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タイヤの適正空気圧とは?高速道路も空気圧を高くしなくてもいい?
目次
タイヤの空気圧点検がなぜ必要なのか
タイヤの空気は少しずつ外へ漏れています。
日本自動車タイヤ協会のJATMAが行った調査では、乗用車用タイヤの空気圧は1ヵ月に5%程度が自然低下することが分かっています。
では、タイヤの空気圧が適正でないとどのような問題があるのでしょうか。
空気圧が不足しているとタイヤがバーストしてしまうことも
タイヤの空気圧が不足している場合、接地面がつぶれてしまいタイヤの両端に負荷がかかってしまいます。
これにより、縁石などに乗り上げた際にタイヤ内部のコードが切れて、タイヤがバーストする可能性がありとても危険です。このほかにも、以下の症状が出る可能性があります。
- タイヤが早く摩耗するため、タイヤの寿命が短くなる
- タイヤが偏って摩耗する偏摩耗が起こる
- タイヤがうまく転がらず、燃費が悪くなる
- たわみが増え、特に高速道路を走行する際に操縦安定性が悪くなる
- タイヤのバーストにつながる
- 路面に溜まった水を排出しにくく、ハイドロプレーニング現象を起こしやすくなる
- タイヤ本来のグリップ力が発揮できず、スリップしやすくなる
- 急ブレーキ時に急停車しにくくなる
空気圧が過多になっていてもタイヤが摩耗しやすい
空気圧が自然に減ってしまってもいいように、多めに調整することもタイヤにとってよくありません。
空気圧を過多にするとタイヤの中央部が盛り上がり、接地面が減ってしまいます。これにより摩耗が起きやすくなるほか、以下の症状が出る可能性があるため、注意が必要です。
- タイヤの中央部が摩耗し、片減りを起こすことでタイヤの寿命が短くなる
- タイヤのトレッド面が傷つきやすくなる
- 振動が吸収されにくく、乗り心地が悪くなる
タイヤを長く安全に使うために
タイヤの空気圧は、適正より不足していても過多になっていても、さまざまな問題が起こります。
長く安全に使用するためにも、1ヵ月に1回を目安として空気圧の点検をしましょう。
ご自身でタイヤの空気圧を点検できるよう、空気圧の測定ができるエアゲージを備えておくこともおすすめです。
タイヤの空気圧を適正値にしていないとどうなる?
タイヤの空気圧には適正値があります。なぜ適正値があるのかというと、空気圧が高すぎても低すぎてもトラブルの原因になるからです。
燃費が落ちる
タイヤの空気圧を適正値にしていないと、燃費が落ちます。その理由は、転がり抵抗が増えるからです。
転がり抵抗とは、タイヤが転がるときの地面との摩擦力を指します。そして摩擦はタイヤと地面の接地面積に比例し、大きくなったり小さくなったりするのです。
つまり、空気圧が低くタイヤのたわみ量が増えることで地面との接地面積が増え、同時に摩擦も増えるため、燃費が悪化してしまうのです。
さらに空気圧が極端に低い場合、ハンドルが重いなど人が感じ取れるほどの異常症状も出てきます。そのため、1ヶ月に1度くらいは空気圧を確認し、不足しているなら補充することが大切です。
タイヤの寿命が縮む
空気圧が高すぎても低すぎても、異常摩耗の原因になります。結果、タイヤの寿命を大幅に縮めてしまうのです。
なぜ異常摩耗の原因になるかというと、先ほどお伝えしたように地面との接地面積が変わるからです。
空気圧が高すぎた場合、タイヤの中心のみしか地面にあたらず、サイドの溝は十分あるのに真ん中だけ溝が極端に減ってしまいます。
逆に空気圧が低すぎた場合、タイヤがたわんでしまうので、サイド部分に必要以上に負荷がかかりサイド面から溝が減ります。つまり空気圧を適切に保たないと、部分的な摩耗が激しいのです。結果、タイヤの溝がなくなり使える期間が短くなってしまいます。
その他にもひび割れの原因になったり、衝撃に弱くなるなど空気圧を守らないことで発生するトラブルは多くあります。タイヤを長く使うためにも、空気圧は適度に確認しておきましょう。
バーストする危険がある
タイヤの空気圧が低すぎると、バーストの原因になってしまいます。バーストとは、タイヤが破裂してしまう状態です。
