MOBY(モビー)自動車はおもしろい!

MOBY[モビー] > 車を楽しむ > アウトドア > 車中泊 > 軽トラの走行性能は高速走行や長旅にも向くものなのか?
車中泊

更新

軽トラの走行性能は高速走行や長旅にも向くものなのか?

キャンピングカー情報をはじめとして、キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信しているWEBマガジン・DRIMOから、実際に車中泊やキャンピングカーを楽しんでいるライターによる記事をMOBYがご紹介します。※以降の記事内容および記事タイトルはDRIMOからの引用・参照です


軽トラのエンジンはパワー不足?

前回「軽トラのキャビンは長旅に耐えられるものなのか?」の記事では、狭くて居心地が良くなさそうな印象を抱かれてしまうことがある軽トラのキャビンが、長旅で通用するものなのか、少し古い軽トラと比較もしながら現在の軽トラのキャビンの実態をお伝えした。

前回の記事はこちら

長距離走行では運転席の居住性も大変重要だが、長時間の走行でクルマがバテてしまったり、エンジンの力不足で運転手がストレスを感じてしまったりするようでは長旅に使うのは厳しい。

そういった走行性能のような点ではどうなのか?

今回の記事では、実体験を元に軽トラの走行性能が高速走行や長距離走行に向くものかといったことについてお伝えしたいと思う。

軽トラを旅クルマとして使うことを検討中の方の参考になれば幸いだ。

最近の軽トラのエンジンについて

走行性能について語る上で、当然エンジンは要の一つとなる。

まずは現行の軽トラのエンジンについてざっと説明しておこう。

事あるごとに何度か書いているが、現在軽トラを製造しているメーカーは寂しいことにダイハツとスズキの二社のみとなってしまった。

他のメーカー名でも軽トラは販売されているが、それらは皆ダイハツハイゼットトラックかスズキキャリイのOEMだ。

そして、スバルが自社でサンバーを製造していた当時(現在のサンバーはハイゼットのOEM)は4気筒スーパーチャージャー付エンジン搭載モデルなどというのも存在したが、現行2車種のエンジンはどちらも3気筒660ccのNAのみで、ターボチャージャーなどの過給機付エンジンを搭載したモデルはない。

ハイゼットジャンボやスーパーキャリイにはターボ付きがあっても良さそうと言うか、あれば人気が出そうな気もするのだが、残念ながらない。

しかし、軽乗用車の車評などでは、「高速道路を走行する機会が多いならターボ付きモデルを選びたい。」といったようなことが書かれていることが多い。

ターボ有りと無の両方あればそうとでも言いたくなるかもしれないが、ターボがなければ高速走行には向かないのか?

その真偽については後述するとして、その前に現行2車種のエンジンの概要を見てみよう。

諸元表を見ると、現行のハイゼットに搭載されているエンジンの最大出力は34kW[46ps]/5,700rpm、キャリイが37kW[50ps]/6,200rpm

最大トルクはハイゼットが60N・m[6.1kg・m]/4,000rpmでキャリイが59N・m[6.0kg・m]/3,500rpmとなっている。

グレードやトランスミッションの形式が違っても、どちらもエンジンはこれら一種類のみだ。

数字を見た限りではどちらも正直なところ力強そうには見えない。

最大出力はキャリイの方が少し大きいことになっている。

しかし、ハイゼットの方が500rpm低い回転数で最高出力が出ることになっているので、実際のところ実用域の回転数でどちらの方がパワーがあるように感じるか微妙だ。

逆に最大トルクはハイゼットの方が僅かに大きい。

しかし、これも出力と同様で、最大トルクの小さいキャリイのエンジンの方が低い回転数で最大トルクを発揮するので、これも実際にはどちら方が力強く感じられるかわからない。

双方を乗り比べたこともないし、ギアのセッティングなどでも全然感じ方は変わってしまうので何とも言えないが、はっきり言ってエンジンの性能に大差はなさそうだ。

少なくとも4気筒だったサンバーのエンジンとの違い程の差異はないのではと思う。

そして実際にハイゼットを使っていての感想だが、パワフルとか吹け上がりが良いと感じるようなものではないが、数字から受ける印象より十分力が感じられ、過不足はない。

次にエンジンの搭載位置だが、「軽トラのキャビンは長旅に耐えられるものなのか?」の記事でも書いた通り、ハイゼットもキャリイもエンジンは前輪より少し後に搭載されていて、ハイゼットの運転席下辺りにはラジエターなどがある。

