更新
フットブレーキとエンジンブレーキの違いとは?仕組みや正しい使い方を解説
目次
フットブレーキとは?
フットブレーキとは一般に、ブレーキペダルを踏んで減速する行為を指します。
また、ブレーキペダルを「足元にあるブレーキ」の意味でフットブレーキと呼ぶこともあります。
いずれにせよ、MT車・AT/CVT車、そして電気自動車などブレーキペダルが装着されたあらゆる自動車で最も使われている減速手段と言えるでしょう。
フットブレーキが機能する仕組み
制動力がフットブレーキによって生み出される過程を大きくまとめると次のようになります。
- ブレーキペダルを踏んでマスターシリンダーのピストンを押し込み油圧を発生させる。
- 油圧がブレーキパイプとブレーキホースを経由してブレーキ本体まで到達する。
- キャリパーブレーキならピストンを押し出してブレーキパッドとディスクローターを、ドラムブレーキならホイールシリンダーを押し出してブレーキシューとライニングを摩擦させる。
フットブレーキのメリット
フットブレーキの最たるメリットは、ブレーキペダルを踏むことで強力なブレーキを生み出せることです。これなくして自動車を走らせることはできません。
純正のブレーキパッドよりも摩擦係数が高く対応温度域が高くて広いブレーキパッドや、スリッド入りのディスクローターを採用することで、より強いブレーキをかけられるようになります。いわゆるスポーツタイプ向けの製品はそういったものが多いです。
なおこれらを装着するとより高い熱がブレーキフルードに伝わるようになるので、沸点が高いフルード(DOT4以上)を使用することが定番となっています。
フットブレーキのデメリット
フットブレーキのデメリットは、ブレーキパッドやブレーキフルードが摩擦熱によって高温になると効きが悪くなることです。
ブレーキパッドやブレーキフルードに過度な負担(熱)がかかると、ブレーキフルードの液中に気泡が発生するベーパーロック現象が、そして対応温度を超えたブレーキパッドから発生したガスがディスクローターの間に入り込むフェード現象が発生します。どちらの現象も制動力を低下させる要因です。
ベーパーロック現象とフェード現象
走行中にブレーキをかけることで、強力な摩擦抵抗がブレーキパッドとディスクローターの間に発生します。ディスクやローターは高温度に達し、その熱によってブレーキフルードの温度も高くなった結果、ベーパーロック現象が発生してしまうという仕組みです。
フェードの場合、ブレーキング時にブレーキパッドとディスクローターが摩擦することでこれら温度は上昇します。そして一定の温度を超えるとパッドの摩擦材がガス化(気化)してディスクローターとパッドの間に入り込むため、制動力が低下します。
フェードが発生する温度はパッドによって異なり、一般的にスポーツタイプのブレーキパッドはフェードの起こる温度が高いです(フェードしにくい)。
エンジンブレーキとは?
エンジンブレーキとは、フットブレーキやサイドブレーキを使わずに減速する方法です。エンジン出力を絞る、つまり走行中にアクセルペダルから足を離すことでエンジンブレーキを効かせることができます。
エンジンブレーキが発生する理由は、パワートレインをはじめとするさまざまな部品同士の摩擦や、油脂類(オイル)で浸っているパーツが動く際に発生する抵抗、吸排気時に生じるエネルギー損失(ポンピングロス)などが挙げられます。
走行中に切っていたエアコンを動かしたときに、速度が一瞬遅くなる現象も、エンジンブレーキの一種です。
エンジンブレーキを使うとよい場面
エンジンブレーキを使う代表的な場面の1つが勾配のきつい下り道です。このような道を走行すると思った以上に速度が出る傾向にあるので、前方を走行する車両の車間距離を把握した上でエンジンブレーキを使えばフットブレーキを使うことなく減速できます。
エンジンブレーキのギア比の関係
MT車やAT車でエンジンブレーキを使う場合にはギア比も重要です。ギア比の低い(減速比の大きい)ギアであればエンジンブレーキはより強く働き、反対にギア比が高い(減速比が小さい)と効きも弱くなります。
例えばヤリスの6速MT仕様車のギア比は次のとおりです。
1速 | 3.538 |
2速 | 2.045 |
3速 | 1.392 |
4速 | 1.029 |
5速 | 0.818 |
6速 | 0.658 |
後退ギア | 3.333 |
1速ギア(ローギア)はギア比が最も低く、反対に6速ギア(トップギア)のギア比が最も高くなっています。1速ギア選択時の最高速は低く、加速力やエンジンブレーキに優れ、6速ギアに向かってギアを上げるにつれて最高速は高くなり加速力やエンジンブレーキは弱くなります。
同じ回転数でも異なるギア比のギア同士では速度が異なるわけですから、エンジンブレーキ時の減速具合も変わってきます。AT車やCVT車はMT車とトランスミッションの構造は異なるものの、ギア比、速度、エンジンブレーキの関係性は同じです。
エンジンブレーキのメリット
エンジンブレーキの最大のメリットはブレーキ機構を使わずして減速できることです。
フットブレーキのところで説明した通り、ブレーキを使い続けて過度な負荷がかかるとペーパーロック現象やフェード現象が発生します。エンジンブレーキをフットブレーキと組み合わせると、ブレーキフルードやパッドなどへの負荷を減らすことができます。
「ブレーキを踏むほどではないけれど少し減速したい」ような場面にもエンジンブレーキは有効です。
赤信号で停車するときやカーブを曲がるとき、直線道路でちょっと速度が出過ぎてしまったときなどに使えば、フットブレーキを使うことなく(あるいは必要最小限のフットブレーキで)減速・停車できるようになります。
エンジンブレーキのデメリット
エンジンブレーキのデメリットは、フットブレーキほどの減速力はなく、スピードや道路によっては十分に減速できないことです。
自動車の基本的な減速手段はフットブレーキであり、エンジンブレーキはそれを補うものです。つまりフットブレーキのような効果(減速力)を期待してエンジンブレーキを使うと、減速が不十分でカーブを曲がりきれなかったり、停車できずに玉突き事故を起こしたり停止線を超える危険があります。
エンジンブレーキは、フットブレーキが熱を持たないようにするための補助的な減速方法の1つとして認識しましょう。
- 執筆者プロフィール