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ツウしか分からぬその渋さ!WRCグループAの“新星”、初代と2代目に存在した4WDターボのスバル レガシィRS【推し車】
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B4以前は地味な日陰者、通好みな存在だった「レガシィRS」
1989年に彗星のごとく現れるや、1990年代にステーションワゴンブームの牽引役として一斉を風靡したスバル レガシィ…ですが、人気だったのはあくまでワゴンであり、本筋であるはずの4ドアセダンは3代目に「レガシィB4」として再出発するまで日陰者でした。
とはいえ、「レガシィRS」として設定されたホットモデルは初代がグループAラリーマシンとして、初代インプレッサWRX登場まで貴重な実績を積みましたし、2代目にも通好みの5ナンバースポーツセダンとして設定され続けています。
当時はほとんど街で見かけないほど地味な存在でしたが、MOBY編集部がAIに聞いた「30~50代のクルマ好きが気になる名車」にノミネートされたのは、名車レガシィB4の前身であることや、WRCで活躍した初代のイメージゆえでしょうか。
WRCグループAに打って出た「新星」、初代レガシィRS(1989年)
1989年1月、アメリカのアリゾナ州フェニックスで発売前の初代レガシィRSが10万km耐久走行の国際記録を樹立した時、世間はその偉業を称えるというより、意外なダークホースの登場に驚き、そして困惑しました。
何しろそれまでのスバルといえば、軽自動車のレックスやサンバーはそれなりにウケたものの、コンパクトカーのジャスティやドミンゴはそれらの拡大版に過ぎず、レオーネは乗用車なのに4WDで妙に腰高なカッコ悪いクルマ、アルシオーネに至っては知名度ほぼゼロ。
まさか世界記録を叩き出す高性能マシンを作るメーカーなどとは考えられない…プレミアムメーカー的な意味合いが強い現代からは考えられないほど、「その他大勢」に過ぎなかったのです。
世界記録を作ったSTi(現在の「STI」、スバルテクニカインターナショナル)はさらに、レオーネ時代からチョコチョコ参戦していたWRC(世界ラリー選手権)のグループAにも1990年からレガシィRSを本格参戦させ、世界へと打って出ました。
その道は険しく、チーム体制作りもマトモに走るのも難儀ではありましたが、1992年頃からは安定してトップクラスで戦う実力をつけ、1993年には初代インプレッサWRXへバトンをつなぐ直前に念願の初優勝。
日本だけでなく世界で「スバル」のイメージを変えるという大役を背負い、それに成功した初代レガシィRSでしたが、日本本国ではステーションブームの立役者だったツーリングワゴンGTが大人気で、レガシィRSは決して主役にはなれなかったのです。
通好みの渋い5ナンバースポーツセダン、2代目レガシィRS(1993年)
1993年にモデルチェンジした2代目レガシィにもセダンの「RS」は引き続き設定されますが、ラリーなどモータースポーツで活躍して人目を引く役目は初代インプレッサWRXへ引き継いでおり、1ランク上のラグジュアリー系スポーツセダンといった趣へ。
初代同様にラグジュアリースポーツグレードの「GT」から走り系装備の重視、エアロパーツなどで差別化したホットモデル「RS」として存続したものの、250馬力のシーケンシャル・ツインターボのスペックは変わらず、MT専用グレードでもなく4AT車も設定。
もちろん競技用ベースグレードの「RS-RA」は設定されませんでしたが、マイナーチェンジでRSの5MT車のみ当時の自主規制値いっぱいの280馬力(RSの4AT車と、4ATのみのGTは260馬力)になるまでは、5MTとビルシュタインショックだけがRSの証でした。
もちろんこの代でも人気はツーリングワゴンでしたから、レガシィのセダン自体を全く見かけず、RSはイメージリーダーとしての役割を全く果たせていなかった、と言えます。
インプレッサWRXに対する特色だったシーケンシャル・ツインターボも、ターボが切り替わる境目でトルクの息継ぎ感が目立つと酷評されており、ラグジュアリー性の高い高級ツアラーとしてもあまり品がいいという評価を受けていません。
しかし、当時の5ナンバーセダンで競技車でもないのに、280馬力とパワフルなラグジュアリー系スポーツセダンなんてそうそうありませんでしたし、素性が良いなら捨て置くことはない…と、当時のスバルは判断したようです。
次の3代目レガシィからは「レガシィB4」と改名、安い実用グレードを廃してRS(自然吸気エンジン)、RSK(ターボ)とプレミアム感のあるグレードへ一本化して再出発、プレミアムブランドとして再構築し、その後は成功していくこととなります。
その頃にはワゴンブームも終わりかけていたので、スバルとしても新たな柱を必要としていた頃ですが、地味ながらも2代続いた「レガシィRS」は、3代目以降の「レガシィB4」が成功するための布石として、地味ながらも意義深いモデルだったと言えるでしょう。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...