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「あのクラウンにもワゴンが!?しかもマフィア級!?」Lクラスの大排気量!1990年代のハイパワースポーツワゴンたち【推し車】
目次
ステーションワゴンブーム最後の空白域
1990年代になって突然ブームとなり、それまでの「ライトバンに毛が生えたような貧乏臭いクルマ」から、セダンに取って代わる乗用車として一気にスターダムへのし上がったステーションワゴン。
その短く熱いブームは、ミニバンブームやSUVブームがその本領を発揮する直前、1990年代後半には頂点に達し、国産車メーカーのほぼ全車からステーションワゴンの新型車が登場する異常事態となります。
そしてその空白域だった、「Lクラスの大排気量・ハイパワースポーツワゴン」として登場、ブーム末期のヒット作となったのが、日産 ステージアとトヨタ クラウンエステートでした。
実質スカイラインスポーツワゴンだった、日産 ステージア(初代1996年)
1990年代半ば、当時の自動車誌にはスカイラインがベースと思しき新型ワゴンのスクープ情報が流れ、その予想イラストでは異様に長いリヤオーバーハングによりロー&ワイド感が強調された、スマートかつパワフルな大排気量スポーツワゴンが描かれました。
1996年10月に発売されたその新型車は「ステージア」と名付けられ、サスペンション形式からもわかるように(※)、実際のベース車はR33スカイラインの姉妹車C34ローレルで、型式もWC34と「ローレルワゴン」といってよい存在です。
(※FR車はF:ストラット・R:マルチリンクで、4WDは4輪マルチリンク)
ただし旧型を継続販売中のY30セドリック/グロリアワゴン後継、さらに1990年で廃止されたスカイラインワゴン(7代目R31)復活という意味もあり、当時の日産モーター店(ローレル販売会社)のほか、日産プリンス店(スカイライン販売会社)でも販売。
オーテックジャパンがBCNR33スカイラインGT-Rと同じRB26DETTを搭載した、4WDスポーツワゴンの「ステージア260RS」など、車名は異なっても実質的には「スカイラインGT-Rワゴン」でした。
レガシィ ツーリングワゴンやインプレッサ スポーツワゴンという「スバルの牙城」も、この大排気量大型ワゴンには及ばず、後述するクラウンエステート登場まで、ライバル不在の大型スポーツワゴンとして大ヒット。
2001年にはV35スカイラインがベースの2代目(M35型)も登場し、ワゴンブームがすっかり下火となった2007年まで販売されました。
マフィア風の超ド級スポーツワゴン、トヨタ クラウンエステート(1999年)
トヨタはステージアのヒット後もしばらく同クラスワゴンをラインナップしませんでしたが、1999年にモデルチェンジしたクラウン(11代目S170系)に2.5リッター直6ターボの傑作「1JZ-GTE」(280馬力)を積む「アスリートV」が登場すると、そのワゴン版を設定。
「クラウンエステート」と名付けられた新型ワゴンは、ベース車同様に3リッター直6自然吸気エンジン2JZ-GEを積むロイヤルサルーンとアスリートGを頂点に、1JZ-GTEを積む高級スポーツワゴンの「アスリートV」をラインナップ。
当時のクラウンアスリートVは、かつての初代日産 シーマを思わせる「迫力満点の大柄ボディに大トルクの大排気量ターボエンジンを積み、乱暴とさえ言える加速と高級感の両立」が魅力で、クラウンエステートのアスリートVもそれをしっかり受け継いでいました。
筆者にとっても実は思い出深いクルマで、サラリーマン時代に取引先が黒塗りのクラウンエステート アスリートVを数台連ねて現れ、スーツ姿の屈強な男たちが何人も降りてきたのを見て、幼稚園などへ教材を納める会社のはずなのに、どこのヤ◯ザかと思ったものです。
その種のクルマとしてアルファードが多用される以前、威圧感を前面に押し出すにはピッタリなクルマで、ステージア(260RSは除く)が爽やかなスポーツ路線なら、クラウンエステートはダーティなマフィア風スポーツワゴンといったところでしょうか。
ワゴンブーム終了でアスリートVはカタログ落ち、2007年まで販売された末期には格調高い内外装から霊柩車需要が多かったと言われますが、これまたスポーツ路線のステージアに真似できない芸当で、同クラススポーツワゴンでも個性の違いが際立ちました。
なお、2024年には新型「クラウンエステート」が出る予定ですがクロスオーバーワゴン的なモデルで、過去のエステートとはだいぶ違うようです。
ほとんどは存在感が薄かった、スポーツ系以外のLクラスワゴン
Lクラスワゴンとしては、他にラグジュアリー系が数台ありました。
トヨタがアメリカから輸入していたセプターワゴン後継のカムリグラシア(1996年)と、その姉妹車でFF車なのにマークIIを名乗ったマークIIクオリス(1997年)、日産がFF化した2代目セフィーロに追加したセフィーロワゴン(1997年)。
そして三菱がワゴンブーム以前から輸入していたオーストラリア製マグナワゴンの後継で、同じくオーストラリア製の初代(1993年)/2代目(1997年)ディアマンテワゴン。
ただし、これらのほとんどは元々海外向けで、日本ではLクラスワゴンでも海外では一般的な大衆車ワゴンですから格式が低く、国内専用車として開発されたセフィーロワゴンがコストパフォーマンスの高さで好調なセールスを記録した以外、どれも地味な存在です。
そのセフィーロワゴンすらも、2000年代に入ってワゴンブームが終わるとミニバンに取って代わられており、ラグジュアリー系のLクラスワゴンなんて本当に売っていたのか?何かの幻ではなかったか?と首を傾げるほど、急速に姿を消していきました。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...