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タイヤチェーンを徹底比較!価格・性能から取り付け難易度まで紹介
タイヤチェーンは大きく3種類に分類
金属チェーン
金属によって作られたタイヤチェーンで、高いグリップ力で雪道や凍結道路でも安心して走行できます。価格が安価なものが多く、かさばりづらいことから収納しやすい点も魅力です。一方で装着が面倒で摩擦熱によって切れやすく、乾いたアスファルトを走行すると破損などのリスクもあります。
非金属チェーン
非金属チェーンとは、ゴムやウレタン樹脂といった金属以外のもので作られたチェーンを指します。取り付けがしやすく静音性にも優れるものも多いため、利用時にストレスを感じにくいです。金属チェーンと比べると価格が高く、収納をコンパクトにできないといったデメリットがあります。また、非金属チェーンの寿命は、走行距離が短くても耐久年数は5年程度です。
布製チェーン(オートソック・タイヤソックス)
合成繊維で作られた布製チェーンは、タイヤ全体を覆い装着するのが特徴です。オートソックなどの海外製の商品が有名で、簡単に着脱できる点がメリットです。コンパクトに収納できるので場所をとらず、長時間の走行には不向きといえます。
金属タイヤチェーンの性能を比較してみた
金属タイヤチェーンの性能比較を見てみましょう。
製品ごとの性能比較を行っている第三者機関がないため、今回はメーカーや製品は不特定として、金属タイヤチェーンでも「はしご型」と「亀甲型」の比較を参照してみます。
検証元はJAF(日本自動車連盟)のユーザーテスト、「雪道での旋回と急制動テスト チェーンの違いでどう変わる?(2019年2月20日)」から旋回性能と急制動性能、同じく「あなたのチェーンは急坂を上れますか?(2019年2月19日)」より登坂性能の検証です。
実験車はいずれも、トヨタ アクアの先代モデル(テスト当時の現行モデル)で、駆動輪である前輪にノーマルタイヤ(夏タイヤ)とチェーンという組み合わせでしたが、車種や車格、駆動方法、道路状況などの条件で、実際の結果は多少変わることがあります。
はしご型金属タイヤチェーン
圧雪路の半径25m旋回テストでは、20km/hで問題なく曲がれたものの、30km/hでは「形状から横方向のグリップが弱い」という欠点によって駆動輪が横滑りして、カーブ外側へ大きくはらむアンダーステア状態になってしまいました。
40km/hからの制動テストでは3回の平均が27.6mと、テストしたチェーン形式の中ではもっとも長くなっています。
50mの急坂を駆け上がる登坂テストでは、勾配10%(約6度)が急勾配の基準とされるのに対し、15%(約8.5度)と20%(約11.3度)でテストした結果、15%はどうにか上りきれたものの、20%では約15~20m上ったところでホイルスピンし、上りきれませんでした。
亀甲型金属タイヤチェーン
圧雪路旋回では20km/hで問題なく、横方向のグリップが優れるため30km/hも楽勝…かと思いきや、まさかのスピン!
原因は前後輪のグリップ性能が違いすぎるところにあるようで、完璧にハンドル操作通りの走行ラインを描こうとする前輪に対し、後輪が減速しきれないうえに横へはみ出して前輪を追い越すテールスライドを誘発、安全に曲がりきれません。
急制動テストでは平均25.9mとはしご型より2m近く短い距離で止まり、登坂テストでも15%を難なく上りましたが、20%は一応上りきったとはいえ、終盤はかなりホイルスピンして左右に頭を振りつつどうにかクリア、途中で止まったりカーブの坂道は無理でしょう。
比較結果:どちらも「無いよりはるかにマシ」
どちらの方式でも何となく頼りない結果となり、特に亀甲型は横方向のグリップに優れる特性がかえってアダになる場面もあるなど、過信は禁物です。
こうした「前後タイヤグリップの著しい差が招く、意図しない挙動変化」は、冬以外でも前輪にだけハイグリップタイヤを履いたり、意図的にドリフトじみた事をしようと後輪にスタッドレスタイヤを履いた場合でも起きますから、予想すべきことでした。
それでも速度を通常より抑えたり、急勾配を避けるルート選択、あるいはノーマルタイヤ+タイヤチェーンによる限界を把握することで、チェーンすら履かないノーマルタイヤむき出しよりはるかにいい結果となり、無事に走り切る可能性が高くなります。
非金属タイヤチェーンの性能を比較してみた
非金属タイヤチェーンも金属タイヤチェーンと同時に、ウレタン系非金属タイヤチェーンによるJAFのユーザーテストが行われており、そのまま参照します。
好成績と思いきや、登坂性能がイマイチ?
