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「日本が誇る電気自動車」私たちのクルマ観を変えた、日産 リーフの12年【推し車】
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初代リーフが発売された頃から、街の自動車は大きく変わった
三菱のi-MiEVとともに、日本が「電気自動車先進国」だと誇りに思える存在だった、日産のBEV(バッテリーのみで走る電気自動車)、リーフ。
2010年の初代発売からもう12年以上たち、2代目リーフやサクラ/eKクロスEVが街を走っていても、それが物珍しい新型車ではなく、ただありふれた光景になった今、そのデビューから現在までの「自動車に対する見方の変化」を、思い返してみたいと思います。
それはただ、普通のクルマのようにそこへあった
初めて初代リーフを街で普通に見たのは、東日本大震災(2011年)から1年ほどたった2012年、筆者が住む宮城県仙台市の街中にある、なんということはない月極駐車場でした。
近くの住民か、通勤してきたのか、以前と違うクルマが止まっているなと思ったら初代リーフでしたが、何か特別なクルマだ、という感覚は特にありません。
その頃にはマフラーテールが下向きで後ろや横から見えないクルマなんて普通ですから、止まっているだけでは単に「見慣れないハッチバック」に過ぎず、これまでとは根本的なクルマなのに、それを全く感じさせない方に違和感を感じたくらいです。
その頃からリーフやi-MiEVが街を普通に走っているのを見かけますが、エンジンがかかっていないのだし、さぞかし静かに、あるいは聞き慣れないインバーター音とやらを響かせるかと思えば、そうでもなし。
一番響くのはタイヤのロードノイズに風切り音ですが、それだけでも静かに感じないのはなぜだろう?と自問自答して、往来するクルマの音に耳を傾けてみました。
すると、ほとんどのクルマ、それも新しいほどエンジン音や排気音など響かせず、シャーッというタイヤのロードノイズと風切り音が、クルマの接近音のほとんどです。
もちろん坂道を登ったり加速のためにエンジンを吹かせば別ですが、それにしてもハイブリッドカーならやはりモーターで走っているのか、エンジン音はしません。
気が付かないうちに、クルマが立てる音がずいぶん少なくなったんだと知って、重低音を響かせていたかつての愛車、ダイハツ ストーリアX4が妙に懐かしくなりました。
田舎の高速道路ですら珍しくなくなった、リーフ
それでも地方都市とはいえ、東北最大の街・仙台ですから、リーフを見かけるようになったのは、東京より流行が遅れているからだろうと思っていたのですが。
ある日、三陸自動車道を石巻方面へ走っていると、目の前を普通に初代リーフが走っていて、「おいおい高速道路なんて走って、バッテリーは大丈夫なのか」と、ちょっと心配になりました。
しかし石巻方面に限らず、どこの高速道路を走っていてもリーフを見かけたから珍しいというわけでもなくなるのに、そう時間はかかりません。
さすがに一充電走行距離が短いi-MiEVや、高級車もいいところのテスラ モデルSやモデルX、それらの廉価版といえるモデル3やモデルYはめったに見かけないものの、リーフだけはやたらと見かけます。
多少は遠出ができる程度の航続距離、ほぼ同クラスのノートと変わらない実用性を持つ5ドアハッチバックで使い勝手の良さなどが評価されたのか、筆者の中ではかつての「ハイブリッドカー=プリウス」のように、「電気自動車=リーフ」というイメージになりました。
ノートe-POWERを見て思った、「なるほど!」
月日は流れて2016年11月、日産はシリーズ式ハイブリッドカーの「ノートe-POWER」を発売、ハイブリッドカーではなく「新たな電気自動車」と宣伝していましたが、諸元表を見て「なるほど、そう来たか!」と納得。
プラットフォームこそ異なるものの(※)、マイナーチェンジ後の初代リーフと同じEM57モーターを使っており、つまりリーフのバッテリー容量を減らし、駆動系抜きのエンジンと燃料タンクを積んだのがE12ノートe-POWERではないか、と思ったのです。
(※初代リーフは2代目C11ティーダと同じBプラットフォーム、E12ノートe-POWERはVプラットフォームと言われている)
実際はそこまで単純ではないにせよ、外部から充電した電気を使うか、給油した電気で発電機(エンジン)を回した電気を使うかの違いはあっても、最終的にモーターで走る事には違いありません。
トヨタやホンダのハイブリッドシステムとはまた異なる、電気自動車ならではの回生ブレーキを多用したワンペダル双方もしかりで、「このノートe-POWERで電気自動車に慣れたユーザーが次に買うクルマとして、リーフは有力候補に上がるだろう」と思いました。
しかも、試しに所有するにはリスクが大きいリーフより、ガソリンを給油するノートe-POWERならリスクは少なく、今までのクルマからBEVへの橋渡しには最適です。
駐車場誘導係の爺さんまで買った、2代目リーフ
果たして2017年10月、リーフが2代目へモデルチェンジすると、日本自動車販売協会連合会が発表している、新車登録台数の乗用車ブランド通称名別順位では、リーフが登録車(軽自動車以外の乗用車)ベスト50の常連になりました。
さすがにヒトケタ順位で争う大ヒット車種というわけではないものの、2022年度(2022年4月~2023年3月)も12,751台のリーフが登録されて39位にランクインしており、平均月販は立派に1,000台を超えています。
昔なら「3ケタ台数一歩手前なんて不人気もいいところ」と言われるところですが、一部の大ヒット車種を除けば国内販売台数なんて大して稼げなくなったご時勢であれば立派に売れている部類で、補助金込でも決して安くないBEVならなおさらです。
62kWhのバッテリーを積むリーフe+(イープラス)ならWLTCモード一充電走行距離458km、暖房を多用する冬季など、BEVには不利なでカタログスペックなど話半分以下な状況でも往復200kmは計算できそうなのも、頼もしいところ。
もちろん充電インフラの整備が思ったように進まない現状では、ただのガソリン車やハイブリッドカーより運用の制約が大きいとはいえ、「考えてみりゃ遠乗りなんてしないし、家で充電したぶんだけ走れりゃいいよ!」と割り切れるユーザーも増えたのでしょう。
一番驚いたのは2代目リーフ発売翌年、四十肩を治療するため通院していた整形外科でのことで、そこの駐車場誘導のため雇われていた爺さんが、「俺のクルマの前に止めていいよ!」というものの、その爺さんに似合いそうなクルマ?がありません。
「何やってんの!これだよこれ!」と指を刺されたのはピカピカの2代目リーフで、驚くより何より、ああもうそういうのが当たり前の時代になったんだな…と、時の流れを感じました。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...