更新
BMWのxDriveとは?4WDシステムを解説!構造や性能・評価まで
ライバルに比べると4WDに対して消極的だったBMW
BMWと言えば、「駆け抜ける歓び」というキャッチコピーに表されるように、スポーティなドライビングフィールを大切にしてきました。
フロントエンジンシップ・リアドライブ(FR)を身上とし、また長年縦置きの直列6気筒エンジンとの組み合わせを理想としてきたため、BMWはライバルであるメルセデスベンツやアウディに比べると4WDに対して消極的でした。
4WDは直進安定性、走破性に優れる一方で、プッシュアンダーの傾向が強く、曲がるという点においてBMWが評価していなかったからです。
しかし、乗用車での4WDシステムが世の中に認知されゆく中で、BMWも採用を余儀なくされます。E30型325iXやE34型525iXといった4WDモデルを投入したのです。
何故、ガチ本格オフロード4WDに古い技術を使う?「リジッドアクスル式」採用の理由とは
SUVの先駆け・X5はパッシブ4WDを採用
当初、BMW が使った4WDシステムは、センターデフにZF社製ビスカスカップリングを使ったパッシブ4WDでした。駆動トルクはFR気味に配分された、前輪37:後輪63というもの。空転した車軸側に最大80%まで駆動トルクを配分できました。
SUVの先駆け(BMWではSAVと呼んだ)となった初代「X5」の初期型も、同様のシステムを搭載していました(ただし、駆動トルク配分が前輪38:後輪62に変更)。
当時はまだオフロード4WDのブームの残り香があった時代ですが、ユーザーの使用シーンがオンロードメインであることを考慮し、こうした4WDが使われたのです。ちなみにこの4WDシステムの多く部分が、当時BMW傘下にあったランドローバー社のレンジローバーとの共用でした。
X5は基本的にオンロードを主体に開発されたモデルですが、雪道や未舗装路などの悪路走行も考慮して、ヒルディセントコントロールを装備。また、悪路走破性を高めるため、ADB-X(自動差動ブレーキトラクションコントロール)も装備し、オープンデフの弱点を補っていました。
また、ブレーキ制御で横滑りを防止する、初期のダイナミック・スタビリティ・コントロール(DSC)が採用されていたのもトピックのひとつです。
【旧車(絶版車)】キャリア30年のオフロード乗りが心打たれたSUV・クロカン四駆
xDriveにより電子制御4WD時代が幕を開ける
BMWの4WDシステム「xDrive」が世に登場したのは、2003年にX5がマイナーチェンジを実施した時のこと。従来システムが駆動トルク固定式であったのに対して、xDriveはアクティブトルクスプリットになったのです。
デフォルトの駆動トルク配分は全輪40:後輪60という、相変わらずFRを意識したものでしたが、走行状況によって0:100から100:0までトルク配分を可変させることができます。これはトランスファーに配された電子制御式多板クラッチによるものです。
現代では当たり前となったシステムですが、当時としては画期的でした。車両の挙動を安定させるために、単にエンジン出力を絞ったり、内輪に制動をかけるだけではなく、前後輪への駆動トルク配分の増強もコントロールしたのです。
オンロード寄りSUVの世界を牽引したBMW
さらに2008年にはX6を筆頭に、ダイナミック・パフォーマンス・コントロール(DPC)が追加されました。
これは従来の前後輪でのトルクスプリットだけでなく、後輪左右でのトルクスプリットも制御するもの。いわゆるトルクベクタリングです。これにより、LSDやブレーキ制御システムよりも積極的なコーナリングのサポートが可能になったわけです。
ちなみに、X1などのFFベースのモデルに搭載されているxDriveは、前輪100:後輪0のトルク状態がデフォルトで、前輪のスリップ状態によって後輪に駆動トルクを配分する電子制御のハルデックスカップリングシステムになっています。
現在では多くのクルマで、アクティブトルクスプリットタイプの4WDシステムがスタンダードになっています。しかし、オンロード寄りのSUVというカテゴリーと共に、電子制御式4WDシステムの世界を牽引してきたのは、BMWのxDriveだったと言っても過言ではありません。
秋冬のドライブは濃霧にも注意!
洗車後に天気が崩れる…どうしたらいい?
「358」はどういった意味がある?
\
- 執筆者プロフィール
- 山崎 友貴
- 1966年生まれ。四輪駆動車専門誌やRV雑誌編集部を経て、編集ブロダクションを設立。現在はSUV生活研究家として、SUVやキャンピングカーを使った新たなアウトドアライフや車中泊ライフなどを探求中。現在の愛車は...