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「あなたは乗ってみたい?」空飛ぶクルマの実用化は近い!?社会実装のメリットや課題をまとめてみた
和歌山と宮城で飛んだ「空飛ぶクルマ」
近未来が舞台のアニメや映画では、空飛ぶ小型モビリティがよく描かれますよね。そんな空想の存在だった小型飛行モビリティが、もうすぐ現実世界の乗り物になるかもしれません。
人・夢・技術グループ株式会社が2024年10月17日に発表したプレスリリースによると、「空飛ぶクルマ」を飛行させるイベントが2024年9月に和歌山県と宮城県で行われたとのこと。このイベントでは「EHang216」という機体が空を舞いました。
フライト実施地は「潮岬望楼の芝(和歌山県串本町)」と「キューアンドエースタジアム周辺広場(宮城県利府町)」で、どちらの会場でもギャラリー約600名の前で無人飛行と有人飛行が行われています。飛行は無事に成功して、次世代モビリティの性能が観客に示されました。
……という感じで、小型飛行モビリティ時代の到来を予感させるイベントが行われたわけですが、ちょっと気になる点が1つ。和歌山と宮城で飛んだEHang216は「空飛ぶクルマ」と呼ばれていますが、写真を見るとクルマっぽくないし車輪もないような……?
空飛ぶクルマは車じゃない?
どうやら「空飛ぶクルマ」というのは、次世代の飛行モビリティに対する日本独自の呼び方のようです。経済産業省および国土交通省では、空飛ぶクルマを次のように定義しています。
電動化、自動化といった航空技術や垂直離着陸などの運航形態によって実現される、利用しやすく持続可能な次世代の空の移動手段
空飛ぶクルマの運用概念|経済産業省
空飛ぶクルマの「クルマ」は「日常的な移動手段」という意味のようで、自動車のような走行機能があることを示してはいません。ですので、EHang216のように車輪がないモデルも空飛ぶクルマと呼ばれます。
空飛ぶクルマの概要
お国の定義「電動化、自動化〜」だけでは、空飛ぶクルマが具体的にどのような乗り物なのかよくわからないですよね。そこで情報を集めてみたところ、空飛ぶクルマの概要として次のことがわかりました。
空飛ぶクルマは「eVTOL(電動垂直離着陸機)」と呼ばれるタイプの飛行モビリティで、ドローンのように電動マルチローターで離着陸を行います。
海外での呼称は「Advanced Air Mobility(AAM)」「Urban Air Mobility(UAM)」など。日常的な移動手段として開発されていますが、基本的に手動運転はできません(手動操縦機の将来的な導入も想定されているようです)。
空飛ぶクルマの種類
空飛ぶクルマには次の3タイプがあり、それぞれに飛行システムが異なっています。
- マルチロータータイプ|3つ以上のローターだけで飛行するタイプ
- リフト・クルーズタイプ|離着陸用マルチローター、巡航用固定翼、推進用プロペラで飛行するタイプ
- ベクタードスラストタイプ|固定翼を備え、垂直離着陸と巡航を共通の推進システムで行うタイプ
「マルチロータータイプ」は一般的なドローンに似たタイプで、電力消費の大きさから短距離飛行用とされています。
「リフト・クルーズタイプ」と「ベクタードスラストタイプ」は固定翼で揚力を得るタイプで、長距離飛行が可能です。また、飛行速度や飛行距離については、ベクタードスラストタイプが最も優れると考えられています。
空飛ぶクルマは何に役立つ?
空飛ぶクルマは自家用モビリティとして開発されていません。では、何の役に立つのかというと、次のような用途での活躍が期待されています。
- 旅客運送(離島への輸送、患者や医師の緊急搬送など)
- 荷物運送(緊急物資の輸送、山間部や海上での輸送など)
- エンターテインメント(観光地や娯楽施設での周遊飛行)
空飛ぶクルマは滑走路なしで離着陸でき、かつ小型ローターを複数使うためヘリコプターとくらべて低騒音です。こうした特性から、都市部で渋滞を避けて移動できるエアタクシーとしての活用も検討されています。
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- 執筆者プロフィール
- 加藤 貴之
- 1977年生まれのフリーライター。10年以上務めた運送業からライターに転向。以後8年以上にわたり、自動車関連記事やIT記事などの執筆を手がける。20代でスポーツカーに夢中になり、近年は最新のハイブリッド車に興...