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EVの充電スタンドが減少してしまった理由は…?知れば納得する5つの要因とは
世界的な脱炭素社会を目指した取り組みの中、注目を浴びるEV(電気自動車)。
電気の力を利用して走るEVには、ガソリンスタンドではなく充電するための充電スタンドが必要不可欠ですが、今年2021年に入って初めて充電スタンドの設置数が減少しました。
EVの普及が求められている中、なぜ充電スタンドは減少してしまったのでしょうか。
EVのシェア率が低いから
EVを充電するための充電スタンドが減少した1つ目の理由として挙げられるのが、EVのシェア率が低いということです。
現在では日産が開発した電気自動車「リーフ」を始めとして、2020年に市場に投入されたホンダの「ホンダ e」やマツダの次世代EVとなる「MX-30」など、国内のメーカーもEVの開発に力を入れています。
さらに、世界に目を向けてみれば2019年には36万台を売り上げ、最も売れたEVとなったテスラの「モデル 3」や、ルノーのコンパクトEV「ゾエ」といった多彩な車種がラインナップしています。
しかしながら、日本国内で新車登録されたEV及びトヨタの「プリウスPHV」に代表されるようなPHV(プラグインハイブリッド車)の数は、2020年度時点でおよそ3万台ほどで、ガソリンエンジン搭載車などを含めた全体の新車登録数のおよそ1%に留まっているのが現状です。
また、販売台数が伸び悩んでいる原因としてEVの価格の高さもあるようです。先に名前を挙げた日産の「リーフ」は、最も安価なグレードであるXVセレクションで税込み406万3400円となっており、ホンダの「ホンダ e」でも451万円です。
新車購入時に国からの補助を受けられるとしても、この値段で購入をためらってしまう人が多く、EVに乗り換えるユーザーが増えないのかもしれません。それにより充電スタンドが増えない要因となっているのでしょう。
充電スタンドの維持費が高いから
2つ目の理由とされているのが、充電スタンド自体の維持費の高さです。
電気料金や保守・保安にかかる年間のランニングコストはおおよそ100万円です。そもそも本体の価格や設置のための工事費を合わせた価格も、500万円ほどが相場といわれています。
採算が取れていれば古くなった充電スタンドは撤去して新しいものを設置という流れになるのは当たり前ですが、EVのシェア率が上がらないことから新機を設置すると赤字になってしまうため、増設ができないのが現状でしょう。
また、会費制であったり、充電一回あたりの定額制で料金を徴収することがほとんどである充電スタンドでは、利用者が少ないということも赤字に直結することを意味しています。
老朽化しても新しくするのが難しいから
現在、日本国内に点在するほとんどの充電スタンドは、国からの補助金を使って2010年代の前半に設置されたものです。
しかし、屋外に設置されているEVの充電スタンドの耐用年数は8年前後。つまり、2009年に発売された三菱の量産型EV「アイ・ミーヴ」や2010年にデビューした日産の「リーフ」に対応するために急増した充電スタンドですが、それらが現在、次々に耐用年数に達してしまっています。
維持費の高さも相まって採算のとれないEV充電スタンドですから、老朽化しても新機の設置が難しい状態となっているのでしょう。
設置場所選びが難しいから
これは、充電スタンドの減少の理由に直結するものではありませんが、充電スタンドの設置場所にも課題があるのかもしれません。
EVの充電スタンドが設置されている場所は、高速道路のSA/PAや道の駅・コンビニ・空港・自治体・大規模小売店などが主です。
しかし、全体を見た場合に設置場所として最も大きな割合を占めているのがカーディーラーなのです。充電スタンドの全体の4割ほどがカーディーラーに設置されており、充電のためだけにディーラーに行くのは気が引けたり、他メーカーのEVで他メーカーのディーラーには行き辛いというのがユーザーの本音です。
また、ガソリンスタンドへの設置は安全面から難しく、セルフ方式にするなどコストカットを推し進めているスタンドが多い現状を鑑みても、回転率が悪くランニングコストがかさんでしまう充電スタンドの設置は難しいものがあるのです。
充電スタンド増加は国からの持続的な補助が必要という声も
こういった現状ですが、国は2030年までに充電スタンドを今の5倍に増やし15万基にするという目標を掲げています。
さらに、脱炭素が世界中で推進されている中、2035年までには国内で販売される新車を全て電動モデルにするとも述べています。
このことについて、クルマに関する有識者は以下のように話します。
「国がEVを推進する中、充電スタンドの普及は急務。今は国からの補助金などでユーザーのEV購入環境を整備し、それによってEVユーザーを増やす必要がある。ユーザーが増えれば充電スタンドも増えてくるのではないか」
しかしながら、すでに課題は山積みでありEVの開発や普及を進めつつ、EVに関する設備を整えていかなければなりません。
例えば、EVに関する事業者である「e-モビリティパワー」は横浜市の青葉区にて、今年の6月より充電スタンドを公道に設置する実証実験を開始しています。
このようなさまざまな取り組みを経なければ、誰もがEVを利用しやすい社会はできないのでしょう。
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- 執筆者プロフィール
- 清水 圭太
- 1995年生まれ。自動車やファッション、高級時計などのライターとして執筆活動中。現在の愛車はランドローバー、輸入車が好き。週末はSUVで旅行に行くのが楽しみになっている。