この「前輪より少し後」の利点については「軽トラのキャビンは長旅に耐えられるものなのか?」に書いたので、そちらでご確認いただきたい。

因みにスバルが製造していたサンバーは後軸の後ろ、ホンダのアクティは後軸の前と、エンジンがキャビンから離れたところに搭載されていた。

そのため、前者は農道のポルシェ、後者は農道のフェラーリなどと呼ばれたりしていたが、多くの一般ユーザーにとっては、重量バランスや運動性能やトラクション云々より、エンジンの熱や音がキャビン内に伝わりにくいことの方が、より実感のある利点となっていたと思う。

しかし、メカニズム的に特徴的だったこれら2車種が消えてしまったことは残念な限りだ。

現行ハイゼットのトランスミッションは2種類

現行ハイゼットトラックのトランスミッションは5MTとCVTの2種類だ。

2021年末にハイゼットカーゴ/アトレーのモデルチェンジとともにハイゼットトラックにもビッグマイナーチェンジがあり、新開発のCVTが登場したのだが、それ以前のオートマは4ATだった。

一方、現行のキャリイのトランスミッションは5MTと4ATだ。

少し前までキャリイにはAGSという5速セミオートマッチもあったが、これは廃止になってしまったようだ。

そして、ハイゼットにもキャリイにも4WDがあり、悪路での走破性を高めるデフロックなどの機構が備わるものがあるが、長距離走行とはあまり関係のない話題となるので、今回はそれらについては触れないでおく。

マニュアルとオートマのどちらが良いかという話になると「軽トラはオートマよりマニュアルの方が良い」と言う人は結構多い。

また、例えば「悪路では……」と説く人もいるが、未舗装の林道程度なら殆ど関係のない話なので、一般的には気にする必要のない話だ。

マニュアルとオートマどちらの軽トラも使用経験があるが、好きな方を選んで全然構わないと私は思う。

長距離を走る際は街中を走るよりシフトチェンジも少ないからMTで良いといった考え方がある。

渋滞とは無縁で信号の少ないようなところに住んでいたらMTでも全然面倒に感じることはない。

街中に住んでいる人は普段使いで面倒が少ないという理由でATを選ぶ人が多いのではないかと思う。

これらが一般論だ。

しかし、本当は私も以前はMTの方がどちらかと言えば好き(運転が楽しいとか勝手にシフトアップせずに自分の意志でギアを選べるなどの理由で)で、歴代の愛車も圧倒的にMTの方が多かったのだが、現在使用中のハイゼットジャンボは4ATだ。

渋滞とは無縁で信号が少ないところで暮らしていて、遠出に使いたい私がATを選ぶのは、一般論と矛盾しているように思える。

しかし、何故ATを選ぶようになったかと言えば、渋滞と無縁なところで暮らすようになってからは、渋滞や短い間隔で信号のある道がどんどん苦手になるばかりで、MTのクルマを運転していて渋滞にはまることなど想像するだけでうんざりするようになってしまったからだ。

近場で使うだけならMTで全く問題ないのだが、むしろ遠出をした時の方が渋滞に遭遇する可能性が高くなってしまうわけで、遠出をしたときに疲れないようにと現在はATを選ぶようになったということだ。

ともかく、現行2車種はオートマ/マニュアルどちらも選べるので、人の意見に流されず、自分の使い方の優先順位に合わせて選ぶのが得策だと思う。

それで、私が現在使用中のハイゼットジャンボは初年度検査2020年2月なので、先程書いた通りCVT ではなくて4ATだ。

新しいもの(CVT)が出てしまうと旧タイプを古く感じたり、劣るように感じたりすることもあるかと思う。

しかし、4ATのシフトチェンジも十分に滑らかで快適だ。

そして、4ATはDレンジと2速のチェンジ以外にレバーの横にODオフスイッチが付いていて、これが地味に便利だったりするなど、4ATにも案外利点がある

最新のCVTバージョンは運転したことがないので確かなことは言えないが、特別引けをとるようなことなどないと思うので、ハイゼットの中古を探す際は、安心して4ATを選んで大丈夫だ。

ところで、CVTと4ATとでは仕組みが大きく異なるが、高速道路の走行や遠出で大きく差が出てしまうのは、実はCVTと4ATの違いより、オーバードライブの有無、3ATと4ATの違いではないかと思う。

