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「トヨタの保守的オヤジセダン3兄弟」マークII、チェイサー、クレスタの最後のフルモデルチェンジは成功だったのか【推し車】
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ただの販売店違いをかなぐり捨てた3兄弟最後のFMC
現在までも「トヨタの保守的オヤジセダン3兄弟」として歴史に名を残し、人気漫画「GTO」(藤沢とおる)では3教頭がそれぞれ同型式のマークII、チェイサー、クレスタを所有するなど、ネタとしてもよく使われるマークII3兄弟。
1980年に末弟のクレスタが登場するとハイソカーとして、さらに1G-GTEを載せた「GTツインターボ」をラインナップするなど足並み合わせた進化を遂げた3兄弟ですが、1990年代バブル崩壊とRVブームによるセダン低迷で、史上初の個性を前面に出したフルチェンジ。
1996年に登場したそれぞれ新型の3台は、販売店の客層違いもあって実際にはそれぞれ異なったイメージを持っており、それに合わせた全く別車のような道を歩みますが、努力は実らず最後の3兄弟揃い踏みとなりました。
今回は1990年代マークII3兄弟最後の戦いとして、3台のトヨタX100系がそれぞれどのような個性を持ち、イメージ戦略でユーザーの回帰、新たなファン獲得を狙ったかを振り返ります。
あくまで保守層向けだった長男・マークII(8代目)
当初はコロナの上級移行、その構想に難があると解ればコロナの上級モデル「コロナマークII]として改めて1968年にデビューした、後の3兄弟における長兄、マークIIは、もっとも歴史を重ね、かつトトヨタ店に次ぐ保守層向けチャンネルのトヨタ店扱い。
必然的にそれまで歴史を重ねてきたラグジュアリー系の「グランデ」と、1980年代半ばから加わったGT系を受け継ぐ「ツアラー」、それにタクシーなど法人需要のため旧型を継続生産するセダン、ワゴン/バンという重厚なラインナップを誇る、まさに主力車種!
8代目となるX100系では正統派のグランデ、スポーツ系のツアラーとともに高級ラグジュアリーセダンとしてトヨペット店の保守層ユーザー向けの要望に応えた、もっとも正統派、正常進化となるモデルチェンジでした。
3兄弟で唯一、次の9代目X110系へのモデルチェンジに繋げた際は居住性を重視したハイルーフ化を敢行するも、結局は後継のマークXで高級ラグジュアリースポーツセダン路線へ回帰し、8代目X100系ツアラーはその礎となります。
要するに「いかにもトヨタらしいセダンがもっとも正解だった」ということでしょう。
スポーツ路線でレースにも出た次男・チェイサー(6代目)
3代目マークIIの兄弟車として1977年に登場、スポーティ&ヤング層が主体のトヨタオート店(後のネッツ店)ユーザー向けに元からマークIIよりスポーティなイメージがあり、かつ直4エンジン搭載車も単なる廉価グレードではなく充実させたのが特徴。
6代目X100系ではそうした従来のイメージから、フロントオーバーハングを縮めてアグレッシブなフロントマスクを採用したスポーツセダン路線を重視し、ラグジュアリー系の「アバンテ」より、スポーツ系の「ツアラー」系がメインストリーム。
特に2.5リッター直6ターボ搭載のツアラーVにはTRDバージョンをラインナップしたほか、JTCC(全日本ツーリングカー選手権)にも参戦。
レースでは同門のコロナExiVが前面投影面積の小ささと軽さを活かしたのに対し、チェイサーは時にコーナーのライン争いで譲らず接触を辞さないほどの荒っぽい走りが対照的でした。
このスポーツセダンそのものは間違っておらず、人気も高かった8代目X100系チェイサーですが、当時のトヨタオート店改めネッツ店では、大排気量スポーツセダンの「アリスト」、初代レクサスISを国内導入した「アルテッツァ」といった新世代車が育っていた頃です。
そのため、トヨペット店向けのマークII、トヨタビスタ店向けのクレスタとは異なり後継車や上級移行モデルに恵まれており、人気がありながらもこの代で最後となりました。
ハイソカーの夢よもう一度という三男・クレスタ(5代目)
ある意味でもっと個性的なフルモデルチェンジとなったのが、5代目X100系クレスタ。
ハイソカーブーム初期に火付け役の1台となった初代初期型X50系に回帰した高級ラグジュアリー…というより、保守層向けではないハイソカー路線と言った方がよいでしょう。
そもそもトヨタ系販売店でも異色の実験店舗だったトヨタビスタ店のユーザーを相手にしますから、保守層ともヤング&スポーツ層とも異なるイメージが求められ、かつ歴代クレスタのユーザーを大事にしたモデルチェンジでした。
2.5リッター直6ターボ車を頂点とするスポーツ系グレード、「ルラーン」も設定したものの、他の兄弟とは異なり5MT車はなく4AT車のみのラグジュアリースポーツ路線。
ラグジュアリー系グレードの「エクシード」が本命ですが、ユーザー受けが良かったのはエクシードの廉価グレード扱いながら、クレスタの全盛期だった1980年代ハイソカーブームの人気グレードだった「スーパールーセント」だったのは少々誤算。
案外、「安くて立派に見えるクルマ」というのがクレスタの本質だったのかもしれません。
なお、あくまでメインストリームからちょっと斜め上を走るトヨタビスタ店取り扱い車らしく、スーパールーセントが人気だからと、その路線で後継を作ったりはせず、なんと後継は「愛知で作った名古屋メシ系アルファロメオ」、ヴェロッサでした。
そもそもトヨタ系としては奇抜すぎたトヨタビスタ店そのものが不要になってネッツ店へ統合整理されると、ヴェロッサもそれに先立つ廃止で短命に終わるのですが。
ハイソカーに始まりハイソカーに終わる、クレスタらしい最後で終われたのはむしろ幸運だったのでしょう。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...