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【基礎知識】プラットフォームとは?アーキテクチャとの違いも解説
車のプラットフォームとは?
プラットフォームとは、フロアパン(もしくはフレーム)、サスペンション、ステアリング、パワートレーンといったものが含まれる、いわば車の土台です。「シャシー」などと言い換えられることもあります。ここにエンジンを搭載し、アッパーボディを載せれば、車になるわけです。
プラットフォームは、自動車の構造の根幹となる部分であり、現在の自動車産業ではこの部分が非常に重要になっています。
かつては、車のデザインを決めて、プラットフォームを一台ずつ造っていました。しかし、それでは開発の時間もマンパワーも、そしてコストもかかってしまいます。自動車メーカーはできるだけ効率よく新型車を造るために、既存のシャシーを使って、まったく違う車を造る「プラットフォームの共有化」を始めました。
20世紀後半に入ると、計画的にひとつの汎用的なプラットフォームで数台の車を造るという、現代的なプラットフォームの共有が開始されました。フォードが「マスタング」や「ピント」「フェアモント」で使った『フォックス・プラットフォーム』がそれです。
プラットフォームの共用は、自社内での他車種にわたるだけでなく、アライアンス内の他メーカーとの間でも行われるようになります。例えば、トヨタとダイハツ、日産と三菱とルノーなどは多くの車種でプラットフォームを共有しているのは周知の通りです。
プラットフォームの共用とアーキテクチャーの違いは?
プラットフォームの共用と類似しているものに、「アーキテクチャー」があります。混同しがちですが、細かい部分に差違があります。アーキテクチャーは、プラットフォームだけでなく、設計・開発、部品調達、生産といった部分も共有します。
アーキテクチャーでは単純にプラットフォームを共用化するという方法だけでなく、車の各パートをモジュール化して、まったくキャラクターの違う車を造ることも念頭に置いています。
例えばトヨタの「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」は、プラットフォームと混同されがちですが、その名の通り、次世代戦略の根幹となるアーキテクチャーです。
自動車産業の市場はいまやグローバルが当たり前となり、1つのモデルが世界中に輸出されています。しかし、日本で販売されているままで輸出されるわけではなく、仕向け地のユーザーニーズに合わせて、内外装、エンジンなどを変えています。
これに対応していくには、日本国内の製造だけでは不可能です。自動車メーカーは海外に生産拠点を持っているので、その近くで部品調達をしなければ、安定的な供給やコスト低減には繋がりません。また、ひとつの生産ラインで、違う車をどうやって造っておくかという合理性も考えなければなりません。
そういった開発から生産までの様々なことを包括的に考慮し、いかに品質が高く、価格を抑えた車を提供するかを計画的に進めていくのがアーキテクチャーです。
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プラットフォーム共用化やアーキテクチャーのメリットは?
プラットフォームや部品を共用するアーキテクチャーの推進は、自動車メーカーに様々な合理化のメリットをもたらします。前述の通り、開発、生産コストが大幅に抑えられ、同時に安定した品質の確保が可能です。また、ひとつのプラットフォーム、モジュールによって、より多くの車種を生み出すこともできます。
一方、ユーザーは安定した車両価格、スピーディな納車、パーソナルに合わせた内外装の仕様といったメリットが享受できます。車種によっては、多様なカラー設定の中から自由な組み合わせが可能ですが、これもアーキテクチャーのメリットと言ってもいいかもしれません。
反対の例を言えば、「ランドクルーザー」や「ジムニー」は長納期の状態が続いていますが、これは他車種と共用できる部分が少ないからとも言えます。もちろん、まったく共用部分がないわけではなく、ジムニーはエンジン、内装部品などをスズキの他車種と分け合っています。
しかし、ラダーフレームという特殊な構造は自社内でもスタンドアローンな存在であることは間違いありません。仮にジムニーがモノコックボディのSUVだったら、違う結果になっていたかもしれません。
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「最近の車はどれに乗っても同じ」という声にも頷ける
ただ、こうした共用化はいい側面だけでないのは確かです。昔からの車好きからは、「最近の車はどれに乗っても同じ」という声が聞かれますが、これはある意味でアークテクチャーの影響があります。
見た目が違う車種でも、多くの部分を共用しているわけですから、多少味付けを変えたとしても似てくるのは仕方ありません。
同じメーカー内ならともかく、建前上はメーカーが違うアライアンス内のモデルも共用化で似てしまうため、ユーザーにはブランドをチョイスする意味がバッジだけになってしまいます。
しかし、本格的なEV時代が目前の昨今、アーキテクチャーの推進が進むのは確実です。2021年にトヨタは、車格の違う17台のEVを一気にお披露目するという発表会を開き、世間を驚かせました。
トヨタは2030年までに30モデルのEVを発売するとしていますが、こうしたことができるのも、アーキテクチャーのおかげと言えるでしょう。電子部品が多いEVでは、モジュールの共用化がさらに大きな合理化を生むからです。
クルマは「家電化」が進んで、価格や買いやすさだけで選ばれる時代になりつつあると言われています。これも、ある意味、プラットフォームの共用化、アーキテクチャ−の功罪かもしれません。こうした状況下だからこそ、楽しく魅力的な車をいかに造るかが、今後のメーカーに課せられる命題となっていくのでしょう。
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- 執筆者プロフィール
- 山崎 友貴
- 1966年生まれ。四輪駆動車専門誌やRV雑誌編集部を経て、編集ブロダクションを設立。現在はSUV生活研究家として、SUVやキャンピングカーを使った新たなアウトドアライフや車中泊ライフなどを探求中。現在の愛車は...