私のホンダバモス(軽トラ アクティの兄弟)は3ATなのだが、60km/hくらいまでならオーバードライブ(4速)がなくても特に不満を感じることはない

しかし、80km/h出るとやはりオーバードライブが欲しいと感じるようになり、それ以上出ると「ホンダだからってオートバイじゃないんだから。」と言いたくなるエンジン回転数に上がってしまう。

更に、高速の上り坂で4速のオーバードライブから3速にシフトダウンするのと、トップの3速から2速にシフトダウンするのとではそれよりもっと大きな違いが表れる。

80km/hで2速に落ちると気分的にも結構キツイ。

3ATで高速道路を走行できないわけではないし、実際にバモスで千葉県から高速道路を使って四国とかまでも行っているが、やはり高速道路を走行するならオーバードライブは欲しくなる。

中古では3ATの軽トラもまだ多く出回っている。

バモスは譲り受けたクルマなので文句はないが、自分で買うなら私は3ATの軽トラを選ぶことはない(買ってはいけないという意味ではない)と思う。

一般道が殆どで、滅多に高速道路を使う予定がないのであれば3ATでも十分だとも思うが、高速道路を使った遠出に使用するのであれば4AT・CVT・5MTの何れかをお薦めする。

燃費は16km/L前後

次に旅の経費に大きく影響する燃費についても触れておこう。

4ATのハイゼットジャンボの燃費は、正直言って現在の高性能な軽乗用車やコンパクトカーなどには到底及ばない。

今時の乗用車を基準にされたら「そんなに悪いの?」といった評価を下されてしまうこともありそうだが、自分の乗ってきたクルマの中ではトップクラスの良い方なので、個人的には十分満足している。

当たり前だけど燃費は走行条件によって大きく変わり、平地を60km/h前後で走行している時が一番良く、最高で20km/Lくらい走ったこともある。

しかし、登り坂が多かったり停止と発進の繰り返しが多かったりするような道では割と顕著に燃費に影響するようだ。

また、例えば別の愛車E25キャラバン(排気量2500ccガソリンエンジン)は高速道路を100km/h前後で走行している時の燃費が最も良いが、大きなクルマとは違い、ハイゼットは一般道を定速走行している時より高速道路を走行しているときの方が燃費が落ちる。

渋滞が多くて最悪で12km/Lなんてこともあったが、概ね燃費は16km/L前後といったところだ。

しかし、タイヤを軽トラ軽バン用のザ・スタンダードなYOKOHAMA SUPER VANからオールシーズンタイヤに履き替えてから1~2km/L落ちている。

他のクルマでこんなに違いを感じたことはないのだが、タイヤも結構燃費に影響するようだ。

スタッドレスを履くほどでもない(結局この冬一度も雪道に遭遇しなかった)し、スタッドレスより乾燥路でもウェット路面でも性能が良いので冬はオールシーズンタイヤを履かせていたのだが、もう雪の心配もないので、またSUPER VANに履き替えようと思う。

SUPER VANは価格が安く、見た目もちょっとA/T(オールテレーンタイヤ)ぽくて悪くないし、燃費も良くて、なかなかに素晴らしいタイヤなのではと思う。

ハイゼットジャンボで実際に遠出をしてみてどうなのか

まずは一般論になるが、トルクの強くないノンターボの軽自動車のエンジンが最も苦手とするのが上り坂だ。

とは言え、2009年生まれのバモス君と比較するとずっと元気に坂を登ってくれる。

ハイゼットジャンボは高速道路の上り坂でギアが3速に落ちることがしばしばあるが、今のところ東名や中央道の登坂車線も急坂の多い名阪国道の登坂車線も使用せずに済んでいる。

