであり、最高出力は305hpを発揮します。
組み合わされるギアボックスはボルグワーナー製の5MTのみの設定で、外装はリアバンパーやカウルフードがコブラ専用となりました。
なお、このモデルは50台限定でクーペのみが「マスタング・コブラ」の名称で正規輸入されました。
94年型マスタングGTコンバーチブル(日本仕様)のスペック
全長 | 全幅 | 全高 |
---|---|---|
4,615 | 1,860 | 1,390 |
ホイールベース | 車両重量 | 乗車定員 |
2,570 | 1,640 | 4 |
[単位]全長・全幅・全高・ホイールベース:mm 車両重量:kg 乗車定員:人 |
エンジン種類 | V8OHV |
---|---|
排気量 | 4,942 |
最高出力 | 215/4,200 |
最大トルク | 39.4/3,400 |
トランスミッション | 4AT |
駆動方式 | FR |
使用燃料 | レギュラー |
[単位]最高出力:kW[PS]/rpm 最大トルク:N・m[kgf・m]/rpm |
V8エンジンとは?構造や仕組みを解説|V型8気筒エンジンのデメリットも
フォード・マスタング 5thジェネレーション
05年型フォード・マスタングGT
5thジェネレーション・マスタングは、04年のデトロイトモーターショーで発表されました。
チーフエンジニアはアジア系米国人のハウ・タイタン(唐浩泰)が就任。
スタイリングはフォードデザイン部長の「J・メイズ」の監督のもと、カナダ人デザイナーの「シド・ラムナレース」が担当しています。
フォード社の「リビングレジェンド」戦略に基づいて初代マスタングを彷彿とさせものとなりました。
チーフエンジニアのハウ・タイタン(唐浩泰)
厳密に言うと5thジェネレーション・マスタングのスタイリングは64〜66年型だけをテーマにしているわけではなく、リアセクションのスタイリングは65年型ファストバックのそれを連想させますが、フロントマスクはその改良型である67年型、リアクォーターウインドウを用いたCピラーの処理はシェルビーGT350(標準のファストバックはルーバー処理となります)と、1stジェネレーション.マスタングの各モデルからモチーフを散りばめることで成立しています。
リジットアクスルにこだわった足回り
08年型フォード・マスタングV6
プラットフォームは新開発のDC2プラットフォームを使用。
09年に登場したライバルのシボレー・カマロがリアサスペンションにマルチリンク式を採用して4輪独立懸架となったのに対し、マスタングはリアサスペンションに伝統的なリジットアクスルを採用。
乗り心地やコーナリング性能では一歩劣る旧態然としたサスペンション形式ですが、キャンバー変化が少なくロールセンターが高く取れ、ホイールトラベル(リアホイールの最大移動量)が大きくなり、コストパフォーマンスにも優れることからフォード社はあえて採用に踏み切ったようです。
パワーユニット
5thマスタングに搭載されるV8エンジン
心臓部はベースモデルが4,009cc V6SOHC(米国でも90年代から徐々に立法インチからミリリットルに排気量の単位が変わりました)、トップグレードのGTには先代モデルのものを改良したVCTつき4,604cc V8SOHCが搭載されました。
組み合わされるギアボックスはベースグレードがボルグワーナー製T-5型5MT、GTがトレメック製TR-3650型5MTを標準とし、オプションでフォード製5R55S型5ATが用意されました(日本仕様はATのみ)。
ビッグマイナーチェンジ
13年型フォード・マスタングV6
09年春、マスタングはルーフ以外の外装を一新する大掛かりなマイナーチェンジを施されます。
フロントまわりはヘッドランプとグリルを薄くし、エッジやキャラクターラインを際立たせた筋肉質なスタイリングに変身しました。
11年型フォード・マスタングの内装
また、内装は1stジェネレーション・マスタングを彷彿させる左右対称のインパネを採用し、67年型マスタングのものをモチーフにした3本スポークステアリングを装備。
エアコンの噴出し口やシフトレバーなどのデティールも手直しされました。
スペシャルティカー復活の立役者となる
後期型マスタングに追加されたハイパフォーマンスモデルのBOSS302
5thジェネレーション・マスタングは発売から2年間で30万台以上を販売し、低迷を続けていた北米のスペシャリティカー市場の活性化に成功します。
08年にはダッジ・チャレンジャーが、09年にはシボレー・カマロが復活するなど、1stジェネレーション・マスタングのようにフォロワーを生み出すまでに至ります。
