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「白いエンジン」でライバルに差をつけ軽乗用車のシェアNo.1!初代マツダ キャロル【推し車】

初代は完全にマツダオリジナルだった「キャロル」

トヨタ博物館に展示されている、初代キャロル2ドアセダン

今はスズキからのOEM供給に100%頼っているマツダの軽自動車ですが、1998年までは独自モデルを(ただしエンジンなどは他社製)、さらに1977年まではエンジンも自社製の完全オリジナル車を作っていました。

特に最初の本格的な4人乗り軽乗用車、初代「キャロル」はなかなか志が高かったモデルで、性能面で他社に追従できず販売では苦戦したものの、戦前からの名門オート3輪メーカーとしての堅実さと、ユーザー本位の画期的な面が同居した興味深いクルマです。

販売不振を打破するロータリーエンジン版が登場していれば、さらに面白いクルマになっただろうなと惜しまれます。

R360クーペに続くクリフカットの大本命

横から見ると「クリフカット」と呼ばれたキャビン後端がよくわかる

戦前から優れた設計と全国規模の販売ネットワークによって、ダイハツとともに「小型3輪トラック」の名門だったマツダが、他の軽3輪メーカーと歩調を合わせるように軽4輪車へ本格進出したのは1960年、2+2シーター軽乗用車のR360クーペが最初でした。

3輪メーカー上がりはいずれも、需要が確実にある軽トラや軽ライトバンからスタートしたのに対し、スズキやスバルのような戦後出発組と同様に軽乗用車からスタート、軽商用車のB360が1961年発売だったのは、軽オート3輪K360との兼ね合いでしょうか。

当時としては流麗で先進的だったデザイン、トルコン式ATの採用など最新技術も使ったR360クーペでしたが、キャビンが狭すぎて実用性は今ひとつ、強制空冷Vツインエンジンも「白いエンジン」と言われた軽量なアルミ製とはいえ軽オート3輪の延長線上です。

しかし軽乗用車としての大本命が控えており、それが大型キャビンのリアウィンドウをほぼ垂直に立て、ルーフを限界まで後ろに伸ばした「クリフカット」スタイルが特徴の初代「キャロル」でした。

発売当初は2ドアのみでしたが、後述するキャロル600同様の4ドア車を1963年に発売、リアエンジンのためトランクスペースはフロントに設けざるをえず、高さを稼げないため容量が少ないとはいえ、軽自動車の寸法で本格的な4ドアセダンを実現した意欲作だったのです。

軽自動車初の直列4気筒エンジン

クリフカットのおかげで後席スペースを稼げて、エンジンからの遮音性の面でも有利だった

エンジンも一新され、それまでの軽自動車がVツイン(V型2気筒)や直列2気筒の空冷2サイクルエンジンだった中、初の直列4気筒OHV4サイクル水冷エンジンを採用。

後のホンダ T360が搭載した4連キャブレターの直列4気筒DOHC4サイクルエンジンほど凝りすぎたものではないものの、実用エンジンとしての設計水準は高く、R360クーペと同じくアルミシリンダーを採用した「白いエンジン」でライバルに差をつけます。

ただ、後の660cc時代までついて回る話として、これだけの小排気量エンジンに直列4気筒は過大で、ましてやわずか358ccではコスト面でも重量面でも不利でした。

最大のライバル、スバル360と比較して出力では18馬力と同等でしたが、ボディもエンジンも重量がかさむ設計で150kgほど重く、1963年9月のマイナーチェンジで20馬力へとパワーアップするも、これだけ重いと動力性能は厳しかっただろうと思われます。

当初は軽乗用車のシェアNo.1

リア側面の開口部はラジエターへ強制冷却ファンで空気を導くインテーク

しかし、スズライト フロンテやスバル360と比較して居住性の高さは歴然としており、【マツダの名車たち 軽自動車の常識を塗り替えた「キャロル360」】によれば、「軽乗用車において、1962年67%、1963年62%、1964年56%と圧倒的なシェアを確保」とされています。

その期間に開催された日本グランプリでは、フロンテとスバル360の激闘に埋もれて目立ちませんでしたが、少なくとも当時の軽乗用車ユーザーはレースでの速さより実用性、居住性を重視したようです。

ただし1967年にホンダがN360を発売、31馬力と圧倒的パワー、FFレイアウトによる優れたパッケージングで大ヒットになり、フロンテやスバル360もパワーアップ、さらに新参のダイハツ フェロー(1966年初代)も加わると、急激に競争力を失っていきました。

マツダ生産100万台記念車にもなった小型車版キャロル600

キャロルの小型車版で、4ドアセダンとしては先行したキャロル600

話は多少前後しますが、そもそもキャロルの初公開は1961年の全日本自動車ショー(現在の東京モビリティショー)で発表された、「マツダ700」でした。

その名の通り700ccエンジンを積む4ドアセダンでしたが、1962年2月に発売されたのは360cc版の「キャロル」で、少し遅れて同年11月に600ccエンジンを積む「キャロル600」が発売されています。

小型車登録なので寸法を気にせずバンパーライダーつきの大型メッキバンパーを装着したほかメッキパーツを多用して豪華さを演出したほかはキャロル4ドアとほぼ同じ。

同じ軽ベースの小型車版、スバル450やホンダ N600E、同クラスの三菱 コルト600などと同様、サイズが中途半端で満足感に乏しいため販売面では苦戦したものの、マツダの自動車生産100万台を突破した記念碑的なクルマで、マツダミュージアムにも展示されています。

幻のロータリーキャロル

ロータリーキャロルが実現していたら、このキャロル600より立派な後ろ姿になったのだろうか

モデル末期はかなり寂しい販売状況だった初代キャロルですが、その状況を打開すべく計画されたのは、マツダらしくロータリーエンジン、それも360ccの1ローターエンジンです。

他メーカーからの懸念が原因と言われますが、ともかく運輸省(当時)からは後継のシャンテも含め軽自動車へのロータリーエンジン搭載は認可されず、残念ながらロータリーキャロルは実現しませんでした。

もし実現していれば、圧倒的なロータリーパワーでN360だろうがフロンテSSだろうが余裕でブチ抜く傑作が登場したかも…と思いたくなります。

しかし、実際に試作した軽自動車用1ローターロータリーX002を積んでみると、エンジン本体はコンパクトなものの、補機類も含めて重量がかさむロータリーはかなり重く、パワフルというよりむしろ重厚感ある安定した走りが印象的だったそうです。

いろいろ問題を抱えつつ生産直前まで進行したロータリーキャロルですが、シャンテと違ってカスタムカーで実現したという話は聞いた事がありません。

お遊びでもよいので、どこか作っていないでしょうか?

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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