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「最初はどこにでもある、ありふれた星だった」三菱デリカシリーズの運命を変えた車・デリカスターワゴン【推し車】

改名でマイナーチェンジ効果を高めた「三菱マジック」の原点

もしデリカミニが「デリカ」を名乗らなかったら…あるいはeKスペース クロスが「デリカ」を名乗っていたら…と思うと、「デリカブランド」の偉大さがわかるというもので、その原点がデリカスターワゴン4WD

クルマの名前は大事だな、と思わせる最近の好例が、2023年5月に発売された三菱の「デリカミニ」で、前身であるeKクロス スペースと型式も変わらない実質ビッグマイナーチェンジながら、車名変更でユーザーの見る目も狂わす販売方法は、まさにお見事!

筆者など前身の時点で「別にデリカD:1で売ってもいいのに、どうしたんだろう?」と思っていましたが、デリカミニと名付ける事で、ついでにパジェロミニも思い出させて存在感をアピールするとは、最近の三菱ってなかなかイケてます。

しかし「デリカ」と名乗るだけでなぜこれだけ違う車に見えるのか…その歴史からヒントを探す事にして、まず今回は「こういうデリカの元祖」、デリカスターワゴンです。

最初はどこにでもある、ありふれた星だった

「三菱 デリカ」という車名のSUVイメージには明確な原点があり、1979年に発売された「デリカスターワゴン」がその元祖。

ただし、1968年にまずトラックを発売、翌年に1BOXバンや乗用ワゴン版「デリカコーチ」を追加した初代デリカが2代目へモデルチェンジするにあたって、単に呼び名を変えただけで、初期の時点ではSUV、昔の言葉で言えば「RV」的なイメージはありません。

そもそも1980年前後というのは、「商用車やクロカン車をオシャレに乗りこなす」のがちょっとした流行になっており、メーカー各社もユーザーの需要に合わせ、ちょっと化粧直しして乗用車っぽくしたものから、本格乗用クロカンまで数多く発売していました。

後に1990年代RVブームへつながり、2020年代のミニバンやSUVブームの源流でもありますが、(2代目デリカがベースの)初代デリカスターワゴンも、名前を乗用車っぽくして、内外装をちょっと化粧直ししただけの1BOXバンでしかありません。

その手のクルマはほかに同クラスだけでもトヨタ タウンエース / ライトエース(後にマスターエースも)、日産 バネット、マツダ ボンゴ、いすゞ ファーゴとライバルが多く、むしろ洗練された美しさや高級感だと、デリカスターワゴンは劣っていた方かもしれません。

「合体!変身!」デリカの運命を大きく変えた4WD化

しかしそのデリカの運命、そして現在に至るまでのイメージを大きく変えた「大事件」が1982年10月に起きました。

1980年に4WDを追加した小型ボンネットトラック「フォルテ」(ストラーダを経て、現在のトライトンのご先祖)のパワートレーン一式を組み込むだけでなく、モノコックボディに強固なラダーフレームを組み合わせた、「デリカスターワゴン4WD」の誕生です。

同じ1982年の5月には、同様の手法でフォルテ4WD用がベースのラダーフレームとパワートレーンに、近代的なクロカンボディを載せた「パジェロ」(初代)がデビューしており、デリカスターワゴン4WDはまさに、「1BOX版パジェロ」でした。

当時のカタログでは「同クラス1BOX車では初の4WD」とアピールし、砂漠や岩場も何のその、翌年パリ~ダカールラリーに初出場するパジェロについていってもおかしくない勇姿を紹介して、「他社の1BOXよりタフなクルマ」と見せたのです。

実際、後に4WDを追加するライバルに対し、ラダーフレームを組んでガッチリ最低地上高まで上げ、ぬかるみや積雪路だけに留まらないクロカン並の悪路走破性までイメージできたのはデリカスターワゴンくらい。

今でいえば、あくまでモノコックボディのクロスオーバーSUVと、強固なラダーフレーム上にボディを載せた、ヘビーデューティーSUVくらい、イメージの差がありました。

RVブームの波に乗り、デリカスペースギアと併売された2代目

1986年には2代目へモデルチェンジ、より洗練された姿を大径タイヤで支えた姿は「流行りのRV」そのもので、クロカン車道用のバンパーガードやフォグランプをつけたライバルは他社にもありましたが、デリカスターワゴン4WDほど似合う車は全く見当たりません。

もちろん、装備や快適性、操縦性などの面で優秀なライバルはありましたし、最低地上高が高いので、乗用1BOX車として肝心な乗降性は決して褒められたものではなかったものの、悪路走破性によるタフなイメージは、まさに「色の白いは七難隠す」(※)。

(色白の女性は他に多少難があっても、それが目立たないという…昔のことわざなので、怒らないでくださいね~?!)

バブル時代に盛り上がったRVブームの中、パジェロのごとく社会現象とはならなかったもののガッチリ固定客をつかんだのはこの頃であり、しかもバブル崩壊後にサイフのヒモが固くなったところからが、デリカスターワゴンの真骨頂。

「本物」を求めるユーザーにとって、クロカン並の悪路走破性と車内が広々とした1BOXボディを両立したデリカスターワゴンは、その時代で既に「唯一無二」となっていました。

後継のデリカスペースギアが1994年に発売されても、小回りと悪路走破性に有利なショートホイールベースと全長の短いボディが重宝され、旧型ながら1999年に販売を終えるまで併売されたのです。

ただし、現在のデリカミニが持つイメージとは、少々異なるかもしれません。

三菱がまだ軽商用1BOXのミニキャブバンを自社で開発・生産していたら…ミニキャブMiEV後継のBEVとして復活するのなら…SUV版を作り、「デリカスターワゴンミニ」を名乗ったら売れるかもしれませんね。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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