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「タイプRじゃない、NSX-Rだ!」夢を実現した究極マシン・初代NSX NA2は空力追求の傑作である【推し車】

高性能、高品質、空力を追求し続けた初代NSXの改良版NA2

初代NSXのMT車を1997年に3.2L+6MT化したNA2型NSX、画像はワインディングロードでのスポーツ走行を重点にした「タイプS」

1990年に発売され、2005年に生産を終えるまで15年も作られた初代ホンダ NSXは「日本初の本格的なスーパーカー」と言われます。

実際、発売時にはスーパーカーにふさわしい性能を持ちつつ操縦性や居住性に優れ、「性能やデザインと引き換えにいろいろとガマンする乗り物」だった従来のスーパーカーを過去のものにするクルマでしたが、さすがに15年もそのまま作っていたわけではありません。

今回紹介するNA2型NSXは排気量を3.2Lへ引き上げた改良型ですが、当事の自主規制に従い公称最高出力280馬力は変わらず、「パワーより軽量化や空力、そしてエンジンの質的向上で勝負」したモデルで、2002年に追加されたNSX-Rなど、その究極形態でした。

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ホンダらしい「快適F1」を目指したNA1型NSX

NA1型NSXの頂点に立つ「NSXタイプR」(1992年)

初代シティを改造したミッドシップ車の試作にはじまり、当初は流麗なデザインの2.0L級、続いてオールアルミボディにより軽量化を徹底した3.0L級V6エンジンのミッドシップスポーツ、最終的にはDOHC VTECを組み合わせ自然吸気で280馬力を発揮した初代NSX。

ホンダらしいスーパースポーツを作る!という課題に当たっては「性能追求派」と「快適性と高性能の両立派」に分かれたものの後者が採用され、快適性や視界の良さを得つつ高性能を得るためオールアルミボディで軽量化。

ターボエンジンの採用を見送ってなお苦しい熱問題を解消するのに排気系に余裕を持たせ、同時に高速安定性も得るため伸ばされたテールはトランクルームを設ける余裕も作り、「結果的に高性能と快適性に加え、実用性も得る」という副産物の塊でした。

ただ、そんなNSXだからこそ「頑張って走りに振ればもっとスゴイのが作れるのでは?」という声は1990年の発売当初から根強く、1992年には快適装備をカットして120kgもの軽量化を実現した「NSXタイプR」で応えています。

さらに北米市場からの要求に応えたタルガトップ版のタイプTを設定するなどラインナップを拡充しますが、発売から数年たつと海外のライバルも「高性能と快適性の両立」を実現した中、NSXが性能的に物足りなくなってきたのも事実でした。

6速MT+3.2L化された「NA2」型NSX

初代NSX・NA1型のC30A型V6DOHC VTECエンジンをNA2型NSXで3.2L化した「C32B」

後にマクラーレン F1を作るゴードン・マーレイなど、NSX登場時からモアパワーを叫ぶ声は多かったものの、そもそも初代NSXのC30Aエンジンはレジェンド用2リッターV6エンジンC20Aから発展したものです。

NSX自体も開発段階でまだ250馬力程度のSOHCエンジンだったC30Aをどうにか押し込むだけの作りで、DOHC VTEC化しただけでもホイールベースを伸ばしたうえで傾斜搭載しましたから、仮にV8エンジンなど作っても詰め込むのに苦労するのは目に見えています。

ターボ化もエンジンルームの排熱が追いつかなくなり、耐久性や信頼性が欠落するのはル・マン24時間レースのGT1仕様(1995年)やJGTC/SUPER GTの2004-2005シーズン車で明らかであり、さらなる軽量化と空力改善を除き、C30Aの改良が唯一の改良手段でした。

そこでピストン摺動部ライナーの材質を鋳鉄からFRM(繊維強化金属)に置き換え、シリンダー間隔の縮小とボアアップに成功したのが3.2L版の「C32B」。

同じ3.2Lでもレジェンド用のC32Aがストロークアップ版なのに対し、C32Bはボアアップ版の別物で、高回転域への吹け上がりの良さを維持しつつ全域でトルクを向上、これを新開発の6速MTと組み合わせ、新型式「NA2」となりました(4速AT版はNA1のまま継続)。

日本国内では280馬力自主規制が続いていたので「公称最高出力280馬力」は変わらなかったものの、海外ではNA1の274馬力(計測方法の違いか、280馬力ではない)から294馬力へと出力向上、「実際はもっと出ているのでは?」と言われるほどの進化です。

「タイプS」と「タイプS-Zero」、そして「NSX-R」

NA2型NSXの最終進化形、「NSX-R」(2002年)

NA2へのマイナーチェンジではタイプRの復活がなかったものの、代わりに設定されたのが「タイプS」と「タイプS-Zero」。

タイプSはワインディングロードを中心にスポーツ走行の楽しさを充実させるため、エアコンなど快適装備はパワステ以外維持しつつ、標準車のパワステつきに対しては45kg、パワステなしに対しても30kgの軽量化を実現したモデル。

タイプS-Zeroはさらにエアコンやオーディオ、遮音材を省略して標準車パワステつき車比で96kgも軽量化、サスペンションもハード化したサーキット走行用チューニングベース車で、かつての「タイプR」にかなり近いモデルでした。

「パワーを上げられないなら軽量化すればいいじゃない?」というわけで、タイプSの段階で「(45kgの軽量化は)10馬力アップと同等の効果」とアナウンスしており、単純に考えればS-Zeroなら20馬力アップでしょうか。

そこまでやるならタイプRを名乗ればいいじゃない…と思えますが、それは2001年12月のマイナーチェンジでリトラクタブルライトを固定式に変更するなど外観が大きく変わったバージョンへ、2002年5月の「NSX-R」追加という形で実現しました。

NSX-Rに比べれば、S-Zeroなど「ただ軽くしてサスペンション固めただけ」と言えるほど進化しており、エンジンの高精度バランス取り、電子制御スロットルの専用セッティングやファイナルギアのローレシオ化による加速性能、レスポンスの改善など。

特筆すべきはエアアウトレットダクトつきフロントフードのカーボン化、フロントアンダーカバーやリアディフューザー、カーボンリアスポなど軽量化と空力改善の合わせ技で、市販車初の前後マイナスリフト化。

エンジンの公称最大出力は相変わらず280馬力でしたが、「高性能化はパワーじゃなく空力と軽量化、エンジン特性で実現する!」という姿勢も一貫しており、NSX-Rはまさに究極のNSXと言えます。

新車価格だけなら、JGTC参戦車のホモロゲーション用に5台限定発売、1台のみ実際に市販されたと言われる「NSX-R GT」(2005年2月発売)もありますが、NSX-Rも程度良好車なら海外のオークションでは4,000万円以上の高値がつくなど「資産化」が進みました。

ハイブリッドスーパーカーの2代目NSX(NC1型)があまり話題にならず、パッとしないままいつの間にか生産が終わっていたのに比べると、初代NSX、特にNA2型のNSX-Rは、この先も長く語り継がれるクルマになりそうです。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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