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デートカーとして売れない葛藤から、硬派スポーツカーへ振り切った大変身!日産 6代目シルビア(S14)【推し車】

新車発売当時は不遇の扱いだった6代目S14

後に「シルビアでドリフトするならS14が最高」という再評価まで聞こえるようになったS14だが、不遇の時代は長かった
出典:flickr.com Author:Arild Andersen CC BY 2.0

国産小型FRスポーツといえば、マツダが長年ロードスターを作り続けていますし、後発組ではトヨタ GR86/スバル BRZがあるものの、「2リッター級ターボエンジンを積む小型FRスポーツクーペ」となれば、日産 シルビアがおそらく最後でしょう。

おかげでファンも多いクルマで、MOBY編集部がAIに聞いた「30~50代のクルマ好きが興味を持つ名車」にもノミネートされる歴代シルビアですが、その世代が青春時代に世話になった、あるいは憧れだったのは5代目S13~7代目S15の頃。

その中で、様々な事情から長らく不人気車としての不遇な扱いを受けた6代目S14シルビアでしたが、今では「実は意外と悪くない」と再評価されていたりします。

もはやデートカーでは売れない…?!

単に軟派で線が細いデートカーだからというより、今思うとS13より間延びしてグラマラス感が不足したデザインも不振の原因だったかもしれない

1993年10月に6代目S14へとモデルチェンジしたシルビアですが、当時のプレスリリースを見ると、「意のままの楽しい走りとセンスの良さを徹底追求したスタイリッシュなスポーツクーペ」がコンセプトだとしています。

一見すると先代S13の路線を踏襲したスポーティなデートカーと思わせますが、そのS13は「感性が豊かで、自分の個性を主張する若いデート世代のカーライフを想定。」と、明確にデートカーだと主張していたのに比べて、軟派な雰囲気をあまり表に出していません。

1991年に崩壊したバブル景気は、1993年のS14発売当時だと一般にはまだ、あまり深刻なものとは思われておらず、「そのうち何とかなるのでは?」という空気がまだ残ってはいました。

当時の筆者など、高校3年生の時(1992年)にディスコやライブハウスとして、「東京のニューウェーブ・エンタメの聖地」のように憧れたMZA(エムザ)有明が閉鎖され、館内が廃墟になっていた報道写真を見て、「もしかしてヤバイ?」と思っていた程度です。

しかし、バブル崩壊によるハイソカーや4ドアハードトップのブーム終焉と同時に全盛期を迎えたRVブームはそれまでのスポーティなセダンやクーペからデートカーの地位を奪っていました。

日産もそのへんの世情は把握していたのでしょう。S14シルビアをデートカーとして売り込む気がなさそうなのはプレスリリースからも明らかで、走りが気持ちよくカッコいいスポーツクーペという点を強調しています。

しかし3ナンバーボディに拡幅してゆったりした車内、エレガントなデザインは「アートフォース」を謳った先代S13の、”デートカーとして”正当な後継車である事は明らかです。

「デートカーとして作ったのに、デートカーとして売り込めない」、当時の販売企画担当者は、相当に胃が痛い想いをしたのではないでしょうか。

怒りに目を吊り上げた?後期S14シルビア

大胆なフェイスリフトやリアウイング大型化は賛否両論だったが、少なくとも「日産のやる気」は感じられた

もはやデートカーとしては時代遅れ、3ナンバーでナヨナヨした外見は、小型FRスポーツとしても5ナンバーの旧型姉妹車、180SXより魅力を感じない…何よりデートカーとしての役割を終えたS13シルビアが、中古車市場で安価にダブついている…何もかもS14への逆風。

デートカーとしての適性は流行に左右されるため仕方ないとして、トレッド拡大でコーナリング中の安定性は増していますし、ドリフトアングルを維持したまま飛距離を伸ばすにはナロートレッドの5ナンバー車より適しています。

SR20DE(自然吸気)/SR20DET(ターボ)エンジンはともに改良で出力も特性も向上して扱いやすくなっていますし、走りの実力はむしろ高いはずなのです。

しかし一度ついたネガティブなイメージはなかなか払拭されず、何よりS13シルビアの中古車を買うより魅力的だとユーザーの目を向けさせるためには、思い切ったイメージ変更が必要でした。

その結果、1996年6月のマイナーチェンジでは前後デザインにダイナミックな改変を施しますが、カクカクっとしたデザインに角ばった大型リアウイング、吊り上がったヘッドライトに至ってはあまりの不遇に怒り狂ったようです。

しかしこれが結果的には「軟派なデートカー路線を反省し、男臭くとも硬派なスポーツカーへと回帰した」と好意的に受け止められたようで、少なくとも復権の兆しは見えてきました。

ハイパワーFRターボ路線を決定づけた「K’s MF-T」

「どうだ、こういうのが欲しかったんだろう?!」と言わんばかりの超大型リアウイングが目立つK’s MF-T…とにかくわかりやすかった

S13でワンメイクレース用をメインに設定された簡素な「J’s」は廃止され、デートカーとしては本筋の自然吸気エンジン版「Q’s」も、エアロパーツ装着の特別仕様車でスポーツ路線に振るなどイメージ回復に努めたS14シルビア。

後期で硬派路線が認められると、ターボ車「K’s」にもテコ入れが行われ、当時最新のIHI製斜流タービンを装着したSR20DETエンジンは、220馬力から250馬力へと劇的に出力向上した「オーテックバージョン K’s MF-T」を1997年10月に発売しました。

ルーフの高さに近いほどそびえ立つ大型リアウイング、ホワイトメーターなど内外装も充実したK’s MF-Tによってイメージ転換は完了。デートカーからスポーツカーへと立ち返ったシルビアは、次のS15で有終の美を飾ります。

なお、特に前期で販売不振、イメージダウンによる落ち込みのヒドかったS14シルビアですが、おかげで180SXが旧型のS13そのままだとしてS14のモデルライフ全期を通して細々と継続販売。

S13シルビアと外装を交換した前がシルビア・後ろ180SXの「シルエイティ」、前が180SX・後ろS13シルビアの「ワンビア」も、S14の販売不振が生み出した現象かもしれません(S14/S15顔のシルエイティや、S14/S15ベースのワンビアもありますが)。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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