タイヤの空気圧が低いことで、スタンディングウェーブ現象が起こります。この現象は、タイヤ内の圧力が偏ることで起こるトラブルです。空気の圧力が高い部分と低い部分がタイヤ内で発生し、表面が波状になります。そして最終的に破裂してしまうのです。
仮に走行中、タイヤが破裂するとどうなるのでしょうか。突然、ハンドルを取られ1トンを超える車が操縦できなくなってしまいます。もし周りに人や車がいた場合、大きな事故になることも予測できます。
この現象の一番恐ろしい点は、スタンディングウェーブ現象が走行中に起こっていたとしても、運転者は気づかないこと。
バーストは高速道路でよく起こるトラブルの一つであり、事故を引き起こす可能性も高いトラブルです。安全のためにも日々のメンテナンスをしっかりと行っていきましょう。
インチアップ・インチダウンしたタイヤの空気圧は判断が難しい
インチアップとは、車のホイールを純正より大きな外径(インチ)に変更すること。インチダウンはインチアップの逆で、純正より小さなものに変更することです。
基本的なインチアップ・インチダウンでは、純正タイヤとなるべく近い外径のものにすることが推奨されます。そのため、タイヤを横から見たとき、これまで使用していたタイヤよりもホイールが大きい場合はタイヤが薄く、小さい場合はタイヤが厚くなります。
インチアップ・インチダウンを行った際には純正のタイヤと違った条件になるため、空気圧の判断がつきづらく、難しくなります。
タイヤが適正値の空気圧になっていない場合、燃費の悪化や異常摩耗によりタイヤの寿命が縮んでしまったり、バーストしてしまうこともあるため注意が必要です。
インチアップ・インチダウンしたタイヤも空気圧を適正に保ちましょう。ご自身でのメンテナンスが難しい場合は、無理せず専門店などに相談することをおすすめします。
インチアップ・インチダウンしたタイヤの適正空気圧の調べ方
調べ方は以下のとおりです。
- 純正タイヤの適正空気圧時の負荷能力値を確認する
- 新しいタイヤカタログの負荷能力対応表で適合するものを調べる
- タイヤの規格によって適正空気圧を求める
順に説明していきます。
1.純正タイヤの適正空気圧時の負荷能力値を確認する
インチアップ・インチダウンしたタイヤの適正空気圧を求める際、まずは純正ロードインデックス(LI)と適正空気圧時の負荷能力値を確認しましょう。
たとえば、記載されているタイヤサイズに「205/55R16/91V」とあった場合、純正ロードインデックスは「91」となります。
タイヤのロードインデックス対応表で「LI91」の欄を見ると、タイヤサイズが書かれた横に空気圧ごとの負荷能力値が記載されています。
2.新しいタイヤカタログの負荷能力対応表で適合するものを調べる
ここで気をつけるポイントは以下の2つです。
- ロードインデックスが純正の数値前後であること
- 負荷能力の数値が純正以上に確保できること
以上のポイントを抑えつつ、新しいタイヤカタログの負荷能力対応表で適合するものを調べましょう。
タイヤの偏平率が変わっても、適正空気圧は基本的に変わらないため、ここでの適正空気圧は純正の適正空気圧と同じ数値となります。
3.タイヤの規格によって適正空気圧を求める
ここまでで分かった数値をもとに、インチアップ・インチダウンしたタイヤの適正空気圧を求めます。
タイヤの規格には、日本のタイヤ規格であるJATMA規格と欧州のタイヤ規格であるETRTO規格、エクストラロード(レインフォースド)規格の3つがあります。
それぞれの最大空気圧は以下のとおりです。
- JATMA規格:最大240kPa
- ETRTO規格:最大250kPa
- エクストラロード(レインフォースド)規格:最大290kPa
純正の空気圧とタイヤ規格での負荷荷重、負荷荷重時の空気圧から適正の数値になるようにしましょう。
タイヤの空気圧の適正値を確認する方法
空気圧の適正値は空気圧チェック表で確認できます。空気圧チェック表は、運転席のピラー(運転席と助手席を仕切る柱)に貼られています。
タイヤの空気圧を測定するための計器は「エアゲージ」といい、空気を入れるエアバルブから測定します。
空気圧の単位は「kPa(キロパスカル)」です。昔はkgf/㎠(キログラムフォース)が使われていましたが、あらゆる単位を世界で統一しようという流れと共に、日本でも空気圧の単位はkPaが主流になっています。
