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競技からストリートまで大暴れ!国産コンパクト4WDターボのヒーロー・日産 パルサーGTI-R【推し車】
目次
国際ラリーではマイナーだった、国産コンパクト4WDターボのヒーロー
1980年代後半〜1990年代のグループA全盛期にWRCで活躍した国産4WDターボは?といえば、2大巨頭のランエボとインプレッサWRX、それらの前身ギャランVR-4とレガシィRS、トヨタのセリカGT-DOURにマツダのファミリア4WDが有名どころ。
ランエボやインプレッサWRXと同じような経緯で登場したのに、バブル崩壊の煽りで熟成も進まないままWRCを去った日産 パルサーGTI-Rなど日陰者な存在ですが、国内競技やストリートではコンパクトなのにパワフルなスゴイやつとして人気がありました。
MOBY編集部がAIに聞いた、「30〜50代のクルマ好きが興味を持つ名車」としてはまさにドンピシャ!なパルサーGTI-R、どんなクルマだったのでしょうか?
N14パルサーにブルSSS-Rの中身を詰め込んだ怪物
1980年代後半、国産車は競って高性能グレードのDOHCターボ化を推し進め、目処がつくとマツダのファミリアを筆頭にフルタイム4WDも採用、安価に大量供給できる体制を整えて、海外から見るとちょっと異常なほど「4WDターボ大国」へと成長します。
7代目U11型ブルーバードへ、ラリーベースモデルの「SSS-R」を設定していた日産も4WDターボのラリー車にハマっており、「アンダーガードやロールバーなどオプションを全部組んでしまえば、ディーラーからラリーのスタートへ直行できる」と言われたものです。
ブルーバードSSS-Rの初期型はコスワースの鍛造ピストンを使ったCA18DET-Rを搭載したフルタイム4WD車で、後期でそこまで豪勢ではなかったものの、スペック上はよりパワフルなSR20DET搭載車へと発展。
このSR20DET+フルタイム4WDシステム「アテーサ」を、1990年にモデルチェンジしたコンパクトなハッチバック車に詰め込んだのが、RNN14型パルサーGTI-Rでした。
パワフルでトラクション性能の高いパワートレーンを小型軽量ボディへ詰め込めば、ジャジャ馬かもしれないけど間違いなく速くなる、こういう手法は古今東西の常套手段で、車格に対して高価にはなるものの、それだけの価値が認められています。
日産ワークスも、それまでグループAでは200SX(S12シルビア)、キットカーではN13パルサーなどで国際ラリーを戦っていましたが、WRCに本腰入れて総合優勝狙うなら、中身がブルSSS-Rのパルサーという、「怪物」を必要としたんですね。
問題は明らかだったが、日産には熟成する時間がなかった
ただし、「小さな車体に格上のパワートレーン」はそう単純な話ではなく、まずもってコンパクトに詰め込むので熱がやらとコモりますから、冷却系の強化と冷気の導入、熱気の排出を効果的に行えなければ、ラリースペックの高性能チューンではいくらも走れません。
また、熱問題を解決してパワーを思い切り路面に叩きつけようとしたところで、構造上の問題によりサスペンションのストロークが取れないだの、太いタイヤを履けないだのという問題を解決しない限り、どれだけパワーがあっても無駄!
だからこそ2リッター4WDターボがどれだけパワフルだろうと、時には1リッターターボでFFのダイハツ シャレードにすら遅れを取るわけで、パルサーGTI-Rもまんまとその罠にハマりました。
ただ、そんなものはあくまで初期トラブルのひとつに過ぎず、三菱のランサーエボリューションだって最初の「I」ではロクなマシンじゃなかったのが、「II」以降でベース車から大幅に改良していき、「V」ではついにワイドボディ化、ベース車と全く別車です。
パルサーGTI-Rも「エンジンルームの熱問題と、タイヤサイズが致命的」なんて言われますが、WRCで総合優勝争いに絡み続ける努力を続けられるなら、いずれ「GTI-Rエボリューション」的なモデルが登場し、全てを解決していたかもしれません。
だからパルサーGTI-Rにとって最大の問題は、メカニズム的なものより「日産の経営悪化」でした。
よく言われる「901運動で劇的に質的改善を果たした名車群」は、実のところバブル全盛期の日産にとって、販売競争に寄与しない重荷(※)でバブルの負け組でしたし、加えてバブルが崩壊すると、恩恵も受けていないのに販売台数はさらに低迷。
(※代表例がR32スカイラインセダン)
結果、1992年シーズンをもって、根本的な改善を施す時間もなかった「未完の大器」パルサーGTI-RはWRCから撤退、その後の日本車黄金期は指を加えて見ているしかなかったのです。
国内では競技からストリートまで大暴れ!
しかしWRC撤退はパルサーGTI-Rの終わりを意味しませんでした。
確かに国際レベルで通用するには熟成不足もいいとこでしたが、全日本選手権レベルのラリーやダートトライアルで活躍するには十分以上のポテンシャルを持っており、天井知らずのバージョンアップを続けるランエボなどより、安く買っては腰を据えて付き合えました。
もちろんストリートでも安くてパワフルなコンパクト4WDモンスターは大歓迎でしたし、日本国内でのパルサーGTI-Rは、日本の国情によく合うサイズもあって大活躍だったのです。
2000年代に入っても地方選手権クラスまでの競技で活躍を続けましたし、型落ちやお下がりのランエボやインプレッサWRXを安く買えるようになるまで、現役でした。
さすがに2000年代後半以降も活躍し続けるには、バージョンアップを続けていたライバルが強すぎたものの、往年のファンによって今も多くのパルサーGTI-Rが大事に乗り続けられています。
晩節を汚すことがなかったとも言えるわけで、こういうカーライフの方が案外幸せかもしれませんね?
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...