米国での5thジェネレーション・マスタングは歴代モデルと同様にモータースポーツのベース車両としても人気が高く、NASCARへの参戦のほか、ドラッグレースやドリフト競技でも活躍しています。
06年型マスタングGTクーペ・プレミアム(日本仕様)のスペック
全長 | 全幅 | 全高 |
---|---|---|
4,756 | 1,880 | 1,385 |
ホイールベース | 車両重量 | 乗車定員 |
2,720 | 1,630 | 4 |
[単位]全長・全幅・全高・ホイールベース:mm 車両重量:kg 乗車定員:人 |
エンジン種類 | V8SOHC |
---|---|
排気量 | 4,606 |
最高出力 | 304/5,700 |
最大トルク | 44.2/4,500 |
トランスミッション | 4AT |
駆動方式 | FR |
使用燃料 | レギュラー |
[単位]最高出力:kW[PS]/rpm 最大トルク:N・m[kgf・m]/rpm |
リアサスペンションの構造の違いについての解説はこちら
フォード・マスタング 6thジェネレーション
英国向け右ハンドル仕様の6thジェネレーション・マスタング・コンバーチブル
マスタング生誕50周年を迎えた2014年4月17日に6thジェネレーション・マスタングが米本国でリリースを開始(日本での発売開始は同年10月から)。
フォード社はこのモデルからマスタングを世界戦略車種に位置づけており、右ハンドルモデルも初めて設定し、英国や豪州を含む世界120カ国での発売を開始しました。
15年型フォード・マスタングGT
チーフエンジニアはデイブ・ペリキャックが就任。
スタイリングはドイツ人デザイナーのケマル・チュリッチが手掛けました。
外装は先代モデル後期型を踏襲し、シャープで筋肉質なスタイリングを採用。
ただし、国産戦略車となった影響なのか、フロントマスクは近年のフォード車のファミリーフェイスとなった、いわゆる「アストンマスク」となり、Bピラーがブラックアウトされるなど欧州車テイストも盛り込まれています。
一新されたメカニズム
フォード2.3L直4DOHCターボ「エコブースト」
プラットフォームは一新され、リアサスペンションには新設計の5リンク式のマルチリンクが奢られ、ついにマスタングも4輪独立懸架化されました。
ボディサイズは先代に比べて全幅が38mm拡大されるいっぽう、全高は36mm縮小されています。
ホイールベースの数値には変更がありません。
搭載されるエンジンは3,720ccV6 SOHC「サイクロン」(304ps)を標準とし、先代のものを改良した4,949 ccV8SOHC「コヨーテ」(314ps)、燃費とパワーを両立させたダウンサイジングユニットの2,253cc直4DOHCターボ「エコブースト」(314ps)の3つが用意されます。
ギアボックスは新開発の6MTと6ATとなります。
日本に正規輸入された最後のマスタングとなった50周年記念車
マスタング・50イヤーズ・エディション
6thジェネレーション・マスタングは日本市場への量産モデルの導入に先駆け、14年11月に限定車「50イヤーズ・エディション」が350台限定で販売されました。
このモデルは左ハンドルのエコブースト搭載モデルをベースに、専用エンブレム、専用プレート、ブラックアウトされた19インチアルミホイール、50周年記念モデル専用のエンボス加工された本革シートなどの特別装備となっています。
マスタング・50イヤーズ・エディションの専用エンブレム
しかし、翌16年9月にフォード社は日本市場からの撤退を発表。
右ハンドル仕様の量産モデルは米本土で船積み直前だったそうですが、それらが日本に上陸することはありませんでした。
50イヤーズ・エディションが事実上、日本に正規輸入された最後のマスタングとなったのです。
15年型マスタング・50イヤーズ・エディション(日本仕様)のスペック
全長 | 全幅 | 全高 |
---|---|---|
4,790 | 1,920 | 1,380 |
ホイールベース | 車両重量 | 乗車定員 |
2,720 | 1,680 | 4 |
[単位]全長・全幅・全高・ホイールベース:mm 車両重量:kg 乗車定員:人 |
エンジン種類 | 直4DOHCターボ |
---|---|
排気量 | 2,260 |
最高出力 | 314/5,500 |
最大トルク | 44.3/3,000 |
トランスミッション | 6AT |
駆動方式 | FR |
使用燃料 | レギュラー |
[単位]最高出力:kW[PS]/rpm 最大トルク:N・m[kgf・m]/rpm |
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...