ちなみに1kgf/㎠≒約98kPaなので、「2.4kgf/㎠≒240kPa」だと覚えておけばいいでしょう。
空気圧の適正値は車種によって異なる
タイヤの空気圧は車種によって適正値が違います。また、同じ車種でもタイヤサイズにより違うこともあるので注意しましょう。そのため、自分で補充する際は必ず空気圧チェック表を確認する必要があります。
余談ですが、オフロードタイヤなどのような頑丈なタイヤの場合、空気圧を高めに設定していることもあります。つまり、車側の適正値が240kPaでも、タイヤ側の適正値は300kPaとなっていることもあるのです。
その場合は、タイヤ側の適正値に合わせても問題ありません。
しかし、貨物車などは高めだったり、タイヤサイズが大きいと低く設定されていたりと、タイヤや車によって違うので、一度は適正値を確認しておきましょう。
基本的には一般道と高速道路で同じ空気圧でOK
シールには「タイヤの空気圧は、一般/高速走行共同じ」という記載があるので、一般道と高速道路で空気圧をそれぞれ変える必要は通常はありません。詳しくは後述します。
もちろん例外として、ドレスアップや運動性能を高めるために、ホイールのインチアップなどを行なっている扁平率の低い、つまりタイヤの厚みが薄いタイヤに関しては、あえてスタッドレスタイヤの空気圧を2、3割程度上げることはあります。
空気圧を上げることによって、タイヤのゴムのたわみを少なくしてホイールと地面が接触した時の振動を軽減するために行うというわけです。
タイヤの空気圧のチェック方法
エアゲージを使って自分でチェックする
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確認方法は、エアバルブのキャップを外しエアゲージのノズルを挿し込むだけ。そうするとエアゲージの針が動きます。止まった位置で空気圧を確認しましょう。
注意点としては、ある程度力を入れてノズルを押さえつけること。押し付ける力が軽すぎると、空気が抜け続けてしまいます。
コンプレッサーやタンク付きの空気入れがない限り、車のタイヤの空気は自分で補充するのは難しいので、抑える際は力加減に注意しましょう。
空気圧をチェックしてくれるお店に依頼する
専用の工具を持っていないという方は、以下のようなお店で確認してもらう方法もあります。
- ガソリンスタンド
- カーショップ
- 民間整備工場
- ディーラー
- タイヤ販売店
車を取り扱っているお店であれば、ほとんどの店舗で確認してくれます。なかでも頼みやすい店はガソリンスタンドでしょう。
ガソリンスタンドでは、お客さん自身が自分で補充やチェックできるよう、タンク付きの空気入れなどを貸し出していることも多くあります。
また、ディーラーやカーショップなどでは、オイル交換などの作業をお願いしているときについでに確認してもらうこともできます。
「高速道路では空気圧を高くする」はもう不要?
特に高速道路などを走行する時は、空気圧を高めた方がいいという何十年前から伝わる言い伝えのような話があります。
タイヤは高速で回転をしていると遠心力が掛かってきて、押しつぶされてきます。さらに熱を持つと破裂しやすくなるのです。
タイヤの耐久性が現在よりも低かった時代には、空気圧が低めだと特にこういった現象が起きやすく、高速道路を走行する前には空気圧を高めにと言われていました。
しかし、これは過去の話として考えていただいて問題ないと思います。現在ではタイヤの耐久性もあがっており、走る道路に区別してわざわざ変える必要はありません。適正な空気圧であれば、一般道路でも高速道路でも大丈夫です。
また、燃費に関しても、メーカーが公表している数値を目指すのであれば、基準値の空気圧で走行することがベストだといえます。
どうしても高めの空気圧に設定したいという場合は、約1割程度のアップにとどめておきましょう。
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- 執筆者プロフィール
- 山北吏(つかさ)
- 1989年生まれ。現役整備士(整備士3級)webライター。webライター歴は1年半。愛車はインプレッサ(GH8)。車に乗るなら絶対MT!実家が田舎だったこともあり山道は得意!整備士として働き始め3年目。前職は輸入業...