圧雪路旋回では20km/hはもちろん、30km/hも難なくクリアし、40km/hからの急制動テストも平均値24.8mと、亀甲型金属チェーンより1m以上短い好成績で終えましたが、急勾配登坂テストでは15%をクリアするも、20%は約10~15mでギブアップ。
比較結果:製品や車両の制御差が現れやすい
急制動では優れた成績なのに、登坂性能では残念な結果に終わった事から、前後方向のグリップがいいのかどうかわからなくなってしまいましたが、旋回性能で亀甲型金属チェーンのようにスピンしなかったところを見ると、「バランス型」といえます。
今回テストに供された製品がたまたまそういう特性だった、あるいはテスト車両のABSや横滑り防止装置、トラクションコントロールといった電子制御とうまく噛み合ったり、合わなかったりしたなど、他の要因も否定できません。
ひとつ言えるのは、製品によって形状やスパイクピンなど滑り止め防止の仕組みが異なるため、「実際に履いて使ってみないと製品ごとの限界や車種との相性が全くわからないため、他人の評価はアテにせず慎重を極めるのに越したことはない」ということです。
一般的には「非金属チェーンの性能が優れている」という評価が多いようですが、それを過信しないのが一番ですね。
布製タイヤチェーンの性能を比較してみた
別のテストで非金属タイヤチェーンと同等の性能を発揮
布製タイヤチェーンについては、上記のJAFユーザーテストに含まれていないため単純比較はできないものの、別のJAFユーザーテスト、「雪道での登坂テスト(2017年1月12日)」で、非金属タイヤチェーンと同時に布製チェーン(オートソック)をテストしています。
テストの意図はノーマルタイヤ、スタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤと、ノーマルタイヤ+α(非金属、オートソック、スプレーチェーン)を比較したものですが、参考までに結果を参照します。
急勾配も12%程度なら登れる雪上グリップ性能
結果としては、12%程度の勾配なら平坦路から発進して駆け上がるのも、坂の途中で止まって再発進しても登りきることができましたが、20%までは無理ということで、非金属製タイヤチェーンと同等です。
なお参考までに、オールシーズンタイヤとノーマルタイヤ+スプレーチェーンは勾配12%ですら坂の途中で止まってからの再発進では登り切れず、スタッドレスタイヤは20%でも平坦路から発進して駆け上がるのはOK、途中からの再発進は無理でした。
あくまで登坂性能のみでの比較で、旋回性能や制動性能についても同じだろう、と推測するしかありませんが、「オールシーズンタイヤ以上、スタッドレスタイヤ未満」と思えばよさそうです。
比較結果:スタッドレスタイヤも規制される道路向け
なお、布製タイヤには、履きやすくて普段から積んでいても邪魔にならないという特性があり、普段は冬でもチェーンと無縁なスタッドレスタイヤユーザーが多い、雪国の豪雪地帯ユーザー向きという考え方もあります。
「大雪特別警報や大雪に対する緊急発表によるチェーン規制で、スタッドレスタイヤでも走行規制される道路」(国道交通省「チェーン規制について」参照)では、スタッドレスタイヤから極力性能低下せず、場所を取らない布製チェーンが有効だと言えそうです。
カテゴリ別おすすめタイヤチェーン
2022年1月末現在での「amazon 売れ筋ランキング」から紹介します。
【金属】おすすめタイヤチェーン3選
はしご型と亀甲型が存在する金属タイヤチェーンですが、昔ながらのはしご型は現在人気がないようでランキング上位に上がることはなく、人気が集中している亀甲型のみ紹介します。
ニューレイトン アイスバーン らくらくタイヤチェーン
ニューレイトン アイスバーン らくらくタイヤチェーン 金属亀甲型 リング式9mm 適合:165/80R14 175/65R15 1…
ユーザーレビューでは「ジャッキアップした方が装着は早い」と言われるものの、一応はジャッキアップ不要なので積雪後の軟弱な雪面でジャッキアップせずとも何とか装着でき、クリアランスの狭いクルマにも使えて軽量コンパクト収納がウケています。
