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ツライチって何?ドレスアップや走行上の注意点や車検についても
ツライチのメリット・デメリット
ホイールオフセットを設計値より広げるツライチカスタムは、メリットだけでなくデメリットもあります。メリットとデメリットをしっかりと確認したうえでツライチカスタムを楽しみましょう。
メリット
見た目が良くなる
ツライチにカスタムすると、タイヤホイールが外側に出ることで大きく見えるようになり迫力が出ます。また、車体とタイヤの一体感が増すため、外観に一切手を加えていない車でもツライチ気味にするだけで、印象がずいぶんと変わります。
安定性が増す
左右タイヤ間のトレッド間隔が広がることで走行安定性が増します。また、内輪と外輪の回転半径が広がることでLSD(リミテッド・スリップ・デフ)の効き具合にも影響があります。ただし、極端なネガティブキャンバーが付けられたツライチセッティングの場合は、タイヤ性能が引き出せず、安定性は低下する傾向にあります。
デメリット
泥跳ねが増える
ツライチにすると車が極端に汚れやすくなります。タイヤが外側に出たことで、タイヤが跳ねた水や泥がインナーフェンダー内に収まらず、ボディへの付着量が増えるためです。
ハンドリングの悪化
ノーマルのホイールオフセット値は、メーカーが設計して算出したものであり、これを変えると車のハンドリング特性に悪影響が出る場合があります。とくに操舵機構があるフロント側はその影響が顕著です。
フロントタイヤのオフセットが広がると、操舵機構が外乱に弱くなるため、路面状態に敏感になります。その結果、道路の凹凸やわだちにハンドルがとられやすくなったり、ハンドルが重くなったりする場合があります。
車体の破損や劣化
ツライチにすると、走行環境によってはタイヤとフェンダーが接触してしまい、フェンダーやタイヤを破損させてしまう危険性が増します。
また、ツライチにするために車高を下げたり、過度なネガティブキャンバーを付けたりすると、最低地上高が低くなることで車体下回りを破損させやすくなったり、タイヤが偏摩耗を起こして早期の交換に迫られるなどの不具合が生じる場合もあります。
ツライチにする方法
ツライチにするためのホイールオフセット調整方法を紹介します。これらの手法を複合的に使ってホイールオフセットを調整するのが、キレイなツライチに仕上げるコツです。
ホイールのリム幅・オフセット値を変える
もっとも手軽な方法は、ホイール自体のリム幅やオフセット値の変更です。リム幅とはホイールの幅を指し、オフセット値はリム幅の中心とホイールハブとの取付面の差を数値で表したものです。オフセット値がマイナスになるほどタイヤが外側に出ます。
ツライチにするなら、オフセット量を細かくオーダーできる2ピースや3ピースホイールを選びましょう。ただし車両個体差があるため、ホイールだけでの微調整は難しい場合があります。
ホイールスペーサー・ワイドトレッドスペーサーを取り付ける
ホイールスペーサーとは、ホイールの取り付け面に挟み込むスペーサーであり、厚いスペーサーを挟み込むほどホイールを外側に出せるようになります。また、薄いホイールスペーサーを使って安価にホイールオフセットの微調整を行なうこともできます。
6mm以上の厚さのスペーサーを使う場合は、タイヤの脱落を防ぐため、ハブボルトを長いものへ交換するか、ホイール取付用のハブボルトがスペーサー自体に設けられたワイドトレッドスペーサーを使いましょう。
サスペンションアームの交換
長さが調整できるサスペンションアームに交換することでも、ホイールオフセットやキャンバー角の微調整ができます。とくにフロント側のツライチは、アーム交換でオフセットさせることでハンドリングの悪化を最小限に抑えられます。
ただしアーム交換はサスペンション全体の動作が設計と大きく変わるため、交換や調整作業はしっかりとした知識がある業者に依頼する必要があります。サスペンションアーム交換によるツライチは、上級者向けの方法といえるでしょう。
ツライチ具合にこだわるための手法
以下の方法は必須ではないものの、ツライチ具合にこだわる方なら知っておきたい手法です。ただし、これらを用いた過度なカスタムは大きな危険が伴うため、車検に通らなくなる場合があります。
爪折り・爪切り
リアフェンダー内側の折り返し部分は爪や耳と呼ばれ、ツライチカスタムをする際の邪魔になってしまう部分です。
この部分がタイヤに干渉してしまう車は、折り曲げ処理をする「爪折り」や、爪部分を切り取ってしまう「爪切り」と呼ばれるボディ加工を行ってフェンダーとタイヤの干渉を防ぎます。近年の車は爪の幅が狭くなっているため、加工が必要になるのはおもに古い車が中心です。
引っ張りタイヤ
引っ張りタイヤとは、ホイールリムサイズに対してわずかに細いタイヤを組み込んだタイヤです。タイヤのサイドウォールを垂直ではなく、斜めにすることでタイヤとフェンダーを干渉させづらくするのが、ツライチカスタムにおける引っ張りタイヤの役割です。
ただし過度な引っ張りタイヤは、走行中にサイドウォールが破損してパンクしやすくなったり、空気圧管理によってはタイヤの脱落やバーストの危険が増すなど注意すべき点が多々あります。
ネガティブキャンバー
ホイールアライメントを調整し、ネガティブキャンバーを付けてタイヤの設置角度をハの字に近くするほど、タイヤとフェンダーが干渉しずらくなります。
ストラットやダブルウィッシュボーン、マルチリンクなどの左右独立サスペンションは、車高下げるほどネガティブ方向にキャンバー角が大きくなります。
しかしトーションビームに代表される、左右が連結されたサスペンション形式の場合は、車高を下げてもキャンバー変化を起こしません。そういった車種の場合はビーム加工や特別なハブスペーサーを用いてキャンバー角を付けます。
ただし、過度なネガティブキャンバーは、車の不安定感を助長させたり、タイヤの偏摩耗を促進させる結果につながります。
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- 執筆者プロフィール
- 伊藤友春
- 1981年生まれ。自動車専門Webライターとして執筆活動中。自動車の構造に明るく、ほとんどの整備や修理をDIYでこなす。輸入車・コンパクトカー・変わったデザインやコンセプトの車が好きで、現在の愛車はその最た...