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日本で人気の「ミニバン」海外ではなぜ流行らない?ヒントはSUVと商業車が影響?

日本の自動車市場において、「便利なファミリーカー」としての地位を確立しているミニバン。多くの車種が「スライドドア」と「3列シート」を備え、高い利便性と居住性から子育て世代を中心に支持を得ています。

近年ではSUVの市場シェアが増加傾向にありますが、それでもミニバン人気は衰えを見せません。2020年の乗用車新車販売台数ランキングにおいては、アルファードやヴォクシー、シエンタやフリードといったミニバンが10位以内にランクインしています。

一方で、このようなミニバン人気は「日本特有のもの」であるという声も耳にします。実際、上記のような日本でトップセールスを誇るミニバンは、日本専売のモデルも多く、欧米市場ではそもそも販売ラインナップに加えられていないケースも少なくありません。

日常のさまざまなシーンに幅広く対応するミニバンは、「普遍的なジャンル」であるようにも思えますが、なぜこのような販売動向の違いが生まれるのでしょうか。

ヨーロッパでは「3列シート+スライドドア」が希少?

©New Africa/stock.adobe.com

ヨーロッパの自動車メーカーのラインナップを見ると、そもそも日本でいう「ミニバン」にあたる車種がほとんど見られないことがわかります。

スライドドアを備えた乗用車が日本に比べて少なく、内訳としてもシトロエン ベルランゴやプジョー トラベラー、フォルクスワーゲン トランスポーターなど、「商用車」として利用されることの多い車種が目立ちます。

商業ユースの多いプジョー トラベラー

日本のミニバンに近い使われ方をしているのは「MPV(Multi Purpose Vehicle:多目的乗用車)」と呼ばれるジャンルです。3列シートを備えたものとしてBMW 2シリーズ グランツアラーや、シトロエン・グランドC4スペースツアラーなどが挙げられます。

BMW 2シリーズ グランツアラー

しかし、MPVに分類される車種の多くはスライドドアを備えておらず、デザインとしても「背の高いステーションワゴン」あるいは「大きなハッチバック」といった風貌です。日本のミニバンのように「居住性を重視した四角いフォルム」は稀だといえます。

3列目のシートも大人が長時間乗るには狭い傾向にあり、日本のミニバンとはコンセプトからして異なることがわかるでしょう。

日本とヨーロッパでは「合理的選択」の形が違う

ヨーロッパにおいてミニバンが普及していないのには、どのような理由があるのでしょうか。

多人数乗車が可能な車種が定着しない原因としては、まず「同一世帯で暮らしている人数が少ない」という点が思い浮かぶかもしれません。しかし、2019年のデータでは、ヨーロッパ圏の平均世帯人員数は2.8人であり、日本の2.27人(2020年)と比べてやや高い数値です。

つまりヨーロッパは日本に比べ、平均世帯人員数が多いにもかかわらず、大人数が乗車可能なミニバンが選択肢に入っていないことになります。

とはいえ数字上は、日本でもヨーロッパでも、多くの世帯が「5人乗りの車で全員が乗れる」状況にあるといえるでしょう。これをふまえれば、ヨーロッパにおいては「世帯の人数に即して車を選ぶ傾向」が見られ、日本においては「世帯人数プラスアルファの余裕を求める傾向」を読み取ることができます。

日本の車選びに見られるように「いざという時のため」に3列目を求めることも、1つの合理的な選択です。一方で、3列目の居住性を確保するためには、どうしても車体が大きくなり、走行性能も犠牲になるでしょう。

この点で、ヨーロッパのように「どうせ使わないのだから」と3列目を切り捨て、燃費や走行性能を重視するのも合理的な考えだといえます。

さらに、「スライドドアの3列シート車=商用車」というイメージが定着している点も、ヨーロッパにおいてミニバンが普及しない一因となっています。

かつては日本においても、タウンエースなどスライドドアの3列シート車が「商用バン」として認知されていた時期がありました。ところが90年代に登場したエスティマやステップワゴンをはじめとした商用ベースではないミニバンが爆発的にヒットしたことにより、イメージが刷新されました。

アメリカにもミニバンはあるが、市場シェアは低い

©Evgeniy Kalinovskiy/stock.adobe.com

広大な土地を持つアメリカにおいては、好まれる車両サイズが大きくなる傾向にありますが、それはミニバンにも当てはまります。

たとえば北米版で販売されているトヨタ シエナのサイズは、全長5,170mm×全幅1,994mm×全高1,740mmと、日本ではラージサイズにあたる「アルファード」よりもさらに一回り大きなサイズです。

日本市場には導入されていないトヨタ シエナ

ヨーロッパに比べ、アメリカで販売されるミニバンは広大な室内空間やシートアレンジ、スライドドアによる利便性など、日本のミニバンに近いコンセプトで作られているのが特徴です。

しかし、市場規模としては大きなものではなく、2020年におけるミニバン全体の販売シェアは2%程度となっています。反対に、市場シェアが高いのはSUVであり、乗用車のおよそ50%近くを占めています。

ここで注目したいのが、アメリカにおいては売れ筋のSUVが、ミニバンの「競合」になっているという点です。フォード エクスプローラーや、トヨタ ハイランダーをはじめとする”全長5m超え”かつ”3列シート”のSUVがメジャーな車種となっているからです。

3列シートSUVのフォード エクスプローラー

同サイズで比較すると、ボンネットの長さなど形状面の理由によりSUVはミニバンほどの室内空間を確保できません。そのため3列目まで十分な居住性を確保しようとすると、どうしても長さが必要になってしまいます。

この点で、日本においてはSUVと3列シートミニバンが競合するケースは稀だといえます。一方で、アメリカにおいてはSUVでも居住性を確保しやすいサイズが展開されているために、ファミリーカーとしてミニバンの競合となりうるのだと考えられます。

さらに、「サッカーマム」という俗語に見られるように、アメリカではホームドラマや映画などでミニバンが「ママの送迎車」として描かれるケースも多く、そうした世間的なイメージが消費性向にも影響を及ぼしている面もあるでしょう。

反対に、キャデラック エスカレードやリンカーン ナビゲーターといった高級SUVは俳優やアスリートなどのセレブからの人気も高く、憧れの対象として見られる側面があります。

著名人の所有者も多いキャデラック・エスカレード

ミニバンと比較した場合、普及しているイメージや、デザインや走破性といった要素から、SUVが好まれる傾向にあるようです。

道路環境や生活様式、文化的背景など、「その地域でどんな車が売れるか」にはさまざまな要素が絡み合っています。異なるエリアの人気ジャンルを比較してみることは、その場所の車事情を知るだけではなく、私たち自身を取り巻く価値観や考え方を相対的に捉える機会になるかもしれません。

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執筆者プロフィール
鹿間羊市
鹿間羊市
1986年生まれ。「車好き以外にもわかりやすい記事」をモットーにするWebライター。90年代国産スポーツをこよなく愛し、R33型スカイラインやAE111型レビンを乗り継ぐが、結婚と子どもの誕生を機にCX-8に乗り換える...

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