ゴールドストア タイヤチェーン
特に大袈裟な性能やメリットを宣伝しているわけではありませんが、無難な形状、工具不要の簡単取り付け、コストパフォーマンスの高さといった口コミでランキング上位へ浮上している、いわば「地味だが堅実な製品」です。
SEIKOH タイヤチェーン
SEIKOH タイヤチェーン ジャッキアップ不要 亀甲型 金属 155/70R13 155/65R14 165/65R13 165/55R14 等 KNO30
こちらも取り立てて何かがスゴイ!というわけではないものの、それゆえの安心感とコストパフォーマンスの高さが売りになっているようで、金属タイヤチェーンを購入するユーザーにとってはこうした保守的で大袈裟な宣伝をしないアプローチが重要なのかもしれません。
【非金属】おすすめタイヤチェーン3選
非金属タイプで売れ筋なのは、スパイクつきでいかにも効きそうな製品より、「いかにも簡単につけられそうな」樹脂製結束バンドタイプです。
豪雪地帯なら普段からスタッドレスタイヤを履いているでしょうし、年に何回も必要性が生じない地域に住むユーザーなら、「いざという時の備え」を低コストで済ませたいのが人情だといえます。
ただし、ランキング上位3選がほとんど結束バンドでは紹介する意義が低いため、2位以降は結束バンドタイプ以外から選びました。
Bor 結束バンドタイプ
結束バンドタイプのベストセラーで、とにかく安いだけでなくデザイン面でも問題なし、基本的には使い捨ての緊急用で、ハシゴ型のため横方向のグリップはあまり期待できませんが、突然の大雪に見まわれても登り坂で立往生せずに済むだけなら、この価格は魅力です。
タイヤ1本につき10本、1セット20本販売で4輪へ装着するなら2セット必要ですが、安いので2〜3セット買っておけば、使い捨てにしても安心でしょう。
カーメイト バイアスロン クイックイージー
「見るからにタイヤチェーン」という製品の中で抜群の支持を受けているのがカーメイトの「クイックイージー」シリーズ。
JASAA(一般財団法人日本自動車交通安全用品協会)の基準をクリアした性能、ジェッキアップ不要でクイックロック機構にによる「早く・楽に・カンタン確実に」を売りにしています。
BAOJIADA タイヤチェーン
商品紹介画像の誤字などから中国製と推測されますが、頑丈そうな見栄えと頼りがいのありそうなスパイク、そして2本分でも格安なため、販売ランキング上位に入っているようです。
品質に疑問を感じたり、言うほど装着性は良くないようですが、「値段を考えればこんなもの」と割り切れるユーザー向け。
【布製】おすすめタイヤチェーン3選
基本的には「オートソック」と「スノーソック」による2大ブランドが市場を支配しているようで、頭角を現した第3勢力がまだない状況です。
AutoSock(オートソック)
取り付けの容易さと収納性、さらに日本では「オートソック」が布製タイヤチェーンの代名詞になるほどのブランド力で、amazonランキング最強の1位となっています。
ISSE スノーソックスCALSSIC
オートソックに対抗して日本での存在感を増している「スノーソックス」。
もともと繊維メーカーのため「業界最強級の耐久性」を売りにしているほか、独自のオートセンター機能で走行中も適正な位置を維持してずれないのを魅力としています。
ISSE スノーソックスSuper
標準モデルの「CALSSIC」に対し制動性・耐久性により優れ、SUVや大型乗用車、大径タイヤ装着を装着し、走行機会の多いドライバー向けスノーソックスが「Super」。
他にも大型車両向けのトラック&バスモデルがあります。
チェーン規制とは?実施されるケースや取り付け方まで紹介
タイヤチェーンを徹底比較!カテゴリ別におすすめのタイヤチェーンを紹介
タイヤチェーンの取り付け方!それぞれの付け方を紹介
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...