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どうしてこれまでなかった?ミニバンにSUV…タクシーの車種が増えた理由とは
タクシーに多種多様なボディタイプが採用されるようになったのはなぜ?
街でも頻繁に見かけるタクシー。これまでのタクシーの車種はセダンタイプが主流でした。しかし近年では、ミニバンやSUVなどさまざまなボディタイプが登場しています。
なぜ、タクシーに多種多様なボディタイプが採用されるようになったのか、タクシードライバー兼自動車ライターの松野氏に話を聞きました。
「タクシーの車種が増えたのは、2015年6月12日に施工された『タクシー車両の基準緩和』の施行が大きいと思います。
国土交通省によると『近年、車両の安全性の向上や運行面の安全対策が進んでいること、自家用自動車を用いて旅客を運送する自家用有償運送においても車両の安全上の問題が無いこと、その多くは国際的にも日本特有の規制であること等』の理由で、乗用定員10人以下のタクシー車両の基準を廃止しました。
【廃止された基準】
(1)座席の寸法に関する基準
(2)通路の幅と高さに関する基準
(3)乗降口の大きさ、構造等に関する基準
(4)緩衝装置及び座席が旅客に与える振動、前方の座席との間隙等に関する基準
上記の基準が廃止されたことで、タクシーとして使用可能な車種が広がったのです。特に都市部で見かけることが多い『トヨタ JPN TAXI』はこれまでのタクシー(セダンタイプ)とは全く異なるボディタイプです。タクシードライバーをしている私も毎日JPN TAXIで乗務しています。
JPN TAXIは、国土交通省が定める『ユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)』に認定されています。
例えば『車いすの乗降のためのスロープが搭載されているか』『高齢者等の乗降をサポートする手すりが取り付けられているか』『床の材質が滑りにくい形状になっているか』といったいくつかの基準を満たしている車両が『UDタクシー』として認定されます。
UDタクシーは、乗降口が広く乗りやすいだけでなく、荷室も大きくなっています。室内空間が広く、くつろぎやすくなっている点が特長です。UDタクシーは誰でも安心して快適に利用できる目安になっており、その代表的な車種がJPN TAXIなのです。」
タクシーにはどんな変わりダネ車種がある?
JPN TAXIのほか、どのようなボディタイプを持つ車種がタクシーとして採用されているのでしょうか。
快適性を高めた「ミニバン」タクシー
近年増えているのがミニバンタイプのタクシーです。具体的な車種としては、トヨタ アルファード、エスクワィア、シエンタ、ルーミー、ホンダ オデッセイ、フリード、日産 セレナなどがあります。
ミニバンの多くは3列シートを採用しており、より多くの乗客を乗せることが可能です。広さを活かして荷物をたくさん積むことも可能なのです。
筆者自身もアルファードのタクシーに乗車したことがありますが、広大な車内空間を活かして、座席シートを航空機のファーストクラスのようなリクライニングチェアにアレンジし、乗車時の快適性が高められていました。
それでいて、料金は通常のタクシー(セダンタイプ)と変わりません。どちらか選べるのであれば、快適かつラグジュアリーな室内空間を堪能できるミニバンがいいと実感しました。
さらに、ミニバンタクシーの変わり種としては、SUVタイプのミニバン「三菱 デリカ」のタクシーも存在します。本来、悪路走破性に特化したデリカでも、車内空間の広さを活かしてタクシーに採用されている例もあるようです。
また、「日産 NV200タクシー」にも複数回乗車しましたが、車内空間が広く快適に過ごせました。すでに生産が終了していますが、NV200タクシーもUDタクシー認定を受けたタクシー専用車です。海外でも多くの都市でタクシーとして採用されており、使い勝手の良さが評価されています。
見た目のインパクト大!?「SUV」タクシー
セダンやミニバンなどと比べると、それほど多くはありませんが、SUVタイプのタクシーも増えてきています。トヨタ ハリアー、スバル フォレスター、三菱 アウトランダー、BMW X1などは街でもときどき見かけます。
セダンよりも車高が高く視界がよく運転しやすいというメリットがあります。また、SUVの持つ悪路走破性を活かし、多少の悪路であっても問題なく走行可能です。実際に乗客を乗せたまま悪路を走行することはあまり考えられませんが……
実際にSUVで乗務しているタクシードライバーに「なぜSUVを選んだのか?」と聞いてみると「デザイン性において他の車種との差別化を図るため」と話してくれました。
セダンよりも広い荷室と車内空間、そして何より、見た目のインパクトは大きいと思います。そのあたりがSUVタイプのタクシーのメリットなのかもしれません。
ミニバンやSUVがタクシーとして使われることが増えたため、セダンタイプのタクシーは徐々に消えつつあります。中でも、これまでタクシーの定番車種だった日産 クルーは2009年に、セドリックは2014年に、トヨタ コンフォートは2018年にそれぞれ終売となっています。
- 執筆者プロフィール
- 室井大和
- 1982年生まれ。ライター歴6年、自動車業界9年。合わせて約15年。雑誌編集、記者、指定自動車教習所員資格保有。愛車はスズキスイフトスポーツ(33型)、BMW323i(E90型)、ジムニー(JB23型)。車はセダンではじ...