箱根新道の登りなどでは2速にまで落ちてエンジンが唸り声を上げるような箇所もあったが、ロバのような速度になってしまうことはなかった。

軽トラのもう一つの弱点を挙げると、風の影響を受けやすいことだ。

荷台にシェルを積んでいたり幌をかけていたりするとさらに横風の影響を受けやすくなる。

バン・トラックに乗り慣れている人なら当たり前のことと受け入れられる程度のことでも、乗用車しか運転したことのない人は驚くこともあるかもしれない。

しかし、私も含め平気で乗っている人もいるのだから、軽トラに乗りたいなら、これは慣れてもらうしかないと思う。

私にとって身近なところでは、北寄りか南寄りの強風が吹く日の東京湾アクアラインの橋の上が最も難所だ。

強風の日にアクアラインを走るバスの車窓から見下ろした海の様子

ここは幅が狭いところを風が吹き抜けることになるため、特に強い風を受けることになり、バスに乗っていても大きく揺れることがある。

車線をはみ出すようなことはない(車体幅が狭いからそんな心配もないと思うが)が、結構左右に振られることも多く、気は抜けない。

しかし、横風が苦手とは言っても、いつもそんな運転を強いられるわけではない。

強風でなければアクアラインも普通にリラックスして走行できているので、たまに緊張感を味わうのも悪くはない。

次に心配する人が多そうなのが加速性能や速度などについてではないかと思う。

軽乗用車の車評などで「高速道路を走行する機会が多いならターボ付きモデルを選びたい。」といったようなことが書かれていることが多いと、エンジンについての説明で書いたが、こういった文を見て「高速道路の合流や車線変更は大丈夫なのだろうか?」と心配してしまう人もいるのではないだろうか。

一言で言えば取り越し苦労だ。

まともに整備された現在の軽トラなら全く問題などない。

そんなことを言っていたら、荷物満載の40ftコンテナを載せたトレーラーは高速道路に侵入することもままならないことになってしまう。

ハイゼットジャンボを運転していて、高速道路の合流で加速が悪くてビビったことなど一度もないし、全く引け目を感じることなどない普通の速度で巡航できている。

ターボが必要か否かは、より贅沢な性能を求めるか否かに過ぎないと思う。それが実際に何度も高速道路を走行して実感していることだ。

新東名で120km/hも出してみた。

新東名も風が強く吹き抜けるところが多いので、そんなところではハンドルを握る手に力が入ることもあるが、トンネル内など風の影響のないところでは全く普通に120km/hで走行できる

しかし、高速では80km/h~100km/hで走っている時が最も快適だ。

この速度で普通にリラックスして巡航できるので、高速道路でも十分実用的だと言える。

また、先に坂道や高速道路での状況について説明したが、最も快適で燃費も良いのは60km/h~80km/hくらいで流しているときだ。

この速度域なら十分に静か(100km/hでも私はうるさいとは感じないが)でもある。

要するに高速道路ではない自動車専用道や郊外のバイパス、街道のような道が最も得意で、運転していても快適ということになる。

この特徴は旅に向いた性能と言えるのではないだろうか。

そして、当然ながら小回りが利く。

自動車が侵入できる道路で軽トラが入れないところは日本にはないと言って間違いないと思う。

知らない土地で狭い道に入っても安心なのも旅用車として重要な要素だ。

一人旅に最適な乗り物

ハイゼットジャンボを運転しながらふと昔を思い出すと、「もしかして720型辺りのダットラより快適?」とか「サニトラの運転席はもっとずっと窮屈で、荷台もサニトラの方が小さかったなあ。」などと感じることがある。

ダットサントラック・ハイラックス・ファスター・プロシード・フォルテなど、4ナンバーサイズの小型ピックアップトラックがことごとく消え去ってしまったのは大変残念なことではあるが、こんなに進化した軽トラの使い心地を体感してしまうと、その理由も頷けてしまうというものだ。

それでも、現在の乗用車と比較したら軽トラは「加速は悪いし、横風を受けやすいし…」となってしまうのかもしれない。

しかし、少々昔からクルマを運転している者からすると、たまに乗る現在の乗用車が逆に過剰に高性能過ぎやしないかと思うのだ。

貨物車は貨物車なので、それを遊びに利用したいなら乗用車とは違うことを理解した上で乗ってほしいとは思う。

「軽トラのキャビンは長旅に耐えられるものなのか?」の記事とも合わせて話をまとめると、ハイゼットジャンボは高速走行も長距離走行も全く問題なくこなせると言える。

荷台にシェルを積んだハイゼットジャンボは身軽な一人旅に最適な相棒だ。

ライター:笠原 サタン

オリジナルサイトで読む

キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信!

執筆者プロフィール
車旅情報Webマガジン「DRIMO」
車旅情報Webマガジン「DRIMO」
キャンピングカー情報をはじめとして、キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信しているWEBマガジンです(https://news.drimo.jp/)。実際に車中泊やキャンピングカーを楽しんでいるラ...

\ この記事が役に立ったらシェアしよう /

MOBYをフォローして最新記事を受け取ろう

すべての画像を見る

コメント

利用規約

関連する記事

関連キーワード