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「オーナーなら是非知って欲しい」スズキの名機R06A型エンジンとは
1900年代をスズキを支えた名機と呼ばれたエンジンたち
アルトやワゴンR、エブリイ、ジムニーなど、スズキの軽自動車のほとんどに使われているのが、R06A型660cc直列3気筒エンジンです。1990年に軽自動車規格で排気量が660ccに変更されて以来、F06A型、K06A型、そしてR06A型と進化してきました。
エンジンの性能はその時代のニーズを反映したものとなっています。
かつて名機と言われたF06A型は、ハイパワー、ハイスペックを誇ったパワーユニットであり、バブル期にブームとなったモータースポーツでの使用をも考えて設計されていました。鋳鉄製ブロックを使っていることから非常に頑丈で、苛酷なレースシーンでも優れた耐久性を発揮しました。
1998年に軽自動車にとって、大きなトピックがありました。サイズ規格の変更です。軽自動車の安全性を向上させるための国の施策で、これにより軽自動車は大型化され、重量増がなされることになります。
そこでエンジンに求められたのが、高出力化と小型軽量化。そして誕生したのが、K06A型です。
オールアルミ製となったことで、F06A型よりも大幅に軽量化に成功。高出力化対策としては圧縮比がアップし、直噴化されています。また前期型には、VVTや電子スロットルといった現代に通じるメカニズムも使われていました(後期型では廃止)。
環境性能と基本性能を両立させたR型
K06A型は、非常に多くのスズキ車に様々なバリエーションが搭載され、最後の搭載車種であったジムニーがモデルチェンジまでの四半世紀にわたってスズキ軽自動車を支えてきました。
しかし2000年代に入ると、自動車の環境性能が重要視されるようになってきました。エンジンにもさらなる小型軽量化と環境性能の向上が求められたのです。そこで開発されたのが、R06A型です。
開発にあたってのテーマは、燃費向上を最優先にあげて、同時に1Lエンジンにもひけを取らない動力性能を有するということ。
旧型エンジンとは大きく異なり、R06A型はボアピッチを小さくして、ロングストローク化されています。これにより、冷却損失を低減しました。
冷却損失とは、シリンダー壁面から燃焼したガスの熱量が大気中に放出されることで、燃焼効率の悪化につながります。またロングストローク化によって、低速トルクが増したフィーリングになりました。
またNAエンジンには、軽自動車初となる吸気・排気の両方への可変バルブタイミング機構(VVT)を採用しました(ターボは吸気側のみ)。吸気と排気時に発生する時の抵抗損失(ポンプ損失)を低減し、JC08モード燃費で2.5%の改善を図りました。
R06A型は従来の構造を大幅に見直したことで、高効率化を実現したのです。NAのほかターボエンジンをラインナップしただけでなく、横置き縦置きにも対応。スズキ軽自動車の基幹エンジンとなりました。
エネチャージやマイルドハイブリッドを組み合わせたユニットが用意されましたが、2020年にはさらにロングストローク化し、インジェクターをデュアルにしたR06D型が登場。今後、徐々に移行していく車種が増加することが予想されます。
- 執筆者プロフィール
- 山崎 友貴
- 1966年生まれ。四輪駆動車専門誌やRV雑誌編集部を経て、編集ブロダクションを設立。現在はSUV生活研究家として、SUVやキャンピングカーを使った新たなアウトドアライフや車中泊ライフなどを探求中。現在の愛車は...