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デザインで見るものを圧倒…「コスモ」の名が最高に相応しかったマツダ コスモスポーツ【推し車】

「コスモ」の名が最高にふさわしいマツダ車

コスモスポーツが発売された1967年、月へと向かうアポロ計画など、宇宙へ賭ける人類の夢は明るいと思えた時代だった

マツダで「コスモ」といえば、「発売されるたびに一応1本筋が通ってはいるものの、コンセプトから変わりすぎてモデルチェンジなのか、同じ名前の新型車なのか困惑する」という意味で、日産 レパードやホンダ インサイトと並びたつ車名です。

初代はドラマチックなエピソードも豊富なマツダ2ローターロータリー市販第1号、2代目は2代目ルーチェがベースのクーペ、3代目は4代目ルーチェの兄弟車、4代目はユーノスブランドのラグジュアリークーペでした。

一応全てロータリーエンジン搭載車ですが、ロータリー専用車は初代と4代目のみ、3代目に至っては4ドアセダンもあってディーゼルエンジンを積んだり、どうも「とっておきの車名」とは言い難いのが難点。

しかし初代だけは正真正銘、ロータリーエンジンを引っ提げ、名前通り宇宙まで天駆けるような夢を追い求めた時代のマツダを象徴するモデルでした。

全身で訴えかける「ロータリー積んでます」

並のクルマではありえないフォルムは、まさに走るロータリー広告塔だった

とにかく前から後ろまでペッタンコ。

それでもキャビンはある程度の高さが必要なためバランスをとり、特にテールはオーバーハングが異様に長いため、よりパターンとした印象を強めていますが、低く鋭く突き出したフロントノーズと相まって、まるで流星のようです。

特に大径というわけではないフロントタイヤ上部のフェンダーは薄く、ボンネットが非常に低いことを予感させるとともに、フロントタイヤ後方の短いフェンダーに設けられたエアアウトレットからは、ハイパワーで発熱量が大きいエンジンの存在も予見させます。

もちろんフロントタイヤから先のオーバーハングは短く、そのエンジンが小さく薄っぺらいエンジンルーム奥へフロントミッドシップに搭載できるほど、コンパクトなことも。

そんな芸当が可能なのは、デザイン重視でエンジンブロックを寝かせた直列4気筒エンジンか、もう1つ、ロータリーエンジンくらいです。

つまりコスモスポーツとは、そのデザインからして「ロータリーエンジンでもなければそうそうありえない」という、全身でロータリーエンジン搭載車であることをアピールしたクルマなのでした。

性格的にはロングツーリングが得意そうなGT

メーター類の確認を忘れてうっかり踏みすぎると、途端に高回転警報が鳴りハッと我に返る

西ドイツ(当時)のヴァンケルとNSUからロータリーエンジン関係の権利を入手したマツダは、実際には未完成もいいところだったロータリーを苦労して実用化へ持ち込み、少なくとも西側では世界初の2ローターロータリーの実用化に成功します。

そこに至るまでのエピソードはこの記事の本質ではないので割愛しますが、筆者(フリーライター・兵藤 忠彦)はこのコスモスポーツを試乗するという、貴重な機会に恵まれたことがありました。

1960年代の2シータークーペらしく狭苦しいコクピットへ潜り込むと、整然とは並んでいるものの、現在の基準では決して視認性がいいとは言えないメーター類を前に、「あまり回しすぎないように」と念を押されてから走り出します。

10Aロータリーの吹け上がりは好調で、砂利敷きの試走路ゆえにスルスルと滑るように…とはいかなかったものの、1速で回転計の針はビーン!と跳ね上がり、ロータリー特有の高回転警報を鳴らしてしまって、慌ててストロークの短いシフトノブを操作し2速へ。

その後は回転計の針と前方を交互に見ながらの神経質なドライブとなったため、ロータリーパワーを心ゆくまで味わうには至りませんでしたが、代わりにボディや足回りの特性はよく伝わりました。

それを一言で言えば、「とにかくズシリと重い!」。

重いステアリングを回しても、外観から想像するように軽いノーズがスッと向きを変えるでもなく、高回転を封印してトルク不足の10Aロータリーは加速も鈍く、ブレーキを踏んでも減速は重々しく…というより、エンジンブレーキの存在を感じさせません。

どうも街乗りで楽しいクルマではなさそうだ、という印象で、おそらくは高速道路のように滑らかな直線で高回転をキープしつつ、高速巡航でどこまでも走っていくような長距離高速巡航ツアラーという、GT的なクルマだと感じました。

マラソン・デ・ラ・ルート84時間など海外の耐久レースでは活躍したものの、マツダがワークス体制で国内レースへ参戦する際にコスモスポーツを使わなかったのは正解でしょう。

マツダロータリー永遠のフラッグシップ

自動車というより宇宙船のようなテールランプとテール周り

1967年にコスモスポーツが発売された当時の価格は148万円、ハンドメイド生産のいすゞ 117クーペ初期型やトヨタ2000GT、さらに同じマツダロータリーでもルーチェロータリークーペ(1969年)よりやすかったとはいえ、並の国産スポーツとはケタ違いに高価です。

スーパーカーや高級車のためロータリーメーカーになったわけではないマツダとしては、実用車への搭載を推進するため、コスモスポーツ用の10Aロータリーをデチューンし、量産のためコストを抑えた仕様をファミリアロータリークーペに搭載します。

同時にコスモスポーツ用は110馬力から128馬力へと、排気量が大きいルーチェロータリークーペ用13Aよりパワーアップするなど差別化を図り、1972年の販売終了までマツダロータリー軍団のフラッグシップであり続けました。

後のサバンナGTやRX-7のようにスポーツクーペとしての素質は低かったものの、宇宙船のようなフォルムと、レシプロエンジンとはあまりにも異質なロータリーエンジンのフィーリングの組み合わせは秀逸で、象徴的な存在としては成功したといえます。

今はレンジエクステンダーEV用発電機としての利用にとどまるマツダのロータリーエンジンですが、何らかの形でロータリーエンジンを搭載するフラッグシップが復活する時には、RXシリーズよりはむしろ、「コスモ」の名がふさわしいかもしれません。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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